帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾   作:これからはずっと一緒だよ

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 誤字報告・(一言つき)高評価・感想下さった方々、ありがとうございます。この作品で赤ゲージを見られる日が来るとは……いや行ったり来たりしてますが……

 ところで、最近、一言ではない一言つきの高評価をいただくことがあるのですが、返事ができないのがとてももどかしいので、一言を超える場合、できれば感想欄にいただけると嬉しいです。匿名OK設定ですので……


27.雑菌に冒されゆくもの

「納得いかねェな」

 

 ウボォーギンが部屋の入口横の壁に拳を叩きつけ、新たにヒビが入った。

 デプスが去ってから、団長のクロロが次の決定を下すまでに、1分もかからなかった。ウボォーギンが今睨みつけているのは、そのクロロだった。

 

「ヨークシンから手を引いて、この念を外すのに除念師を探す? そいつが見つかんのはいつだ。1年後か? 5年後か? それとも10年か? それまでずっとコソコソやるってのかよ? そんなモンはオレ達の旅団じゃねえだろうが」

「ウボォーギンと同意見の奴は手を挙げろ」

 

 クロロの号令で、5人が手を挙げた。座って腕組みしたままのフィンクスが、げっ、と声を洩らす。

 

「ノブとフェイはともかく、シャルまでそっち側かよ!? 仕返しのチャンスなんざ、後でいくらでも巡ってくるだろーがよ!」

「全員が念能力を失うのは、いくらなんでも致命的なイレギュラーだ。現状、あっちはオレたちの念を封印しただけで、すぐにマフィアや警察に引き渡す素振りは見せなかった。敵対しちゃって交渉の余地が完全に失われてる、ってわけでもないみたいだろ?

 なら、アテもなく除念師を探すより先に、あいつに解除させられないか掛け合うべきだと思う。リスクを重く見るにしても、交渉のテーブルにつく人員を絞ればいい。そういう意味で、団長の判断にはすぐには賛成できない」

「オレだって、喧嘩しに行こうとは思ってねえぜ。奴らの目的が陰獣のサポートだってのも、現状は当て推量だしな。まずは話をしてからでも遅くねえ。シャル以外の3人がどうかは知らねーが」

 

 ノブナガはそう言ってから、フェイタンと、全身に包帯を巻いた男、そしてマチに目を向けた。

 

「時間をかけて除念師を探すのがイヤってわけじゃないけど、その間に大損害を被るかもしれないだろ。そこそこの念能力者に目ェつけられた時点で、何人かはやられるし、そこに団長が含まれる可能性もある。それは許容できない。それに、アイツは旅団に強い害意は持ってないと思う」

「勘か?」

「そうだよ」

 

 そう即答するのを聞いて、フランクリンとフィンクスが同時にため息をついた。ノブナガが得意げな表情で顎髭を撫でる。

 

「聞いたろ、マチがそう言うんならますます見込みがあるじゃねーか」

「下っ端ならグループ全体の考えは別だろうが」

 

 フランクリンが呆れて言った。

 

「フェイタン、ボノレノフ。お前らも手を挙げた理由を言え」

 

 マチの発言後、フェイタンと包帯男がまだ無言を貫いているのを見て、クロロが声をかけた。

 

「このまま退くなら、旅団なくなたも同然ね。誰も念使えない旅団が旅団か?」

「オレは大体ノブナガと同意見だ。奴の真意を確かめたい」

 

 促され、フェイタンが先に言い、包帯男のボノレノフもその後に続いた。手を挙げた5人の言葉を受けて、ウボォーギンが拳を振り上げる。

 

「なにィーー!? お前ら揃いも揃って、んな眠てーこと言うのかよ!!」

「お前のムチャをフォローしてやってんだろーが! 状況考えろアホ!」

「待てよ」

「あ?」

 

 怒鳴り返したところでフィンクスに呼びかけられ、ノブナガが振り返った。

 

「フォローも何もねーよ。これは団長命令で、それに背くのは掟違反だろうが」

「だが、シャルやマチが言うことも道理だぜ。旅団(クモ)のためのベストはすぐに動くことだ。1人でも解除できれば御の字、退くかどうか決めるのはその後でいい」

「それを決めるのはテメエじゃ――」

「フィンクス、ノブナガ、黙れ」

 

 言い合いに一言差し込まれて、2人は揃ってクロロの方を見た。

 

「最初に言った通り、幻影旅団が一気に全滅するリスクを避けるには、地下競売への襲撃含む派手な活動は一時控え、除念師を探して戦力を取り戻すことが最も確実だ。一応意見は聞いてみたが、やはりオレの判断は変わらない。だが」

 

 クロロがウボォーギンに視線を向ける。

 

「ウボォーギン。仮にオレがこのまま譲らなかったら、お前はどうする?」

「すぐにでもここをおん出て、あいつを締め上げる」

「だそうだ。そして、残念ながらそれを止める方法はない。揃って念を封じられた今ではな」

「なっ……」

 

 堂々と命令無視を宣言するウボォーギンと、それを半ば容認するようなクロロの言い草に、フィンクスは絶句した。10年以上ルールの絶対遵守を貫いてきた組織では、考えられないことだった。

 

「お前らが出ていく前に、オレの考えを伝えておく。まず、シャルナーク。お前の裁量で最善を尽くせ。もし奴らと敵対するようなことがあれば、オレたち6人に連絡を回し、そして時間を稼げ。定期連絡はいつも通りだ」

「了解」

 

 クロロは言外に、6人が逃げるために6人で囮になれと言っていたが、この場にいる全員が、それを理解した上で何も言わなかった。生まれ育ちなどの理由から、いずれも常人離れした死生観に行き着いていたからだった。

 

「敵の行動方針は不明、規模は最低でも10人、多ければ30人以上。集団全体の機動力を考えると、人数が少ないほど危険だ。オレたちの能力を封じた能力のルールはまだ想像もつかないが、少なくともキーはボスが握っているだろう。

 デプスが1人で使っている可能性もなくはないが、セメタリービルで使われた瞬間移動や、攻撃を中継するような別の能力と組み合わせた、遠隔攻撃であると考えた方が自然だ。

 1人で来た辺り、奴自身は直接戦闘タイプで、窓口や斥候のような役割を任されている。これも推測でしかないが、どのみち早まって手を出すのが危険なのには変わらない」

 

 つらつらと述べるにつれ、ウボォーギンの表情が苦々しいものへと変わっていき、挙手した団員たちがその周囲へと集まっていった。そこに混じったシャルナークが、クロロに向かって振り返る。

 

「アジトは?」

「もちろん放棄だ。監視されている可能性がある以上、オレ含む残り6人もバラバラに身を隠す。そっちが出た後、時間差でな」

「了解。それじゃ、善は急げで」

 

 シャルナークを先頭に、6人がアジトから出ていく。

 

「ウボォー、話聞いてた?」

「早まるなってんだろ。わーってるよ」

 

 最後に、後頭部を掻くウボォーギンの姿が見えなくなり、廊下を反響する話し声も聞こえなくなってから、フランクリンがクロロに言う。

 

「ホントに抑えに行かねえのか?」

「実際にこうして分裂が起きているのに、意見が対立しているオレたちが後から行って抑えられるか? オレは"全滅のリスクを避ける"と言ったはずだぞ」

「なるほど、火に油を注ぐかもってことか」

 

 納得した様子で、フランクリンが頷いた。

 

「まあ、シャルナークを筆頭に、あのメンバーになったのは幸運だったな」

「あっちの中でフェイタンは顔を見られてるけど、背が低い分フランクリンと違って目立たないしね」

 

 跳ね気味の黒髪に眼鏡の少女、シズクがそう言うと、フランクリンは疲れた顔を向けた。フィンクスが呟く。

 

「双方に失礼だなオイ……」

「え、なんで?」

 

 

……

 

 

 ヨークシンのホテル、ノストラード組の部屋。デプスが一度トイレに立ち、それからさらに数分の後、ダルツォルネが戻ると、楽にしていた各々が居住まいを正した。

 

「十老頭から連絡があった。襲撃は賊による挑発行為とし、明日からは陰獣がスタンバイするらしい。直接の手出しをしないという条件で、賊の情報には報酬を出すとのことだったが、オレ達は一切追わない。最優先事項はボスの安全! そこは動かないと理解しておけ。また、明日以降は警備が更に厳重になり、セメタリービル周囲に検問も設けられるとのことだ」

「地下競売は続行するということか?」

 

 クラピカが問うと、ダルツォルネは首肯した。

 

「そうだ。日程を1日ずらし、明日明後日で行う予定となる。武器の携帯が許可され、各所に監視カメラを取り付けた上でな。オレたちは昼から夜にかけてボスの護衛と、地下競売の参加、及びセメタリービルへの見張りを継続する」

「同じかそれ以上の力量の念能力者が本気で襲撃を仕掛けてきた場合、競売参加メンバーも同様では戦力に不安があるのではないか?」

「その疑問は尤もだ。そこで、デプスに行ってもらう」

「へっ?」

「子供はダメなんじゃなかったのかよ?」

 

 デプスは話をテキトーに聞き流すつもりで、幻影旅団のメンバーのうち3人にそれぞれつけた"人を観る照星(ゲイザースター)"の視界に意識を向けていた。そこで突然名前が挙がったので、素っ頓狂な声が出た。代わりをするように、バショウが疑問を口にした。

 

「実際に襲撃のあった今、"競売参加役は最も危険に対処できる人員で"というのは各組の共通認識になっているはずだ。盾を使う念能力者であり、かつ配置換えを希望したデプスなら、本人含め文句はないと思うが」

 

 試すように、ダルツォルネが細い目をデプスに向けた。デプスは親指を立て、笑って返す。

 

「了解っす」

「よろしい。競売時の配置は、デプスとヴェーゼを入れ換える。あと1人、自薦があればイワレンコフと交代させるが、申し出る者はいるか?」

「私が行く」

 

 間を置かず、クラピカが挙手して言った。またも、ダルツォルネが試すような目を向ける。

 

「自信があるのか?」

「そう取ってもらって構わない。少なくとも、無様な失敗はしない」

 

 クラピカがその目を真っ直ぐ見返して言うと、ダルツォルネはフッと笑った。

 

「ならいい。望み通り、正面口監視をイワレンコフに替われ。他に希望者はいないか?」

 

 数秒待ち、ダルツォルネの問いかけに応える者はいなかった。

 

「では、決定だ。競売時間外、ホテル滞在中及びボスの外出時に関して、それぞれ護衛配置等に変更はない。以後、夜間ローテーションに従って各自休息を取れ」

 

 ダルツォルネを含めた全員が解散していき、その過半数は自分の個室に向かう中で、クラピカの肩を叩くものがあった。振り向くと、イワレンコフだった。

 

「なんだ?」

 

 イワレンコフは、デプスがさっさと自室に入ったのを確認してから、ためらいがちに口を開く。

 

「さっきのことだ。実際に奴らの力を見てビビっちまって、それですぐには言い出せなかったんだが……気を遣わせたのかと思ってよ」

「関係ないな。競売参加は私の意思だ」

 

 ピシャリと言い切るなり、クラピカも自室に入り、音を立てて扉の鍵を締めた。

 

「……」

 

 デプスとのあまりの違いに、イワレンコフは、それ以上何も言えなかった。




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「メリットを考えろ。マフィアに作品を宣伝すれば"そいつ"は何を得られるんだ?」
「UAか? 高評価か? お気に入りか?」
「それで嬉しいと思えないような奴が、オレ達の中に本当にいるのか?」
――哲学者、クロロ=ルシルフル
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