……気を取り直したのはいいが、頭はそれについてきていなかった。端的に言うとアルコールが回りすぎていたのである。
「…………」
隣にいるカレンモエは俯いて口を噤んでいる。先程、なぜオーバーワークをしたのかその理由を彼女に尋ねた。俺の予想では俺への不満かカレンチャンがらみで苛ついたのかと思ったが、本人が言うにはどうやら違うらしい。『全部、モエが……』と彼女は言った。その言葉を鵜呑みにするなら、オーバーワークの原因は彼女自身にあるということだろう。
その原因を聞き出したいのだが、彼女はそれを話してくれる様子ではない。それほどまでに俺に話したくないことなのだろうか。
(──いってえ……)
そこまで考えついたところで頭痛に襲われて思わずこめかみを抑えた。深く考えることをアルコールに侵された脳が許してくれなかった。
「トレーナーさん、大丈夫?」
「……ああ」
カレンモエに声をかけられて少しだけ意識がはっきりした。グラスに入ったお冷やを飲み干すとその意識がまた少しだけ明瞭になった。
「分かった。話してくれねえなら、無理には訊かねえ」
「…………」
「……なあモエ、俺とお前が契約する前の夏休みにトレーナー室で話したこと、覚えてるか?」
「覚えてる。忘れるわけないよ」
周りにカレンチャンを押し付けられ、どうすればよいか分からなくなっていたカレンモエと話をしたのだ。苦しそうに走る彼女へ少しでも手助けになれるようにと、俺の経験から知ったことも交えて色々喋ったことを思い出す。
「あの時、ゆっくりやっていくって言っただろ?」
「……うん」
「それはな、今でも変わらねえ……前走で負けたから焦ったのかもしれねえが、レースはこれからもあるんだから、こんなオーバーワークしてたら──」
「でもっ! それじゃあモエは……っ」
そこまで言ってカレンモエは言葉を切って苦しそうな表情をして再び下を向いた。
その表情から去年の夏休みの彼女が思い出された。こんな表情をさせないためにやってきたのに……俺はやっぱり未熟なままだと痛感する。
そんなことを考えながら今の会話内容を振り返る。どうやら焦っているというのは当たっているらしい。
ではなぜ焦っているのか。その原因となったものは何だろうか。俺の知っている範囲で何か無かったか、彼女についての記憶を遡る。
そして辿り着いたのはグラスワンダーの朝日杯を見た後のこと……ペティがカレンモエのオーバーワークを伝えてくれた日だ。あそこで俺は確か──
──「3週間ぐらい前から……だな」──
(そうだ……あの日から3週間前はキングの東スポ杯だったはずだ)
キングヘイローの東スポ杯あたりからカレンモエのオーバーワークが始まっていたことを思い出した。
そこまで考えが至ると結論はスムーズに導き出された。
「お前、キングに対抗心でも燃やしてたのか?」
鮮烈な走りで重賞初制覇したキングヘイローを目の当たりにして、感化されたと考えるのは自然なことだろう。その証拠に──
「…………」
カレンモエは俯いて黙ったままだ。沈黙は肯定ととって良いだろう。
なら言うことは決まっている。
「これもあの時言ったな。お前はお前……カレンモエなんだ」
「……」
「別にキングを意識する必要なんてない。ジュニア級で重賞を勝てる奴もいればシニア級で初めて勝てる奴もいるんだ。気にする必要はねえんだよ」
トゥインクルシリーズにおけるキングヘイローの滑り出しは順調そのもので、ホープフルで負けたとはいえ同世代では上位5本の指に入るレベルだ。そんな走りを同じチームの後輩が成し遂げたのだから意識するなと言う方が無理な話だろう。これまで俺のチームや合同トレーニングするウマ娘に重賞を勝つような奴はいなかったから、キングヘイローに影響されて次は自分もと思うのはごく自然な話だ。
そう考えると筋が通った話のように思えた。
──だから、否定されるなんて俺は思ってもいなかった。
「……ちがうよ」
「え?」
「ちがうよ……トレーナーさん。そうじゃないの」
俺の考えていた浅はかな仮説は一瞬にして崩れていった。となると、あの沈黙は肯定でも何でも無かったのだ。
「…………」
言葉を失ってしまった俺は顔を上げたカレンモエの視線を受け止めた。変わらず何かを訴えるような顔をしていた。
どうやら俺は間違えてしまったらしい。
「……そうか」
勘違いした自分に落胆する中、そう捻り出すのが精一杯だった。
「「………………」」
2人とも無言の時間が続く。
酔った状態でなんとか考えついたことが否定されて俺はもう何も考えられないでいた。話の糸口を摑むことができず、目の前のテーブルに並んでいる空になった酒のグラスをただ見つめることしかできなかった。
カレンモエは口を開こうとしない。でも何を言ったらいいのか分からない。
つまるところ、俺は彼女のことを何も分かっていなかったということだろう。今だってどうすればいいのか分からない。
敗戦のフォローだとか、オーバーワークの原因を探るとか、俺には到底無理なことだったのだと今になって悟った。
(──なら)
となると、俺ができることは1つだ。
最初から全て正直に話すべきだったのだ。
「分かってるとは思うが、今日お前をメシに誘ったのはな、昨日の負けとオーバーワークについて話をしたかったからなんだよ」
「……」
「正直、お前が何を考えてるのか俺には分からん。昨日負けたのに今日そこまで落ち込んでなさそうな理由も、これまでオーバーワークしてた理由もだ。俺が分からなくてお前が教えてくれないなら、聞き出そうなんて最初からどっちも無理な話だったんだろうな」
これは最初から破綻した話し合いだったのだ。
「だから俺の言いたいことだけ言うぞ。あんなオーバーワークはもうやめろ」
「……」
「理由がどうであれ、お前が勝ちたいって焦ってんのだけは分かる。でも目先の結果だけ求めて自分を追い込むのはお願いだから我慢してくれねえか」
「……」
「負けてもいいとは言わない。負けたら悔しいのも分かる。でも、勝てなかったとしても焦らないでくれ……俺が絶対にお前の力になってやるから……」
「トレーナー、さん……」
喋っているうちに酒が更に回ってきてまた意識が朦朧としてくる。目を瞑ればすぐにでも寝てしまいそうだ。
「……でも、勝てないと、モエはトレーナーさんに何も返せないよ……」
カレンモエが言ったそれは明らかに間違っていることだった。訂正しなければならない。
「何言ってんだモエ……もうすでに、俺はお前からたくさんのものを貰ってるんだ」
カレンモエが坂川健幸についてきてくれている。
ウマ娘を導く1人のトレーナーとして、これ以上のことなんてあるのだろうか。
実力も実績もなくて、人間的な魅力もなくて、過去に取り返しのつかないことをして、それでもトレーナーを続けている、こんなどうしようもない俺に──
「お前が俺のそばにいて、元気に走ってくれるだけで、それだけで俺は嬉しいんだ……」
「ぁ……」
顔を上げたカレンモエの目がいつもより大きく見開かれた。澄んだ青色の瞳に俺の姿が映っていた。
自分でも何を言っているのか分からない。アルコールのせいか素直に言葉が出てくる。プロポーズでもあるまいし、言っててなんて臭い台詞だろうかと思う。たぶん、素面ならこんな台詞口に出さなかっただろう。
しかし、紛れもない俺の本心だ。
「……俺に至らないところがあるのも分かる。でももっと俺を頼ってくれねえか?」
信頼とはその姿勢や結果を残すことで得るものだ。それを言葉で得ようとするのは本音を言うと情けないことではある。でも言うしかなかったのだ。
「……トレーナーさん」
「ん?」
「やっぱりトレーナーさんはモエのこと、分かってない」
言葉とは裏腹に柔らかい態度になったカレンモエではあるが、こうもはっきり言われては立つ瀬がない。
「……悪いな」
「ううん。今はそれでもいいかな」
「……?」
カレンモエが何を言っているのか分からない。それを考える間もなく彼女は続けた。
「トレーナーさん、無理なトレーニングしてごめんなさい」
「え……あ、ああ……」
脈絡のない突然の謝罪に虚を突かれた。
「無理なトレーニングはもうやめる。トレーナーさんに言われたとおり……また、トレーナーさんと一緒にゆっくりやってきたい」
「ああ、そうだな……一緒に、な……」
俺の言葉はカレンモエに響いたのだろうか。それは分からないが、彼女はオーバーワークをやめると言ってくれた……それだけで十分だ。
「…………ぅ……」
「……トレーナーさん?」
そこで安心してしまったのだろうか。急激に眠気が襲ってきた。決して吐きたい訳ではない。
話も纏まって一応目的は達成できたように思うので、もうこのへんでお開きにすることにしよう。目の前の酒も料理も平らげたし、このままでは昨日の新幹線の中のように寝てしまうだけだ。
時計を見ると、時間もそれなりに経過して遅い時間になってきていた。
「もう遅いし出るか……モエ、先に店の外に出とけ。俺はトイレ行ってから会計するからよ」
「分かったよ。ありがとう、ご馳走様でした。トレーナーさん」
横に座っているカレンモエに退いてもらって席を立ち、ダウンを脇に抱えて彼女より先に個室を出た。
◇
いつもよりおぼつかなくなった足取りで個室を出て行った坂川を見送った。
「…………」
今日のここでの会話を思い返すと、その理由はどうであれ、結局自分は去年の夏休みと同じことをしていたことに気付かされた。
キングの走りを見て焦燥感に駆られたのは事実だけれど、それが根底にある原因ではなかった。
思わず彼に言ってしまった『何も返せない』という言葉。それが自分の想いだった。
『カレンモエ』のことを見てくれて、これまで支えてきてくれた彼にただ何かを返したい。それだけのことだった。
2連敗したせいでその焦りが彼の言うオーバーワークに繋がってしまったのだと思う。それに、キングの方に彼が行っちゃうと思ったことも否定できない。
でも、もう焦らなくてもいいんだ。
だってトレーナーさんはモエと一緒にいるだけで嬉しいと言ってくれた。
その言葉がどれだけモエの心を暖かくしたのか、トレーナーさんは知らないでしょ?
──他の誰でもない、モエはモエのペースで勝利を目指す。もちろん、トレーナーさんと一緒に……ね?
◇
帰りの電車内、時間も遅く帰宅のピークを過ぎていたせいか思ったよりも乗客は少なく、俺とカレンモエの2人とも席に座ることができた。ロングシートは端3人分が空いており、端に俺が座りその横にカレンモエが座った。結局、カレンモエの横には誰も座らなかった。
店を出てから少し時間は経っているが、相変わらず酒に酔ったままだった。もっと若い頃……20歳になったばかりの頃は酔いなんてすぐに醒めていたはずだったのだが……年のせいか、それとも運動不足や不摂生が祟って肝機能が落ちているかどちらかだろう。
そんなどうでもいいことを考えながらふとカレンモエに目を移すと、目を閉じてうつらうつらとしている彼女の姿が目に入った。
「……ん……すぅ……」
昨日のレース自体の疲労もまだ残っているだろうし、そもそも時間も遅い。眠くなるのは当然の事だろう。これを見ると今だけは俺も寝る訳にはいかない。居酒屋から駅まで歩いてきたおかげで、幸い眠気はなくなっていた。
電車がブレーキ音を鳴らしながら駅に停車した。学園の最寄り駅の2つ手前の駅だった。
『ドアが開きます』
アナウンスと共に乗客の乗り降りが行われた。ドアの方を横目で見ると、降りるよりも多く乗客が乗ってきた。続々と入ってくる乗客はそれぞれ空いている座席に腰を下ろし、それはカレンモエの隣の席も例外ではなかった。30代ぐらいの男性が体を反転させ彼女の隣に腰を下ろそうとしていた。
ちょうどその時、舟を漕いでいたカレンモエの上体がその男性が座ろうとしている方へ傾いた。
「っと……!」
カレンモエと男性が当たってしまわないように、瞬時に彼女の肩に手を回してこちらに体を抱き寄せた。俺の胸と肩の間ぐらいに彼女の頭があり、見下ろすと目の前には芦毛の髪と黒いメンコを被せた耳があった。同時に、シャンプーの匂いか香水の匂いかは分からないが女子らしい彼女の良い匂いが漂ってくる。
「……………………すぅ……すぅ……」
カレンモエの寝息が聞こえてくる。ここまでして起きないということは身体的にも精神的にもよほど疲れていたのだろう。もしかしたら、俺との話し合いもプレッシャーになっていたのかもしれない。
腕を戻そうとしたら一度カレンモエをどかさないといけないため、到着するまで肩に手を回したままでいることにした。あと10分足らずで最寄り駅に到着するし、変に動かして起こしても可哀想だと思ったからだ。周りにトレセン学園の関係者やウマ娘がいないことは確認していたので、おそらく誰にも見られていることはないだろう。
そしてその体勢のまま最寄り駅に着いた。寝ていたカレンモエを起こして一緒に電車を降りて、それぞれ帰路についた。
昨日から色々あったが、なんとか丸く収まったようだった。
「さて、また明日からだな……」
カレンモエは2勝クラスを勝ち上がれるように。
キングヘイローは3月の弥生賞に向けて。
明日からのことに思いを馳せながら、今日という日を終えた。
◇
自室のドアを開けると、勉強机に向かっているルームメイトが目に入った。
そのルームメイトはこちらを見るや否やペンを放って抱き着いてきた。
「お帰り~モエちゃんっ」
「……ただいま」
「で、で! どうだったの? 愛しのトレーナーさんとのデートは?」
「……デートじゃない……」
「愛しのトレーナーは否定しないんだねえ」
「……」
騒がしいルームメイトを引きはがして自分のベッドに座り、メンコを外してベッド脇に置いた。
「そんなカワイイカッコして出かけて、デートじゃないなんて……もう、素直じゃないなあ」
いつになくテンションの高いルームメイトはニヤニヤしながら彼女のベッドに座り込んで自分と向かい合った。セミロングの鹿毛と赤く縁どられた白い星の耳飾りが右耳で揺れていた。
こんな緩い調子の同い年のルームメイトだが、レースになるとスイッチが切り替わったかのように真剣になる子だ。彼女もスプリント寄りのウマ娘で、初めて一緒に模擬レースに出たときにそのことを知った。でも今彼女はダートを主戦場にしているから、トゥインクルシリーズで戦うことはないのだけれど。
「……着替える」
立ち上がって服を脱いでルームウェアに着替えたら、次はベッドに倒れこむようにして寝転んだ。壁側に置いている大きいクッションを引き寄せて顔を埋める。
そうして思い出すのはさっきの電車でのこと。
「~~~~っ!」
「どったのモエちゃん、そんな足パタパタさせて……カワイイんだけど~」
自分でも知らないうちに足が動いていたらしい。そう言われて足パタをやめた。
でも、それもしょうがないと思う。
──全部……全部、トレーナーさんのせい……
「…………」
肩に手を回され抱き寄せられたときの感触を思い出す。ほとんど寝ているような状態だったのに、彼の胸に顔を埋めるような体勢になっていることに気付くと、それまでの眠気なんてどこかに吹き飛んでしまった。
起きるタイミングを逃して寝たフリをしていると、なんと彼は最寄り駅まで肩に手を回したままだった。
どうすることもできず、ただ彼の匂いをかぎながら寝たフリを続けるしかなかった……いつもの彼の匂いと、ちょっと汗臭い匂いと、そしてお酒の匂いを今でも覚えている。
あと、寝たフリを続けるために、耳と尻尾が動かないようどれだけ頑張ったか……
普段ならあんなことをする人じゃないと思う。多分だけど、素面の彼なら寝ているところを叩き起こすんじゃないだろうか。
最初から彼にお酒を飲まそうと思っていたわけではない。でも彼に居酒屋に連れてこられて、いろんなことが頭をよぎった結果お酒をたくさん注文してしまったのだ。
レースやトレーニングについての話だとは分かっていた。普段なら言いにくくても酔った彼なら言いやすくなるかもとか。彼の本音が聞けるかもとか。酔った彼を見てみたいとか。前に読んだ雑誌に大人の男は酒を注いでくれる女にキュンとすると載っていたとか。ママがパパを落とすときにお酒を使ったことがあるとかないとか……
飲ませ過ぎたかと思ったけど、普段の彼なら言いそうにないようなことも聞けたし、これからについてうまく纏まったように感じたので、結果としては良かったんだと思う。顔を赤くして唸る彼はカワイかったし……それに、電車であんな──
「──」
そうしてクッションに顔を埋めていると、心なしか段々彼の胸のように感じて、あの電車の中でのことをまた思い出してきてしまった。
「~~~~っ!」
「うわあ!? ほんとうにどうしたのモエちゃん!?」
また足をパタパタとさせてしまった。ぼふぼふとベッドが音を立てている。
普段は絶対にこんなことしないのに……彼が変なことするから、自分も変になってしまったかも。
……そしてあの時、心の中である人の言葉を思い出していた。そのある人とは自分の母親であるカレンチャン。そしてその言葉とは、気になる男性に使えるアプローチの中のその1つ。ママは結婚する前、パパに使ったことがあるらしい。
「……見て見ぬフリなんて、難しいよ……」
「え? 何か言った?」
「…………いや……」
クッションに顔を埋めたまま、今思った率直な気持ちを彼女に告げた。
「ゼルちゃん……」
「なに?」
「やっぱりママって……凄いよ」
ゼルちゃんことルームメイトはそのあともモエちゃんどうしたのどうしたのと詰め寄ってきた。
結局、その日は彼女と夜更かしして色んなことをお喋りした。
◇
あの話し合いから1ヶ月、彼にトレーニングの内容を改めて見てもらい、相談しながら真剣に取り組んでいった。トレーニング量や負荷に心配があるときはちゃんと彼に伝え、それに応じたトレーニングを行った。彼は自分の身体の状態を把握しながら、可能な範囲でトレーニングの量やメニューを調整してくれた。
そして迎えた2月、小倉レース場でシニア級2勝クラスの紫川特別に出走していた。距離は今までと同じ1200m。
道中4番手から2番手に押し上げて、迎えた最後の直線で先頭へ抜け出した。
『カレンモエ先頭! ヒロイックアゲン2番手! カレンモエだ! 突き抜けた突き抜けた!』
後ろから誰も来る気配もないままに、ゴールラインを駆け抜けた。
『そのままリードを広げて……今カレンモエが1着でゴールインッ! 2バ身差をつけましたカレンモエ、完勝です!』
(勝った……やったっ!)
ゴール後右手で小さくガッツポーズをして、息をつくのも忘れて観客席に目を向ける。もちろん見るのは彼がいるところ。
彼とキングヘイロー、ペティがこちらに手を上げている。歓声と拍手のせいで何を言っているかは聞こえないのが残念だけど。
その中で彼と目が合った気がした。ちょっと遠いから、ほんとうに目が合ってるかは分からない。でも、なぜか、目が合ったと感じている自分がいた。そこで彼の笑顔が目に入った。
──ああ、これだ……これが欲しくて、モエは……
笑って喜んでくれている彼を見ると、なんだかこっちまで暖かい気持ちになってくる。
「…………ふふっ」
彼に見えてるかは分からないけど、彼に向かって、小さく笑い返した。
(幕間カレンモエ編)終わりっ! 閉廷! 以上! みんな解散! キミ(ゼルちゃん)もう帰っていいよっ!
ゼルちゃん(????ゼル)
モデルは実馬カレンモエと同世代、同厩舎、同父、さらに母父が同系統のあの馬です。(出番はもう)ないです……たぶん。