帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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 律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)の犠牲者が今なお増え続けています。
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23.雑に組まれた歯車

 ヨークシン市内の高級ホテルに到着後、ノストラード(ファミリー)護衛団は部屋にチェックインした。

 護衛対象であるボス以外に、新人5人にダルツォルネ、スクワラ、シャッチモーノ、それ以外にも以前から雇われている2人――痩せ型で頬のこけた、黒髪に太極拳服の男・リンセンと、短髪を後ろへ撫で付けた大柄の男・イワレンコフ。

 さらに、ボスの身の回りの世話をする、館ではダルツォルネの部屋にいた侍女2人。

 

 部屋は事前に予約されていて、13人(と、スクワラのペットであり念で操作する犬たち数匹)はスムーズに移動した。いくつもの部屋がドアで仕切られてあり、ホテルの一室というよりは、邸宅の1フロア分だった。

 

 一団の中心にいるボスは、少女だった。一枚布を巻いて結び、羽が生えたドングリ帽のようにしていて、一部を意図的に伸ばされ先端に丸い髪留めがついた前髪は、クラゲを被せたようであった。

 

 部屋につくと、ダルツォルネは、これまでにデプスが見なかったような、人の良さそうな笑顔を浮かべ、ボスに言う。

 

「ネオン様、あちらの部屋で少々お待ち下さい」

「早くしてね」

 

 犬たちは室内の方々へ散り、ネオンは、侍女2人を連れてドアの奥へ消えた。それを見送ると、ダルツォルネの目は鋭いものになった。絨毯だけの集会場のような部屋で、残った他の9人を見回した。

 

「まずは、到着までの護衛ご苦労。今夜の地下競売(アンダーグラウンドオークション)の始まる1時間前までは、ここで自由に過ごしてもらって構わん。

 だが、まずはそれぞれ自分の名札がかかった個室へ行き、市内の移動ルートと予備拠点となるホテルの配置を叩き込め。スクワラはオレとボスの護衛に出ろ」

「ここまでは全員で守り固めたろ。2人だけ護衛に出すので足りるのか?」

 

 バショウが尋ねた。

 

「最優先事項はボスの安全だ。互いの戦力が把握しづらい市内においては、迎撃ではなく避難をその手段とすることが多い。よって、現状ではオレ1人だ。

 無論、有事にオレが応援を要請したならば、すぐに合流してもらうがな」

「了解」

 

 他に質問がないかと各々の目を見た後、ダルツォルネはネオンの後を追って扉をくぐった。

 残ったメンバーのほとんどは、言われた通り自分の個室を探して散らばったが、イワレンコフがデプスの肩に手を置いた。この2人は互いの顔こそ任務中に見ていても、話したことはなかった。

 

「?」

「ずいぶんつまらなさそうな顔してるじゃねえか。どうしたんだ?」

 

 分厚い眉骨の下から見下ろしていたが、イワレンコフの話しかける様子は気さくだった。デプスは、手を払うように振った。

 

「いや、別に大したことじゃないっすよ。"ここから出るな"とか、"暗記しろ"とか、どの辺が自由なんだ、って」

「そう言ってやるな。ダルツォルネは誰よりもマジなんだ」

 

 イワレンコフは、ダルツォルネが潜った扉を見た。

 

「責任感が強い分、仲間も自分と同じように働かなきゃ気が済まない性質(たち)なのさ。そういう頑固なところに目をつぶれば、いいヤツだよ」

「そうなんすね。イワレンコフさんの方が頭固そうな顔っすけど」

「よせよ、オレはこう見えて繊細なんだ」

 

 そう言って肩をすくめてみせると、デプスとイワレンコフは互いに小さく笑った。

 

「大事なのはメリハリ、気を抜く時は抜くもんだ。仲良くやろうぜ」

 

 

……

 

 

 風化した道と、傷つき崩壊したビル群が全てで、たまに吹く風以外は全て黙りこくっている。そんな、"棄てられた都市"と表現するのにうってつけな郊外。

 歩く4人と、デプスの"人を観る照星(ゲイザースター)"が、その中を進んでいた。

 

 彩りをなくしてろくに見分けのつかなくなった建物たちの1つ、風雨を遮るものを失った入り口の向こうに、別の8人の男女がいた。4人がそこへ合流し、12人になった。

 

 そこは千耳会の斡旋所のようにカモフラージュされているのではなく、内部までもが本物の廃墟で、ろくに座る場所もないほどに、瓦礫やガラスが散乱していた。

 合流した4人は、先にいた集団と気心の知れた様子で、まばらに、手短に、挨拶を交わした。

 

 オールバックで額に十字架の入れ墨がある男だけが離れて立っていて、12人が揃うとすぐ、他の11人はその男に注目した。

 デプスの"人を観る照星(ゲイザースター)"は、12人全員の姿をその目に映していた。

 

「ヒソカは?」

 

 オールバックの男が問うと、マチは黙って首を横に振った。

 

「そうか……シャルナーク、頼む」

 

 シャルナークと呼ばれた金髪童顔の青年が頷き、口を開いた。

 

「ヒソカのハンター試験の結果は不合格。さらに言えば、一次試験脱落。試験内容は、地下から始まって危険地帯のヌメーレ湿原を横断する、超長距離のマラソン。当たり前だけど、オレたちやヒソカが落ちるような内容じゃない。

 不自然な点は、受験生の証言。"湿原で死にかけたと思ったら地下に戻されていた"ってヤツが、確認されてるだけでも35人いる。

 その半分くらいにはネットでコンタクトが取れたんだけど、口を揃えて"試験開始後にヒソカの姿は見てない"って言ってる。

 ハンター試験以外だと、天空闘技場の登録が抹消されてた。これまで戦闘準備期間ギリギリで出場したり、登録自体は維持するようにしてたから、これも不自然。

 改めて調べてわかったのはこれだけ」

「ヒソカが姿を消した理由。考えられる可能性は?」

「憶測でもいいの?」

「構わない」

 

 オールバックの男が頷いた。

 

「今回アイツが受験したのは、"資格があると便利"だったからって聞いてる。それって、オレの考える、気まぐれで飽きっぽいヒソカとしては、そこまで強い動機じゃない。"試験以上に興味のある何か"に惹かれて試験会場を抜け出した、って可能性は大いにある。

 天空闘技場に出場しなくなったことも含めると、戦いたいヤツを見つけて追いかけて、その後返り討ちにあって行動不能になった、ってのがわかりやすい筋だと思う。あくまで一例だけど」

「"試験官にケンカ売って殺された"ってセンは?」

 

 ここまで2人のやりとりに誰も口を挟もうとしていなかったが、貫頭衣を着た身綺麗な男が声を上げた。シャルナークは、そちらを向いた。

 

「試験官は現役のハンターなんだろ。だったらなくはないんじゃねーか?」

「確かに、ヒソカから仕掛けたなら戦いになるかもしれない。でもそれで試験官とどちらかが死ぬまで戦い続けたなら、そもそも試験自体が中止になるか、そうでなくても大きな騒ぎになってる。

 そんな話が調べて出てこなかった以上は、違うってことだね」

「……ま、実際に受験したヤツが言うならそーなんだろうな。オレはもういいぜ、団長」

 

 2人の言葉を聞いて、団長と呼ばれたオールバックの男が、11人全員に言う。

 

「オレの考えも、大体は聞いての通りだ。ヒソカに連絡がつかなかったのは、連絡不能であるから。

 だがそれは、一時的にとはいえ、ヒソカを活動中の団員としてカウントできなくなったことを意味する。これでは命令無視への罰を与えることもできないし、何より、4番の扱いを保留して、1人欠けた状態を継続させるわけにはいかない。

 よって猶予は、オレたちが地下競売(アンダーグラウンドオークション)を襲撃し、ヨークシンから全員が引き揚げるまで――」

 

 11人が、続く沙汰の言葉を待った。ほんの一拍が、長い()()に感じられた。

 

「一切の連絡がなかった場合、ヒソカは正式に除名とする……!」

 

 

……

 

 

『ヨークシンだぁ!? 何でまたオメーらみたいなお子様2人がんなとこに』

 

 久々のキルアからの電話を嬉々として取ったレオリオは、ゴンとキルアの現在地を聞いて声を裏返らせた。

 

「ゴンの親父の手がかりがかかってて、とにかく金が要るんだよ」

『手がかり?』

「グリードアイランドってゲーム。"ゴンがハンターになったら"って渡された箱に、セーブデータだけ入ってたんだ。そのソフトがヨークシンで競売にかけられるらしい」

『ほうほう、絶版のレアなゲームソフトね。相場と予算は?』

 

 ホテルのシングルルームで、キルアが押し黙った。どうかしたのかと隣のゴンが視線を向けてきたので、ええい、と口を開く。

 

「……最低落札価格89億、持ち金は500万ちょっと」

『はちじゅうきゅうおくだぁ!?』

 

 レオリオの声が再び裏返り、そのうるささにキルアがぎゅっと片目をつぶった。

 

『ライセンス売ったって全ッ然届かねーじゃねーか! どーしろってんだそんなモン』

「だからレオリオの知恵を借りたいんだよ、金の話ならクラピカよりお前の方が適役だろ?」

『む……』

(あれ、さっきクラピカは"ちょうどデプスとヨークシンにはいるけど、仕事中だから手伝えない"って……)

 

 キルアの言い草に、ゴンは、レオリオの前に行われた通話を思い返した。

 

『次のチャンスがあるかどうかもわからない以上、やれることは全部やっときたいんだ。頼むよ』

「そうだな。もう真っ当に品物転がして稼ぐ方法じゃ間に合わねえだろうし……」

 

 レオリオの唸る声が、電話越しにキルアまで聞こえた。その声が、"ん?"と跳ねた。

 

『待てよ、500万? お前ら確か、"天空闘技場行く"っつってたよな? 2人分のファイトマネーならもうちょっとあるんじゃねーのか?』

「……増やそうとしてスった」

『はぁ~~~~』

 

 食い気味にため息を被せられ、キルアがイラつきを顔に出した。それが見えるはずもないレオリオが、わざとらしく偉ぶるように言う。

 

『子供がそんな大金をむやみに扱うんじゃありません。オレが行くまで余計なことはしないことだね』

「来るのか?」

『行かねー理由があるか?』

 

 互いが、電話口でニッと笑った。

 

「ヨークシンのオークションが終わるまでがタイムリミットになる。急いで来てくれよ」

『おうよ。移動に丸一日くれーかかるから、その間は電話で作戦会議だ。ここからは3人で検索(めく)りながら策を探すぞ』

「ああ!」

 

 レオリオが電話を切り、キルアが携帯電話を耳元から離すと、ゴンがすぐに身を乗り出した。

 

「来るって?」

「ああ。金策は仕切り直し、レオリオと相談してやる」

 

 キルアは、部屋の端に置かれていた自分のリュックサックを掴み上げた。

 

「行くぜ、ゴン」

「うん!」




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