帰宅のために暗黒大陸を目指す雑な矛盾 作:これからはずっと一緒だよ
そう願い始めて幾日、高評価はお気に入りの6~7分の1しか入っていない。
この異常事態に、我々は声を上げねばなるまいと思い立ちました。
この作品を楽しみにご覧になっている方、どうか高評価を。その中で伝えたいことがある方は、感想を。
よろしくお願いいたします。
「よっしゃあ、ゴール!!」
塔の一階。頂上と同様の真っ平らで円形の広間。その外周の壁にいくつも存在する扉の1つをくぐって、一番乗りしたレオリオが、鬨の声を上げた。残り時間、60時間43分32秒。
5人の他には2、3人しか到着していない。半径20メートルほどの空間に明かりが松明2つのみ、天井は見上げた先の闇の中とあって、広間には静かで暗い雰囲気が漂っていた。
「これなら、最後の選択は"長く困難な道"をそのまま行くんでもよかったかもね」
「いや、"どんなに早くても45時間はかかる"のであって、我々が倍の時間をかけてしまう可能性も十分にあった。備え付けの武器で壁を壊し"短く簡単な道"に出るというデプスの案が最善だろう」
「オレはもうちょっと遊びたかったなー。クラピカの描いた地図も全然埋まってないままだし」
「地図は目的ではなく手段だよキルア……」
ゴンたち5人が広場へ入り、扉が再び降りて閉ざされる。そのまま壁のそばで休みながら雑談をするのかと思いきや、座り込もうとしたデプスの肩を、レオリオが笑顔で強く掴んだ。
「さて、それじゃあじっくり聞かせてもらおうじゃないかねデプスくん。クリアしちまえば時間はた~~っぷりあるからな」
「へっ? は、ははは。何をっすかねぇ」
デプスの乾いた笑い声を押し飛ばすように、レオリオがデプスを立たせて顔を思い切り近づける。
「とぼけんじゃねー! 超長期刑囚の女をオトしたトリックだよ!」
「め、滅相もないっす! なんならほら、持ち物調べて貰っていいっすから!」
レオリオの剣幕に気圧され、デプスが盾を差し出そうとするが、レオリオは先に、デプスがかけている伊達眼鏡をサッと取り上げる。
「うわっ」
「ふーーーーむ……てっきりこっちかと思ったんだが、ただの伊達眼鏡っぽいな。よし、じゃあそっちの盾も検めさせてもらうぜ!」
「あーっ乱暴しちゃいやっす~!」
レンズやフレームを注意深く見た後、レオリオは伊達眼鏡を放り捨てて盾を表と裏と調べ始め、デプスは落とされた眼鏡をヘッドスライディングでキャッチした。
「見た目機械っぽいし、変形しそうな継ぎ目とかもあるのに、スイッチとかはねーな。おっ、裏の収納スペースに怪しげな容器が……ってマキシマイザーかよ!」
続けて取り出されるのは、胃腸薬に水。さらにデプスのズボンのポケットへもボディチェックが入り、ペンとメモ帳、財布と、所持品が次々と地べたに並べられていった。
「もうお嫁に行けないっす……しくしく」
(行けるもんなら行ってみろよ……)
「くそーっ、絶対何かヒミツ道具的なのがあるかと思ったのによー」
両膝に手をついて大きくため息をつくレオリオと、三角座りでわざとらしい泣き真似をするデプスを、キルアたちは困惑の眼差しで見ていた。
「なんか怪しい改造手術でもやってんじゃねーのかお前」
「失敬な! 手術なんてしなくてもご覧の通りのイケメンっすよ!」
「二言目にはイケメンイケメンって、オレ様が男前じゃねーってのかテメー!」
レオリオがデプスの両頬をつまんで引っ張り、デプスの顔がぐにーっと伸びた。レオリオの腕を掴んで抵抗するも、びくともせずされるままになる。
「
「やかましい! 一生変顔になりやがれ!!」
……
2日半ほどが過ぎ、残り時間が5分を切った頃。三次試験合格者も20名近く集まり、また新たに扉の開く音がした。試験の終わりが近いということもあって全員が起きており、広間じゅうの視線が一斉に扉へ向けられた。
血が滲みあちこちが裂けた服、見開かれた目。腹の傷を手で庇いながら、1人の男がよたよたと出てきた。
「フ、フ、フ……間に合った……ぜ」
それを最期の言葉に、男は音を立てて前のめりに倒れ伏した。近場にいた3人――アモリ3兄弟が、息や脈を手早く確認する。
「……死んでるぜ」
「バカな奴だぜ。死んで合格よりも、生きて再挑戦すればいいのによ」
デプスもまた、それを見ていた。
(かわいそーだけど、ヤバくなっても自分から試験続行を選んだんわけだから、あの人は仕方ない。……そういえば、"治す"能力は書いてないんだよなー)
進路指導のプリントに書き込み、そして脳裏の目盛りに刻まれた能力たち。攻撃・防御・移動と一見万能に見えるそれらだったが、治療系能力は1つも含まれていなかった。
(自分がダメージ受ける可能性は限りなく潰してるからいいけど、他人を治せないってのはよくない。チャンスがあれば盾に入れておきたいけど、誰かいたっけ)
『タイムアップーーーー!!』
デプスの思案を遮るように、備え付けのスピーカーから大音声が飛び出し、デプスの肩が揺れた。
「わっ」
『第三次試験通過人数25名!!』
閉ざされた扉のうち、これまで開いていなかった1つが開く。
『その扉が出口だ。生きている者は外へ出たまえ』
互いに声を掛け合い、ゴンたち5人が立ち上がる。他の受験生も同様にして、三々五々とタワーを出ていく。 扉の先は、単なる長く暗い通路だった。進むごとに、外の明かりが大きくなっていった。
タワーの外には、小男がいた。三日月のような目と口の不気味な笑顔に、大きな丸眼鏡をかけていた。これまで姿を見せてこなかった、試験官のリッポーその人だった。
「諸君、タワー脱出おめでとう」
残りは四次試験と最終試験のみ。四次試験は、遠くに見える無人島"ゼビル島"で行われる。そう説明して、リッポーは指を鳴らした。それに応えて、背の高い男が、キャスターつきの台をガラガラと手押ししてきた。台の上には、手が入るくらいの穴が上面に開けられた、金属製の箱があった。
リッポーが言う。
「これからクジを引いてもらう」
誰かが、これで一体何を決めるんだ、と言うと、リッポーは三日月のような目をさらに細めた。
「狩る者と狩られる者」
箱の中には、今生き残っている受験生24名の受験番号が記された、プレートとは別のナンバーカードが入っている。リッポーはそう告げ、試験を通過した順に1枚ずつ引くようにと伝えた。
301番・ギタラクル、294番・ハンゾー……受験生が順番に進み出て、箱から1枚引いては下がる。そうして24人全員が引き終えると、リッポーの右手が箱にポンと乗せられた。
「今、諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかは、全てこの機械に記憶されている。したがって、もうそのカードは各自自由に処分してもらって結構」
続いて、その手が、人差し指が、受験生たちに向けられる。
「それぞれのカードに示された番号の受験生が、それぞれの
四次試験通過の条件は、6点を集めること。受験生自身に最初に配られたプレートは3点、
すなわち、これまでの「受験生対試験官」ではなく、「受験生対受験生」のゼロサムゲームだった。
……
ゼビル島へ向かう船が出た。受験生たちはいずれもナンバープレートを隠し、言葉も視線も交わさず、他者から離れ静かに到着までを待っていた。それはほとんど全員が同様だったが、ゴンとキルアはプレートを胸につけたままだった。
甲板で座り込み空を見上げていたゴンが、デプスの足音に気付き、振り向いた。"円"で居場所を探り当てて、やってきたのだった。
「ゴンさん、何番でした?」
「……デプスは?」
「118番っす。誰だったか覚えてないっすね」
デプスはカードを人差し指と中指で挟み、ひらひらと振って見せた。
「そっか、よかった……」
仲間の
「ゴンさんは?」
「これ」
198と書かれたカードを親指と人差し指で挟み、デプスに見せる。
「わかる?」
「いやー、覚えてないっすね」
「どれどれ」
音もなく現れたキルアが、上からカードを見下ろしていた。
「オレのと1コ違いか。ゴンたち以外の連番っつーと、あの3人組だな」
「キルア! いつの間に」
キルアは無言で、かつ笑顔で、自分のカードを2人に見せた。199と書かれていた。
「つーことで、そいつらが纏まってるとこを一網打尽にしてオレとゴンは6点。デプスには悪いけど、ひと足お先だな」
「……あっ」
デプスが思わず声を上げたのは、キルアの言葉を受けてのことではなかった。ゴンのターゲットが44番ではないという事実から、まずヒソカがいないことを思い出した。そして、44番プレートで始まるゴンとヒソカの因縁もまたなくなったということを、デプスはようやく理解したのだった。
(……これ、やらかした?)
「手伝おうか? 時間余ると思うし。その辺の奴らなんて、見つけさえすればソッコー倒せるぜ」
「あー、そっすねぇ。118番はホントに誰だったか覚えてないっすし、もしかしたらお願いするかもっす」
「"もしかしたら"? そんなに自信あんのかよ」
「その辺の人なら、見つけさえすればソッコーっすからね」
「……」
ふっ、とデプスが肩をすくめる。キルアの眉間に影が落ち、両目がギラリと輝いた。
「……勝負すっか?」
「は? 負けねっすけど?」
「言ったな? じゃあ、6点分集め次第下船したトコに集合。遅れたら試験終わった後に罰ゲームだぜ」
「じょーとーっすよ、イケメンが顔だけじゃないってことを思い知るがいいっす」
(これ、オレも付き合わされるのかなー……)
歯を見せて笑うキルアとヒき気味のゴンの様子に、うまく誤魔化せたな、と思うデプスであった。
「ここで決定するのは"高評価をする者"と"一言つき高評価をする者"」
「それでは、読み終えた順に高評価を入れてもらおう」
――三次試験官、リッポー