帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾 作:これからはずっと一緒だよ
しかし、高評価や感想を下さっているのはそのうちわずかな人数であることに、疑問を抱いています。
感想に書こうとしたが、書くことが思いつかない……そういう場合もあると思います。しかし、評価は簡単にできるはずなのです。
よってここで改めて、高評価と感想をお願いいたします。
「――試験官さん、タイマーとかって出せます? 時間計りたいんすけど」
『必要ならそこのモニターに出そう』
「了解っす」
宙空への問いに、スピーカーから答えが返った。ひとつ頷いて、デプスは次に女を見る。
「あと、そのフード。取って貰っていいっすか?」
「必要なの?」
「そのままだとハンデになりすぎるっす。どーしてもイヤなら、別のを考えるっすけど」
「……そう。いいわ」
(即席の割には手の込んだ賭けを用意できたようね)
女はロックの外れた手錠をその場に落とし、フードを引き剥がした。犯罪歴の多くに詐欺が含まれていることにある種の納得を感じさせる、美貌の持ち主だった。
予想がついてはいたものの、現実の人間として目にするのが初めてだったデプスは、おおー、と手を合わせる。
「これは思わぬ目の保養っすね」
「どうもありがとう。ボウヤも中々男前よ」
「あ、わかります? いやー、ハンター試験でも通用するなんて、こんなにイケメンで得したっすね!」
(うわあ……)
キメ顔でポーズを取るデプスに、受験生・試練官のほぼ全員がヒいた。目の前のレルートまでもが思わず真顔になりかけていたのも意に介さず、デプスはポーズを解いて話を再開する。
「っとと、忘れてた。お姉さん、お名前も教えて貰っていいすか?」
「……レルートよ」
「おっけーっす! それじゃ、賭けの内容を言うっすよ」
デプスは目を閉じ、拳を軽く握って深呼吸してから、再びレルートを真正面から見据え、その顔を指差して叫ぶ。
「ずばり、"5分以内にレルートさんが愛の告白をするかどうか"っす!」
受験生側の通路で、レオリオとキルアがひっくり返り、クラピカの髪が跳ねた。
「……た、確かに彼も美形の部類ではあるだろうが、いくらなんでも自信過剰と言わざるを得ない!」
「オメー今ツッコむとこそこかよ!? 今ここでナンパとかありえねえだろ!!」
「デプス! 勝ち越してるからってふざけてる場合じゃねえんだぞ! これがハンター試験だってわかってんのか!?」
通路から飛んでくるレオリオの怒声に、デプスはゆっくりと上半身だけ振り向く。
「いやだなーレオリオさん、これほどのイケメンが"やる"と言ってるんすよ? 本気も本気に決まってるじゃないすか」
「ウソつけ!!」
「やれやれ、やっぱまだポイントが足りてないみたいっすね。ま、そこで見てればわかるっすよ。このイケメンの勇姿をね」
デプスはレオリオに向かって再びキメ顔で言い放ち、もう聞く耳はもたないとばかりに背を向けた。
「くそ、こんなことならオレが行っとくんだったぜ!」
(そりゃどーゆーイミだよ)
「すでに任せるしかない状況なんだ。タワーの頂上で見た彼を信じよう」
控えの受験生たちのやり取りをよそに、デプスがルールを付け足していく。
「補足ルールは、直接接触と道具の禁止。あと、愛の告白をした場合、試験官側に自白剤とかで意思確認を行うよう要請できるものとする、ってとこっすね。もし違ったらそっちの反則負けっす」
「その気もないのにわざと告白して40時間いただくのはナシってわけ」
「そーゆーことっす。さ、何時間賭けるっすか?」
楽天的なデプスの様子やこれまでの振る舞いを材料にして、レルートは思考する。
(ただセクハラをするつもりってわけじゃなさそうね。5分以内に私から告白を引き出す勝算がある……直接接触、すなわち暴力で言うことを聞かせる方法はあちら側から切ってきた。薬も使えない。
となると言葉……脅し? 既に超長期刑囚であるあたしに? 今のあたしから奪える物といえば命くらい。"将来探し出して殺す"とでも言うつもりってこと?
そんなもの、一旦出所してしまえば簡単に躱せる。でも、他に考えられない。5分という時間も、短いとは言い切れない絶妙な設定……)
「あははー、悩んでる悩んでる」
面白がって笑うデプスに、レルートはニコリとして返す。
「だって、失恋させちゃった後に落ち込みすぎて試験に落ちたら可哀想でしょ? どうやって慰めてあげようか考えてるのよ」
とはいえ、内心はやはり穏やかではない。
(……わからない。全てブラフかもしれない。そうなれば、あたしが賭けるのは"告白するかしないか"ではなく、"ボウヤの手札が本物かブタか"。まさにこれは"賭け"になって来る。想像していたよりずっと堅固なデザインの、シンプルな賭け――)
レルートが結論を出すまでに、2分と少しが経った。
「……告白しない方に、10時間」
「ありゃ、慎重っすね」
「認めるわ。ボウヤはカモじゃなくて、敵だってね。だから、一回目の出題では様子を見る」
レルートがそれまで浮かべていた余裕の笑みは、なくなっていた。本心だった。
「なるほど?」
(本当に好きになっちゃったら八百長負けお願いするから、チップ関係なくなるんだけど。マジで惚れさせる気だとは思ってないってことだろうなー、どうせ)
『デプス君、スタートのタイミングはこちらで決めるが、それでいいかね?』
「いっすよー」
リッポーの声に、デプスが高く手を振って応える。
『では、ゲーム……スタートだ!』
ピリリリリ、という電子音とともに、リング備え付けのモニタの表示が「05:00」に変わった。
「さて、ちょっと本気出すっすよ」
デプスは眼鏡のテンプルを上げ下ろしし、不敵な笑みを浮かべる。その脳内では既にダイヤルが能力を示していた。
("
無言のままに、身じろぎひとつ必要とせず、デプスから"隠"で不可視となったオーラが拡散して、リング全体を包み込んだ。
デプスは"最強の念能力者"であり、その"隠"は、たとえ超一流の念能力者であっても見破ることが不可能。デプス以外にとっては、見かけ上何も起こっていない。
「!?」
だが、リングに立つレルートは明らかな違和感を覚えていた。
自らの内に
「ひゃっ!」
そして、その(一見して)無垢な視線が刺さるのを、比喩ではなく肌で感じた。思わず身を捩り、視線に触れられた右肩を庇う。
(気のせいとか、雰囲気が変わったなんてものじゃない! 一体何をされて――いえ、何が起こっているの!?)
何度見ても、デプスは何もしていない。ただ、楽しむような笑みを浮かべながらレルートを見つめているだけだった。
そして、体のどこかを庇えば、体のどこかが晒される。
診察医が手で触れて患部を探すように、デプスの視線、見えざる弾丸が、手先、二の腕、脇腹……と、レルートの弱点を探して這い回っていく。
「んっ、だめっ、ああっ!」
両サイドの廊下では、突然のレルートの変わりように騒然とし、一部の者はその体をくねらせる様に己の身の危険を感じた。
「どうしちまったんだ!? デプスは突っ立ってるだけなのに、タイマーがスタートした途端っ」
赤面しながら、レオリオがリングから視線を逸らし……チラチラと見ている。突拍子もない展開ながら、クラピカは既に戦いとして思考を切り替えて観察していた。
「っのスケベオヤジが……ゴンは意外と平気そうだな」
「うん、女の人しかいない漁船に乗ったりとかしたから」
ゴンは、ハンター試験中度々発揮していた視力で、デプスとレルートの間に働く法則を見抜く。
「あれ、デプスに見られたところを庇ってる……のかな?」
「見られただけでどうにかなるってのか? ガン飛ばして怯えさせるとかならともかく、あんな風にはなんねーだろ」
ゾルディックとしての経験を加味し、キルアが否定するが、ゴンは腕を組む。
「どうかなぁ……女の人は視線に敏感だって聞くし」
「……いや、一般にナンパの成否を分ける最も大きな要素として、外見に並んで話術が挙げられるという。無言であれほどのリアクションを引き出すのは、果たして現実的なのか?」
(いや、そこまでマジに考えんでも)
真顔ながら髪が跳ねっぱなしのクラピカに、キルアもゴンも困惑からかける言葉がなかった。
そこから数十秒が経ち。
「そこ、んんっ♥ やめてぇっ♥」
全身余すところなく反応を確認し、いくつかの弱点を見つけたデプスは、それらを重点的に狙って視線を、そこに付随するレーザー状のフェロモン
(このリングのおかげで、隠れられたり逃げられたりすることはない。いや、されても対策はあるっちゃあるんだけど)
足元をふらつかせながら身悶えするレルートを、一定の距離を保ちながらデプスが視線で追い詰めていく。
(これはこれでよくないロケーションだったかも。じっくり遊ぶのに出力落としすぎたかな?)
周囲に気を配る余裕を完全に失ったレルートは、リングの縁へと近づきつつあった。観戦しているメンバーの中で、ゴンとレオリオが真っ先にそれに気付いた。
「!」
「オイ、あれ、あのままじゃ」
「そういや、落ちて死んだら
デプスは攻撃の手、もとい目を止めなかった。とうとうレルートがリングから踏み外す。一瞬の浮遊感がレルートの心臓を強く締め付け、全身を冷やし、感覚を現実へと引き戻した。
(!!!! 死――)
それを見たデプスは、地面をひと蹴りした。3~4メートルの距離が一瞬でゼロになり、デプスの手がレルートの手を掴み、リングの上へ引き戻して抱きとめた。
「セーフ!」
一歩下がり、両肩を掴んだまま、デプスが無事を問う。
「大丈夫っすか? 舌噛んだりしてないっすか?」
そうして、デプスの視線が、改めてレルートの顔に向けられた時。デプスの眼は"
「あっしまっ――」
至近距離から、見えざる弾丸がレルートに殺到した。慌てたデプスの視線の動きに合わせてフェロモン
「――っっ♥♥」
じわりじわりと周囲から溶かされ、小さな楔をそこかしこに打ち込まれ、あとひと打ちというところだった氷が、赤熱した鉄塊を上から叩きつけられ、砕け散る。
レルートの心臓が、一際大きく跳ねた。
「ふぁぁああぁぁぁああぁあああああぁぁぁぁん♥♥♥♥」
全身を震わせ、恍惚の表情で解き放った嬌声が、リングのある空間から吹き抜けの下へ反響し、両サイドの廊下へも突き抜けた。
これまでのドキドキと落下への恐怖で汗ばんだ体が崩れ落ちそうになり、デプスが支える。腕の中で、レルートはくたりと重くなった。能力をオフにして、デプスはレルートの様子を確かめる。
(こうなるのかぁ……いや、ダブルピースとかしてないだけマシかな……でもやっちゃったな)
決着前の直接接触。デプスは、どうせこの後で残りのメンバーが勝ちを取るからという考えもあり、自身の負けを申告しようと顔を上げた。
「触っちゃったから反則負――」
「待って!!」
デプスがあっさり宣言する寸でのところで、レルートが遮った。続けて、中空に、カメラを通して見ているリッポーに訴えかける。
「今のは、リングから落ちた時点であたしの失格! 彼が私に触れたのは賭けとは無関係よ! チップを精算して!」
『……フフフ、いいだろう。この賭けはデプス君の勝ちだ』
「!」
モニターのタイマーが消え、表示が「30 70」に変化した。
「……ねえ、デプス」
モニタを見ているデプスへかけた声は、吐息混じりの、心底愛おしむ声だった。デプスが見ると、熱っぽい表情で、眉を八の字にしていた。
「あたし、完膚なきまでにやられちゃったみたい。好き。好きって気持ちが、体を突き破って出てきそうなくらい」
「わかりますよ。こんなになってまでレルートさんがウソついてるなんて思ってないっす」
「ふふっ。じゃあ、レルート、って呼んで?」
デプスは、少し恥ずかしそうに笑った。
「わかったっす。……レルート、ありがとう」
「んぁあぁ……♥ 好き……デプス、好きぃ……」
能力を切った状態での、デプスのただの言葉でさえ、今のレルートは多幸感と何かよくない感覚に満たされ、デプスにこすり付けるように身悶えた。
デプスが立たせて離すと、レルートはしばしぼーっとしていたが、頬を染めたまま、正体を失いつつあっても、賭けの続きを思考し、その答えを口にする。
「……次の賭けは、"あたしが男か女か"よ。補足しておくと、あたしは生まれてこの方手術を受けたことがないわ。さあ、デプス。どちらに賭けるの?」
(ああ、デプス……大好き……わたしを受け取ってぇ……♥)
出題はもはや形式的なものにすぎず、レルートは既に自分の中のデプスに支配されていた。賭けで勝つつもりなどなく、何かよくない感覚が引き出した欲望から、デプスに何かをねだるような目を向けていた。
デプスはその目論見をすぐに見破ったが、この衆人環視の場ということもあり、流石に乗る気になれなかった。
「女に30時間」
「あぁ……意地悪なひと」
モニターの表示が「0 100」となり、デプスの勝利が、そして受験生側の勝利が確定した。
デプスは、すねるように手首を掴んで体を揺らすレルートの肩を掴み、その目を覗き込む。
「まあまあ、ハンターになればお金もできるんで。迎えに行くまで、いい子で待っててくれるっすか?」
その言葉に、レルートはさらにだらしなく頬を緩めた。
「……はぁい……♥」
"
変化系。
オーラを「ドキドキする空気」に変えて周囲に広げ「ドキドキフィールド」を形成、その中で威力が高まる細いレーザー状の「フェロモン
フェロモン
この"昇天"は純粋な対象の心の動きによって起こることであり、解除の概念がなく除念の対象とならない。精神への働きかけで恋愛感情を取り除くしかないが、致命的なベタ惚れであるため、記憶を消しでもしない限りはほぼ不可能。
盾に込められた第7の能力。
5.デプスの行動方針(いろいろ編)
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いのちだいじに(主に原作味方キャラ)
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原作味方キャラだろうと容赦しない
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幻影旅団殲滅
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幻影旅団加入
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幻影旅団乗っ取り
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念能力いっぱい集める
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女キャラは見かけ次第DDF送り