底辺キング   作:シェーク両面粒高

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追憶14 底の景色

 いくつかの地方トレセンを巡って約半年後の4月、俺は中央に戻ってきていた。一時的にではなく、この4月から中央で再び働くことになったのだ。もちろんアルファーグを辞めて1人のトレーナーとしてだ。

 

 備え付けのものしかないトレーナー室に俺はいた。

 荷開きをしていない段ボールが部屋の隅に積まれていた。

 

「まさか、1年もしないうちに早く戻ってくるとはな……」

 

 ◇

 

 つい1週間ほど前……つまり3月の下旬、佐賀トレセンにいた俺に一本の電話が入った。

 

『坂川さんにURAから呼び出しがかかっています。数日中にトレセン学園の本部棟まで来て欲しいと』

 

 中央の事務局からそんな簡潔な電話があって、急いで準備をして中央へ戻った。

 本部棟に行くと、再びあの糸目の男と会ってこれからのことについて説明を受けた。

 

 

 

『地方への研修は終わりです。アルファーグのサブは3月末をもって辞めてもらい、4月より中央で独立したトレーナーとして働いてもらいます』

『はい。……早いですね』

『こっちも色々あるのですよ。いくつか条件を。まず、キタサンブラックとは一切の関りを()ってもらいます。会ったり話しかけるなんてもってのほかです。彼女の視界に入らないぐらいでお願いします。ちなみに彼女は携帯の番号やアドレスを変えているので、連絡を取ろうとしても無駄ですよ』

『……今更、彼女と関わろうと思いませんよ』

『そうですか? あと、アルファーグのトレーナーやウマ娘についても基本的には関りを持たないようにしてください。彼女の父親から徹底的に排除しろと言われておりますので』

 

 彼女の父親の怒りは収まっていないらしい。当然だ……永遠に収まることはないだろう。

 

『もうひとつ。今から数年間、ウマ娘のスカウトを禁止といたします』

『ということは……』

『この数年、あなたのチームは1月の自動振り分けで配属されたウマ娘のみとなります。スカウト活動は行わないでください。もしウマ娘側からあなたのチームに入りたいと言われても断ってください。いいですね?』

『分かりました』

 

 ──スカウト禁止により彼らが何をするつもりだったのか、このときの俺は知る由もなかった。

 

『だからまあ、極端なことを言えばあなたは1月までやることはないんですよ。それまで好きに過ごしてください。スキルアップに励んでも、再び地方に行ってもいいですし、海外に行ってもいい。仕事せず遊んでいても構いません』

『……それなら、1月まで地方送りにしておけば良かったのでは?』

『こっちにも色々あると言ったでしょう。どうですか。受け入れられますか?』

『……はい。分かりました』

『そうですか。なら4月からまた頑張ってください。空いているトレーナー室、今から案内させます。……それと、キミとキタサンブラックの事件について、トレーナーや教師の間で噂が広まっています。ドーピングの事実まで知っている者はごく少数のようですが、何かしらあった……暴力を振るったとか、そのような噂が流れています。救急車を呼んで騒ぎになったからでしょうね。……噂のことを念頭に置いて、行動していただきたい』

 

 そうして糸目の男と別れた。

 

 

 ◇

 

 

 

「やるべきことは死ぬほどある」

 

 スカウト活動ができないので、今から1月までウマ娘の面倒を見ることはない。

 しかし、悠長にしている暇なんてないのだ。俺には足りないものが多すぎる。

 

 まずは単純な知識と実力。

 キタサンブラックのことにしてもそうだ。彼女は菊花賞1着のあと有馬記念で3着となった。俺の長距離適性がないとの考えは完璧に間違っていたのだ。まだ分からないが、早熟だったという分析もおそらく間違っていた。

 データや数字に固執した、短絡的で凝り固まった考えだった。もっと柔軟に考えるべきだったのだ。

 距離適性の壁があるウマ娘は多い。それ自体は間違っていない。でもキタサンブラックはそうじゃなかった。……実際にレース走ってみないと分からないと言うのも事実なのだろう。それを認めなければならない。データだけで適性を導き出そうとした俺のスタンス自体が間違っていたのだ。

 あの時タイムを落としていたのだって、何か特定の原因があったのではないのだろう。行きたくない天皇賞秋へのモチベーションが上がっていなかったとか、理由無くなんとなく調子が悪かったとか、目に見えない疲労があったとか、色々な要因が複合的に重なったことによるものではないのだろうか。

 

 ウマ娘も生身の生き物だ。全てがデータや数字で分かると思ったら大間違いなのだ。それを俺は分かっていなかった。だから必要以上に自分を追い詰めて、クスリなんてものに手を出してしまった。……キタサンブラックを傷つけ(けが)してしまった。

 データは嘘をつかない。だが、取り扱うのは人間なのだ。

 

 スタンスを、ウマ娘との向き合い方を、考え方そのものを変えていかなければならないのだ。

 

 俺はデータや数字では表せない抽象的なものに弱い。その弱い部分ももちろん埋めていかなければならない。

 しかし、データや数字の分析だって今のままで十分ではない。突き詰める余地はまだまだある。

 

「もっと、いろんな知識や理論を取り入れねえと」

 

 そのために研修や学会には積極的に参加しよう。

 あの糸目の男が言ったように、地方トレセンをもっと巡っても良いだろう。去年10月からの研修では門別、盛岡と水沢、笠松、佐賀……それぞれ大体1ヶ月ほど滞在した。正直、どこもあまり馴染めなかった。でも得たものは確実にあった。南関をはじめ、まだ行けていない地方トレセンは多いので、予定を立てて勉強しに行く必要がある。

 

「……やってやる」

 

 俺は許されない過ちを犯した。本当なら、URAの決定に逆らって自分からトレーナーを辞めるべきだったのかもしれない。地方にいた時にそのことも考えた……でも、結局は辞めることができず、中央に戻ってきた。

 俺はどうやったってキタサンブラックに償うことなんてできない。それぐらいは分かっている。

 

 でも、トレーナーを続けることを選んだからには担当したウマ娘たちを必ず勝利へと導いてみせる。

 

「次は失敗しねえ……!」

 

 そう決意して、俺は再スタートを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そして時は流れ1月になった。

 

 俺のトレーナー室に5人のウマ娘がやって来た。自動振り分けにて俺のチームに配属されたウマ娘たちだった。

 

「お前たちのトレーナーになった坂川健幸だ。最初に自己紹介と……そうだな、目標もあったら言ってくれ」

 

 横一列に並んだウマ娘たちが各々返事をしてくれた。

 

「──です! 私はダービーウマ娘になりたいですっ!」

「──だ! オレはスプリンターズステークスだな!」

「──よ。そうね。とりあえず重賞ぐらいは勝ちたいかしら」

「──です……うう~、わ、わたしは……1回勝てれば、その……」

「──。……特にありません」

 

「そうか。分かった」

 

 俺は彼女たちの顔を見回して大きく頷いた。

 

「お前らの目標を……夢を叶えられるよう、これから頑張っていこう! これからよろしくな!」

 

 俺がそう言うと、5人とも顔に希望が灯ったように見えた。

 

 4月から1月まで出来る限りのことはやってきた。今の俺は去年までの俺より成長していると断言できる。

 確かに5人とも学園内での模擬レースや選抜レースでの成績は芳しくなかった。だから1月までチームが決まらず、自動振り分けで回ってきたのだろう。

 しかし、アルファーグでの経験と、更に積み重ねた知識……それらを生かすことができれば、結果は(おの)ずととついてくると思っていた。

 

「トレーナーさんっ!」

「どうした?」

 

 初日の顔合わせの後、ダービーウマ娘になりたいと言ったウマ娘が俺に声をかけてきた。

 

「トレーナーさんって、若いのにトレーナーになった凄い人なんですよね! 私、テレビで特集されてるの見たことあります! それに、去年まであのアルファーグにいたって!」

「凄いかどうかは分からないが、アルファーグにはいたな」

「いえ、凄いです! 私、そんなすごいトレーナーさんのウマ娘になれて良かったです! パパが、トレーナーさんなら大丈夫だって!」

 

 そのウマ娘は目をキラキラさせて俺を見ていた。期待と希望にあふれた瞳だった。

 

「……ダービーウマ娘目指して、頑張っていこうな!」

「! はいっ!」

 

 その期待に応えられるよう、俺も心の中で決意を新たにした。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 そして月日は流れて9月になった────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────俺のチームに配属された5人全員が、未勝利戦を勝てず退学になった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………はあっ……」

 

 今、最後の1人の面談が終わって、俺は教室からトレーナー室に戻ってきていた。退学になったウマ娘のこれからの進路を決めるために行う、本人や両親との面談だった。

 俺は誰もいないトレーナー室のソファに身体を預け、腕で顔を覆っていた。

 

 先程までの光景がまだ目と耳から離れない。

 

 

 

「この能無しが! お前のせいで娘が勝てなかったんだ!」

 

 そう父親に(なじ)られた。

 

「だから、こんなトレーナー反対だったのよ! 10代でトレーナーになったとか、アルファーグにいたとか、名ばかりで実力が伴ってないじゃない! やっぱり振り分けられる前に、ちゃんと実力と実績のあるトレーナーに私たちからアプローチをかけておくべきだったんだわ! だいたい、チーム全員が未勝利を勝てないとかありえないのよ! きっと無能すぎてアルファーグを辞めさせられたんだわ!」

 

 母親がヒステリックに叫んでいた。

 

「……ひっく……ううっ……」

 

 ダービーウマ娘になりたいと言っていたウマ娘は泣いていた。

 

 

 

 地獄のような光景だった。

 

 

 

「申し訳ございません……私の力不足です……」

 

 俺は頭を下げてただ謝るしかできなかった。

 

 

「謝って許されると思うのか!」

「そう言うなら責任取りなさいよ! ウチの娘を勝たせてよ!」

 

 

 延々と責められる。

 

 俺ができるのは両親の怒りや憎しみを真正面から受け止めることだけだった。

 

 

 

 

 

 

 面談を終えた。結局彼女はレースを引退し地元の高校に転入することになった。

 

 3人が出ていったあと、同席していたベテランの担任教師の男性に声をかけられた。

 

「坂川くん、大丈夫かい?」

「…………正直なところ、あまり……。他の4人の時も、今日みたいに親に何か言われることはあったんですけど、ここまで言われたのは初めてでした……」

「……言いたくないけど、こんなの珍しくも無いよ」

「そうなんですか…………」

「うん。坂川くんはアルファーグにいたから、こんなことがあるなんて()()()()()()()だろう? あんなチームにいるのは最低でも重賞を取れるようなウマ娘ばかりだからね。未勝利戦にすら勝てないウマ娘がいるなんて、別世界の話みたいに思えるんじゃないかな? こうやって、絶望して怒ったり泣いたりする親やウマ娘がいることもね」

 

 否定できない。

 未勝利戦に勝てないウマ娘がいることは当然のこととして知っていた。

 でも、この教師が言った通り、アルファーグにいるウマ娘は最低でも重賞を取れるような……GⅠ級のウマ娘ばかりだったから今まで実際に携わる機会はなかったのだ。

 俺は気にかけてさえいなかった。

 

「これもウマ娘の……トレセン学園の姿だよ。ほんの一握りのウマ娘が栄光を掴む一方で、その数十倍、数百倍の……もっとかもな……ウマ娘たちが涙を呑んでトレセン学園を去っていった」

 

 教師は持ってきていた資料を脇に抱えて立ち上がり、座っていた椅子の背を撫でた。

 

「勝者の椅子は限られた数しかない。だから、それは避けられないし、これからも変わらないだろう。仕方ないと言えば仕方ない。勝ち上がれないウマ娘を担当するなんて、それこそ貧乏くじを引いたみたいなもんだよ。損な役回りさ……誰かが引き受けないといけないんだ。今のキミのようにね」

 

 教師はそう言って先に教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 意識が今へと戻ってきた。

 ソファの背もたれから体を起こして、ひとつ息をつく。

 

「何もできなかったんだな……俺は……」

 

 彼女たち5人全員に俺の持てる全ての知識と技術を注いだ。これまでキタサンブラック1人しか担当したことがなかったから、一気に5人も担当するのは正直骨が折れた。

 でも、段々慣れてきて要領も分かってくると、スムーズにトレーニングを進めることができた。手ごたえだってあった。

 

 

 しかし、誰一人として勝てなかった。それどころか、誰一人掲示板にさえ入れなかった。

 

 

 最後の未勝利戦を終えた5人のウマ娘たちの顔が今でも鮮明に思い出せる。

 

 人目もはばからず大泣きしたウマ娘。

 負けた現実を認められなくて物に当たるウマ娘。

 髪の毛を掻きむしって取り乱していたウマ娘。

 何が起こっているか分からず呆然としているウマ娘。

 この結果を分かっていたとばかりに諦めの溜息をついたウマ娘。

 

 

「……」

 

 

 未勝利戦を勝てなかったウマ娘と向き合うのが辛かった。

 全てが終わってしまった彼女たちになんて言葉をかけていいのか分からず、俺は立ち尽くしているだけだった。ただ面談のことを言って聞かせるしかできなかった。彼女たちの姿がキタサンブラックが負けた時の姿と重なって、余計に辛くなっていた。

 ……悔しかった。

 

 その後の面談も心に堪えた。

 重い雰囲気になることぐらいは承知していた。ウマ娘本人や親から何か言われるだろうと覚悟もしていた。

 でも、他人から純粋な怒りや憎しみをぶつけられるのがこんなに怖いものだとは思わなかった。彼らの言葉のひとつひとつが俺の心を抉っていった。

 あの5人の親が全員そうだったわけではない。冷静に現状を把握して、俺を気遣って話してくれる親もいた。でも……悟ったかのようにどこか諦めた雰囲気があり、それも俺の心をじわじわと削っていった。

 ……遅すぎる無念と後悔が心の奥底で渦巻いていた。

 

 

「勘違いしてたんじゃねえのか……? 足りねえんだよ……何もかも……」

 

 

 勝たせてやれなかった悔しさと自分への怒りが混ざりあった感情が湧いてくる。

 

 俺は勘違いしていたのだ。

 足りないと言いながらも、新人研修では同期で一番だったり、1年目でキタサンブラックに重賞を勝たせた過去から、心の奥底で得意になっていたことに気がついた。無意識的に俺は自分を()()()トレーナーだと思っていた。

 ……驕りでしかなかった。キタサンブラックが凄いウマ娘だっただけの話だ。

 

 俺は天才じゃない。凡人だ。実力も経験も知識も不足していて、担当ウマ娘1人さえ満足に勝たせることのできない、力不足のトレーナーだと理解しなければならない。

 中央に戻ってから今日まで、一切手を抜かずに努力した。でもそれでは足りなかったのだ。

 

 今から4ヶ月後……次のウマ娘が再び配属される1月まで、時間は残されていない。

 無力感に苛まれるのはもう御免だ。

 

「次こそは……必ず……」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 12月24日、有馬記念。キタサンブラックのトゥインクルシリーズ引退レース。

 俺はトレーナー室のテレビでその模様を見ていた。

 

『これが! 現役最強ウマ娘の引き際だぁ!!!』

 

 キタサンブラックが逃げ切って優勝。ルドルフに並ぶGⅠ7勝目を手にするとともに、現役最強のままトゥインクルシリーズを去ることになった。ジュニア級からシニア級2年までの約4年間を最高の形で締めくくった。

 こぼれるような笑顔をした彼女を大声援が包んでいた。……成長した彼女はあの頃よりも少し大人びた顔になっていた。

 

「……夢が叶って、本当によかったな。お前は立派だよ、キタサン……」

 

 彼女はトゥインクルシリーズの主役にとどまらず、日本の主役となった。日本の誰もが彼女を知っているし、その明るいキャラや王道路線を戦い抜く姿から凄まじい人気を誇っていた。

 テレビや雑誌などのメディアに引っ張りだこ。グッズだって飛ぶように売れているそうだ。

 

 並外れた実力と人気を併せ持つ歴史的名ウマ娘。それがキタサンブラックの現在の姿だった。

 

 ほんの数年前、俺のそばにいたとは思えない。完全に別世界の住人だった。

 

 結局俺はキタサンブラックのレースを全て見ていた。レースだけでなく、追い切りの映像が出たら状態やフォームをチェックして、ニュースや記事の情報も目を通していた。

 ……もう自分の担当ウマ娘でもないのに。俺が彼女に指導することなんて永遠に訪れないのに。でも、気がつけばそうしている自分がいた。

 なんでこんなことをしているのか自分でも分からなかった。彼女が心配だったのか、応援しているだけなのか、自分の中で答えは出なかった。

 これを彼女が知ったら嫌がるだろうか。……俺なんかに気にかけられるどころか、レースを見られることさえ嫌かもしれない。

 でも、彼女がそう思っているかもしれないと考えても、俺はそれを止めることができなかった。

 

 

 

 

 ウイニングライブでアンコールに応え最後の曲を歌い終えたキタサンブラックは、マイクを持って観客に呼びかけていた。

 

『みなさんっ! 今日はこんなハレの日にお集まりいただき、ありがとうございますっ!!!』

 

 観客が大歓声でそれに応える。

 

『ご存知とは思いますが、あたしは今日でトゥインクルシリーズを引退して、ドリームトロフィーリーグへ移籍します! だからっ、トゥインクルシリーズのウマ娘キタサンブラックとしてはっ、今日が最期の走りと歌になります! だから、みなさんにお聞きしたいんですっ!』

 

 DTLへの移籍……前々から報道で出ていた通りだ。

 

 カメラが真正面から彼女を捉えた。本人は観客席を見ているのだろうが、角度的なものなのか完璧にカメラ目線になっていた。なので、彼女と目が合っているような気がしてしまう。

 俺は彼女の緋色の瞳に見つめられていた。

 

 

『あたしの走りで、あなたに笑顔と元気を届けられましたか?』

 

 

『あたしの歌で、あなたに感謝の気持ちを伝えられましたか?』

 

 

『あたしは、あなたの夢になれましたか?』

 

 

 その問いかけのどれもに、観客は大歓声を送って肯定し、サイリウムを振っていた。

 

『……っ…………』

 

 そんな様子を見て感極まったのか、キタサンブラックの瞳が潤んだ。

 

『……ありがとうございますっ!!!!! こんなに応援してくれるみなさんがいて、あたしは果報者ですっ!!! ドリームトロフィーリーグでも、笑顔と元気を届けられるよう頑張りますっ!!! これからもどうか、応援よろしくお願いしますっ!!!!!』

 

 彼女はそう締めて、舞台は幕を下ろした。まさしく大団円だった。

 

 夢を叶えた彼女の姿を見て、感慨深いものが心を満たしていた。

 

「俺も、もっと頑張らねえと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして1月がやって来た。今年は6人のウマ娘が自動振り分けで俺のチームに配属となった。

 新しく決まったその6人の学園内でのレース結果を調べていた。

 

 その結果を見て、得心が行った。

 

「…………そういうことかよ」

 

 あの糸目の男が俺にスカウト活動を禁止させて、何をしたかったのか分かったのだ。

 

 

「去年のウマ娘も、今年のウマ娘も、みんな模擬レースや選抜レースで最下位の奴らばっかじゃねえか……」

 

 

 俺のチームに配属されたウマ娘たちは学園内のレースで軒並み最下位のウマ娘ばかりだったのだ。過去を遡っても良くてブービー、上位に入ったウマ娘は1人もいない。距離ごとの最下位のウマ娘たちを選抜して俺のチームに送り込んでいるようだ。

 ここまで露骨なら偶然ではないだろう。おそらく意図的にそうしている。

 

「そんな奴らを俺に担当させて……何が目的だ……」

 

 学園の落ちこぼれ──彼女たちをこう言いたくはないが──ウマ娘たちを俺のチームに送り込んでいるのは分かった。

 しかし、その目的は分からない。単なる嫌がらせなのか。勝てる見込みのないウマ娘を体よく送り込む掃き溜めにしているのか。……俺に期待して、ということは無いだろう。

 

「……考えても仕方ねえ」

 

 その真意がどうであれ、やることは変わらない。

 

「今度こそ……絶対に……」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 そして再び9月────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────また、6人全員が未勝利戦を勝てず退学になった。

 

 

 

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