帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾 作:これからはずっと一緒だよ
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夜、ホテル。
ダルツォルネは、腕時計で時刻を確認した。海外に出ているライト=ノストラードに連絡を取るにあたり、事前に決めた時間帯だった。
半開きの扉を挟んだ向こうでは、護衛対象のネオンが侍女2人とカードで遊んでいて、その声がダルツォルネの耳まではっきり届いていた。
ホテル備え付けの電話に番号を打ち込み、受話器を取ると、ダルツォルネは定型の挨拶をして、座った横に置いていた何枚かの紙を取り上げた。
紙には人名と生年月日、血液型が書かれていて、その下には4行1段落の詩が最大で5段落まで書かれていた。詩はいずれも同じ筆跡だが、プロフィール部分はどれもバラバラで、かつ詩と異なっていた。
そして、いずれの詩も、第1段落は全く同じ内容だった。
ダルツォルネは、電話口でそれを読み上げる。
天を焦がす花火は始まりにすぎず
這い伸びる影を追えばあなたが照らされる
輝きに目を眩ませてはいけない
それを抱いて眠ることさえ叶わないのだから
「……これが最初の4行です。このくだりから始まる詩が、他に3篇。つまり、4人の顧客に同じ占いの結果が出たのです。その4人の共通点は、今年の地下競売に参加する予定があるということです」
『地下競売に出ると命が危ない、という占いか……』
「おそらく」
ダルツォルネは紙を脇に置き、右手の受話器を握り直した。
「今までのデータからみても、眠ることに関する言葉は病や死の暗示です」
『わかった。占いはそのまま早急に顧客へ送信しろ、警告も忘れるな』
「はい。もう1つ気になることが……」
ダルツォルネは扉の向こうをちらと見た。ネオンは、ダルツォルネの話し声はおろか、そもそも何をしているかも知らない様子だった。競売がじき始まることへの期待で、侍女たちに向けられる表情は明るくなっていた。
「お嬢様は、自分が占った内容を知りませんし、自分自身の未来を占うことも出来ません。お嬢様を地下競売に参加させてもいいのでしょうか?」
『ダメだ!! 今すぐにでも連れ戻せ!!』
「しかし、お嬢様は今回の競売を大変楽しみにしておられます」
ネオンとライトはいずれも顧客であるため、こうして意向が対立してしまったことへの焦りで、ダルツォルネの口の回りはにわかに速くなっていく。
「下手な説得は逆効果になります。お嬢様が本気で怒ったら我々では手に負えませんよ」
『……』
朝早く静かな向こうから、息を吸い、そして吐く音が聞こえた。
『よし。とにかく、ネオンを会場には連れて行くな! ネオンが欲しがるモノは金を惜しまず手に入れろ。競売は、お前達だけで、落札するんだ!』
ライトが念を押すように言い、ダルツォルネはひとり瞑目した。
……
事前通達より早く、ダルツォルネからデプスたちへの集合の指示が出た。最初にクラピカがやってくるまでに、ダルツォルネは部屋の1つを片付け、壁に向けてプロジェクターを置いていた。プロジェクターは無信号で、真っ青な画面を映していた。
ダルツォルネ含めた10人全員が集まった時、イワレンコフ、シャッチモーノ、ヴェーゼの3人だけは、それぞれ黒のスーツやドレスを身に着けていた。
「早速次の仕事だ。地下競売で次に述べる品物を競り落とす。金に糸目はつけない、必ず手に入れる」
ライトとネオンの板挟みになっていた時の様子は微塵も見せず、ダルツォルネは淡々と品目を挙げていき、プロジェクターを操作してその写真を白い壁に映した。
緋の眼が挙がった時、デプスは目だけ動かしてクラピカを見たが、挙げられたことへの反応は見つからなかった。よく澄ました顔でいられるな、と思った。
目標の列挙が終わった後、ダルツォルネは壁から護衛団メンバーへと視線を移した。
「一つ!! 何者かが地下競売を襲うという
内心、それは行き当たりばったりだろう、とデプスが呆れていると、ダルツォルネは、礼服の3人が競売参加要員であると伝えた。
デプスは、聞き流しかけたところで慌てて手を挙げた。ダルツォルネがデプスを見る目は、平静そのものだった。
「何だ」
「競売担当変えて欲しいっす」
「ダメだ」
ダルツォルネは、プロジェクターを置いたテーブルに両手をついて続ける。
「訊かれる前に答えてやるが、このオークションにおいて、
お前は前者の意味合いで不適格。どんなに利口にしていようと、子供というだけで、組の品位が疑われるんだ」
「ありゃ……」
地下競売は実際に襲われ、一人残らず幻影旅団に殺される。だから自分が行って助けてやる。そういう心積もりでいたデプスは、出鼻をくじかれ、小さく仰け反った。それを見たヴェーゼが鼻を鳴らした。
「っす、了解」
「デプスはバショウ・リンセンと組み、セメタリービル裏口側の監視だ。正面口側はクラピカ・センリツが担当となる。
マフィアンコミュニティー専属の警備員以外は会場から最低500メートル離れなければならないため、それぞれ、組が所有する物件へ向かってもらう。屋上から入場口を監視し、オレからの定期連絡にはかならず応じるように。
スクワラとオレはここでボスの護衛を継続、競売に参加する3人は……」
武器の携帯禁止や他の組と関わらないことなど、補足事項を3人に言い含め、理解したなと目で確認した後、ダルツォルネはテーブルから手を離して背を伸ばし、宣言する。
「それでは、任務開始!!」
監視担当・競売担当の8人が出ていった後、ダルツォルネはため息をつき、それがスクワラの目についた。まさか、と思い、声をかける。
「お前、まだ言ってなかったのか?」
「……ああ」
ネオンがここへ来た最大の目的である、年に一度の大競売。その1日分を潰す、と告げること。そして、その後に待っているであろう、ネオンの威力を伴う破壊力癇癪を思い、ダルツォルネは項垂れた。
とばっちりを食うのを恐れ、スクワラは何も言わずに所定の位置へ向かった。
それから数分後、扉を貫き廊下を走るネオンの喚き声が、配置についたスクワラやその犬たちの頭を揺らした。
ダルツォルネは抵抗するわけにもいかず、ネオンが暴れ疲れて眠るまで一身に怒りを受け止め、ネオンが投げた椅子や絵画の直撃をも食らった後、侍女の手を借りて、荒らされた部屋の後始末をした。
それを材料に、ライトへ合流を要請したが、散々渋られ、結局跳ね除けられた。踏んだり蹴ったりであった。
……
ノストラード組が所有する、
バショウ・リンセン・デプスは、建物の中にあったパイプ椅子を持ち出し、双眼鏡片手にセメタリービルを向いて座っていた。
「手柄が挙げてえのか?」
「え?」
問いの意図がわからず、デプスは、リンセンを挟んでさらに左向こうに座っているバショウの方を見た。
「自分から進んで競売担当に出ようとしたろ。監視なら、何もない限り座ってくっちゃべってるだけでいいのによ」
「でも暇じゃないすか」
デプスの足下から、不可視のオーラが広がりだした。"円"はビルを伝って降りていき、正円に範囲を広げていく。そのペースに合わせて、"
「何だ、スリルを求めてマフィアの仕事を請けたのか?」
「別にそんなこと考えてないっすよ。待つだけってのがシンプルに暇でイヤなだけっす」
「釣りとか嫌いか?」
「そういうのとはまた別問題っすよ」
デプスの拡張感覚はセメタリービルへ到達し、"
ビルの地下にある、式典や立食会などを行える舞台つきホールに向かうと、運営――マフィアンコミュニティー側らしき人員がまばらに動き回っているのみで、ほとんど無人だった。
マフィアたちを皆殺しにする2人、フェイタンとフランクリンは今どこの辺りにいるのだろう、と思ったところで、デプスの"円"がセメタリービルの内外全てに行き渡った。
(はぁ!?)
デプスは、そこにある念能力者たちの気配に困惑の声を上げそうになった。
(屋上に1人、下りるエレベーターに1人、ロビーに……5人!?)
最強念能力者の"円"の感度は絶対。捉えたのはいずれも幻影旅団に間違いなく、デプスはそれら1人1人が誰なのかも識別できた。ただ、うろ覚えの記憶との齟齬に、しばし混乱した。
デプスの想定では、襲撃者は会場内のフェイタンとフランクリン、そして会場の外の眼鏡の少女、シズクの3人だった。
実際、デプスの見た紙面上でマフィアたちを血祭りに上げたのはその3人だったが、その後セメタリービルから脱出したのが7人であったことは、すっかり抜け落ちていた。
(どーしよ、ここからでも"
バショウとリンセンの目があるため、"
(マフィアの人たちの今後のためにも、襲撃自体はやってもらって、危機感を煽って欲しい。だから"
んで、幻影旅団もヒソカやイルミとは違ってまだ人の心があるっぽいから、ここでサクッと行くのは違うし……)
「あー……」
降って湧いた難局に、デプスは空を仰ぎ、口を半開きにして唸った。それを退屈から来るものととったリンセンは、顔をしかめていた。
「真面目にやれよ」
「競売が始まるまであとどのくらいっすかね」
「12分だ。そこからは会場周辺はさっぱり人がいなくなる」
「了解っす」
閉じた目に双眼鏡を当て、デプスは思索を巡らせた。
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「お嬢様は速筆ではありませんし、土壇場ですぐ展開を修正することもできません」
「お嬢様に毎日投稿が出来るのでしょうか?」
――中間管理職、ダルツォルネ
「ムリだ!! 既に3日空いている!!」
――組長、ノストラード