底辺キング   作:シェーク両面粒高

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第5話 模擬レース/後

 時は模擬レースの発走から少し遡る。

 

 キングヘイローは模擬レースに集まったウマ娘たちを見渡した。みんな各々準備運動に勤しんでいる。

 周囲や観客席にはウマ娘やトレーナーが多く集まってがやがやとしていた。

 

 この模擬レースに出るウマ娘の大半は私が声をかけて集めたメンバーだ。私と勝負するにふさわしいメンバーを揃えることができたと自負している。スペシャルウィーク、グラスワンダー、セイウンスカイ、そして私を含め、来年のクラシック路線の主役と目されているウマ娘たちを集めたことには理由がある。

 

(このメンバーで勝って私の実力を……私が一流のウマ娘だと証明するのよ!)

 

 単純なこと、私の実力が一流だと証明するためである。

 私が一流のウマ娘だと知らしめる予定であった今月の選抜レースでは、セイウンスカイとスペシャルウィークに負けてしまい3着だった。あのレースではセイウンスカイに先頭に押し出され、力んでしまい実力を発揮できなかった。セイウンスカイにかわされ、スペシャルウィークに外から差されてしまったのだ。

 

(選抜レースはスカイさんの策略が見事だと言うしかないわ。けれど、キングは二度も同じ轍を踏まないのよ!)

 

 選抜レースではセイウンスカイを捕まえるべく、スタートダッシュに全力を注いだことが敗因だったと分析している。以前あった授業でのレースでセイウンスカイに逃げ切られてしまった経験があったので、その二の舞を避けるためであった。

 今回の戦法は中団からの差しでいく予定だ。中団にいれば、前方のセイウンスカイや後方のスペシャルウィークが動いたときに反応しやすい。グラスワンダーは先行~差しの戦法なので、もしかしたら私と同じ位置での実力勝負になる可能性があるが、それなら私は勝つ自信がある。というか、実力勝負で負ける訳にはいかないのだ。

 

(だって私は一流のウマ娘なんだから!)

 

 この模擬レースに勝って、まずは内外にキングヘイローの実力を知らしめる。来年のクラシック路線の真の主役はグラスワンダーでもスペシャルウィークでもない、このキングヘイローだと認めさせるのだ。

 

 まずはレース前に目の前のウマ娘たちに宣戦布告をするとしよう。私は仁王立ちでレースに出るウマ娘たちと向き合った。

 

「おーほっほっほ! 今日模擬レースにお集まりの皆さん、私の誘いに乗ってくれてまずはお礼を言うわ。そして、このキングに挑戦する権利をあげる!」

 

 私の高らかとした宣言に対し、一瞬きょとんとする同期のウマ娘たち。その中で一番に反応したのは、やんわりと微笑んでいるグラスワンダーだった。

 

「キングちゃんがそう言うのですから、全力で挑ませていただきますね~。模擬レースといえど、負けるつもりはありませんよ」

 

 淑やかさの中に鋭い刃を忍ばせているような雰囲気のグラスワンダー。世代筆頭との呼び声高い通称“怪物二世”だ。

 

「私も、キングちゃんやグラスちゃんには負けないよ! 日本一のウマ娘になるんだから!」

 

 力強く言い切ったのはグラスワンダーと双璧を成すスペシャルウィーク。未デビューだが、これまでの選抜レースや模擬レースの結果から大いに期待されている。その証拠に、彼女は今月トップチームの1つであるチームシリウスと契約を結んでいた。

 

「いや~速いウマ娘ばかりだねえ~。セイちゃんじゃ勝負になるか分かんないよ」

 

 両手を頭の後ろに組んで、のんびりした口調で話すセイウンスカイ。

 こうは言っているが、選抜レースではこの娘にも負けたのだ。スペシャルウィークが1着、セイウンスカイが2着、そして私が3着だった。

 

「スカイさん、その手には乗らないわよ。一流のウマ娘として、貴方の策に嵌るわけにはいかないわ!」

 

 このウマ娘は全く油断できない。戦法もさることながら、純粋に速いのだ。本人があの様子なのでまだ注目度は低いが、クラシック級では必ず強敵になるだろうウマ娘だ。いつの間にかトップトレーナーの1人である横水と契約を結んでいたし、本当に抜け目がない。

 

「やだなあキング、私はさっきまでサボろうと思って逃げてたんだよ? そんななのに策が用意できるわけないじゃん」

 

 セイウンスカイは頬に片手を当てて、もう片方の手をひらひらとさせている。本人の言う通りレース前になっても現れず、私自らが探しに行ってなんとか連れてくることができた。

 

「キングも肩肘張らずさ、力を抜いて楽しく走ろうよ~」

「そうだね! 勝負も大事だけど、セイちゃんもキングちゃんも楽しく走ろっ!」

「あらあら、スぺちゃん、私は仲間外れですか~?」

「グラスちゃん? そんなことないよ! グラスちゃんも一緒にレースを楽しもう!」

「……ふんっ。まあいいわ、纏めてこのキングにかかってきなさい!」

 

 和気藹々とした空気ではあるが、みんな本気で走る気でいるようで安心した。全力を出した相手を倒してこそ私の評価と価値が上がるのだ。この3人以外も速いウマ娘が揃っている。10人の誰が1着を取ってもおかしくない。

 

「模擬レース始めるぞー。発バ機移動するからこの辺に待機しろー」

 

 教官の声が10人にかかる。スタート位置に簡易型の発バ機が用意され、その前で準備が整うのを待つ。

 ほどなくして枠入りの指示がでた。私は深呼吸をしてから1枠1番へ、スペシャルウィークとグラスワンダーがそれぞれ4枠4番と5枠5番、セイウンスカイは大外8枠9番に収まった。

 

 全員の枠入りが完了した。あとは教官のホイッスルとゲートが開くことを待つだけ。

 

 そして、

 

 ──ピィーッ! 

 

 ガシャン! と音がしてゲートが勢いよく開く。

 

 自らの力を証明するため、私は走り始めた。

 

 ◇

 

 出遅れもなく揃ったスタートからレースは中盤へと進み、バ群は向こう正面のストレートを過ぎて第3コーナーへと差し掛かっていた。

 ターフを踏みしめる感触を確かに感じながら、模擬レース用に立てられた10のハロン棒を目線だけで確認する。つまり残りは1000mだ。

 

 スタートからセイウンスカイが大外からハナを切り、2番手から3、4バ身離してレースを引っ張っていた。

 私は狙い通りに中団のバ群の中で4番手グラスワンダーの後ろを取り5番手、後ろにいるスペシャルウィークは詳細に確認できないがおそらく殿。スタートからここまでで隊列は変わらずにきている。誰もまだ動きはない。

 

 最後の直線は500mを超え、東京レース場を模したコース形態。仕掛け時を考えながら先頭を走る芦毛の逃亡者に目をやる。こちらからその表情は窺えないが、セイウンスカイには警戒しないといけない。彼女の一挙手一投足に注意しながら走っていく。

 

 第3コーナーを過ぎ、バ群は第4コーナーに入る。

 先頭に立つセイウンスカイが作り出すペースに私を含めた9人が付いていく。ここまでペース的には速いように感じるが──

 

(スカイさんは──)

 

 コーナーでもセイウンスカイから目を離さずに必ず視界に入れておく。

 いつ動く? いつ動く? いつ動く? いつ──

 

(──! きたっ!)

 

 セイウンスカイの姿勢が一気に前傾姿勢になり、それに合わせて急加速する。セイウンスカイが第4コーナーでスパートをかけ後続を突き放しにかかった。

 見る見るうちに2番手との差が開いていく。その差は5バ身から6バ身へと変わっていく。

 

(置いていかれる訳にはいかないわ!)

 

 置いていかれないために足の回転速度を上げる──速く、速く、より速くっ! 

 

 未だに動きのないグラスワンダーを抜き、最後の直線に入る手前で3番手まで順位を上げた。私からセイウンスカイまで5バ身まで再度距離を縮める。

 

(この直線で、この差なら!)

 

 末脚には自信がある。その自信をエネルギーに変え、足からターフへ叩きつけていく。残すのは最後の直線のみ。

 セイウンスカイとの差がぐんぐんと詰まってくる。5バ身、4バ身……途中で2番手のディヴァインライトを交わした。

 

 3バ身、2バ身──残りは400mを切った。

 

(これなら、捉えらえるわ!)

 

 以前は逃げ切られたが二度目はない。後ろから追ってくる足音が聞こえるが、そんなのはもう関係ない。

 セイウンスカイに迫る、迫る、迫る────

 

(────え)

 

 そこで起こった、決定的な違和感に私は気付いた。

 

(──あれ)

 

 セイウンスカイに迫っている。それは間違いない。もう彼女とは半バ身もない。横顔も見えそうなほど。

 でも、この感覚はおかしい。

 

(足が動か──)

 

 足が回らない。

 

(呼吸、が──)

 

 息が苦しい。体、顔が起きる。

 

 景色の進みが遅くなる。

 

(失速、してるっ!?)

 

 明らかに失速しているのが分かる。

 

 ──まだ、ゴールまで200m以上あるのに! 

 

(スカイさん、は──!)

 

 同じ様に──いや、私以上に失速しているセイウンスカイが後退していく。その表情はいつもの飄々とした様子などなく苦悶に満ちていた。

 

(どういうこと? ──スカイさんは後でいい。今は走りに集中するのよ!)

 

 まだレースは終わっていない。今、先頭に立っているのは私なのだ。

 

 だが、それを許さないとばかりに後続が襲い掛かってくる。

 後ろから、ターフを穿つような強烈な足音が2つ、間近まで迫ってきている。間違いなくあの2人が私を捉えようとしているのだ。

 

(負ける、わけには……)

 

 負けるわけにはいかない。そんなことは許されない。死に物狂いで全身に動けと鞭を打つ。

 

(……いかないのにっ!)

 

 しかし、いくら心に鞭を打っても、心臓は、肺は、手は、足は、体は、言うことを聞いてくれない。

 

 残り200mを過ぎた地点。無情にもその瞬間は訪れる。

 グラスワンダーが私を抜き去る。次いでスペシャルウィークが大外から追い込んでくる。見る見るうちに2人に離されるのは私。

 1バ身、2バ身、3バ身……小さくなる2人の背中を、喘ぎながら睨みつける。

 

(この私が、また……)

 

 睨みつけないといけない背中がまた1つ、2つと増えていく。先頭の2人以外にも後続に交わされてしまっているのだ。

 

(負け──)

 

 まず先頭の2人がゴールイン。それに続いていく他のウマ娘。

 

 私は重くなった足を懸命に回しながら、なんとかゴールにたどり着いた。

 

(っ……!)

 

 一流を証明する予定であった模擬レースは、無残な惨敗で終わってしまった。

 

 

 

 

「はあ……はあ……ッ……はあ……」

 

 ゴール後、膝に手をついて酸素に喘ぐ息を整える。

 あちこちで歓声と拍手が起こっており、自分の呼吸の音はそれにかき消されていた。

 

 1着グラスワンダー、1バ身差で2着スペシャルウィーク。レースはグラスワンダーが勝利した。

 私は8着、セイウンスカイは10着で最下位という結果になった。

 

 また……また、負けてしまった。しかし、いつまでも下を向いているわけにはいかない。

 

「くっ……」

 

 唇を噛みながら顔を上げた視線の先にはグラスワンダーとスペシャルウィークが健闘を称え合っている姿があった。

 

「やっぱり……グラスちゃん、凄いね……はあ、はあ」

「ふぅ、ふぅ……スぺちゃんには、負けませんよ」

「次は私が勝つ、から……あっ、キングちゃん!」

 

 2人を見ていた自分にスペシャルウィークが気付いたようだ。

 

「キングちゃんもお疲れ様!」

「え、ええ……」

 

 スペシャルウィークに続いてグラスワンダーもこちらにやってきた。

 

「次もまた、お願いしますね。キングちゃん」

「……次」

 

 次。

 そう、次だ。

 私は、一流のウマ娘であるキングヘイローなのだ。

 

 呼吸を無理やり落ち着かせ、レース後のウマ娘と観客に向かって声を張り上げた。憎たらしいほどの笑みを顔に貼り付け、胸を張った。

 

「おーほっほっほ! 次こそはトップを譲らないわ! キングの走りはこの程度じゃないんだから!」

 

 静まり返る周囲のウマ娘とトレーナー。その中から注がれる冷たい視線。

 

 そんなことは……そんなことは、自分が一番分かっている。

 

「……っ」

 

 言うことは済んだ。引き上げようとすると──

 

「うんっ! また走ろう、キングちゃん!」

 

 宝石のように輝く瞳のスペシャルウィーク。

 

「次も私が勝ちますよ~」

 

 青く燃え盛る瞳のグラスワンダー。

 

「あなたたち……」

 

 応えてくれたこの2人へ、感謝を込めて改めて宣戦布告する。

 

「……勝つのはこのキングよ! 次のレースを楽しみに待っていることね!」

 

 そう高らかに言い放った。

 

「それでは失礼するわ!」

 

 私はトレーニングコースから出るためにコースを背に歩みを進めた。

 

 また、悔しさだけを残したレースになってしまった。

 

 

 

 

 コースから出る途中、あることに気付いた。

 

「……って、スカイさんは?」

 

 振り返ってコースを見渡す。そういえば、ゴール後から姿が見えない。

 

「もう帰ったのかしら?」

 

 気分屋の彼女のことだ。最下位に負けてしまって、むくれてすぐ帰ったのかもしれない。

 それにしてもあのレース中の顔、あんなに苦しい表情で走るセイウンスカイは初めて見た。

 

「スカイさんらしくなかったわよね……故障、かも……心配だわ……」

 

 いつも飄々としている様子のセイウンスカイはその本心が見え辛い。今日もレースをサボろうとしていたが、気が乗らないのではなく、他の要因もあったのかもしれない。故障もしていないか心配だ。

 

「もしそうなら……」

 

 もし無理に誘ってしまったのなら……次に会った時のことを考えながら、校舎のある敷地へ足を踏み入れる。そこで自身の体を見下ろした。

 

「……ドロドロね」

 

 自身の肢体を見ると跳ねた土であちこち汚れてしまっている。なので寮に戻る前に水洗い場へ寄ろうと考えた。コース近くにある水洗い場の周辺はレースを見ていたウマ娘たちで混んでいるので、誰もいなさそうな水洗い場を探すことにした。

 

 何より、独りになりたかったのだ。

 

 ◇

 

 観客席の物陰、そこにセイウンスカイはある女性と2人でいた。

 

「トレーナーさんさあ。こんな指示、セイちゃんはよくこなせたと思うのです。ご褒美が欲しいなー、なんて」

「よくやった。何が欲しいのか言ってみろ」

 

 セイウンスカイと話しているのは妙齢の女性トレーナーだった。スラッとした細い肢体に、レディーススーツをかっちりと着こなしている。

 30歳に届かない年齢の女性であるのに、その物腰は年齢にそぐわず自信に満ち溢れている。

 

「そうですねえ~、じゃあトレーニングを休んで釣りに行ってもいい?」

「構わない」

「ほんと? じゃあ~早速明日お休みってことで~。今日頑張った分、充電が必要なんです」

「分かった」

「やった!」

 

 小さくガッツポーズをするセイウンスカイ。

 

「以上だ。帰っていいぞ」

「あ~、その前に」

 

 踵を返していた女性トレーナーをセイウンスカイは引き留めた。

 

「今日の指示の意味、聞かせてもらえます? 『ハイペースからスパートをかけて最後2ハロンまでで体力を使い切れ』……なんて相当無茶な指示だと思いますよ?」

 

 どこか試すような口調のセイウンスカイ。女性トレーナーは振り返りセイウンスカイの方に向いた。

 

「聞きたいのか?」

「はい」

「まず1つ目は、周りのウマ娘の実力を測ること。ただ単に足の速さもそうだが、ペースを読めるかどうかを試した」

「私もそうじゃないかな~て考えてました。まずってことは、いくつもあったりします?」

「ああ、全部聞かせてやるぞ? 2つ目はお前の実力を隠すためだ。模擬レースで勝ちにいく必要などない。トゥインクルシリーズで勝てばいい。3つ目、ハイペース逃げをするウマ娘だと印象付けること。理由は言わなくても分かるな?」

「私に付いていったら潰れるって思わせること。撒き餌、かな?」

「そうだ。察しがいいな」

「いや~セイちゃん聡明! キャハ☆」

 

 セイウンスカイのウィンクを無視して女性トレーナーは続けた。

 

「4つ目、お前がマイルで持たないと思わせること。ラップを見ればそんなことはないとすぐに分かることだが、一度惨敗するだけで騙されるトレーナーやウマ娘は案外いるものだ」

「なるほど~って、まだあるんですか~?」

「あと2つだ。そして5つ目、お前の実力を測ること」

「……ふ~ん」

「その様子だと、察していたか? 絶対能力が違う怪物級のウマ娘なら暴走しても押し切れるし、後続をもっと離すことができただろうが、お前はそうではなかった」

「そっか~セイちゃん試されてたのか~」

「そして6つ目、これが最後で最も重要だ。お前が私の指示に従うかどうか」

 

 女性トレーナーはそう断言した。

 

「全部が全部、試されていたってことですね。そんなとこかなとは思ってたけど、やっぱり気分は良くないな」

 

 セイウンスカイには先程までのおちゃらけた気配が消えていた。少し眉根を寄せて女性トレーナーと目を合わせた。

 

「試したことについては謝ろう。だが、私のチームに入ったウマ娘にはどんな形であれやっていることだ。私の指示に従うか、否か。指示が聞けないならチームを辞めてもらっている」

「なら、私は大丈夫ってことですよね?」

「ああ」

「ふぅ~、一安心一安心!」

 

 また元の調子のセイウンスカイに戻っていた。セイウンスカイはキングヘイローに連行されるまでサボろうと思っていたことを思い出し、内心冷や汗をかいていた。

 

「心配するな。これからも一緒にやっていこう。お前は怪物ではないが才能がある。その足と、その頭が」

「な~んかしっくりこないけど、褒められてるんですよね?」

「ああ、お前と私ならGⅠに手が届く」

「GⅠだなんてそんな、セイちゃんには恐れ多くてとてもとても」

「そうか? お前の目はそう言っていないぞ?」

「……」

 

 セイウンスカイの顔から上っ面の笑みが消える。

 この女性トレーナーは上手く人の心をくすぐってくる。

 

「私に期待しろ、セイウンスカイ。グラスワンダーを、スペシャルウィークを倒そうじゃないか」

「そう言われると弱いなあ。……セイちゃんも頑張ることにします。横水トレーナーさん。こっちこそ、よろしくお願いします……ね?」

 

 セイウンスカイとその担当トレーナーであるチームアルバリのチーフトレーナー、横水幸緒(さちお)。日の当たらない陰で行われた、2人の会話だった。

 

 そして最後にボソッと、

 

「……キングはそこに入ってないのか」

「セイウンスカイ? 何か言ったか?」

「何でもないですよ~」

 

 その呟きは横水には届かなかった。

 元より、届かせる気もなかった。

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