姫ティック・ドラマチカ ★辺境剣士による正体隠匿系謎解き王宮戯曲★   作:磨己途

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126 お手柄です、アンナ

 

「よく、これを無事に届けてくれました、アンナ。ありがとう」

 

 俺が手紙を読み終わるまでずっと、隣で心配そうに立ち尽くしていたアンナは、その労いの言葉を聞いても緊張した面持ちを崩さなかった。

 思い詰めたように、きゅっとスカートの裾をつかみ頭を下げている。

 

「差し出がましいことを承知でお尋ねします、姫様。……姫様と、あのユリウスと名乗る男性のご関係は、どういったものなのでしょうか?」

 

『教えてもいいんじゃない? 今さら隠したって、きっと、もう大体バレてるわよ?』

 

 どういうことだ、もっと話せ、と俺は自分の掌を見つめてジョゼに催促する。

 

『多分アンナには見られてるの。ユリウスの身体から私に戻った瞬間を』

 

 なんてことだ。

 疲れ果てていたせいで、王宮に戻り身体を清めるとすぐに寝てしまった俺にも非がある。

 とは言え、そういう大事な情報はすぐに共有して欲しいものだ。

 

「分かりました、アンナ。お話しします……」

「お、言うんだ」『ドキドキね』

 

 …………。

 

「信じていただけるか分かりませんが、私がそのユリウスなのです」

 

 アンナが深く息を吸い込む気配があった。

 

「……そして、私がミスティ、なのですね?」

 

 顔を上げたアンナの瞳は涙を湛えてキラキラと輝いていた。

 彼女はうっとりと、何か感極まったように、俺の瞳を見つめている。

 

「?……いいえ? 貴方はアンナですよ?」

 

 俺が思わず反射的にそう返すと、アンナは急に真顔に戻り、続いて何故か傷付いたような悲しげな表情へと変わった。

 

『あーあ』

「ユリウスゥ、今のはそうじゃなかったわぁ……」

 

 ジョゼとプリシラの二人から浴びせられる非難の声。

 

「えっ? ごめんなさい。悲しませるつもりはなかったのだけれど……、どういうこと?」

 

 俺はアンナの肩を抱き寄せて慰めようか、どうしようかとオロオロとするばかりだった。

 

『アンナはこう見えて結構夢見勝ちなところあるのよねぇ』「ある意味そのとおりなんだから、そうよって言ってあげれば良かったのよ。デリカシーないわねぇ」

『もしかしたら、生まれ変わりとか、そういうの期待してたんじゃない?』「アタシ今初めて、あ、こいつほんとに中身は男なんだーって思ったかも」

 

 分かったから。いっぺんに喋るなよ。

 仲がいいなあ、君たちは。

 

『ほら、ユリウス。早く慰めてあげて』

 

 ジョゼに促されて俺は、遂に涙をボロボロとこぼし始めたアンナをぎこちなく抱き寄せた。

 

 しばらくジョセフィーヌの胸に顔を埋めて泣いた後、アンナが思い出したようにプリシラに喰ってかかる。

 

「あ、貴女は、一体何なんですか? 姫様に対して馴れ馴れしい。前々から気に入らなかったんです。急に現れて、私の知らない姫様を知っているみたいに」

「あ、そういうこと言っちゃう? 言っとくけどアタシ恩人よ? 昨日、アタシがミスティのこと思い付いてなかったら、あんたの貞操、今頃ヤバかったと思うけどぉ?」

 

 二人を仲裁したうえで、アンナのよく分からない複雑な誤解を解き、これまでの事情を正確に理解させるためには、王宮に引き上げるまでの馬車の時間全てを使ってもまだ足りなかった。

 

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