帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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 誤字報告・(一言つき)高評価・感想下さった方々、ありがとうございます。1ヶ所除きその辺はそのままで大丈夫です。
 あと、一言の方で長めの感想を下さった方、ありがとうございます。一言の方だときちんとしたお返事は(長くなるので)出来かねますが、仰りたいことは伝わっております。

 律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)の被害者が今なお増え続けています。
 命には換えられません。アンケートに投票した方は、至急高評価をよろしくお願いします。
 できれば感想もください。


25.雑な排除

 都市ヨークシンの夜景の中で一際高く、そして幅広。墓石たちの主のようにしてあるセメタリービル。まばらにやってきた黒服たちの流れは止み、前後ともに出入り口は静かになっていた。

 1階ロビーから地下のロビー、そして扉を隔てた会場にかけて、競売に参加しに来た数百人の黒服たちがいた。世界中のマフィア、その代表者たちということもあり、それぞれ外部の者と話そうとはしていなかった。

 

 競売の開始時刻が近づき、会場の外に残っていた黒服たちが、誰からともなく下へ内へと進み始めた。シャッチモーノたち、ノストラード(ファミリー)の3名も、その流れの中にいた。

 

「デプスが来なかったのは正解だったな。こうも立ちんぼで待たされたんじゃ、落ち着かなかったろう」

「あいつ、自信過剰のケがあるんじゃない? プロハンターでちょっと強いからって、大人に対する口の利き方がなってないわ」

 

 腕時計を見て言ったイワレンコフの後に、ヴェーゼがそう続けた。イワレンコフは、その言い草を特に咎める素振りもなく返す。

 

「こういう仕事にゃ向いてない、ってとこには同感だな。オレもホテルでちょっと話してみたが、年の近いクラピカと違って、良くも悪くも見た目相応の子供という印象を受けた」

「厳しい評価だなァ。初仕事だぜ?」

 

 古株仲間の言葉に、シャッチモーノが大げさに反応した。

 

「あ、いや。フォローのつもりだったんだが……」

 

 (いかめ)しい漆塗りの扉を潜ると、ホールには所狭しと座椅子が並べられており、そのほとんどを黒服が埋めていた。舞台にはスクリーンとプロジェクターがあり、脇の方に進行役用の演説台があった。

 先程までいたロビーと様子はさほど変わらず、人数の割にはざわめきも小さかったが、定刻が近づくとそれも自然と薄れ、そして無音になった。

 

 演説台がある方の舞台裏から、背の低い細目の少年と、その倍近い体躯の大男が現れた。少年は演説台に手をつき、その後ろの大男はボディーガード然として神妙に立った。

 いずれも、競売客と同じように黒のスーツを身に着けていたが、珍しい子供と、大男の顔の傷や縫い跡だらけの顔は、それぞれ視線を集めた。

 

『皆様、ようこそお集まりいただきました』

 

 演説台に手をついた少年の挨拶が、マイクを通して会場内のスピーカーから響く。

 

『それでは、堅苦しい挨拶は抜きにして』

 

 大男――フランクリンが、獰猛な笑みを浮かべ、両肘を曲げて指先を前に向けた。すると10本の指がそれぞれ第1関節で外れ、指の脇の短い鎖に垂れ下がる。

 

『くたばるといいね』

 

 裏社会に長く身を置いてきた競売客に、その一言に呆然とする顔はなかった。堂々と大男を見据える者、怒りの形相で勢いよく立ち上がる者、仲間を守ろうと前に出る者など、三者三様の反応を即座に見せていた。

 

 フランクリンの体にオーラが充満し、それが指先に流れ込んで爆発する、その瞬間。不可視の帯が両手を捕え、天井の方へと引っ張り上げた。

 

「!」

 

 笑みを驚きに変え、手に追従するように視線を上げたフランクリンだが、能力の発動は止めなかった。

 

 10指10連装の俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)。連射される念弾は手を引かれるにつれ仰角を大きくし、スプレーで塗りつぶすようにコンクリートの天井へ尾を引いて飛んだ。

 それが見えたのはその場にいる数少ない念能力者のみだったが、耕されて崩れた天井から落ちてくる、砂粒から人の頭ほどまで大小様々の瓦礫は、その限りではなかった。

 

 ドスの利いた悲鳴や怒号がにわかに湧き立ち、黒服たちは頭を庇いながら会場の外へと逃げ出した。念弾が見えている者たちも、その威力を察して退却を選択していた。

 蹴破られた扉をくぐりながら、遅れずついてきた2人の姿をひと目だけ確認し、シャッチモーノが指示を飛ばす。

 

「会場を出て全員散開! とにかく離れて、リーダーに連絡を取るんだ!」

 

 マラソン会場のように誰も彼もが1点を目指して走っていく一方で、フランクリンは謎の力を振り切ろうと手に力を込めていたが、浮き上がった手は降りなかった。

 フランクリンが視線を下ろすと、その両手に挟まれるようにして立っているフェイタンも動いていなかった。

 

「お前もか!?」

「……」

 

 フェイタンが青筋を浮かせ、"練"でオーラを増大させてなお、その拘束は引き剥がせず、両足は石の中に塗り込められたように動かなくなっていた。

 

 マフィアたちはホールからすっかり姿を消し、フランクリンは射撃を止めた、群れの吠え声が僅かに聞こえるのみとなった頃。フランクリンの懐から着信音が鳴った。

 途端、それに合わせたように、2人にかけられていた見えない枷が外れた。舌打ちしたフェイタンが会場の外を指さしながらフランクリンを見上げたが、フランクリンは首を横に振ってから電話に出た。

 発信者は、団長のクロロ=ルシルフルだった。

 

『フランクリン、フェイタンはそこにいるか?』

「ああ」

『シズク含む5人がアジトに飛ばされた。お前達はすぐに屋上の気球を使って戻れ』

「どういう……って訊いてる暇はねえわな。こっちも緊急事態だ」

 

 顎でホールの出口を指して促し、携帯電話を耳に当てたままフランクリンが走り出した。フェイタンも、その後ろに続いた。

 

「オレ達を足止めした奴がいる。反撃は食ってねえが、恐らく手練だ」

 

 

……

 

 

 ダークスーツの群れがセメタリービル入り口から蜘蛛の子を散らすように湧き出たのを、正面口・裏口を見張っていた2つの班がそれぞれ目撃していた。

 ビル屋上でバショウが双眼鏡で引き続き様子を見ており、リンセンはダルツォルネからかかってきた通話を切った。

 

「指示があった。デプス、バショウ、ホテルに戻るぞ」

「なに?」

「えっ?」

 

 双眼鏡を下ろしたバショウと、左手をズボンのポケットに突っ込んだデプスが振り返ると、リンセンは冷や汗を滲ませていた。

 

「襲撃だ。それも、強力な念能力者による……!」

 

 バショウに続き、デプスはポケットの中の4つの"離送橋(ポートピア)"を消して立ち上がった。

 

 

……

 

 

 襲撃から30分近くが経過。

 会場の様子を伺いに出たクラピカとセンリツが戻り、護衛団全員がブリーフィングを行っていた部屋に集まった。

 

「会場には既に、マフィアンコミュニティーの人間と入れ替わった賊がいた。1人は大柄で顔にいくつも傷がある男。放出系、両手の指から高威力の念弾を連射する能力者だ。もう1人背の低い男がいるが、そちらの詳細は不明。大男の方は牽制射撃で会場の天井を崩している」

 

 確かめるようにシャッチモーノの顔を見ると、シャッチモーノは頷いた。競売担当の3人は、汗こそかいているものの、既に落ち着いた様子だった。

 

「クラピカ、報告を」

 

 名指しされたクラピカに視線が集まる。

 

「そもそも念を理解している者が見当たらなかったが、それ以外は他の組の連中も同様の認識だ。また、競売参加者は多少怪我人こそ出たが死人はなし。ビル内に残っていたそれ以外の人間も全員無事。

 競売品だけが消えていたが、それについては十老頭が移したらしいという情報が出ている」

「"らしい"?」

「誰も正式な通達を受けていないようだった。ビル内に残っていたオークショニアの証言で、"数時間前に陰獣の1人が来て、金庫の中にあった競売品を別の場所に移した"という話が出ている」

「陰獣……十老頭お抱えの、組織最強の念能力者たちか」

 

 ダルツォルネには心当たりがあった。ネオンを贔屓にする顧客には、十老頭――10大マフィアの長たち、その一部も含まれている。恐らく予言を受けて判断を下した十老頭がいたという推測ができていた。

 

「他には?」

「競売品が無事なのかどうか、そして賊を追うか十老頭の判断を待つかで現場が混乱していた。

 我々同様、各々の組で話し合ってからの行動にはなるだろうが、会場で起きたことを爆弾などの仕込みだと勘違いしている連中も少なくないようだった」

「オレたちはどうする?」

 

 バショウが言うと、ダルツォルネは一拍置いてシャッチモーノを見た。

 

「もう一度確認するが、奴らは天井を撃ったんだな?」

「? ああ。オレにはそう見えたし、事実瓦礫がドカドカ落ちてきたが」

「……」

 

 ライトに報告した予言、その第1段落の文面が、ダルツォルネの脳裏によぎった。

 

「……しばらくここで待機していろ。すぐに戻る。勝手な行動は絶対にするな」

 

 強く念を押すと、ダルツォルネは自身の個室へ移動し、ライトに電話をかけた。予言のことを共有しているライトはすぐに電話に出て、ダルツォルネから襲撃についてひと通り説明を受けた。

 

『……最低でも1人が、お前より強力な念能力者。そして、賊集団の正確な規模は不明か』

「申し訳ありません。シャッチモーノが実際に見ての評価なので、残念ながら正しいでしょう。我々が束になっても敵わない相手です」

 

 ダルツォルネは自分の言葉を正論と認めつつ、その内容への苛立ちから、テーブルの上、電話機の側で拳を握っていた。

 

「何分まだ状況が不透明ですが、本当に十老頭が競売品を移し、今後の対応を考えているとすれば、競売は明日から再開可能かもしれません。

 問題はお伝えした予言の出だし、"天を焦がす花火"が、賊による天井の破壊を指しているのではないかということです。"這い伸びる影"が賊だとすると、それを追う者は"照らされる"ことになると」

『直接お前達に出た内容ではないが、その予言はオークションの顧客のいずれにも出ていた。"照らす"というのが"花火"にかかっているとすれば、確実に攻撃に晒されるという意味になる。

 お前達はネオンの護衛に徹しつつ、十老頭や他の組の動向を追え。逆に言えば、自ら追わなければ危険はないはずだからな』

「了解しました。オークションについて、お嬢様への説明はいかが致しましょうか?」

『お前に任せる。とにかく、ネオンから目を離すな。ネオンの安全を最優先しろ』

「……はっ」

 

 受話器を置き、ダルツォルネはライトの沙汰にため息をつきながら、その口ぶりにどこか、言い知れぬ違和感を覚えていた。




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「"縁の下の11人(イレブンブラックチルドレン)"!」
――12の盾、シャッチモーノ
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