帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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17.雑なイケメンVS正統派イケメン

 4月下旬、深夜。

 ボディラインを隠す道着の上から、さらに裾の長いポンチョを羽織っている、金髪の美丈夫。200階クラスの個室で掛け時計を見つめていた男――カストロは、諦めるように目を伏せ、悔やむように歯を食いしばった。

 

(なぜ……現れない、ヒソカ!)

 

 2年前、200階クラスへ上がったカストロの初戦の対戦相手であり、念での攻撃によってカストロを念能力に覚醒させた人物こそ、ヒソカだった。以来カストロは、ヒソカへのリベンジを原動力に、元来の格闘術も、新たな武器・念能力も鍛え上げた。

 そうして手に入れた、同じ200階クラスのほとんどの選手を歯牙にもかけない強さや、既にフロアマスター級と言われるヒソカをライバル視するというストーリー性から、カストロは、200階有数の人気選手となっていた。しかし今、ヒソカの戦闘準備期間、つまり天空闘技場の登録抹消までの猶予が、残り10分を切ろうとしていた。

 

 何度も想起し、夢にも出た、ヒソカの遊ぶような屈辱的な試合運び、そしてその終わりにかけられた言葉。リベンジを待つと言っていたヒソカは、元々天空闘技場でも神出鬼没だったが、これで完全に姿を消すこととなる。ヒソカを憎みつつも、自分の中でひとつの目標としているカストロは、それを受け入れがたく思っていた。

 

(……仕方がない、か)

 

 カストロは既に9勝し、あと1勝でフロアマスターへの挑戦権を得られるところまで来ていた。その1勝をヒソカで飾るつもりだったが、叶わずとも、先にフロアマスターとなってヒソカを待てばいいと、自分で自分を納得させようとしていた。

 

 参戦申し込みの手続きをしようと、カストロが200階の受付へ行っても、やはりそこにヒソカの姿はなかった。ただ、代わりとでもいうかのように、この深夜に、黒髪の少年が立っていた。それに気付いて、カストロは爽やかな笑顔を作り、軽く手を挙げた。デプスは軽く会釈した。

 

「やあ、こんばんは。デプス君だね。君も参戦申し込みを?」

「っす。カストロさんと組みたいんすけど、いっすか?」

 

 カストロは一瞬だけ、返答を躊躇った。

 

「ああ、もちろん。3戦の完全試合を果たした君との対戦、楽しみにさせてもらうよ」

 

 話は続かず、2人が希望日に翌日の日付を書き込んで申込用紙を提出すると、カストロはそのまま去ろうとする。

 デプスは、その背中に声をかけようとしたが、口を開いたところで止まった。

 

(……いや、でもなんて言えばいいんだ? ヒソカがどうこうとか言って信じて貰え……ないよなぁ)

 

 デプスは言葉が出ないまま、カストロを見送った。

 

「おーい、部屋に乗らないのかい?」

 

 廊下の向こう、エレベーターの開ボタンを押しっぱなしにしているカストロが、デプスの方へ呼びかけていた。

 

「あっすんません、乗ります!」

 

 

……

 

 

 翌日朝。

 

 満員の客席から歓声が渦巻く、200階クラス闘技場。前日に突発的に組まれたカードにも拘らず、フロアマスター挑戦権へ王手がかかっている人気闘士カストロの試合というだけで、チケットは一夜にして完売していた。

 

 石版を並べられた、一辺15メートルほどの正方形のリング。それを囲む壁に備えられた2つのゲートが、それぞれ上にスライドして開く。

 

 一方からカストロが進み出ると、歓声が一際沸き立った。さらにその歓声を貫くようにして実況席からの放送が響き、それに合わせ、フロア内の中継モニタでカストロがアップで映し出される。

 

『戦績は9勝1敗! 本試合はフロアマスター挑戦権のマッチポイントであると同時に、10連勝の偉業達成も期待されています、カストロ選手!』

 

 画面が切り替わり、次は逆側のゲートから現れるデプスが映し出される。

 

『対するは、自称"生涯無敵流"のデプス選手! 無敵の名は伊達ではなく、3試合を勝ち抜き、その通算失点はなんとゼロ! 今回初めて持ち込んだ背中の盾は、カストロ選手への警戒の現れなのでしょうか!?』

 

 観客に手を振ってみせながら、デプスは苦笑していた。

 

(毎試合これ呼ばれるの恥ずかしい……書かなきゃよかった)

 

 カストロとデプスがリングに上がり、その中央で向かい合う。審判も、その間から少し離れた位置に立っていた。

 羞恥・緊張を振り払うように肘を前へ横へ振って肩を解すデプスに、カストロが声をかける。

 

「その盾、持たなくていいのかい?」

「大丈夫っす、お構いなく」

 

 一息つき、デプスが構えを取った。一方カストロは直立姿勢のままだった。審判が両手を頭の高さまで上げ、胸の前に交差させて降ろす。

 

「始め!!」

 

 カストロが突進し、左ストレートを繰り出す。デプスは右前腕で払い、続けて左掌底を返す。

 

「ぐっ!」

(この少年、やはり速い! パワーも!)

 

 カストロが右腕で胸をガードするが、掌底はその腕から肩を軋ませ、カストロをリングの外まで吹き飛ばした。

 審判がカストロの方向を指差し、叫ぶ。

 

「ダウン&クリティカル、デプス! プラス3ポイント!」

『先手を取ったのはデプス選手! 痛烈かつ完璧なカウンターがヒット! これまでの試合と同様、残り7ポイントもこれ一本で奪うつもりなのでしょうか!?』

 

 落着したカストロは起き上がり、すぐさま跳んでリングの上に立つ。デプスが両手をメガホンのようにした。

 

「真面目にやんないと、知らないっすよーー!!」

 

 カストロが構えを取らないまま歩き出し、そして加速する。デプスを間合いに捉え、胴狙いの右蹴り上げ。構え直したデプスは、その身体が2つにブレるのを見た。

 

(キャッチ、いや!)

 

 デプスの左手が掴んで止めるも、手の中からカストロの脚が消えた。ほんの1コマだけ巻き戻されたような姿勢のカストロが、既に右上段回し蹴りがデプスの側頭部に迫っている。

 

(右ミドルが消えて、本命の右ハイ!)

 

 デプスが上半身を左に捻り、右足を張り飛ばす。その勢いのままカストロは半回転し、跳んで距離を離す。構えたままのデプスの前で、カストロが静かに笑う。

 

「侮っていたことを詫びよう、デプス君。攻撃を見切る能力に長けているとは思ったが、私のこれを1度目で捌いてみせるとはな」

「分身してるのはわかったんで、もう出し惜しみなしで頼んます」

「もちろんだ。ここからは――」

 

 目つきを鋭くしたカストロが、鳥の鉤爪のように指を曲げて腰を落とし、構えた。そしてその姿が、鏡写しのように2つに増え、リング上に並ぶ。観客が一斉にどよめいた。

 

『こ、これは一体!? なんとカストロ選手、2人に分裂! 私は夢を見ているのでしょうか!?』

分身(ダブル)と私。正真正銘、本気でかからせてもらう」

 

 2人のカストロが同時に突進。デプスの右手が背中から盾を取り出すのを見て、向かって右のカストロがデプスの頭上高く目掛けて大きく跳躍。デプスは、正面のカストロに向かって盾をサイドスローで投げつける。

 

「よっ!」

「そんなもの!」

 

 カストロは身を翻してかわし、勢いを落とさない。跳んだもう1人も着地。2人のカストロが、大口を開けるようにして両手を広げ、デプスへと到達する。

 

「はぁあっ!」

(前後からの同時攻撃! いかに反応が良かろうと――!?)

 

 デプスは、その場に仰向けに寝転んだ。直後、デプスの背後にいた方のカストロが、唐突に足をもつれさせる。

 

「うっ――!?」

(右足が!! なぜ!?)

 

 ドミノ倒しのように2人のカストロが勢いよく衝突し、2人まとまって寝転んだデプスを越え、リングの上に倒れて滑る。

 

「ダウン&クリーンヒット! プラス2ポイント、デプス! 5-0!」

『おーーっと、まさかの自爆! 自爆です! 200階歴戦の闘士とは思えない痛恨のミス! 新人相手と油断してしまったのでしょうか!?』

(足を掴まれた? いや、まだ彼の手足が届く距離ではなかったはず……!)

 

 2人のカストロが起き上がり、同じく起き上がったデプスを睨んだ。

 

「今のが、君の念能力(ちから)……というわけか」

「そっす。説明はしないっすよ」

 

 3人が構え、動きを止める。デプスは待ち、カストロは思案していた。

 

(ヒソカを――いや、ヒソカ以上の相手と思ってかかる!)

 

 1拍おいてから、2人のカストロが左右に別れてデプスに迫る。

 

(さあ、両腕をもらうぞ! どうする!?)

 

 咬みつくように閉じる2組の掌が、デプスの両肩を狙い……しかし、向かって左のカストロを、背中に猛然と叩きつけられた盾が吹き飛ばした。視界に星が散る。

 

「がっ……!!」

(背中から!? 何が!? どうやって!?)

 

 わけも分からぬまま、カストロの1人がリング上に転がる。もう1人のカストロは、露と消えた。審判が倒れた方のカストロを指差す。

 

「ダウン&クリティカルヒット、デプス! 8-0!」

『これは! 盾です!! 投げ捨てられたデプス選手の盾が、ひとりでに飛んでってカストロ選手に追突しましたーー! 主人を守る盾として、これはある意味正しい姿と言えるのでしょうか!? この天空闘技場のリングで、2対2の戦いが展開されています!』

 

 カストロの傍らに落ちた盾を拾い上げ、デプスはカストロが立ち上がるのを待った。

 

「ふっ……ぐ……!」

分身(ダブル)を……くっ……分身(ダブル)が、出ない……!)

 

 不意打ちを受けたカストロは、ぐらぐらと体を揺らし、地面や手足の存在を確かめるようにしながら、どうにか、といった塩梅で立ち上がっていた。

 

(結構なスピードで飛んできたしなあ。今ので集中力が切れたかな)

 

 デプスは小さく首を横に振ってから、カストロに言う。

 

「2207号室のゴンさんに言って、ウイングさんとこに行ってください。それが強くなる近道っす」

 

 無造作に投げつけられた盾が直撃し、無防備に受けたカストロは仰向けにリングへ倒れ伏した。

 

「ダウン&クリティカル! 11-0!! TKOにより、勝者、デプス!!」

『決まったーー!! 大きな盾は終始武器として扱い、デプス選手が勝利! カストロ選手の連勝記録に待ったをかけ、自身は完全試合記録を更新する結果となりましたーー!!』

 

 勝利が確定し、デプスは再び客席を見回しながら、笑顔で手を振った。そうしながらゴンやキルアなどの姿がないか探したが、見つからなかった。

 実際、そもそもデプスの知る人間は誰も見に来ていなかった。




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「下衆め……2度とふざけた投稿ができぬよう、編集中データも削ぎ落としてくれる!!」
――武闘家、カストロ
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