帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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 つきましては、高評価・感想をお願いいたします。

 旧話を削除しました。


9.雑さが導く運命

 四次試験5日目、昼。

 

「こっちは収穫ナシだ。誰か見かけたか?」

「いや、私もだ。日に日に動きがなくなって来ているな」

「寝転がってると思ったらプレートを奪われた後だしな。島全体がほとんど森だから、上から探すってわけにもいかねーしよ」

 

 森の中、パッと見で獣によるものを連想させる5本の傷がついた木の前で、レオリオとクラピカが顔を合わせていた。その傷は、実際にはレオリオのナイフでつけられたものだった。

 そこへ、ガサガサと音を立て、何者かが背の高い草を揺らして近づいた。クラピカが木剣2本を、レオリオがナイフを構えるが、草を選り分けて現れたのは、246番のプレートを持った手だった。

 

「探しものはこれっすか?」

 

 手の後から、デプスの顔と声が出て、全身が現れた。

 

「デプス!?」

 

 返答も聞かないままデプスが投げつけ、レオリオが左手でプレートをキャッチする。

 

「どこでそれを……いや、なぜレオリオの獲物(ターゲット)を?」

「クラピカさんがレオリオさんを見てたように、さらにその遠くから見てたってことっすよ。118番のプレート、捨てたりしてませんよね?」

「……そういうことか。構わないな、レオリオ?」

「勿論だ」

 

 クラピカが投げてよこしたプレートを、デプスが額の前でキャッチした。

 

「これで、我々5人は全員6点分のプレートを集めたことになるな」

「5人?」

「ああ、スタート地点の方に留まってるゴンとキルアと会ってな。賭けの証人になる代わりに、島の北半分で探してもらってる。キルアから伝言も預かってるぜ、"罰ゲーム楽しみにしとけ"だとよ」

「うえ……わかってたとはいえ、後が怖いっすね……」

(試験中に遊んでいる余裕があるだけ大したものだと思うが……)

 

 項垂れるデプスの肩を、上機嫌のレオリオがまあまあと叩く。ふと、何かに気がついたようにレオリオが首を傾げた。

 

「ちょっと待てよ、ポンズって確か女だったよな」

「そっすね」

「お前まさか……」

 

 肩に置いた手に掴む力を加え、レオリオがずいと顔を近づけた。デプスは慌てて両手のひらを向け、ぶんぶんと振る。

 

「いやいやいやいや、至ってクリーンなファイトっすよ! 毒バチけしかけられて、こっちだって死ぬかもしれなかったんすから!」

「じゃどーやって勝ったんだよ」

「た、立ち会いは強く当たって後は流れで」

「そりゃクリーンどころか八百長だろーが! ホントのこと吐き散らせコラァ!!」

 

 がっくんがっくんとデプスの肩を揺さぶり叫ぶレオリオに、クラピカは小さく肩をすくめた。

 

 

……

 

 

 最終日の朝、スタート地点付近。

 間近で低音管楽器を吹き鳴らすような汽笛が沖合から響き、それを聞きつけ飛び起きたキルアが4人を1人ずつ起こしていく。

 

『ただ今を持ちまして、第四次試験は終了となります。受験生のみなさん、すみやかにスタート地点へお戻り下さい』

 

 さらにそこへ、汽笛に負けない大音量のアナウンスが船側から放たれた。デプスが念で気を入れて目を覚ますと、キルアが意地の悪い笑みを向ける。

 

『これより1時間を猶予時間とさせていただきます。それまでに戻られない方は全て不合格とみなしますので、ご注意下さい』

「ホントにやるんすか? ここで?」

「内輪でやったんじゃ大した罰になんねーじゃん」

「ぐぬぬ……勝ったからって気楽に言ってくれるっすね」

『なお、スタート地点へ到着した後のプレートの移動は無効です』

 

 森の中から開けたスタート地点付近へと、ぽつぽつと受験生たちが出ていき始めるのが、同様にスタート地点付近にいるデプスたちからも見えていた。

 立ち上がるも出ていくのを躊躇していたデプスの背中を、キルアが後ろから1度2度と押す。

 

「ほら、行け。そして恥かけ」

「ひぃん……非人道的っす……」

『確認され次第失格となりますのでご注意下さい』

「おいゴン、耳塞ぐなよ」

「う、うん……」

 

 内心賛成しかねていたゴンが、顔の横へ持っていきかけた手を降ろした。

 

 5人の中で、デプスだけがスタート地点へ進み出る。胸の中は軽いノリで勝負を受けたことへの後悔で一杯だった。

 昨晩にキルアと2人で調整した内容をメモ帳で確認し、深く吸って、吐き、そしてまた吸った。背筋を伸ばし、目線を上げて口を大きく開く。

 

「――デプス=ハーゲンは! 小学■年生の時ぃ! 他の子がいる昼間の公園でぇ! ■■■を! ■■して! ■■■■してましたああっ!!」

 

 デプスの大音声に、スタート地点の空気が凍りつく。

 

(なにっ!?)

(人前で■■■■を!?)

(あ、ありえねえ……!)

「あっははははははは!!」

 

 直後、森の中からキルアのゲラゲラと笑う声が漏れた。一方で、内容を伏せられていたゴンたち3人もまた愕然としていた。

 

「うわぁ……」

「どんなガキだよ……いじめや虐待でもそんなんねーぞ……」

(コメントは避けておこう……)

 

 この暴露は船まで届いていたが、幸い次の移動は船ではなく飛行船だったため、審査委員会スタッフには避けられたりせずに済んだ。

 そして、これが次の試験へ思わぬ影響をもたらすことになる。

 

 

……

 

 

『えー、これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこし下さい』

 

 最終試験会場への移動のため、受験生たちが乗り込んだ飛行船の中。試験とは別に設けられた、ネテロ会長直々の面談に、受験生は1人ずつ呼び出されていった。

 面談の内容は一定して、まずはハンターになりたい理由。そして、一番注目する受験生と一番戦いたくない受験生を問うものだった。

 

 ポックル。

 

「注目してるのは404番だな。見る限り一番バランスがいい」

「406番は相手にしたくないな。その……本人の名誉のために理由は伏せておくが」

 

 キルア。

 

「ゴンだね。あ、405番のさ、同い年だし」

「53番かな、戦ってもあんまし面白そうじゃないし。406番はむしろ戦うとこを見てみたいってカンジなんだけど」

 

 ボドロ。

 

「406番だな。いやでも島の一件がよぎる」

「405番と99番だ。あのような子供と戦うなど考えられぬ」

 

 ギタラクル。

 

「99番」

「……406番」

 

 ゴン。

 

「406番のデプスが一番気になってる。盾を背負ってるけど、戦いに使ってるところを一度も見たことないし」

「う~~ん、99・403・404・406番の4人は選べないや」

 

 ハンゾー。

 

「406番だな。同族の臭いがするのもあるが、なによりかける言葉が見つからねえしな……」

「もちろん406番だ。戦いたくないっつーか、そもそも関わりたくねえ」

 

 クラピカ。

 

「いい意味で405番、悪い意味で406番」

「理由があれば誰とでも戦うし、なければ誰とも争いたくはない」

 

 レオリオ。

 

「405番だな。いや、406番にも思うところはあるんだが……あれを聞いちまうとな……」

「そんなわけで405・406番とは戦いたくねーな」

 

 そして、最後にデプスが和室然とした応接室へと入った。

 

「失礼しまーす」

「来たの。ほれ、座りなされ」

 

 座布団の上に胡座をかいたネテロ会長が、低いテーブルを挟んだ向かいの席を示す。

 ネテロはデプスの目にも気のいい白髪の老人としか見えず、到底人類最強クラスとは思えない、威厳・威圧感のなさに半分ほど拍子抜けした。もう半分は納得だった。

 座布団の上に正座して、デプスが軽く会釈をする。

 

「本日はよろしくお願いします」

「うむ、結構。では早速訊くが、おぬしはなぜハンターになりたいのかな?」

「なぜ? うーん……」

 

 デプスは、暗黒大陸の話をすべきではないと考え、無難な答えを探して考えを巡らせた。顎に手を添え、伏し目気味のまま答える。

 

「カッコいい感じの目的意識はないっすね。今んとこ、便利で儲かる資格だからっていうのが一番の理由っす」

「なるほど。では、おぬし以外の7人の中で一番注目しているのは?」

「あー……」

 

 これも全く考えていなかったデプスは、首を後ろに倒して気の抜けた声を発した。

 

「294番。輝いてるっすよね」

「こりゃ、本人が聞いとったらどうする」

「いやー? どうも」

 

 ネテロは呆れたように目を細めてたしなめたが、デプスは軽く笑って流した。

 

「最近の若いモンは……では、最後の質問じゃ。8人の中で今、一番戦いたくないのは?」

「405番っすね。いろんな意味で切った張ったの相手になりたくないっす」

「なるほどの。よろしい、質問は以上じゃ」

「え、それだけっすか?」

「そうじゃ。ホレ、さっさと出てけ」

 

 デプスは言われるまま退室し、廊下で伸びをし、壁に向かって首を傾げた。

 

(念能力使ってないかとか言われそうなもんだけどなぁ……バレてないのかほっとかれてるのか)

 

 そして、背中から盾を外して眺める。なめらかな白い表面に、デプスの顔が映り込んだ。

 

(……今度こそ、直接対決は避けられない。どーやって切り抜けるか、考えとかないと)




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――針まみれの男、ギタラクル
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