帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾 作:これからはずっと一緒だよ
しかしどういうわけか、お気に入り件数と高評価数は離れるばかりです。
なぜでしょうか……
9月3日、朝。
シャルナークはホテルに取った部屋から、クロロに電話をかけていた。部屋はダブルルームで、2つのベッドに、向かい合うようにして、シャルナークとノブナガが腰掛けていた。
「――というわけで、今のところ全員無事。ついでにオレは念能力が戻ってきた。縛りもついちゃったけど」
『状況はわかった。しかし、なぜ最初に連絡するのがオレなんだ?』
「パク、コル、シズクの解除を頼むつもりなんだけど、本人たちの説得が問題でさ。
シャルナークは、深夜にあったことを全てクロロに話していた。デプスに口止めされていなかったからというのもあるが、クロロとの意思疎通なしで状況を進展させる見込みがないというのも、同じくらい強い動機だった。
『確認するが、安全なのか?』
「ああ。裏はなさそうっていうのが、オレたちの考えだ。旅団を消そうって結論は持ってない辺り、徹底して、より多くを生かすことが最優先事項なんだろうね。わけわかんないけど、"盗むな"とは言われてないから、解除して損はないと思うよ」
『いいだろう。3人にはオレから伝えておく』
「了解」
シャルナークが電話を切る前、クロロが"だが"と付け加える。
『あくまでお前たちは旅団内でオレと対立中だということを忘れるな』
「……それも了解」
(マチの方がよっぽど先走ったのに)
今度こそ電話を切ると、シャルナークは携帯電話をベッドの上に放り落とし、ため息をついた。
「あーあ、気が重いなー。根に持たれたらどーしよ」
「なんだ今更。抜けてきたことで怒られでもしたのか?」
「当たらずも遠からず」
「だがよォ、お前もオレらを心配して制裁覚悟で出てきてくれたんだろ?」
真っ向からそう言われて、シャルナークは一瞬言葉を詰まらせ、口を開閉させた。
「……ま、半分はそうかな」
シャルナークが口を尖らせるのを見て、ノブナガがニヤリと笑った。
「照れんなって」
「照れてない!」
「くっくっくっくっ」
会話を拒むように顔を押さえ、シャルナークが仰向けに倒れた。
「しかし、フリーのソロじゃないのがちと残念だったな。多少動けて能力が強いとくりゃあ、ヒソカの後釜にピッタリだったろうに」
「あいつが団長の言う事聞くわけないでしょ」
仰向けのまま、天井に向かって声を投げかける。
「そりゃヒソカもそう変わんなかったろ? 同じきかん坊でも、気色悪いのと元気なのとじゃあいつの方がずっとマシだぜ」
「マシとかって問題じゃないでしょ……」
……
ヨークシン、値札競売市。
鑑定所や業者市会場など、オークション向けの施設が多く集まる場所が指定区域とされ、通路や広場には屋台や露天が所狭しと並んでいた。
出店者が一般人であることも含め、パッと見は蚤の市のようであるが、値札に定額ではなく入札額の書き込みがなされている点が異なっていた。
その蚤の市の一角、営業妨害にならない植え込み脇で、キルアがレオリオからの電話を取った。
『ヨークシンで急増した人探しのネット懸賞、まだ終わってねーな。キルアの言ってた通り無理筋か』
レオリオが飛行船内のパソコンから見ている、何十件もの人探しの依頼。その全てがヨークシンのもので、いずれも同一の特徴が目印とされていた。その特徴は、フランクリンとフェイタンに一致するものだった。
十老頭がマフィアたちに捜索を任せた結果、一般人に金を掴ませて探させようとする動きが起こり、それが二次請け三次請けになっていたのだった。
レオリオはこの情報を昨晩には掴んでいたが、"先着順ならどのみち勝ち目は薄い"としてキルアが却下していた。
「なんでそんな必死で追われてるんだか知らねーけど、素人じゃないんだろうな。やっぱやめといて正解だったろ」
『値札競売での収穫は?』
「わかんねー」
キルアがズボンの左ポケットからメモ帳を取り出す。開いたページには、店の場所と品物の特徴のリストが書き込まれていた。
「片っ端から写真撮って送ってるけど、レオリオが目ぼしい品をピックアップするペースも限度あるし、張り付いて確定落札するのも、2人じゃ取りこぼしがあるし。"すごい作り手なら念を知らないままオーラを込めてる"ってゴンの仮説は当たりだと思うけど、"凝"で見つかるようなのは結局他にも入札してくるヤツがいるからな」
キルアがちらと、表道の露天、その値札の1つを見た。キルアを含め、既に7回の入札が行われていた。
『いや、そんだけ掘り出せてればもういいだろう。サザンピースオークションのカタログ代を差し引いて元を取れれば、それで充分さ』
「はあ?」
キルアが電話口で素っ頓狂な声を上げたが、レオリオは自身ありげに続ける。
『とにかく、種銭用に質入れしたゴンのハンター
……
夜、ノストラード
ベッドに寝転びながら、デプスは、ダルツォルネから護衛団に出された指示を思い返し、思案していた。
(マフィアンコミュニティー側の旅団捜索は進展なし。警戒態勢は地下競売が終わって、さらに丸一日だけ継続。本来はもう何日かの滞在期間を取る予定だったけど、地下競売が終わった今、ヨークシンに残る必要性はなくなった。だから、安全を優先ってことで、明日の午後にはヨークシンを出る……
ヨークシンを出たら、直接話す機会は尚更なくなる。何かするとしたら今夜だけど、どうしよっかなー)
『えー、なんでー!?』
(うわっ!?)
"
(なんだなんだ)
ネオンの部屋。無事に終了した競売の戦利品は壁際のテーブルに並べられ、ベッドに腰掛けたパジャマ姿のネオンがダルツォルネに向かってぐずっていた。
「せっかくヨークシンに来たんだから、もっとお買い物したーい! あと3日くらいいてもいいでしょー?」
「しかしお嬢様、今のヨークシンは危険です。お父様からも、お嬢様の安全を優先するようにと仰せつかっておりますので」
「だったらダルツォルネさんのケータイでパパと話させてよ! パパはなんであたしからの電話に出ないの!?」
「申し訳ありません、それはできかねます」
「さっきからそればっかりじゃない!!」
ネオンの前に立つダルツォルネは、ネオンを抑えろというライトの指示に忠実であろうとし、ネオンの主張に対して、ひたすら謝罪を述べていた。
この時、ネオンは自分からの電話にだけ出ないライトや、普段にも増して融通の利かないダルツォルネに対して苛立ちを強めていた。
また、そんなネオンの感情は素直に態度へ現れて伝わり、ダルツォルネ自身も、頑なにネオンとの接触を拒むライトのことを不自然だと思ってはいた。
2人のやり取りを聞いたデプスもまた、その状況に違和感を覚えていた。デプスがかつて紙面上で見たライトが、直接ヨークシンまで出向いてネオンの説得をしていたからだった。それがネオンを避けていると聞いて、デプスは、なおのこと親子から話を聞かねばなるまいと思った。
デプスは携帯電話を取り出し、シャルナーク宛のメールを書き始めた。
(ドタキャンしたら怒るかなー……)
それから普段遣いのメモ帳に何ページか書き込んだ後、ネオンの部屋の様子を見つつ、ゲームで時間を潰しながら、ネオンが完全に1人になる状態を待った。
持ち回りで外部からの襲撃を警戒する護衛団と異なり、侍女は深夜になる前には各々の個室に入った。ダルツォルネもまた、24時間働くわけにもいかず、同様に個室で休み始めた。デプスが動いたのは、そのタイミングだった。
"
("ダルツォルネさんの電話をこっそり借りました。一緒にお話しましょう"……!?)
ネオンはすっかり目が覚めて、デプスの顔を見た。デプスはポケットからダルツォルネの携帯電話を取り出すと、ネオンは掛け時計で時刻を確認して、小さく口を開いた。
「大丈夫なの?」
「大丈夫っす。ネオンさんが秘密を守ってくれるなら」
「……わかった」
駄々をこねたりはしゃいだりして周囲を振り回していたのがウソのように、ネオンは神妙な顔で頷いた。それを確かめて、デプスはネオンにも見えるように"
「わ」
「ここじゃ落ち着いて話せないっすから、カラオケボックスで部屋借りるっす。これ、ネオンさん以外には言ってない
ネオンはこくこくと頷いてから、着替えるかどうか、オロオロと逡巡したが、デプスが先に行くのを見て、上履きだけ履いて、その後に続いた。
部屋を取り、ドリンクバーで2人分の烏龍茶を取ってから、デプスとネオンが隣り合って席に座った。ネオンは烏龍茶を一口飲むと、デプスに向かって手のひらを差し出した。
「ネオンさんだってわかったらすぐ切られるかもしれないんで、その対策が要ると思うんすけど」
「大丈夫。貸して」
デプスがイヤホンを差し込んでから、ダルツォルネの携帯電話を渡すと、ネオンは電話帳からライトの番号にかけた。ライトは、5コール目で出た。
『どうした? 何かアクシデントか?』
「もしもし、パパ? 切ったら死ぬから」
『ネオン!? し、死ぬとはどういうことだ!?』
かけてきたのがネオンだと知るや、ライトの声のトーンが跳ね上がった。イヤホンを片耳ずつ使って、デプスとネオンの両方がそれを聞いていた。
「パパ、あたしがヨークシンに来てから、あたしのこと避けてるでしょ? いつもなら、あたしがワガママ言ったらすぐパパから電話とか伝言で言い訳してくるのに、してこないし。ダルツォルネさんとは電話してるのに、あたしからの電話には出ないし」
『それは……っ』
ライトは何か言おうとしたが、ハッとして急に息を殺し、押し黙った。
「"それは"何? どういう理由があるの?」
『……』
「ふーん、だんまりなんだ……」
その声は、昼も夜も跳ね回るようにしているネオンのものとは思えない、低く平坦なものへと変化していった。
「パパは、あたしがどうなってもいいんだ?」
『ち、違う! 早まらないでくれ、ネオン!!』
どこにいるのか、護衛団は何をしているのか……本来ならライトが確かめているはずのことがいくつもあったが、今のライトはすっかり追い詰められ、電話越しにどうにかネオンを繋ぎ止めようとするので精一杯だった。
「じゃあ、教えてよ。なんであたしを避けるの?」
『それは……それは、言えない。言えないんだ。だが、ネオン。パパはいつでもお前の無事を第一に考えてるぞ!』
その必死さ、調子のいいことを言って機嫌を取る普段のライトとの違いが、ネオンにははっきりとわかった。
だから、言えないという言葉が本当なのだろうと理解したが、一方で、このままではデプスの手を借りて電話した意味もなければ、納得できそうにもなかった。
しかし、これ以上何と言っても"言えない"とだけ返されそうで、ネオンは電話を替わることにした。
「パパ。今からボディガードの人に電話替わるけど、もし切ったら死ぬからね」
『あ、ああ』
冷え切ったネオンの表情に少しばかりの恐れを抱きながら、デプスは携帯電話を受け取り、マイクを口元に近づけた。
「もしもし。護衛団のデプス=ハーゲンっす。いっこだけ聞かせて欲しいことがあってお電話替わりました」
『……名前はダルツォルネから聞いている。ライト=ノストラードだ』
相手がネオンでなくなり、ライトは冷静さを取り戻し始めた。また、ネオンが残した言葉が心臓に食い込み、デプスに強い言葉を浴びせかけるのを止めていた。
『言ってみろ』
「じゃあ、単刀直入に。ライトさんは、ネオンさんを娘として愛してますか?」
デプスは、横でネオンが息を呑む音を聞いた。
ネオンは、その質問が自分が知りたいことのずばり根底を突くものであると瞬時に理解した。
同時に、普段ならば"愛しているさ"とでも笑って返すであろうとも思う一方で、それが、普通でない今ならどうなってしまうのかわからない、ということにも気付いた。
『……私は――』
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※いかにも重要そうな選択肢ですが、話の流れは大きくは変わりません。
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「ダルツォルネが筆を折ったかもってのは本当か?」
「信じられんな、奴は完結作品持ちだぞ」
「低評価10発くらっても平気なくらいの鍛え方はしてるはずだが」
――ライト=ノストラード
「評価グラフを見ましたが、低評価は50以上入っていましたよ」
――護衛団リーダー代理、クラピカ
30.ライトの返答は
-
「愛している」
-
「……」