ジョジョの奇妙な冒険 ─泣血の独唱曲─   作:うーゆ

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二次創作は初めてなので、震えが止まりません。







邂逅

 

 

 

 

 飛行場からバスと何度か電車を乗り継ぎ。

 右手に旅行用カバンを引っ提げた金髪碧眼のルーク・アルニーニョは、とある街の駅前に辿り着いた。

 『ようこそ、エベールへ』と書かれた巨大な看板の前で、ルークは懐から携帯電話を取り出し、連絡を入れる。

 

「……俺です。ええ、たった今着きましたよ。これからホテルに荷物を預けて、その後で彼女の所へ向かいます」

 

 会話をしながら旅行用カバンを一旦近くのベンチへと置き、ルークは右手の腕時計で時間を確認した。

 

「しかし、自分で了承しておいて言うのもアレなんですが。本当に俺で大丈夫ですか? 高校生の女の子と会話した事、数えるぐらいしか無いんですけど。スイーツが皿に乗って回っている店とかの話題振られたりするんですかね? あるいは最近流行っている石鹸の事とか?」

 

『……彼女の元へは、スピードワゴン財団の優秀な使用人達を配置している。何か有れば彼女達に訊ねてくれ。もっとも、君なら上手くやれるだろうが。彼女と歳も近い事だしな』

 

 電話口の相手は、少し枯れた男の声で返した。

 

「まあ、彼女……アリア・ヴァリフレードが気難しい人間じゃあない事を祈りますよ」

 

 ルークは周囲を見回し、荷物を持ってタクシー乗り場へと歩を向ける。

 

『……分かっていると思うが、くれぐれも無茶はするな。奴等はスピードワゴン財団の人間を直接狙い始めてもいる。厄介払いみたいにな。だがそれは、我々が奴等の目的に近付いている証拠でもある。

 奴等が、この街で何かをやるつもりでいる事は確かな事なのだ。現に街の近辺では、数年前から奇妙な事故や事件が多発している。

 ヴァリフレード家から石仮面と弓と矢を盗んだスタンド使いの仕業とみて間違いないだろう』

 

「吸血鬼と凶悪なスタンド使いを増やして、やりたい放題ですか。盗んだ奴が何処の糞野郎かは知りませんが、見つけたらアメフトでインターセプト取るみたいに最優先で奪い返しますよ」

 

『生まれつきスタンド使いである君なら、それも可能なのかも知れない。だが、先ずは彼女だ』

 

「分かっています。そろそろタクシーに乗るので、では」

 

 ルークは電話を着るとタクシーに乗り込み、行き先を告げる。

 タクシーがホテルに向かう車内で、ルークは鞄の中からファイルを一冊取り出して目を通し始めた。

 

 スピードワゴン財団が集めた、この街に関する情報と。

 これから会う事になる、アリアについての資料である。

 もう飛行機や電車の中で何度も読み返しているが、再度読み返して自分の目的を確認するのが、彼のやり方だった。

 

(……俺がこの街でやる事は三つ。アリアを説得し、財団本部に連れて行く事。彼女にヴァリフレード家の『真実』を代表に代わって伝える事。そして、強奪された弓と矢の行方を調査する事)

 

 しかしながら、何度資料を読み返してみても腑に落ちない点が有る。

 アリアについてだ。

 

(アリア・ヴァリフレード、エベール女学院高等学校在学。成績は優秀で、現在生徒会長を務めている。

 十年前に父親の運転する車が山道を走行中に事故に会うも、彼女だけは奇跡的に生還する。しかし、その影響で右眼の視力を失い、現在も車椅子生活を強いられている、か……)

 

 ルークは頭の後ろを掻いた。

 

(資料には。スピードワゴン財団の最新医療ならば、彼女の脚の具合も回復に向かう可能性が高く、また損傷した右眼に関しても僅かにだが視力を取り戻せるかも知れないとある。

 その為に、彼女を本部へと連れて行く必要があるのだが。……何故、彼女は財団からのその申し出を断り続けているんだ?)

 

 事故の後、彼女は懸命にリハビリを行い、奇跡的とも言える回復力を見せたらしい。

 日常生活を送れるまで身体が動くようになったのは、彼女の血の滲むような努力の成果である。

 

 しかし、努力だけでは越えられない壁というのも有る。

 今ならばまだ、アリアは大幅な身体の回復が見込める年齢だ。

 スピードワゴン財団の治療を受けるのは、今を置いては無い筈なのだ。

 

(もしかすると彼女は、自分だけ助かった事に負い目を感じているのか? ──俺の願望としては、この街の住人として今の生活を幸せだと感じているから、離れたくない。なんだが)

 

 事故後、アリアはエベールの総合病院に運び込まれて治療を受け、一命を取り留めるのだが。

 彼女の生存は事が落ち着くまで当然のように伏せられ、街から連れ出す事もしなかった。

 敵の正体が分からない上、身体が回復して間も無い、まだ幼い彼女を本部へと運ぶのは医学的にもリスクが大きかったからだ。

 

 そして何より。

 父親を失ったという現実と向き合う為の、心の整理が必要だとスピードワゴン財団の代表が判断したので有る。

 それから十年間、現在に至るまで。

 アリアは通院を続けながら、この街で暮らしている。

 

(もしそれが彼女の望む幸せなら、これ以上無理強いするのは野暮ってもんだ。しかし……)

 

 ルークは最後に。

 この街で過去に起きた事件の資料を流し見て、終わりの方で手を止める。

 

 弓と矢の行方を追っていたスピードワゴン財団の職員が、この街でスタンド使いに襲われ、消息を経った事件である。

 三人の内、一人は斬殺死体となって発見されたが。

 残りの二人は、その後無事に救出されている、といった内容だった。

 問題なのは。

 その二人を救出した、資料に記されている人物の名前である。

 

 アリア・ヴァリフレード。

 確かに、そう記されていた。

 

(これが事実であるのなら、彼女もスタンド使いという事になる。何者なんだ、彼女は。この街で、一体彼女は何をやっているんだ?)

 

 浮かぶ疑問。

 小さな好奇心。

 しかし全て、一旦ファイルと共に鞄の中へと仕舞う。

 ルークが次に開いたのは、スイーツ特集の雑誌であった。

 

 

 

 ◆

 

 





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