第60話 閃光乙女との三者面談
カレンモエがシニア級1年の秋、3勝クラスの長篠ステークスを勝った一週間後の土曜日。
休日のトレーニングを午前で終えた昼下がりのトレーナー室に、俺を合わせて2人の姿があった。
俺はいつもの作業服からフォーマルな服装に着替えて、壁掛けの時計に視線をやりながらその時を待っていた。もう10分足らずで予定の時刻になる。
お茶の湯は沸かした。お茶請けは既にテーブルに用意した。掃除もした。話すことだって決めている。
準備は万端……なのだが、自分の城ともいえるトレーナー室なのに気分は落ち着かず、そわそわしているように我ながら感じる。
「…………」
遊びではない。大事な話をしなければならないのは確かだ。
だがまあ、そもそもの話──
「……トレーナーさん」
「なんだ?」
俺に声をかけたのは、休日なのに制服を着ているカレンモエ。
ここトレーナー室で俺たち2人はあるウマ娘が来るのを待っていた。
「緊張してるの?」
「……作業服以外は落ち着かねえと思ってただけだ」
「そう……? あ、ママ学園についたってメッセージ来たよ」
ママ──カレンモエの母親、カレンチャン。俺たちは彼女が来るのを待っていた。
今日は何を隠そう、三者面談の日なのだ。
◇
そもそも、俺はカレンチャンのことが少し苦手だった。基本的には好意的に接してくれて助かるのだが、時々予想もしないような……返答に困ることを訊いてくることがある。これまで何度か行った面談の中で、彼女の手のひらで踊っているとは言わないまでも、会話の主導権はほぼ彼女に握られていた。
カレンモエにメッセージが届いてから数分後、そのカレンチャンが遂にトレーナー室までやって来た。
「失礼します。こんにちは、トレーナーさん!」
彼女の一切曇りない笑顔とキラキラ輝くオーラにたじろぎそうになったが、平静に振る舞うよう努めた。
「こんにちは。本日はよろしくお願いします」
「ママ……!」
「モエちゃんも! 会うの久しぶりだね」
「うんっ」
暗い色のタックブラウスに膝丈の赤いフレアスカートを身に着けたカレンチャンをカレンモエが迎え、2人は近況を話し合っていた。母娘の仲は相変わらず良好なようだ。
年末年始でも帰省しないカレンモエにとって、面談は親と会える貴重な機会だ。表情を柔らかくしてカレンチャンと話している光景はとても微笑ましかった。
2人は本当によく似ていた。カレンチャンも実年齢である30代になんて見えず、傍目からは双子の姉妹にしか見えない。2人の関係を知らない者が100人いたら、その内100人が双子だと答えるだろうと思うほどには瓜二つだった。
一方で、カレンモエをよく知っている俺は一瞬で見分けがつく。カレンモエの方が濃い芦毛であることや、目鼻立ちのパーツが似ていても明るい表情の母とフラットな表情の娘など、外見的な差もあるが、そもそも醸し出す雰囲気が母娘で全く違うからだ。
俺は茶を淹れてテーブルに着き、並んで座る母娘2人と向かい合う形になった。
「トレーナーさん、今日もカッコいいですねっ」
──来た。見え透いたお世辞だ。キャバクラの女の常套句じゃあるまいし……これには──
「……ありがとうございます」
──こう答えておけばいい。否定は付け入る隙を与えるだけだ。
「あっ、トレーナーさん冗談だと思ってます? ウソじゃないですよー。本当にカッコいいって、思ってるんですから!」
ありがとうございますと返した意味が無かった。
その声色に一切の嘘を感じさせないのが恐ろしい。若い頃の俺ならコロッと騙されていたかもしれない。
「外見だけじゃなくて、モエちゃんからトレーナーさんのカッコいいところやカワイイところもたくさん聞いて知ってますし」
「!? ちょっと、ママ……!」
カレンモエは困ったようにカレンチャンの服の裾をくいくいと引っぱっていた。
……俺にカッコいいところなんてあるのだろうか? カレンモエの前では酒で酔いつぶれたりや泣いたりなど、大人にあるまじき情けない姿しか見せてない気がするが……
アラサーのおっさんがカワイイ? 意味が分からなかった。
「それにですけどー。実は私、トレーナーさんのこと、すごくタイプなんですよ?」
「は? タイプ?」
「はいっ。もちろん男性として。……私には夫がいますけど…………ねえ、トレーナーさん……」
「なんでしょう……?」
先程までの爛漫さは何処かへ行き、代わりに大人の女の熱っぽい視線に見つめられていた。綺麗な彼女の瞳に吸い込まれそうだ。
その時だった。テーブルの上に乗せていた手に妙な感触を感じて視線を落とした。
「……!?」
テーブルに乗せた俺の手の上に、いつの間にかカレンチャンのしなやかで柔らかい手が重ねられていた。
「私のこと……カレンのこと、カワイイって言って?」
「……は?」
小首をかしげ、艷やかな唇から甘く言葉が紡がれる。
理由は分からないが、彼女から目が離せなくなる。
「トレーナーさんがカワイイって言ってくれるなら。カレンを求めてくれるなら──」
何百万人といるSNSのフォロワーが憧れる、カワイイの化身の美貌がすぐ目の前にあった。吐息を交わせそうなほど近くに。
いつの間にか彼女の指が俺の小指に絡みつき、弄んでいた。俺の小指は優しく嬲られ、擦り合わされる手から彼女の熱っぽい体温が伝う。
漂ってくるのは香水のうっとりするような甘い香り。
薄紅に染まった頬と、潤む瞳。
「──カレンのこと、好きにしていいよ?」
甘美で、魅惑的で、とろけそうな何かが、脳へと直接入り込んでくる。
カレンチャンの姿と声と匂いが、頭の芯を甘く痺れさせる。
「ねえ……カワイイって、言って?」
カワイイと、それを口にするだけでカレンチャンを俺のものにできる。
あのCurrenを俺の好きにできる。
「……」
鼓動が高鳴り、ごくりと生唾を飲み込む──
「……はあ……」
──なんてことはなかった。
俺から出たのは深いため息がひとつ。
「……もういいでしょうか?」
「……あっ」
あまり力が込められていなかったカレンチャンの手から自分の手を逃して、彼女から距離をとった。
「前にもお伝えしましたが、こういう悪ふざけはやめてください」
最初から彼女の悪ふざけだというのは分かっていた。内容は違えどこれまでに何度もからかわれていたからだ。
これは彼女流の俺への挨拶みたいなものなんだろう。今までこんな親はいなかったので、初対面の時は流石に辟易して対応に困っていたが、今ではもう慣れてしまった。……一瞬だけ持っていかれそうになってはいたが。
「つれないなあ〜トレーナーさん。今日もダメだったか~。今日のカレン、カワイくなかったですか? 頑張ったんだけどな~」
「お綺麗だとは思いますが……」
年齢の陰りなど微塵もない彼女にそう思ったことは確かだが、それぐらいでは我を失わない。
「……ママ、トレーナーさんに冗談でも変なこと言うのはやめて」
カレンモエは呆れてそう言っていた。
「パパだってそんなこと言ってるの知ったら、落ち込んじゃうよ」
「大丈夫。ママがパパを愛してるってこと、パパはちゃーんと分かってるから」
カレンモエから以前ちらっと話を聞いたが、カレンチャン夫婦は今でも仲睦まじいらしい。俗に言うとラブラブとのこと。
「でも~、嫉妬するパパも見てみたいかも。あ、思い出した。まだLANEで送ってなかったね。この前パパと一緒に行ってきて──」
「あ……ここ綺麗──」
カレンチャンはスマホを取り出して娘に何か写真や動画を見せているようだった。
カレンチャンは頻繁にSNSに映えスポットの自撮り写真を上げているが、そのほとんどは夫と一緒に行っているものだとか。
スマホを眺めて楽しそうにしている母娘を邪魔するのは気が引けるが、こっちとしても本題に入らないといけない。
俺は小さく咳払いをした。
「……そろそろよろしいでしょうか」
はーい、との返事とともにスマホをしまった母と娘と向き合った。
「今日はモエさんのこれまでと、これからのお話をしようと思います。ではこの前の長篠ステークスまでについて──」
そうして面談が始まった。
まずはカレンモエのレースや戦績などこれまでの道のりを振り返っていく。途中途中で身体の状態も挟みながら。
元々カレンチャンに1ヶ月に一度の報告はしていたり、前回の面談が半年前の2月の紫川特別が終わった後と間隔が短いこともあり、話自体はスムーズに進んでいった。
8月の3勝クラス佐世保ステークス2着だったが、1週間前の3勝クラス長篠ステークスで1着。カレンモエは無事に条件レースを勝ち上がりオープンクラスのウマ娘になった。
カレンチャンは相槌を打って話を聞いてくれていた。
「……以上がこれまでの話となります。そして──」
「モエちゃんのこれから、ですね?」
カレンモエのこれから──これが今日の本題だ。
改めて整理すると、カレンモエは高等部3年のシニア級1年だ。彼女は来年度もトレセンに残って現役を続ける気でいる。それをカレンチャンに正式に伝える日なのだ。
中央で勝ち上がりトレセンに残っているウマ娘の大多数が高等部3年の年度末に学園の卒業を選ぶ。高等部3年で一般的な高校のカリキュラムが終わるので、進学や就職するならこの時期の卒業がタイミング的には一番良いからだ。
高等部3年……シニア級2年の4月以降も走り続けるのは、それこそGⅠや重賞戦線で戦えるウマ娘が中心で、他には怪我で今まで満足に走れていなかったり、現状より上を目指せる見込みがあるウマ娘だ。あとは選手生命の長いダート路線のウマ娘は芝に比べれば残る数は多い。
しかしレースを続けて成績を残せるなら良いが、もしそうでないなら現役続行はデメリットがほとんどだ。客観的に見れば貴重な20歳前後の時間を成果なく費やしてしまい、社会へ放り出される時期が遅くなるだけなのだ。ある程度結果を残せているなら評価されるが、世間でも重賞戦線のウマ娘以外は高等部3年で学園を卒業するのが半ば一般的な見方になっているせいか、勝てないのにトレセンに残っていると逆に対外的な評価は低くなる傾向にある。
卒業か現役続行か……カレンモエの人生における重要な岐路だ。
俺とカレンモエは話し合って現役続行を決めている。あとは親……ここにいるカレンチャンの理解を得ないといけない。一応、俺が毎月送るメールの中で現役続行を娘が考えているとは伝えてあった。カレンモエも電話やメッセージで似たようなことは言っているらしいが、こうやって実際に対面して伝えるのは今日が初めてなのだ。
「……トレーナーさん。ママにはモエが直接話すよ」
カレンモエは口を開きかけた俺を制し、隣にいる母親に向き合った。
カレンチャンは表情を崩すことなく、ただ娘の顔を見ていた。
「ママ。モエは走りたい。レース続けたい」
「……どうして?」
「もっと走れると思うから。先週やっとオープンウマ娘になって、これから重賞にも……GⅠにも挑戦したい。勝ちたい」
「…………」
走るというウマ娘としての本能を訴えるカレンモエ。
対して押し黙り品定めするように娘を見るカレンチャン。
「モエちゃん。カワイくない」
「……え?」
「今のモエちゃん。全然カワイくなーい。そんなんじゃママ、現役続けるの許可できませーん」
カレンチャンは両の人差し指でバツ印を作った。
「っ!? ……ママ……」
カレンモエはあからさまに怯んでいた。ここまで動揺する彼女も珍しい。
まさか現役続行を拒否されるとは思ってなかっただろう。かく言う俺もそうだった。彼女からの返信で卒業か現役続行かについて言及は無かったものの、今までの彼女の人となりからこうも取りつく島もなく簡単に拒否されるとは──
……ん? カワイくない? どういう意味だ?
「ねえモエちゃん。ちゃんと、言お?」
「……ちゃんと?」
「もっと走りたいって、重賞やGⅠ勝ちたいのも本当だってママ分かってる。でも~」
カレンチャンが意味ありげに俺の方を見た。
「それだけじゃないでしょ?」
「! …………」
カレンモエも親につられて俺の方へ視線をやった。数秒間、静寂の中で彼女の澄んだ青色の瞳と俺の視線が交錯した。
……俺?
「…………うん」
「言ってみて。モエちゃんは、どうして現役続けたいの?」
「モエは……」
再びカレンチャンと向き合ったカレンモエは、俯きながらそれを口にした。
「……トレーナーさんともっと走りたい。トレーナーさんと……もっと一緒にいたい」
「…………」
カレンモエは俯いたまま。
俺は何も言葉が出なくて、母娘の顔に視線を行ったり来たりさせえるだけ。
そんな俺たちを見たカレンチャンは顔をほころばせて笑った。
「うんうん! 今のモエちゃん、すっごくカワイイよっ!」
「……ママ」
「モエちゃんはおっけーだね。あとはトレーナーさん!」
「は? 私ですか?」
「はいっ。モエちゃんみたいなカワイイ女の子にここまで言ってもらえるんですから~、トレーナーさんも言うこと、ありますよね? カワイイところ、カレンに見せて?」
カワイイの意味は不明だが、文脈から俺が何か答えないと“おっけー”をもらえないことだけは分かった。
……答えるべきことはある。あの夏合宿で俺の過去のことを話した後、カレンモエに言ったことがある。
それを改めて言ったらいいとは思うのだが…………些か親であるカレンチャンの前で言うのは──
「もうっ。トレーナーさん、早く言わないとカワイくないですよ」
「は、はあ……」
「……トレーナーさん」
顔を上げたモエはまだダメージが残っているかのように、恥ずかしそうに頬を薄く染めていた。訴えかけるような彼女の視線が俺に刺さる。
この母娘からは逃げられそうになかった。同時に逃げたくもなかった。こうも言ってくれたカレンモエを裏切ることだけはしたくなかった。
「……モエさんが走り続けるなら私も一緒にいます。私も…………」
「私も……なんですか?」
「……モエさんと、一緒にいたい……です……」
「…………あははっ! トレーナーさんカワイイですよっ」
満足がいったとでも言いたげなカレンチャンの笑顔だった。
「うんっ。モエちゃんもトレーナーさんもっ、カワイイからおっけー!」
「ママ、それじゃあ……」
「現役続けてもいいよ。モエちゃんが納得いくまでね。パパからもおっけーは貰ってるから大丈夫。……これから大変なことが多いよ。上だけじゃなくて、下からも強いウマ娘がやってくるからね。頑張って!」
「! ありがとう、ママ……!」
母娘はそう言って抱き合っていた。
なんとか言質を取れた俺は内心ほっとしていた。
娘との触れ合いが終わったカレンチャンに改めて向き合った。
「ありがとうございます。トレーナーとして、責任を持って努めてまいります」
「はい。モエちゃんのこと、しっかり“責任”取ってくださいね。トレーナーさん♪」
その後は堅苦しい話は無しにして雑談に興じた。
母娘が仲良くしているのを、俺はたまに合いの手を入れながら眺めていた。
あっという間に時間も経過しそろそろお開きとなったところで、カレンチャンは思い出したように話し始めた。
「……あっ、そうだ」
「どうかされましたか?」
「最初に言っていた、トレーナーさんがタイプっていうの、本当に嘘じゃないですよっ」
「はあ……?」
今更改まって言うことだろうか。そんな訝しむような態度を取っていたかと逆に心配になった。
「それにー、私とモエちゃんは好みがよく似てるんです。服もそうだし、アクセとか。それに男の人の好みも……ねっ? モエちゃん?」
「ママ……もうっ」
「あははっ。じゃあこれで失礼しますねー。またね、モエちゃん」
カレンチャンは嵐のようにやって来て、そして去っていった。
「…………」
彼女には敵わない。改めてそう思わざるを得なかった。
◇
カレンチャンが帰ってから片付けなどが一段落した俺は、ネクタイを緩めてソファに身を落とし、カレンモエが淹れてくれたコーヒーを啜った。
「はあ~。やっぱお前の母ちゃんは凄いわ……」
「そうかな?」
マグカップを手にしていたカレンモエは俺の左隣に座った。
「レース、続けられそうで良かったな」
「うん。……ママは最初から許可するつもりだったと思うよ」
「そうかねえ……」
カレンチャンがいた時とは違い、ゆっくりとした時間が戻ってきた。ようやく一息つけた。
「ママの言ったこと、あまり気にしないでね」
「分かってる。からかわれているだけだろ? 何も気にしてねえよ」
「…………」
彼女の雰囲気が少し変わった。少し不満そうな……
「……んっ」
「は? お、おい!?」
カレンモエは俺の肩に頭を預けるようにもたれかかってきた。まるであの夏合宿の日のように。
「……でも、ママに手を触られて見つめられてたとき、危なかったでしょ?」
「は? ああ、あれか。いや別に…………っ?」
カレンモエの手が俺の左手に重なった。先程、カレンチャンが俺にそうしてきたように。
さらに彼女は俺の小指に自身の小指を絡めてきた。
カレンチャンより温かい彼女の体温が、重なる手と絡む指から伝わってくる。
「……ほんとう?」
「当たり前だろ。何回もやられてるんだから……モエ、触るのはもう止め……!?」
「んー……?」
カレンモエの次なる標的は俺の左手の薬指だった。
俺の薬指が優しく弄られ愛撫されている。
次第に俺と彼女の肌の境界線が曖昧になってくる。
手を引き抜こうとするが、図ったように顔を上げたカレンモエと目が合った。
いつの間にかカレンモエから発せられる蠱惑的な空気に俺は包まれていた。
俺の身体が動かない。ただ手を重ねられて、指を触られて、見つめられているだけなのに。
「きもちいい?」
「──っ」
その気持ち良さに浸りそうになって──
──ガタンと音がして、勢いよく扉が開いた。
「トレーナー! 面談は終わったのでしょう!? 京都新聞杯について────!!!???」
「さっきカレンチャンが校舎出ていくの見えましたよ。京都新聞杯に出走を考えてるってウマ娘の情報を集めました! やっぱりスペシャルウィークは出るみ────!!!???」
扉の先にはよく見知った2人のウマ娘がいた。今更名前を言うまでもない。
「「…………」」
2人は呆然として立っていた。
この状況は不味い、と思った。夏合宿でマコに見られたときと比べものにならないぐらい。
「いや……これは……おいモエ離れろ!」
「……ふふっ」
「はっ──?」
カレンモエは薄く笑うと、さらに深く俺にもたれかかって密着してきた。肩ではなく俺の胸に頭を預けてきた。
彼女の髪からは甘い匂いがふんわりと漂ってきた。
どこからどう見たって、男女が手を繋いで身を寄せ合っているようにしか見えない。
そんな姿を2人に見せつけるような格好になった。
「お、おいっ!」
押し返してもびくともしなかった。ヒトがウマ娘の力に勝てるはずもないと、こんなところで実感してしまった。
「な、な、な…………」
「…………ええ……」
顔を真っ赤にして形の良い眉が吊り上がってきたキングヘイロー。
口をへの字にしてドン引きしているペティ。
「なにしてるのよーっ!!!???」
キングヘイローの大声が上がってやっと、カレンモエは離れてくれた。
その後、カレンモエの悪戯だと弁明しても2人は納得してくれなかった。俺だけ2人に詰められることになった。
おそらく、何も弁明せずいつもの表情をして黙っているカレンモエのせいだった。