終末の異世界で生き残るため、TS魔法少女となってスパチャを稼ぐことになった話   作:星野純三

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第70話

 都合、七体のマリシャス・ペインを始末したおれたちは、いちどリアリアリアのもとへ集合する。

 おれは簡潔に合流するまでの経緯を説明したあと、セミから預かった握り拳くらいのおおきさの赤黒い宝石をリアリアリアに手渡した。

 

「それを地面に叩きつけるのが、地下のセミさまへの合図。いちどだけ、道を開いてくれるって」

「なるほど、魔王の首が安置された場所への道、ですか」

 

 リアリアリアは頭上をみあげた。

 戦闘とその最後に上空で爆発したマリシャス・ペインのせいで、背の高い木々による天蓋が破壊され、青空がみえている。

 

 最後のあれは、なんだったのだろうか。

 少し不穏な感じがする。

 

 急いでことを済ませる必要があるだろう。

 ただ、具体的なことを、となると……。

 

「魔王の首をこの地に封じるのは、もはやこれまで、ということですね」

「えっと? どういうこと?」

 

 おれが訊ねれば、リアリアリアは「自明の理です」と肩をすくめてみせる。

 

「あれほどの数のマリシャス・ペインがひとところに集まっていた、ということは……。あれらはすべて、この森に派遣されたのです。魔王軍の手によって。彼らはこの森に目をつけている。おそらく、魔王の特徴的な魔力の一端を探知したのでしょう。マリシャス・ペインたちが帰還しなければ、更なる手段を講じてくることは明白。そうなれば、もはや守り切ることは不可能でしょう」

 

 それは、そうか。

 普通に考えて、あれほどの上級魔族が七体も派遣されるなど異常も異常である。

 

 小国のひとつふたつなら簡単に滅ぼせるだけの戦力だ。

 この場に、たまたまアリス(おれ)とブルーム、それにリアリアリアが集まっていたからこそ戦うことができた、そんな相手である。

 

 敵は、最初からこの地に狙いを定めている。

 もはや隠匿は不可能、と考えて差し支えない。

 

「聖教本部で厳重な封印をほどこしましょう。吾輩は、そのために参りました」

 

 ブルームの言葉に、リアリアリアも「もはや、それしか方法はないでしょうね」とため息をつく。

 まるで、こうなることを見越していた、とばかりのふたりの会話であった。

 

「段取りがいいですね、リア婆さま」

「ええ、エネス。あなたと連絡がとれなくなった時点で、この地に尋常ならざるものが眠っていることは明白であったのです。ならば、最悪を想定するのが我々の責務というものでしょう?」

 

 ぼろぼろの格好のエネス王女であったが、魔族と魔物によってつけられた傷についてはすでに全治している。

 生き残った部下たちの治療も、おおむね完了していた。

 

「それにしても、センシミテリア、ですか。まさか彼女が生きていたとは……」

「知ってるひとなの?」

「わたしの祖母にあたる人物ですね」

 

 わーお。

 顔つきが似てるとは思っていたけど、ガチのおばあちゃんか。

 

 四百五十歳のリアリアリアの、さらに祖母って……いったい何歳なんだろうね。

 聞いてみたいような、聞いちゃ駄目なような。

 

「わたしが生まれたときは、すでに行方不明となっていたそうですから……。本当に秘密裏に行動していたのでしょう。実際のところ、魔王の首ともなれば、特に厳重に情報を秘匿する必要があったのは事実でありましょう」

 

 うん、まあそれはわかるよ。

 よくもまあ、五百年に渡って秘匿してきたものだと思うもの。

 

 当初の想定では、リアリアリアの一族がまだ生きているはずだった。

 いつか一族の誰かにバトンタッチするはずだった、とセミはいっていた。

 

 でもそれは、もはや叶わない。

 なら……あとは、それができるひとたちに任せるしかないだろう。

 

 いまのところ、その相手は聖教しか思い浮かばないわけで。

 聖教も腹に一物抱えている感じだけど、背に腹は代えられないよなあ。

 

「では、合図を送るとしましょうか」

 

 リアリアリアは、おれから渡された赤黒い宝石を握り、勢いよく地面に叩きつけた。

 ちょっ、ちょっと、覚悟とかそういうのもうちょっとさあ!

 

 と抗議の声をあげる間もなく。

 地面に叩きつけられた宝石から、眩い白い光が広がった。

 

 

        ※※※

 

 

 しばしののち。

 地底湖のなかにある島、その中央の丘の上に存在する神殿にて。

 

 おれたちが見守るなか、リアリアリアとセンシミテリアがみつめ合っている。

 お互いに青い髪にエメラルドの瞳で、こうしてみると顔つきもだいぶ似ている気がした。

 

 白い光が収まったとおもったら全員がこの場にいた。

 魔王の首のでかさと禍々しさに一行の大半がおののくなか、ふたりは無言で向かい合い、そしてもう五分以上もそのままなのである。

 

 つーかお互いに頭の中身を読んでるなコレ。

 禁術を定めた聖教の上層部に近いところにいる聖僧騎士ブルームが目の前にいるのに、いい度胸である。

 

 いや、そのブルームは「おお、生き別れた祖母との感動の再会、感無量ですな」と腕組みして涙を流しているんだけど。

 さっきの話をなに聞いてたんだ、生き別れどころかこのふたり、会うの初めてだろとは誰もツッコまない。

 

 ふたりの無言での対話は、十分ほどで終わった。

 お互いにおおきなため息をつく。

 

「情報を整理いたしましょう」

 

 先に口を開いたのは、セミだった。

 

「この地に魔王の首が封印されていることは、すでに魔王軍に察知されている。当座の捜索隊はみなさんが排除しましたが、次の者たちが来ることは明白。すぐにでもこれを――」

 

 と彼女は背後を振り仰ぐ。

 祭壇の上に展開された赤紫色の結界のなかに封じられた、ヒトの倍以上のおおきさを持った異形の頭部を。

 

「別の場所に移送し、魔力が漏れぬよう厳重に再封印するべきである、と。それにもっとも適しているのが、聖教の本部であるということですね」

「そうなりましょう! 神に誓って! 我らが責任をもって管理いたしますこと、お約束いたします!!」

 

 ブルームが胸を張って、大声で告げた。

 近くの者たちが耳を押さえている。

 

 ふたりの大魔術師が、また互いに無言でみつめ合った。

 セミが、ほんのわずか、片眉をつり上げる。

 

 あーこれ、現在の聖教について知識を共有しているわけか。

 たぶんセミが知る聖教と、いまの聖教は大陸における立ち位置が違うんだろう。

 

 そりゃ、そうだ。

 セミからすれば、聖教が信仰する神って邪神そのものなのだから。

 

 五百年前、こうして魔王の首を封印するだけに留めたのも、いつかその邪神が帰還したときに備えるため、というのが理由のひとつだと……。

 そう、さきほどいっていたのだから。

 

 まあ、そもそも魔王を完全に消滅させる方法が発見できていなかったっぽいけど。

 聖教に回収されたほかの部位が、未だに封印するだけに留まっているのを鑑みると、いまもそのへんの研究は進んでいないっぽい。

 

 聖教の上層部がどこまで世界の真相についての事情を承知しているのか。

 彼らはどれだけ信用できるのか。

 

 いまふたりは、そのあたりのすり合わせをしているに違いなかった。

 結果……。

 

「わかりました、そういたしましょう」

 

 セミはそう告げると、軽く手を振った。

 結界となっていた赤紫色のカーテンが眩く輝き、そして消える。

 

 一瞬、周囲が真っ暗になった。

 すぐリアリアリアが己の小杖(ワンド)の先端を輝かせる。

 

 白い光が神殿内部に広がった。

 エステル王女が、あっ、と声をあげる。

 

「魔王の首が消えてる!」

「はい、ここに収納いたしました」

 

 セミが、腰につけた粗末なポーチをぽんと叩く。

 それだけのサイズに収納したのか、それともあのポーチが重量軽減バッグの亜種なのか、あるいは両方なのか。

 

 まあ、いまさらこの程度のことに驚いてはいられない。

 なにせ相手は、リアリアリアの祖母、ひょっとしたら大魔術師よりも魔法に精通した存在なのだから。

 

「これは、リアリアリア、あなたが持っていなさい」

「は、はい、お婆さま」

 

 セミはポーチを孫であるリアリアリアに無造作に投げ渡した。

 珍しく、リアリアリアが慌てている。

 

「それでは、五百年ぶりにこの地を離れるといたしましょうか」

「あの、お婆さま、きちんと歩けますか? 身体がなまっているのではありませんか」

「五百年、力の大半は己の身体を保全するために使っていましたからね」

 

 セミは軽く、手を振った。

 先ほどおれとアイシャ公女が駆けあがった光の階段が、ふたたび目の前に出現する。

 

「参るとしましょう」

 

 セミが先頭に立って、階段を登っていく。

 その次に、ポーチを手にしたリアリアリアが。

 

 おれたちは慌てて、彼女を追いかけた。

 

 

        ※※※

 

 

 おれたちは地上に出た。

 そしてそこで、目の当たりにする。

 

 森が、炎に包まれていた。

 誰かが炎を放ち、木々を焼いているのだ。

 

「なるほど、こう来ましたか」

 

 リアリアリアは呟き、天をみあげる。

 

「この結界を形成する条件、森の木々から少しずつ吸い上げた魔力、それを根底から破壊する。効率のいいやり方ですね」

 

 森の木々の頭上。

 いまは茜色に染まるそこに、なにかがいた。

 

 まるで太陽が落ちてきたかのようにみえた。

 巨大な剥き出しの眼球が、紅に染まって、宙に浮いていた。

 

「あれは――」

 

 誰かが、呆然と呟く。

 巨大な眼球が、ぎょろりと動いた。

 

 突然、地上に現れたおれたちをにらみ据える。

 それだけで、全身が総毛立つ。

 

「六魔衆、紅の邪眼(ブラッドアイ)

 

 




これから、またちょっとゆっくりになると思います。
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