底辺キング   作:シェーク両面粒高

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第70話 マイルチャンピオンシップ

 俺は息抜きがてらトレーナー室のソファに深く身を沈め、先程買ってきて机に放ってあった雑誌を手にした。

 

 雑誌には今週末に控えているマイルチャンピオンシップの特集が組まれていた。レースの勝ちウマ娘予想のページを開くと評論家や予想家といった連中が人気上位と思われるウマ娘たちについて座談会形式で各々意見を述べていた。

 エアジハード、ブラックホーク、キョウエイマーチと来てキングヘイローの番になった。

 

『想定3番人気か4番人気ですが、安定感もないし人気ほどの信頼はありません』

『安田記念11着、宝塚記念8着、毎日王冠5着、天皇賞秋7着と凡走続き。掲示板確保が精一杯でしょ』

『個人的には本命ですけどね。このウマ娘京都は合ってると思うんです』

『母親が早熟のグッバイヘイローですよ? このウマ娘も大概ピークアウトしてると思いますけどねえ』

『GⅡやGⅢを勝つ力はあるが、GⅠレベルではないのは明らかでは。身の丈に合わないGⅠに出るよりローカルの重賞を狙うべきだ』

『中距離に戻ったかと思えばまたマイル。トレーナー含めて一貫性が見えないです』

『安田は大敗したが、2強を崩す一発があるとすればこのウマ娘』

 

 

「相変わらず好き勝手言われてんな~……よっと」

 

 雑誌を閉じて立ち上がり、窓際で日の光を浴びて体をひと伸びさせた。

 少しリフレッシュできた。

 

「よし」

 

 デスクに戻りモニターを眺める。そこにはキングヘイローの現在の状態や調整メニューについて作成した文章ファイルやデータが表示されていた。

 

 キングヘイローの状態はこの秋に入ってから一番良い。臨戦過程も問題なく、良い具合にレースを叩いてマイルチャンピオンシップを迎えることができそうだ。

 あとはレースのシミュレーションや作戦の大詰めだ。枠のことも考えておく必要がある。内枠だけは避けて欲しいので、ここだけは神頼みしかない。

 

「……キング、勝たせてやりてえな……」

 

 ずっと悔しい思いばかりしている彼女に何とかGⅠを勝たせてやりたい。トレーニングに手を抜いたことなんて本当に一度も無くて、俺の提示するトレーニングメニューを必死にこなしてくれている。

 彼女は敗北の後いつも泣きそうになっている。努力が報われなかったことと敗北の悔しさを真っすぐに受け止めて、傷つきながらもここまで歩んできたのを傍で見てきた。

 

 そんな彼女を勝たせて……いや。

 

 

 ──『私とトレーナーでGⅠを取るのよ!』──

 

 

「……忘れてねえよ。2人で取るんだったな」

 

 

 ◇ 

 

 

 

 夏を越え、秋を迎えた。

 

 秋もマイル路線を中心にレース選択をする予定だったが、マイルチャンピオンシップは11月なので、9月と10月にそれぞれ1レースずつ走ることに私たちは決めた。休養十分で挑んだ安田記念の失敗から、間隔を開けずに何走か叩く方が良いとの判断だった。

 

 

 秋の始動戦は毎日王冠を選んだ。結果は圧倒的一番人気のグラスワンダーが勝利。私は二番人気に推されるも結果5着だった。

 スタートは成功し前の方に出られたので、坂川の指示通り外枠を生かして誰にも邪魔されない外を走っていたが、どうにも休み明けの影響か追走に脚がついていかず、向こう正面では最後方からレースを運んでいた。

 コーナーから進出し前方にいるグラスワンダーを標的に捲っていった。しかし最後の直線では末脚が不発に終わり勝利には至らなかった。

 

 

 次走は私のライバルが多く出走した天皇賞秋。

 外枠からスタートを決め先行し、好位から内につけて最後の直線を迎えた。しかし、今回も末脚は発揮できず思うように伸びなかった。スペシャルウィークが外から圧倒的な末脚で駆けていき、京都大賞典の不調からの華麗に復活するのを内ラチから眺めることしかできなかった。

 私は7着。同世代のウマ娘は、スペシャルウィークが1着で天皇賞春秋制覇、春のマイル王エアジハードが3着、まさかの中団からレースを運んだセイウンスカイが5着、他にはツルマルツヨシが8着だった。

 

 毎日王冠も、天皇賞秋も、負けた悔しさはこれまでと変わらない。負けた後はいつも涙が滲んでしまうけれど、両手を固く握りしめることはできていた。

 

 

 次はこの秋大目標のマイルチャンピオンシップ。京都レース場外回り1600mで行われる下半期のマイル王決定戦。

 

 ここ数走、不甲斐ない走りばかり続いている。そんな悔しさを全てトレーニングへとぶつけた。

 

 

 今度こそ……GⅠを。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 11月21日、マイルチャンピオンシップを迎えた。

 安田記念を勝ったエアジハードと、前哨戦スワンステークスを勝ってきたブラックホークの一騎打ちの様相を呈していた。宝塚のスペシャルウィークとグラスワンダーと似たような感じだった。

 キョウエイマーチが3番人気、続いて私が4番人気となっていた。

 

 本バ場入場を迎え、ターフに出た私たちに対し実況の紹介文が朗々と読み上げられていた。

 

 

『3枠6番。新たなるマイル王へ。エアジハード』

 

『5枠9番。最強世代の意地、なんとかGⅠを。キングヘイロー』

 

『5枠10番。同期のライバル、メジロドーベルに負けじと今日も逃げる。キョウエイマーチ』

 

『7枠15番。二度の挫折を克服してこの舞台へ。ブラックホーク』

 

 

 ゲート前で枠入りの声がかかるのを待つ。集中し、尚且つ視野が狭くなり過ぎないように意識して時々辺りを見回す。エアジハードとブラックホークは調子が良さそうだ。

 そんな風に他の出走ウマ娘も見ていると、ふと気づいたことがあった。

 

(そういえば、一人もいないわね……)

 

 今日出走する私以外の17人の中に、私と一緒にクラシック三冠を走ったウマ娘が一人もいないのだ。

 確かに今日の距離は1600mで、対するクラシック三冠を構成する3つは中長距離だ。だからそれは不思議じゃないのかもしれない。クラシック三冠を走るようなウマ娘は普通その後も中長距離のレースを選ぶだろう。

 

 逆に菊花賞にも出た私がマイルに行く方が……いいや、違う。

 

 

 私は選んだんだ。この道を。私だけの道を。

 

 

「……ふぅ」

 

 ファンファーレが鳴り終わり、ゲート入りが進んでいく。これでトゥインクルシリーズ18戦目。ここ京都でメイクデビューしてから2年以上の月日が経過していた。

 

 ゲートに入り、その時を待つ。

 

 

『さあ間もなくゲートインは終わろうとしています。タイキシャトルがターフを去って1年経ちました。新たなるマイル王へ名乗りを上げるのはエアジハードか、ブラックホークか、あるいは…………態勢完了です』

 

 

 全員枠入りが完了し──

 

 

 ──ゲートが開くと同時に飛び出す。

 

 

『スタート! 綺麗なスタートです! 18人見事なスタートを決めました! 内からはやはりキョウエイマーチが行きます! 一昨年の桜の女王キョウエイマーチが逃げます!』

 

 私と同枠のキョウエイマーチがぐんぐんと前へと進出して先頭へと立つ。彼女の走りで空いたスペースを生かして私も前目へとポジションを取りに行く。

 

 先頭にキョウエイマーチ、それから2バ身ほど後ろに4人のウマ娘がいて、さらにそこから2バ身ほど後ろに私が位置していた。

 好位につけることができた。スタートからポジション取りまでほぼシミュレーション通りで完璧だった。

 

 向こう正面を走り坂と第3コーナーを目指す中で、後ろのマークすべきウマ娘に気を配る。姿勢は崩さないよう首を最小限に振って、2人のウマ娘の位置を把握した。

 

『キングヘイローの1バ身後ろにブラックホーク、そしてすぐ後ろ外にエアジハードであります』

 

 私の左側半バ身から1バ身後方にブラックホーク、その後ろ1バ身差でエアジハード。3人が縦に並ぶように近い位置取りになっていた。

 

 坂を上がり第3コーナーへと向かう。ブラックホークが進出してきて、その後にエアジハードも続いてきた。私のすぐ左横を通り、2人はポジションを上げていく。

 

 

 ──「コーナーの坂で釣られて絶対に掛かるなよ。抜かされたり捲られても焦らなくていい。相手を見てマークすることは重要だが、あくまでもマイペース、お前のペースで行くんだ。それがお前の力を一番発揮する最善策だ」──

 

 

 坂川の言っていたことが耳に残っていた。

 

 大丈夫。落ち着いている。冷静でいられている。

 

(ここはっ……我慢よ……っ!)

 

 第3コーナーへと入り、坂を下りながら第4コーナーへと進入する。ブラックホークとエアジハードの2人が坂の下りを利用しながら前へ前へと進み先団グループに並びかけようとしていた。

 キョウエイマーチが作るペースはそんなに速くないと思う。この2人がここで前へ行くのもペースの遅さを考えれば納得がいく。ここは──

 

 

 ──「迷うなよ。行く時に行け。失速した毎日王冠や天皇賞秋とは違ってマイル戦だ。最後まで持つかとか余計なことは考えるな」──

 

 

 ──迷わないっ! 行くっ! 

 

 

 ギアを一段階上げて加速。離されないように2人を追う。

 私は2人の後ろにつけた。今度は逆に私が2人をマークするような形。

 

 エアジハードがブラックホークの外から進出し2人が横一線に並んだ。2人は下り坂を十二分に生かしたスピードで第4コーナーから直線の手前へと入っていく。

 

 

 私は2人のすぐ後ろ。

 

 

『キョウエイマーチ、まだ3バ身のリードがあります! 先頭キョウエイマーチ! 第4コーナーを回ったっ!』

 

 

 逃げているキョウエイマーチが最後の直線へと向いた。

 

 

『今日ライバルのメジロドーベルはターフを去っていますっ! キョウエイマーチ逃げる逃げる!』

 

 

 第4コーナーから直線に入る。遠心力で外に持っていかれる身体を死に物狂いで抑える。

 

(……くっ!? ……よしっ!)

 

 大きく膨らむことなく第4コーナーのカーブをやり過ごす。エアジハードとブラックホークも直線へ入っていった。

 離されないよう必死に追う。

 

 

 私の位置はバ場の真ん中から外目。2人から2バ身後ろの外側。

 

 

 最後の直線を残すのみ。

 

 

 残りのエネルギーを全てこの末脚に捧げる。

 

 ギアを最高まで上げて、最高速で脚を回す。

 

 私の瞳に映る2人の背中は小さくなっていない。

 

 

『キョウエイマーチまだリードがある! 外から来たぞエアジハード! バ体を合わせて内の方にブラックホーク! エアジハードとブラックホーク! キョウエイマーチ粘っている!』

 

 

 キョウエイマーチが残り200mに差し掛かる。

 

 エアジハードとブラックホークは内ラチ沿いで抵抗するキョウエイマーチに並びかけた。

 

 

『エアジハードとブラックホークが捉える!!! っ!? そして外から──』

 

 

 回す。ただ脚を回す。1着になるために。

 

 2人の背中が視界に入っている、大きくなってくる。

 ぐんぐんと差が縮まる。

 

 

 確実に近づいている──! 

 

 

 

『キングヘイロー突っ込んできたっ!!! 外からキングヘイロー!!!』

 

 

 

 残り100m

 

 

(交わすっ! 絶対に交わすっ!)

 

 

 2人は私の射程に入った。

 

 

 キョウエイマーチを追い抜いた2人。そのなかでもエアジハードがブラックホークより1バ身先に抜け出す。

 

 ──狙うのはエアジハード。

 

 彼女を交わせば勝てる。

 

 私が欲しかったものをその手に掴める……!

 

 

『先頭エアジハード! エアジハードが先頭! 内にブラックホーク!』

 

 残り50m。

 

 

 ブラックホークを交わした。

 

 

 

『外からキングヘイロー!!! キングヘイローが上がってきて2番手!』

 

 

 

 エアジハードとの差は2バ身未満。その背中がくっきりと見えている。

 

 

 ここまで来ている! すぐ手を伸ばせば届くところまで来ている!

 

 

『先頭はエアジハード!!! 追うキングヘイロー!!!』

 

 

 すぐ近くにある! 本当にすぐ近くにある!

 

 

 

 ここまで来られたのは皐月賞以来。絶対に掴む。今度こそ掴んでみせるっ!

 

 

 

『キングヘイロー猛追!!! しかし──』

 

 

 見えている。目の前にある。悔しい思いを幾度となく経験し、迷って、乗り越え、手を伸ばせば届くところまでやっと来られたのだ。なのに──

 

 

 

『──先頭はエアジハード!!!!! キングヘイローは2番手!!!』

 

 

 

 ──それ以上縮まらない。千切れそうになるぐらい足を回しているのに、どうしても届かない。

 

 

 私の脚色は鈍っていない。

 

 

 でも、エアジハードも私と同じ脚色をしている。

 

 

 

(ああ──────)

 

 

 

 

 

 差は縮まらない。

 

 

 

 

 

 私はエアジハードの1バ身半後ろでゴールを迎えた。

 

 

 

 

『エアジハード1着でゴールインッ!!!!! キングヘイロー2着!!!!!』

 

 

 

 

 また、指は滑り落ちて掛からなかった。

 

 

 

 

『エアジハードです!!! エアジハードです!!! 春の安田記念に続いて、マイルGⅠを連覇しましたっ!!!』

 

 

 ◇

 

 

 

 直線に入ってきたキングヘイローはブラックホークを交わし、抜け出した先頭のエアジハードへ迫っていた。

 

 

「行けっ!!! キング行けっ!!!」

 

 

 腹から声を出して叫んでいた。無意識的にいつも以上に声に力が入る。

 

 

 キングヘイローのこれまでの悔しさや努力が報われる瞬間が訪れようとしている。彼女が探している一流だって見つかるかもしれない。

 

 

 キングヘイローはエアジハードに迫っていた。この速度のまま行けば捉えられる。

 

 

「行けるっ!!!!! 突き抜けろっ!!!!! ──くっ!?」

 

 

 だが、エアジハードが最後の力を解き放たんとばかりに再び加速。

 結果、キングヘイローと同速度まで回復する。

 

 1バ身半から差が詰まらない。

 

 

 そのままゴールを迎えた。

 

 

「……~~~~っ!!! クソッ!」

 

 

 実況が高らかにエアジハードのことを謳いあげた。

 

 

『そして無念2着! キングヘイローであります!』

 

 

 キングヘイローについてはそう言って触れていた。

 

 

「ああんっ! もうっ! なんでキングが勝てないのよっ!」

「なんであそこから伸びるんですかっ!? 完全にキングの勝ちパターンだったのに……強すぎですよ……」

「…………」

「キングさん……」

 

 チームの4人も思い思いのことを口にしていたが、大体はみんな同じ気持ちのようだった。

 このあと地下バ道か控室でキングヘイローを迎えることになるので、俺は4人に声を掛けた。

 

「……負けたがGⅠ2着だ。本人が一番悔しいだろうが、あいつはよくやった。……暖かく迎えてやってくれ」

 

 チームのウマ娘たちを連れて、俺は観客席をあとにした。

 

 ◇

 

 地下バ道で迎え、控え室に入ったキングヘイローは…………言うだけ野暮になるだろう。

 

 レースを通してキングヘイローはほぼ文句の付け所の無いレースをしていた。フォームの僅かな崩れや動き出すタイミングなど、結果を踏まえた上での粗探しならいくらでもできるが、正直これ以上ないぐらい理想的なレース運びだった。彼女は自分の今持っている能力の最大値を発揮した。

 

 それでも負けた。敗因はエアジハードが強かったからだ。

 

 どれだけ最善を尽くしても相手が強いという理由で負ける。クラシック級の時の京都新聞杯も、今回のマイルチャンピオンシップだってそうだ。

 これが勝負の世界なのだ。俺だってキングヘイローだって、トレセンにいる奴なら誰だって分かっている。分かった上で、このトゥインクルシリーズへ挑んでいるんだ。

 それでも走らないと、挑まないと勝利は掴めない。

 

 

 

 

 次走は12月19日、中山レース場で行われるスプリンターズステークス(GⅠ)。

 

 更なる距離短縮。キングヘイローが初の1200m……スプリントへ挑戦する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 マイルチャンピオンシップから数日後。

 

「お疲れさまでー……あれ、誰もいないや」

 

 トレーナー室は空で誰もいなかった。自身のトレーナーである横水も、チームメイトであるブラックホークもいなかった。鍵は開いており電気もついているので、直に戻ってくるだろうけど。

 

「……はあ~……今日はどうしよっかな…………ん?」

 

 何の気なしに横水の机に広がっている資料に目をやると、そこに“スプリンターズステークス”という文字が見えた。

 興味が湧いたのでその資料を手にとった。ブラックホークがスプリンターズステークスに出走予定なのでその関係だろうか。

 

「えっと、なになに……」

 

 彼女らしい几帳面な字が並んでいた。そこにはスプリンターズステークスに出走が予想されるウマ娘をリストアップしているものだった。

 自分にとっては見慣れたものだ。彼女はこういう風に脅威と考えられるウマ娘のついて詳細に分析し、それを担当ウマ娘に渡してくる。危険度が高いウマ娘は目立つようにしてあり、分析量も多い。

 そしてその資料を基にレースのシミュレーションをこれでもかと行う。何十通りものパターンを想定し、どんなレースにも対応できるように。

 

 目で名前を追う。アベイドロンシャン賞というフランスのGⅠを勝ったシリウスのアグネスワールド、今年の高松宮記念を勝ったマサラッキ、そして──

 

「……キング」

 

 ──キングヘイローの文字があった。

 

 

 以前は……と言うか、自分のレースではこれまでほとんどその名前を出さなかったのに。

 結局キングヘイローのトレーナーである坂川と横水の間に何があったのかは分からずじまいだった。まあ、特に探る努力もしていなかったけれど。それよりも自分のことにフォーカスしレースへと挑んでいたから。

 

 あの横水が坂川の担当ウマ娘であるキングヘイローをこんな上位でリストアップしている。それは即ち、キングヘイローの実力が相当なものだと彼女が評価したということ。

 

「そっか……なんか──」

 

 資料を元に戻して踵を返す。

 

 

 

「──つまんないや」

 

 

 

 誰かが戻ってくる前にトレーナー室を出よう。今日もトレーニングはサボることにした。

 

 ……どっちにしろ、今の自分はトレーニングなんてできないけれど。できたとしても室内で筋トレかプールぐらいだ。

 

 

「お疲れ様でーす」

 

 

 無人のトレーナー室を去った。

 

 

 屈腱炎の痛みが今日も脚を侵していた。

 

 

 

 

 

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