帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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 律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)の被害者が今なお増え続けています。
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22.雑にチェックメイト

 デプスの借家、1階のリビングスペース。外は真夏日のカンカン照りながら、室内は空調がよく効いていた。

 

 デプスとポンズは、軽く手を伸ばせば届く程度の距離を残し、ソファに隣り合って座っていた。ローテーブルの上には据え置き型のゲーム機が置かれており、テレビ台の上の大型テレビとケーブルで繋がれていた。

 画面は左右に2分割され、2つの主観視点の画面を、デプスとポンズがそれぞれコントローラーで操作していた。それぞれ、古城のような石組みの空間を探索していた。

 

 ゲームをプレイしながらも、ポンズは、デプスから送られるオーラを自身のオーラに巻き込んで"纏"をし、自分のオーラへと均一に溶かしていた。

 以前はみられたムラがなく、デプスのオーラはポンズに達する瞬間まで"隠"で不可視になっており、オーラは紐などを伝うのではなく、オーラそのものが紐状に延びてポンズに接続されていた。

 傍目に見れば、その淡い赤色がもともとポンズのオーラの色であるかのようだった。

 

「今回の仕事ってどんなことするの?」

「主に護衛とかお使いっすね」

「私が手伝えることはない?」

「ない……っすね。下手に関わると危ないんで」

「そっかー」

 

 左側、デプスの操作する画面に黒スーツの男が曲がり角から現れ、手刀を画面に向かって繰り出した。その時右側の画面では、赤い耐火スーツを着たキャラクターに向かって、自分の手刀が振り下ろされた。

 あっ、とデプスが声を上げる間に、手刀が命中。耐火スーツは倒れ、左側の視界がぐるんと回って天井を仰ぎ、画面が赤く染まった。

 

「おーう……何かしてないと落ち着かないとか?」

「そんなんじゃないけど、デプスくんにはもっと頼ってほしいから。ただのワガママだけどね」

「ワガママ?」

「私だって、プロハンターを志す人間の端くれ。年下の男の子に囲われて養われるだけの生活は、プライドがね」

 

 黒スーツは、死体を漁り弾薬アイテムを手に入れてその場を去る。ポンズのコントローラー捌きには迷いがなく、表情には喜びも緊張もなかった。

 

「"だけ"って、こーやって念も鍛えてるじゃないすか」

「それもハンターとしてやっていく上で最低限なんでしょ? 私は今すぐデプスくんの役に立ちたいの。でも、頭ではデプスくんを頼るしかないってわかってる。だから、ワガママ」

 

 黒スーツが耐火スーツの背中を捉え、10メートル程の距離からアサルトライフルを連射する。

 振り向こうとした耐火スーツの頭部に一発が命中し、フィギュアの頭を指で弾いたように、耐火スーツが吹き飛んだ。

 デプス側の画面がまたも赤く染まり、それから両側の画面が暗くなって、試合(ゲーム)結果(リザルト)が表示された。キャラクターの体力や初期装備に大きなハンデをつけた上で、ポンズ側の圧勝だった。

 

「あー……」

 

 デプスの気の抜けた声を聞き、横顔をちらと見て、ポンズは、デプスが申し訳なく感じているのではないかと思った。

 

「そんな顔しないで」

 

 言われてデプスが見たポンズは、慈しむような笑みを浮かべていた。

 

「今こうしてデプスくんの傍にいられることに比べれば、なんでもないことなんだから」

「……」

 

 デプスは、小恥ずかしそうに一度口を開閉させた。

 

「ありがとうご――!?」

 

 それから、嬉しく思う気持ちをポンズに伝えようとしたところで、ポンズはコントローラーを置き、間を詰めて座り直して、デプスの肩を抱き、その口を塞いだ。

 デプスは急なことに驚いたものの、抵抗などはしなかった。数秒して離れたポンズは、頬を上気させ、心地よさに酔った目をしていた。

 

「……ポンズさん」

「なに?」

 

 デプスは目を伏せ、ポンズの甘い声を間近に聞きながら、ため息をついた。

 

「雑念があるみたいなんで、バッセン行きましょうか」

「えっ」

 

 酔いは一瞬で覚めた。

 

 その後、ポンズは"纏"と"練"を繰り返しながらのバッティングに明け暮れ、デプスと夜帰った頃には疲労困憊だったため、レルートにいらぬ疑いをかけられることになった。

 

 

……

 

 

 8月末。

 すでに"脱出口"が塞がれた館、ニンジン男の部屋。執務室と応接室を1つにしたような場所に、デプスを含めた5人が集まっていた。部屋にはニンジン男の他に、着物を着た若い女が2人いた。

 5人はそれぞれ課題の品をトレーに載せた。デプスが渡したのは、クラピカが約束通り余分に手に入れた物だった。

 

「OK。5人とも正式に採用だ」

 

 薄笑いを張り付けたまま、ニンジン男がデスクチェアから立ち上がる。

 

「オレが護衛団リーダーのダルツォルネ。よろしく」

 

 ダルツォルネが部屋の中を歩き、モニタが埋め込まれたテーブルへ向かうと、5人もそれに続く。

 

「さて、諸君らには早速任務についてもらう。それは、ヨークシンまでのボスのガード。無事にボスをホテルの部屋まで送ること」

 

 モニタには地図が表示され、大陸間の移動経路が示されていた。テーブルに置かれた支持棒を取り、ダルツォルネがそれをなぞる。

 

「ヨークシン郊外のリンゴーン空港まで、専用飛行船で行く。移動時間、約35時間」

 

 続いてテーブル端のボタンを押し、表示を都市内の地図に切り替えた。

 

「そこからホテルまでは専用車を使う。移動時間、約90分」

 

 背を軽く曲げ、ダルツォルネは5人の顔を見回す。

 

「新入り5人は陣形(フォーメーション)の一番外を囲む。何か質問は?」

「はい!」

 

 真っ先にデプスが元気に手を挙げると、クラピカが開けかけた口を閉じた。ダルツォルネがデプスの顔を見て、無言で先を促した。

 

「特に仮想敵がいないってことは、どんなのが来るか想像しちゃいけないってことっすか?」

 

 試験での振る舞いから質問の内容の程度を低く見積もっていたダルツォルネは、それでいい、と鼻を鳴らした。

 

「わかってないヤツがいるかもしれないから、改めて言っておこう。オレ達は"誰が、いつ、どこから、どんな方法で"襲いかかってきてもボスを守る。余計なことを考える必要のない、シンプルな任務だ」

(まあ、"騒がしいヤツ"から"扱いやすいヤツ"くらいには格上げしてやるか)

 

 その後は、センリツが一度心配そうにクラピカの顔を見上げたのみで、追加の質問は出なかった。

 

 

……

 

 

 出発から1日強が経ち、9月1日の昼。敵襲がないだけでなく、何もない時間が過ぎた。

 

 空港を出て自動車の後部座席にドンと座り込んだデプスは、携帯ゲーム機を取り出した。運転席に乗り込みながら、ヴェーゼがそれを見咎める。

 

「ちょっと、デプス?」

「なんすか」

(なによ、やっぱガキじゃない)

 

 これ見よがしに機嫌が悪そうにするデプスは、ヴェーゼにも、助手席のセンリツにも、分別のつかない子供に見えていた。

 

「それしまいなさい」

「ちゃんと結果は出すっすよ」

「しまいなさい」

「……はぁー」

 

 ヴェーゼが語気を強めると、デプスは大きなため息をついて、ゲーム機を肩掛け鞄にしまった。車が出発し、他の4台の後ろについて、空港周辺らしい開けた場所を走り出す。

 

「なにイラついてんのよ」

「煙草と本がよくて、音楽プレイヤーとゲームがダメ、って不公平っすよ。飛行船でも、端っこに1人で待機させられたんじゃお喋りもできないし。敵に殺される前に、暇に殺されそーっす」

「アンタ仕事をなんだと思ってんの」

「……」

「デプス?」

 

 バックミラー越しに見たデプスは、シートの背もたれに体重を預けて目を閉じていた。

 ダルツォルネや"ボス"が乗る中央の車両以外は特に高級でもないので、デプスが寝ているわけではないことはヴェーゼにもわかった。そして、それを"話すことはない"のポーズとして受け取った。

 

(っのガキャ……)

「ヴェーゼも落ち着いて、ね?」

「はいはい」

 

 5台の車は列を乱さず、道の先、遠くに見える大都市へ進む。

 

 それらが空気をかき混ぜて起こした砂煙よりも後ろに、同じ場所を徒歩で目指す者たちがいた。見渡す限り、他に人影はなかった。

 

「――で、集合当日になったわけだが、結局連絡はつかずじまいってか」

 

 前髪から何から後頭部で髷に結って立て、浴衣様の服に刀も佩いた、侍風のタレ目の男が言った。

 

「あいつに連絡つけられなかったのはシャルだろ。あたしが飛び回って見つけてやる義理なんてない」

 

 男と異なり袖や裾などが簡略化された和装で、前髪以外を高めにゆるく纏めたツリ目の少女が言った。

 

「でも探しはしたんだろ。ご苦労なこった」

「団長命令だったからね」

「ヒソカの野郎が全面的に悪いわけだから、マチにペナルティが降りかかるこたねェだろうが……前例がないから、どうなるやらだな」

 

 猫背で歩きながらなお2メートルを越す高さの、口の端から伸びる縫い跡が目立つ、オーバーオールに上着を羽織った大男が言った。

 縫い跡以外にも刀傷などがあり、大層な強面だが、言葉の内には気遣いがあった。

 

「アイツ。このまま戻て来なければ、除名になるか?」

 

 司祭服のようなひと繋ぎの黒服を着た、マチと呼ばれた少女より二回りは小柄な少年が言った。筒状のつけ襟が口元までを覆っていて、その声をくぐもらせていた。

 大男は、前を向いたまま頷く。

 

「かもな」

「次の4番、マシな人だといいね」

「そりゃ気が早すぎんだろ。それに、もういっこ言うことがあるぜ」

「何か?」

 

 少年に問われ、侍風の男が振り返り、ニッと笑う。

 

「アイツに殺されない程度に強くなきゃ、また交代されちまうだろ?」

「ハハハ、違いないね」

 

 ただでさえ糸のように細い目をさらに細め、少年は低く笑った。

 

 その4人の頭上、ほんの数メートルの高さに、丸い衛星が浮かんでいた。

 衛星は4人を見ていたが、その誰の目にも、衛星は映っていなかった。




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「団長、一体何する気だろ」
――幻影旅団3番、マチ

「そりゃ、ワタシ達読者。高評価入れるに決まてるね」
――幻影旅団2番、フェイタン
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