「る~るるる~…で~がらし~のかみ~は…運ばれてゆ~く~の~……き~ッとこの~まま…売られてゆ~く~よ………」
「おいアクアもう街中なんだからその歌やめてくれ」
アクアが檻に引きこもってから3時間程経って夕方になり始めたころ、やっと俺たちはアクセルの街に帰ってきていた。
まぁアクアは檻の中で体育座りをしてずっと不穏な歌を歌っている訳だが……と言うか本当にやめてほしい。さっきから通りすがりの人たちが見る目がヤバい。
「売られてゆ~くの~……」
「だから!その歌をやめてくれっていってるだろ!街中なんだぞ!?て言うかいい加減に出てこいよ!」
「いやよ……檻の中が私の聖域なの……外の世界は怖いわ……」
アクアはそういって歌うのはやめてくれた。だが顔を膝に埋めてピクリとも動かなくなった。……歌うのをやめたところでボロボロの檻に女の子を入れて運んでいる時点でかなりヤバいんだが……
「アクア、すっかり引きこもってしまいましたね…」
「そうだな……」
「昔の俺みたいだな…」
「「ん?」」
「い、いやなんでもねぇよ」
めぐみんとダクネスの会話につられて今のアクアをヒキニート時代の俺と重ねてしまった……あぶねぇ……
「ん…」
顔を反らした際に気負っているキィラが身じろぎをして起こしてしまったかと思ったがそんなことは無くまたすぐに寝息をたてて寝始めていた。
……もうかなりの時間を背負ってるが全然起きないな……そう言えばキィラって日本人……だよな?うん、たしかそう言ってたな…なら、何で髪が白いんだ?う~ん「女神様!」あ、なるほど女神だから___いや誰だ今の
後ろを向くと青い鎧を着た男が檻を掴んで__「フンッ!!」檻を破壊した。
「ッえぇぇえ!?」
「マジですか…」
俺とめぐみんが驚いている間に男はアクアに近づこうとしてそれをダクネスが止めた。こういうところはTHE騎士なんだがなぁ…
「おいアクアあいつお前の知り合いだろ?女神とか言ってたし、どうにかしろよ」
「………女神?」
「お、ん?」
こいつは何を言っているんだ?
俺が疑問に思っている間にどんどん正気に戻った顔になっていって…おいこいつまさか
「そうよ!私女神よ!!」
……こいつマジで自分が女神だってことを忘れてたな?
「よっ、うわ!?とと……さて!女神の私になんのようかしら!」
アクアは転びそうになりながら檻から出て高らかに叫んだ。
そして鎧の男を暫く見つめてこう言った。
「……あんた誰?」
「僕ですッ!御剣響夜ですよッ!!!貴女にこの魔剣グラムを頂き、この世界に転生させていただいた御剣響夜ですよ!!」
ミツルギは腰にあった剣を抜いてアクアに見せた。
こいつも転生者か。まぁよく見れば日本人の顔してやがる。くっそ……俺もこいつみたいちゃんと特典選んでればキィラと「……ッえ?」
ん?
「へ?」
「……おいアクアお前…」
「あ、あぁ!いたわねぇそんな人も!うっかり忘れちゃってたわぁ!結構な数の人を送ったから忘れてたってしょうがないわよねぇ!」
「え、えぇ…」
ミツルギ……哀れな奴…
「と、ところで何で檻に入っていたのですか?」
こいつが檻から出たがらなかったからだが??
「はぁぁぁあ!?」
俺とアクアがミツルギこれまでのことを説明するとこいつはありえねぇ!って顔をしてのけぞった。
「女神様をこの世界に引きずり込んで!?」
「しかも檻に閉じ込めて池に浸けたぁ!?」
「あんたは一体何を考えているんですかぁ?!??」
「ぐえ」
ミツルギは百面相をしながら俺に掴みかかって来た。キィラを荷台に寝かせておいて良かった……背負ったままだったら今ので落としてた自信があるぞこのやろう。
「ちょ、ちょっとちょっと!私としてはなんだかんだ楽しい毎日を送っているからそんなに気にしてないっていうか」
「アクア様ッ!この男にどう誑かされたは分かりませんが!貴女は女神なんですよ!?それなのにこいつは!」
こいつ、アクアの事をなんッッッにも知らんくせに言いたい放題だなこの野郎
「因みにアクア様は今はどこに寝泊まりしているんです?」
アクアが馬小屋と言うと更に力を入れて掴みあげて来た。お?やるか?お?お?
「おいいい加減に私の仲間から手を離せ!礼儀知らずにも程があるぞ!」
「ちょっと撃ちたくなってきました」
「おいやめろ俺とキィラも巻き込まれる」
わりとマジな目をしていためぐみんにそう言うとむぅと口を尖らせて荷台に寝ているキィラの側に寄った。……キィラが寝辛そうにしていたからかめぐみんが膝枕をした。羨まし
「君たち……クルセイダーにアークウィザードが二人……なるほど、パーティーメンバーには恵まれている様だね。なのに、こんな優秀そうな
仲間がいるのに、君はアクア様に馬小屋で寝泊まりさせて恥ずかしいとは思わないのか!?」
「む~……」
こいつの装備は立派な鎧……きっと転生特典の魔剣グラムとやらの力を使って何の不自由もなくやってきたのだろう。そんなやつに!何故一から頑張ってきた俺がとやかく言われなくちゃならんのだ。
だいたい、こいつらが優秀??
カエルに飲み込まれるアクア!
爆裂魔法一発で動けなくなるめぐみん!!
ドMでド変態で取り柄が耐久力しかないダクネス!!!
優秀??そんな!片鱗!!一度も見たことが無いんだが???
勿論キィラはアクセル最強だから優秀に決まっているが
「君たち、こんな男もパーティーを組むのはやめてソードマスターの僕と一緒に来ると良い、高級な装備品も買いそろえてあげよう」
ミツルギが善意100%みたいな顔でそう言うとアクアたちは眉間に皺を寄せてめぐみんにいたっては「撃って良いですか」しか言わなくなった。
「え~、どうやら俺のパーティーメンバーは満場一致で貴方のところには行きたくないようです。では」
さっさとこの場を離れようとするとミツルギが前に割り込んでアクア様をこんな環境に置いておけないだとか言っている。
どうしよう人の話聞かないやつだこいつ。
どうしよう、この後の展開が目に見える。
「僕と勝負をしよう」
やっぱり……勝負をするメリットなんて俺には「君が勝ったら何でもひとつだけ願いを聞いて上げよう」良いだろう
「よしわかったいくぞぉぉ!!」
「は!?ちょ!?」
俺は一瞬で間合いを詰めて切り付ける。
まぁ避けられたが、バランスを崩した所をスティールで魔剣グラムを奪ってスティールの光で目を閉じているミツルギをグラムの腹でぶん殴る。
「きゅふゎ…?」
一発KOだった。こいつグラムに頼りすぎじゃないか?弱いぞ。
それよりもスティールの目潰しって効きやすいんだな。キィラにも効いてたし。とにかく、早いところ
「ひ、卑怯者!!」
「あ?」
声がする方向を見ると破廉恥な格好をした女二人が卑怯者と連呼していた。なんだあいつら?こいつの仲間か?
「お~い、こいつの仲間か?」
「そうよこの卑怯者!」
魔剣持ちのチーターが駆け出し冒険者に勝負を挑む時点で卑怯だとおもうんだが??
それからなにやらキーキー騒いでいるとどうやらこの魔剣グラムは痛い人(アクア命名)にしか使えないらしい。………まぁ売れば金になるだろう。更に食い下がってくるから男女平等スティールで脅せば顔を真っ赤にして走り去っていった。……流石にそこまで顔を真っ赤にして逃げられると俺も恥ずかしいだが……
「カズマあんた……」
「やっぱり変態にジョブチェンジしたのですね……キィラに近づかないでください」
「そ、そういうのは!私だけにとどめてくりれぇ♥️」
やらねぇよドMが!
ったく、さっさと帰るか……あれ、キィラは?
寝ていた場所にはキィラの姿はなく、まだ眠そうな目をしながら何故か壊れた檻をニギニギしていた。……もしかして寝ぼけてると謎行動をする人種か?
「お~いキィラ?なにしてんだ?」
「……まがってたから…」
「……そっか、まだ歩くけど大丈夫か?___キィラさん?」
キィラは無言で俺の背中に抱きついてきて「おんぶ…」
と言ってきた。
……ッスゥゥゥゥゥ~~~……ヨシオレハショウキヲタモツ
結局キィラはギルドについても起きなくて、仕方なく俺達がキィラの家に送っていった。
キィラを影のベッドに寝かせて帰ろうと__いやまて一番重要なことを忘れてるんじゃねぇよ
「おいアクア」
「?どうしたのカズマさん?私、早く帰ってお風呂に入ってシュワシュワと唐揚げを」
「まぁ聞け、キィラを診てやってくれないか?」
それからキィラの吐血からダクネスの秘薬についてまで話すとアクアは真剣な表情になって寝ているキィラを見つめてから
「……よし、これで良いわよ。まったく、何処で貰ってきたんだか…」
アクアは
「おいアクア、まさかキィラにもデュラハンのが?」
「そんな強いやつじゃなかったわよ。多分」
「多分っておい……」
寝ているキィラを見ると確かに顔色は良くなっている。……やっぱアクアつれてきて良かったわ。
一応メモを残して俺たちはキィラの家を出た。
そのあとはギルドの酒場に移動して明日報酬金が出るからと暴飲暴食をしたアクアを解放して馬小屋に戻るといういつものルーティンを送った。
……寝る前に寝ぼけてるキィラを思い出してしまって悶えて次の日は寝不足だった。
寝ぼけて甘えるのって萌えますよね……
そんな彼女がほしい人生でした()