帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾 作:これからはずっと一緒だよ
つきましては、高評価・感想をお願いいたします。
旧話を削除しました。
四次試験5日目、昼。
「こっちは収穫ナシだ。誰か見かけたか?」
「いや、私もだ。日に日に動きがなくなって来ているな」
「寝転がってると思ったらプレートを奪われた後だしな。島全体がほとんど森だから、上から探すってわけにもいかねーしよ」
森の中、パッと見で獣によるものを連想させる5本の傷がついた木の前で、レオリオとクラピカが顔を合わせていた。その傷は、実際にはレオリオのナイフでつけられたものだった。
そこへ、ガサガサと音を立て、何者かが背の高い草を揺らして近づいた。クラピカが木剣2本を、レオリオがナイフを構えるが、草を選り分けて現れたのは、246番のプレートを持った手だった。
「探しものはこれっすか?」
手の後から、デプスの顔と声が出て、全身が現れた。
「デプス!?」
返答も聞かないままデプスが投げつけ、レオリオが左手でプレートをキャッチする。
「どこでそれを……いや、なぜレオリオの
「クラピカさんがレオリオさんを見てたように、さらにその遠くから見てたってことっすよ。118番のプレート、捨てたりしてませんよね?」
「……そういうことか。構わないな、レオリオ?」
「勿論だ」
クラピカが投げてよこしたプレートを、デプスが額の前でキャッチした。
「これで、我々5人は全員6点分のプレートを集めたことになるな」
「5人?」
「ああ、スタート地点の方に留まってるゴンとキルアと会ってな。賭けの証人になる代わりに、島の北半分で探してもらってる。キルアから伝言も預かってるぜ、"罰ゲーム楽しみにしとけ"だとよ」
「うえ……わかってたとはいえ、後が怖いっすね……」
(試験中に遊んでいる余裕があるだけ大したものだと思うが……)
項垂れるデプスの肩を、上機嫌のレオリオがまあまあと叩く。ふと、何かに気がついたようにレオリオが首を傾げた。
「ちょっと待てよ、ポンズって確か女だったよな」
「そっすね」
「お前まさか……」
肩に置いた手に掴む力を加え、レオリオがずいと顔を近づけた。デプスは慌てて両手のひらを向け、ぶんぶんと振る。
「いやいやいやいや、至ってクリーンなファイトっすよ! 毒バチけしかけられて、こっちだって死ぬかもしれなかったんすから!」
「じゃどーやって勝ったんだよ」
「た、立ち会いは強く当たって後は流れで」
「そりゃクリーンどころか八百長だろーが! ホントのこと吐き散らせコラァ!!」
がっくんがっくんとデプスの肩を揺さぶり叫ぶレオリオに、クラピカは小さく肩をすくめた。
……
最終日の朝、スタート地点付近。
間近で低音管楽器を吹き鳴らすような汽笛が沖合から響き、それを聞きつけ飛び起きたキルアが4人を1人ずつ起こしていく。
『ただ今を持ちまして、第四次試験は終了となります。受験生のみなさん、すみやかにスタート地点へお戻り下さい』
さらにそこへ、汽笛に負けない大音量のアナウンスが船側から放たれた。デプスが念で気を入れて目を覚ますと、キルアが意地の悪い笑みを向ける。
『これより1時間を猶予時間とさせていただきます。それまでに戻られない方は全て不合格とみなしますので、ご注意下さい』
「ホントにやるんすか? ここで?」
「内輪でやったんじゃ大した罰になんねーじゃん」
「ぐぬぬ……勝ったからって気楽に言ってくれるっすね」
『なお、スタート地点へ到着した後のプレートの移動は無効です』
森の中から開けたスタート地点付近へと、ぽつぽつと受験生たちが出ていき始めるのが、同様にスタート地点付近にいるデプスたちからも見えていた。
立ち上がるも出ていくのを躊躇していたデプスの背中を、キルアが後ろから1度2度と押す。
「ほら、行け。そして恥かけ」
「ひぃん……非人道的っす……」
『確認され次第失格となりますのでご注意下さい』
「おいゴン、耳塞ぐなよ」
「う、うん……」
内心賛成しかねていたゴンが、顔の横へ持っていきかけた手を降ろした。
5人の中で、デプスだけがスタート地点へ進み出る。胸の中は軽いノリで勝負を受けたことへの後悔で一杯だった。
昨晩にキルアと2人で調整した内容をメモ帳で確認し、深く吸って、吐き、そしてまた吸った。背筋を伸ばし、目線を上げて口を大きく開く。
「――デプス=ハーゲンは! 小学■年生の時ぃ! 他の子がいる昼間の公園でぇ! ■■■を! ■■して! ■■■■してましたああっ!!」
デプスの大音声に、スタート地点の空気が凍りつく。
(なにっ!?)
(人前で■■■■を!?)
(あ、ありえねえ……!)
「あっははははははは!!」
直後、森の中からキルアのゲラゲラと笑う声が漏れた。一方で、内容を伏せられていたゴンたち3人もまた愕然としていた。
「うわぁ……」
「どんなガキだよ……いじめや虐待でもそんなんねーぞ……」
(コメントは避けておこう……)
この暴露は船まで届いていたが、幸い次の移動は船ではなく飛行船だったため、審査委員会スタッフには避けられたりせずに済んだ。
そして、これが次の試験へ思わぬ影響をもたらすことになる。
……
『えー、これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこし下さい』
最終試験会場への移動のため、受験生たちが乗り込んだ飛行船の中。試験とは別に設けられた、ネテロ会長直々の面談に、受験生は1人ずつ呼び出されていった。
面談の内容は一定して、まずはハンターになりたい理由。そして、一番注目する受験生と一番戦いたくない受験生を問うものだった。
ポックル。
「注目してるのは404番だな。見る限り一番バランスがいい」
「406番は相手にしたくないな。その……本人の名誉のために理由は伏せておくが」
キルア。
「ゴンだね。あ、405番のさ、同い年だし」
「53番かな、戦ってもあんまし面白そうじゃないし。406番はむしろ戦うとこを見てみたいってカンジなんだけど」
ボドロ。
「406番だな。いやでも島の一件がよぎる」
「405番と99番だ。あのような子供と戦うなど考えられぬ」
ギタラクル。
「99番」
「……406番」
ゴン。
「406番のデプスが一番気になってる。盾を背負ってるけど、戦いに使ってるところを一度も見たことないし」
「う~~ん、99・403・404・406番の4人は選べないや」
ハンゾー。
「406番だな。同族の臭いがするのもあるが、なによりかける言葉が見つからねえしな……」
「もちろん406番だ。戦いたくないっつーか、そもそも関わりたくねえ」
クラピカ。
「いい意味で405番、悪い意味で406番」
「理由があれば誰とでも戦うし、なければ誰とも争いたくはない」
レオリオ。
「405番だな。いや、406番にも思うところはあるんだが……あれを聞いちまうとな……」
「そんなわけで405・406番とは戦いたくねーな」
そして、最後にデプスが和室然とした応接室へと入った。
「失礼しまーす」
「来たの。ほれ、座りなされ」
座布団の上に胡座をかいたネテロ会長が、低いテーブルを挟んだ向かいの席を示す。
ネテロはデプスの目にも気のいい白髪の老人としか見えず、到底人類最強クラスとは思えない、威厳・威圧感のなさに半分ほど拍子抜けした。もう半分は納得だった。
座布団の上に正座して、デプスが軽く会釈をする。
「本日はよろしくお願いします」
「うむ、結構。では早速訊くが、おぬしはなぜハンターになりたいのかな?」
「なぜ? うーん……」
デプスは、暗黒大陸の話をすべきではないと考え、無難な答えを探して考えを巡らせた。顎に手を添え、伏し目気味のまま答える。
「カッコいい感じの目的意識はないっすね。今んとこ、便利で儲かる資格だからっていうのが一番の理由っす」
「なるほど。では、おぬし以外の7人の中で一番注目しているのは?」
「あー……」
これも全く考えていなかったデプスは、首を後ろに倒して気の抜けた声を発した。
「294番。輝いてるっすよね」
「こりゃ、本人が聞いとったらどうする」
「いやー? どうも」
ネテロは呆れたように目を細めてたしなめたが、デプスは軽く笑って流した。
「最近の若いモンは……では、最後の質問じゃ。8人の中で今、一番戦いたくないのは?」
「405番っすね。いろんな意味で切った張ったの相手になりたくないっす」
「なるほどの。よろしい、質問は以上じゃ」
「え、それだけっすか?」
「そうじゃ。ホレ、さっさと出てけ」
デプスは言われるまま退室し、廊下で伸びをし、壁に向かって首を傾げた。
(念能力使ってないかとか言われそうなもんだけどなぁ……バレてないのかほっとかれてるのか)
そして、背中から盾を外して眺める。なめらかな白い表面に、デプスの顔が映り込んだ。
(……今度こそ、直接対決は避けられない。どーやって切り抜けるか、考えとかないと)
「高評価」
「感想」
――針まみれの男、ギタラクル