帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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 一言つき評価で応援下さった方々、他にも高評価・感想を下さった方々、ありがとうございます。R18展開については書いたことがないため省略していたのですが、果たしてどれほど需要があるのやら……
 とりあえず参考のためアンケートを設置しておくので、高評価の上ご投票ください。
 高評価を入れずに投票した場合は"律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)"が発動します。お忘れなきよう。

 書くことが思いついた方は感想もお願いします。


20.雑にかかり稽古

 7月上旬のある日の午後。

 天空闘技場200階クラスで満を持して行われるその試合に、会場はやはり満員となっていた。客席には、ウイングやズシ、キルアの姿もあった。

 

 一方のゲートが開き、ゴンが現れてリングへと進む。表情は明るく、手を挙げて声援に応える余裕も見せていた。

 

『ゴン選手が入場しました!! 現在3勝1敗、ギド選手へのリベンジを果たして以降、小さな体から信じられない力を発揮して無敗で進撃中!!』

 

 続けて、逆側のゲートが開き、デプスが現れた。

 

『そして反対側のゲートから今、デプス選手が入場!! 現在、完全試合のみで4勝0敗、前回でのカストロ選手10連勝の阻止は皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか!!

 また、本日はお互い手ぶら! まったくの素手での対決です!!』

 

 客席へ向かってわざとらしくポーズを取ると、その方向からは黄色い声援、ブーイング、そして笑いが同時に巻き起こった。

 それから"お騒がせしております"とばかりに後頭部を押さえながら笑って一礼し、デプスもリングの上へ上がった。

 

 リングの中央、審判の前で、ゴンとデプスが向かい合う。

 

「ゴンさん」

「?」

 

 片目をつぶり、デプスが指を立てて振る。

 

「"もう一回"はナシっすよ」

 

 言って、デプスは両手を開き、右足を半歩下げつつ肩幅に開いた構えを取った。デプスのオーラが見た目ゴンの倍にまで大きくなり、急にデプス自身が巨大化したような圧迫感を放つ。

 しかしゴンはそれに負けず、不敵な笑みを浮かべてみせ、頷いた。

 

「……うん!」

 

 審判が両手を上げ、交差させながら降ろした。

 

「始め!!」

 

 開戦と同時、ゴンは左右に振ったバックステップを繰り返し、自分からリングの端まで下がった。突撃を予想して身構えていたデプスが目を丸くする。

 

「あれ?」

「ふっ……!」

 

 ゴンは横を向き、リングの床板と床板の間に指4本を差し込み、それを力づくで引き剥がして持ち上げた。一辺3メートル、厚み15センチメートルのそれは、ゴン自身より遥かに大きく、持ち上げる様はカブトムシを思わせた。

 

(そう来るかぁ……)

「行っけーっ!」

 

 ゴンが石板を力いっぱい投げた。デプスが右手のひらで石板の面を押しのけるように叩くと、石板はデプスの右に逸れ、後方に落ちて砕け散った。

 デプスの視界から石板が消えた時には、ゴンが次の1枚を持ち上げていた。

 

「もーいっ、かい!」

 

 そして投擲。

 

「そりゃまあ、飛び道具に頼るのは正しいっすけど――」

 

 デプスが手ぶらのまま鞭を振るうような仕草をすると、その後ろから、石板のこぶし大の破片が正面へ飛んでいき、投げつけられた石板を貫通、打ち砕いた。

 

「なーんか忘れてません?」

「!!」

 

 ゴンは"凝"で目にオーラを集め、デプスの手から破片へ伸びるオーラの帯を視認した。

 

(そうか、オーラをくっつけられるのは何も人だけじゃないんだ! 盾がないから行けると思ったのに)

『デプス選手、前回の盾に続いて、リングの破片を操っています!! 近頃の試合で石板を剥がされ続けたリングが、ゴン選手の敵となろうとしているのでしょうか!?』

 

 デプスが手を軽く引き、ヨーヨーのように戻ってきた破片をキャッチし、ゴンにそれを見せびらかすようにしながら笑いかける。

 

「大きい石板は投げるのに時間がかかるし、小さいのを投げても簡単にガードできちゃうっすよ」

「わかってる!」

 

 ゴンはむっとして言い返した後、一直線にデプスに接近すると見せかけ、その途中で急停止。三度石板を持ち上げ、今度はその場に落とし、蹴り砕いた。破片が散弾のようにデプスへ殺到した。

 

 デプスはイメージ上のイコライザで目と関節のオーラ量のツマミを上げ、動体視力と身体速度をさらに強化、破片を全て平手で弾いた。破片にゴンの姿が隠れて消えたことも理解し、同時に"円"を広げ、ゴンの位置を探った。

 このオーラの増大も"円"の拡散も、普段通り"隠"のもとで行われており、ゴンは感じることができなかった。

 

(真後ろ了解!)

 

 背中目掛けて突き出された右ストレートを、上半身を捻ったデプスが左手で掴む。ゴンが目を見開き息を呑んだ。

 

(ヤバっ)

「キャッチ! アンドリリース!!」

 

 デプスは続けて姿勢を戻しざま、ゴンを低く直線的な軌道で放り投げた。ゴンは5、6メートル先で床に叩きつけられて転がるも、受け身を取ってすぐに膝を付いて起き上がり、それから立ち上がって構えた。

 

「クリティカルヒット、デプス! 2ポイント!!」

『神速のカウンター破れず!! 今回も先制点を取ったのはデプス選手です!! 投げ飛ばされたゴン選手もダメージは大きくないようですが、技術への評価からかクリティカル判定となりました!!』

(まずい……! ガードされた!!)

 

 ゴンの脳裏によぎるのは、映像の中でデプスのオーラに引かれ転倒するカストロの姿。

 

「くっ!」

「もー遅いっすよ!」

 

 すぐにゴンが駆け出すが、デプスが腕を引くと、その体が右手から浮き上がった。コントロールを失いながら加速して、デプスへ向かっていく。

 

「うわあぁああーぁあ!?」

『今度はゴン選手までもが飛んだァーー!? これはまるでサイコキネシスです!!』

 

 飛んできたゴンの脇腹に掌底を突き入れ、ゴンを斜め下へ吹き飛ばした。右腕は引かれ伸び切っていたためガードも叶わず、そのまま背中からリングへ叩きつけられてワンバウンドし、肺の中の空気を吐き出す。

 

「!! がはっ……!」

(投げ飛ばされた時とは、パワーが全然違う!! 見た感じ、オーラの量はオレとそこまで変わらないのに!)

 

 ゴンがそのまま大の字に倒れ、審判が指を3本立てて叫ぶ。

 

「ダウン&クリティカル、デプス!! 0-5!!」

『ここでデプス選手が折り返し、一方的な展開です!! しかし、デプス選手が自分から攻撃したのは、5試合目にして初めてのこととなります!!』

 

 審判が続行可能かを問おうとゴンに近づくが、ゴンはそれより先に手のひらにグッと力を入れ、呻きながらも立ち上がった。審判が無言のままに下がる。

 

「くそ~~」

(痛みが体の中にジンジン響いてくる……気を抜いたらそのまま倒れそうだ!)

 

 意識を掴んで離さず、限りなく敵意に近い負けん気を込めて、ゴンがデプスをキッと睨む。

 

(カストロさんとの試合からずっと、デプスは一歩も動いてないのに!!)

「だっ!!」

 

 威勢よくゴンが正面から向かっていき、デプスの顔面に向かって右拳を突き出す。デプスの右手がそれを払った。

 

(こうなったら、引っ張られる前に向かっていくしかない! キックさえしなきゃ、オーラをくっつけられて至近距離で引っ張られても、転ぶことはないはず!!)

 

 至近距離で足を止め、ゴンの両腕からラッシュが繰り出される。右手に右手を、左手に左手を合わせ、デプスは全て平手で弾き逸らしていく。

 

『速い! 速い! 止まりません!! 猛然と、マシンガンのようなラッシュ!! しかしこれは! まだ直撃打がありません!! ジャッジもだんまりです!!』

 

 その最中、ゴンは自分の両手が自分の顔の前へと引っ張られるのを感じた。

 

「えっ!?」

 

 ゴンの両手同士が引き合って貼り付いた。

 

「っせい!」

 

 気を取られている間に、がら空きの胴へデプスの掌底がめり込む。

 

(しまっ――!!)

 

 リングの外まで吹き飛ばされて落ち、さらに転がって観客席下部の外壁にぶつかる。ゴンの両手は張り付いたままだった。

 

「だっ!!」

「ダウン&クリティカル、デプス!! 0-8!!」

『痛烈な押し出しが完全に入ったァーー!!』

 

 ゴンは壁に背をつけて立ち上がり、手に力を入れる。両手の間は30センチメートルほど開くのが限界で、力を抜くと手はすぐにピッタリとくっついた。ゴンが愕然とする。

 

(自分の手からだけじゃなく、他人同士でもくっつけられるのか!?)

「ゴーンーさぁあーーん!」

 

 リングの中央からデプスが呼ぶ声にハッとした次の瞬間、その両手が引っ張られ、釣り上げられる魚のようにゴンが飛んだ。

 

(もうどうやってもガードはできない! たとえオレがこれに耐えても、ダウンとクリーンヒットで10ポイントになっちゃう!!)

 

 リングの外からデプスの許まで飛行するわずかな時間、ゴンの胸中には"勝てない"という思いがのしかかったが、同時に、"やられっぱなしで終われるか"という意地もまた、カッと燃え上がった。

 

(だったら――!!)

 

 顔を上げ、デプスの方を見る。デプスが右手を開いて引き、ゴンを張り飛ばそうとして待ち構えているのが見えた。

 デプスの間合いに入った瞬間、ゴンは両手を伸ばしたまま上体を逸らし、両足を広げて叫ぶ。

 

「道連れだぁぁああーーーー!!!」

「へっ!?」

 

 ゴンの両足でのラリアットが、驚いたデプスの胸をまともに捉え、2人揃って場外へ吹き飛んでいく。その最中、ジェットコースターを怖がるような、デプスの情けない声が伴って響く。

 

「うわあぁああぁああーー!?」

 

 (へり)の下に2人の姿が消え、選手不在となったリングの上から、審判が2人のいる方へ手のひらを向け、それから高く上げた。

 

「両者ダウン&クリティカル!! 3-11!! TKOにより、勝者、デプス!!」

『なんとォーー!? ゴン選手がデプス選手を道連れにしたァーーーー!! 決着のジャッジは両者3ポイント!! 両者3ポイントです!! ゴン選手、負けながらもデプス選手の完封記録に終止符を打ちました!!』

 

 歓声と実況を聞きながら、デプスは場外でひっくり返っていた。胸が早鐘を打ち、突然の衝撃に思考は霧散していた。

 

「っつうー……」

 

 デプスと一緒に飛び、そして落ちたゴンは、何度も地面に叩きつけられて抱え込んだ鈍い痛みをこらえながら、デプスより先に立ち上がり、仰向けに倒れたままのデプスの顔を覗き込んだ。

 

「デプス、大丈夫?」

「へぁっ……」

 

 ゴンに声をかけられ、デプスはようやく我に返った。

 

「は、はは。だ……大丈夫っす」

 

 デプスは引きつった笑みを浮かべながら、倒れたまま右手を胸の上に置き、親指を立てた。

 

 

……

 

 

 一矢報いて満足したのか、試合終了後、ゴンが頑なに再試合を要求することはなかった。ゴンとデプスは各々転がり回ってついた汚れをシャワーで落とし、それからキルアの個室に集まった。

 開いてるよ、という声を聞いて2人が入ると、カーペットの上に座ったキルアが軽く手を挙げた。

 

「よ。2人ともおつかれさん」

 

 全員が腰を下ろした後、真っ先にデプスが言う。

 

「キルアさん、今日の試合見ててどう思いました?」

「んー」

 

 キルアは膝の上に肘を立てて手の上に顎を乗せ、小さく唸った。

 

「まず能力の理解不足があったけど……それ抜きにしたって、今のゴンやオレが戦ったんじゃ、あの能力を掻い潜って10ポイント奪うのはムリだな」

「そんなことないよ! オレ3ポイントも取ったもん!!」

 

 食って掛かったゴンを、キルアとデプスが見つめた。

 

「お・ま・え・な~~」

 

 みるみる、キルアの顔が苦虫を噛み潰したようになっていく。

 

「右で殴って左で殴ったらその時点で手がこーなっちまうんだぞ!? どーやって10ポイントも取るんだよ!!」

 

 キルアが、顔の下で両手を合わせて言った。

 

「石板砕いて不意打ちするのだって、通じても1回が限度! カストロの分身(ダブル)はあくまで格闘戦が成立するけど、デプスのは無理なんだって!」

「……うう~~」

 

 言い返せず、ゴンは下を向いて唸った。

 

「ったく、相手が身内だからよかったものの、これが命の取り合いだったら――っ!?」

「それ!」

 

 そこまで言って、キルアはハッとした。デプスが手を打ち、キルアの方を指差した。ゴンも顔をパッと上げた。

 

「それなんすよ。念の戦いって、めちゃくちゃ怖いんすよ。念の使い方だけじゃなくて、そのことも覚えてて欲しいす」

「……そういう意味だったんだな、ゴンとの試合を歓迎するって言ってたの」

「っす」

(多少危機感持って貰わないと後がヤバそーだからね)

 

 デプスが頷いた。

 

「で、本題っす。ハンター試験の終わった後、クラピカさんとレオリオさんに4人分のメモを預けて、先に出てったってのは聞いてます?」

「ああ」

「その後、会場から離れたところでイルミに襲われたんす」

「なっ……!!」

 

 キルアは目を見開き、それをゴンはあまりピンと来ない様子で見ていた。

 

「で、なんとか反撃してそれなりに手傷を負わせたんすけど、その後どうなったかは知らなくて。実家に戻ったキルアさんは何か聞いてません?」

「!?」

 

 キルアは、デプスのゴンやカストロとの試合を見て、今はまだ自分よりデプスが格上だとは理解していた。だが、見るからに戦闘の素養・経験値がなさそうに見えるので、侮っているところがあった。

 

 それが"絶対に逆らえない"と脳に刻まれた相手から逃げ切り、あまつさえ反撃に成功すらしたと聞かされて、デプスへの返答をしなければという意識まで思考が追いつくのに、数拍分の時間がかかった。

 

「……いや、何も言われてない。お前、大丈夫だったのか?」

「幸い、大怪我はせずに振り切れたっす。それからは誰かに狙われたりとかしてないんで、もう来ないといいんすけど」

「イルミは()()らないの判断に曖昧なところがないから、一度手を引いたんだったら当分は来ないと思う。デプスは身元がアレだから、仕事ってこともないだろうし」

「っすか、じゃあ一安心っすね」

 

 ほっと一息つくデプスを見ながら、キルアは悔しさと劣等感の入り混じった感情に歯ぎしりしそうになり、口の中で歯を食いしばって止め、頭を振った。

 

「話ってそんだけ?」

「元は念のこと教えるってだけだったっすからね。もうないっす」

「んじゃ、オレたちゃもう天空闘技場には用はなくなったわけだな」

「?」

 

 キルアがゴンを見ると、ゴンは首を傾げた。キルアは手のひらを上に向けた。

 

「ほら、小遣い稼ぎもデプスの呼び出しもやりきっただろ? やっと好きに羽伸ばせるようになったわけだし、今度はお前ん()行こーぜ」

「あ、そっか!」

 

 ゴンは、半年以上帰っていない故郷、そこに住む家族に思いを馳せた。

 

「……そうだね!」

「デプスは? この後なんか用事あんだっけ?」

 

 デプスは、"ない、一緒に行く"と答えようとした。この話題が出た時にはそうしようと、前々から決めていた。

 だが、いざその言葉を口にしようとすると、デプスは何か越えてはいけない一線を目の前にしているような感覚に囚われた。

 

「……そっすね。まだやることが残ってるっすから、一時離脱って感じで」

 

 作り笑いを浮かべてそう言い、デプスは()()と立ち上がった。

 

天空闘技場(ここ)はもうチェックアウトしてくっす。ゴンさん、キルアさん、このイケメンが恋しくなったら、いつでもお電話していいっすよ!」

 

 くじら島、ゴンの家族の許へ旅立つ2人には微塵の気がかりも残すまいと、デプスは努めてキメ顔をしてみせ、他の表情を見せる前に部屋を出ていった。

 

 デプスが"離送橋(ポートピア)"で借家に帰り着き、夜眠る時になっても、ゴンとキルアに対して感じたものが何なのかは、まだわからなかった。




 この作品をお気に入りに入れて下さっている方、どうか下のリンクから高評価をお願いします。
 たった数秒の操作で我々のモチベが増えます。9点以上だといっぱい増えます。
https://syosetu.org/?mode=rating_input&nid=283464


※このようなアンケートを設置したのはとある一言評価が原因です。
 我々は一切責任を被りません。


(そんな目で見つめるなよ♠)
(高評価しちゃうじゃないか……♥)
――287期合格者、ヒソカ

『でたァーーーーーー!!!』
『ゴン選手の感想返しィーーーー!!!』
――天空闘技場の女実況者

20.R18シーン(当作品内に組み込むか別作品として投稿するかは別)

  • いる
  • 本編が滞るくらいならいらない
  • いらない
  • やめとけ
  • やめろ
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