◆ ◆ ◆
「──サッカーとかの試合に使われる芝ってね。それ専用にグラウンドキーパーみたいな役職の人を雇って、厳重に育成管理されてるんだってさ。芝が長いとボールの回転にも影響が出るし、足を取られた選手が転倒するかも知れないからね。試合中にごっそり芝が抉られた時の為に、予備の芝まで準備しているっていうから徹底してるよ。……ああ、それはそうと、非常に興味深い」
『何がだよ?』
小綺麗なマンションのリビングで。
男は右手で、ワンピースを着た黒髪の人形を揺らし、裏声で人形の声を出して会話を成立させた。
「最近、この街に入ったスピードワゴン財団の人間。ルークとかいったか。確実にコイツも何かしらのスタンド能力を持っている。使い捨ての駒だったがディードを返り討ちにし、拘束する事に成功しているんだからな。しかもだ、監禁場所にも見当がついているのか、警察に包囲網まで敷かせている」
『へぇ~~~~生意気な奴なんだね。早く始末しようよ』
「当然、私はそう考えたワケだ。常に最悪の事態は想定していなくっちゃあならないからな。ディードの奴には幾つかフェイクの情報を与えてあった。その情報の真意を調べにノコノコやって来た奴を、ジャックとカルザルに始末させるつもりでいた。しかしだ。どうやら奴はまたしても切り抜けたらしい。スピードワゴン財団の他の連中を呼び付けて、二人を拘束した。そして奴はその後、フランの居る大学行きのバスに乗ったようだ」
『スゲェ~~~!? いきなりだぁ!』
「私もそれは想定外だった。まさか、捜査線上に今まで挙がらなかったフランに、横からアイスクリーム掻っ攫うカモメみたいに突然にだ。突然に辿り着いた。一体、何処からフランに関する情報を得たのか、見当も付かん。糞ったれスピードワゴン財団のサポートが極めて優秀なのか。あるいは、奴には他に頭の切れる仲間が居るのか」
男は右手に持っていた人形を一旦テーブルの端に置くと、ピザを一口食べた。
付けっぱなしにしているテレビではサッカーの試合をやっていて、それをソファーに深々と腰掛けながら観賞しているのだ。
その男から少し離れて壁際に、ズラリと女性達が並んで立っている。
彼女達の目や口からは赤黒い液体がドロリと流れ出しており、皆一様に微動だにしない。
「ここで奇妙なのが、その時奴と一緒にバスに乗った女だ。身体に障害が有るのか、車椅子に乗っていたらしいが。着ている制服から、ディードが拘束された場所……つまりはエベール女子高等学校に通う生徒だという事が分かる。何かの偶然なのか。しかもこの女、ジャックとカルザルが見張っていた現場にも居合わせた事になるよな?」
男は透かさず右手で人形を持って動かした。
『何者なんだぁぁぁぁあ~~~? その女はよぉお? 可愛いのかぁ? スタイルはどうなんだよぉお~~?』
「あ、気になってきた? とても興味深い事実だろう? まぁ、金を渡した一般人からの目撃情報だがな。しかも真意を知ろうにも、非常に残念だが、あの大学に入ったのならば。我がスタンド『ブラッシュ・リーパー』の攻撃圏内に入ったという事さ。フランの奴の状況にもよるが、『ブラッシュ・リーパー』は何者だろうと必ず始末する自動追跡型のスタンドだ。こうして悠長にピザを食べながらサッカーの試合を見ていても、既に攻撃は完了している」
『さっすがだぜ、お前は一番頼りになる奴だぁあ! そこの女共も捕まえているしなぁ!』
「……ん? ああ、そこの壁に馬鹿みたいに突っ立っている連中の事かい? 今どきは虐待だ何だって保護者が騒ぐから学校でも授業中に立たせとく事はしないって言いたい? 大丈夫、ソイツ等は『芝』だよ。補充の為の『予備の芝』だ。『七つ眼』という、巨大なフィールドを埋める為のな」
◆ ◆ ◆
「──今。何て仰いましたか? 『愛してる』って聞こえたんですが? 控えめに言って気持ち悪いですね」
アリアは軽蔑にも似た、冷めた眼差しをフランへと送り付けた。
普段から注意深く人の話を聴き、観察を怠らないアリアだが、この時ばかりは興味を欠き、悪態をつく。
最早怒りすら過った。
「さっきも言ったが、僕は一度しか言わない。その言葉の意味が、君に届く事を願っているよ」
「……。」
「お喋りは、これくらいにして。最後に君という人間と話せて良かったよ。残念だが、僕はもう始末されるだろう」
静かに目を伏せて、抵抗する事を諦めたかのようにフランは全身の力を抜く。
「君は直ぐに逃げた方が良い」
「……あらあら。仰っている意味が、分かりませんが? 貴方は勿論、私も殺される事は有りません」
アリアは『シルバー・チャリオッツ』を自らの傍らに出現させ、周囲を警戒する。
迎え撃つ覚悟のようだ。
確かにスタンドの性質上、『シルバー・チャリオッツ』は探索よりも迎撃する事の方に遥かに向いている。
『シルバー・チャリオッツ』の視覚は本体であるアリアに依存している為、彼女が見る事が叶わない場所の情報は持ち帰る事は出来ないのである。
しかし反面、知覚可能な範囲内の物質やスタンドへは非常に高い制圧力を誇り、炎でさえ斬り伏せる事が可能だ。
無論、アリアは自らのスタンド能力を熟知しており、それ故に瞬時に迎撃体勢に移行している。
「──思うに。これからフランさんを始末しに来るという敵は、自動操縦型のスタンドですね。貴方が電話で呼ぼうとしていた人物とは、また別の人間の能力」
警戒しつつ、アリアはスタンドでフランの身体を少しずつ壁際へと引き摺って行く。
そして自らは車椅子を漕いで柱の陰に身を隠した。
「敵スタンドの特性はまだ分かりませんが、貴方が敗北する場面を敵本体が常に監視している、というのは可笑しな話です。何かしらの条件の元、敵本体の無自覚の範疇で発動するタイプである方がまだ現実的では有ります。恐らくは、あらかじめこの大学に仕掛けられていたのでしょう」
「……っ」
「ここで一度交戦し、敵のスタンド能力をある程度見極めた上で逃げた方が安全です。ルークさんが合流するまでの時間、持ちこたえればフランさんも運び出して貰えますし。後は着実に距離と対策を取り、敵本体に近付ければ上々なのですが」
アリアは念の為フランから距離を置き、柱の陰から廊下の暗闇に視線を這わせている。
月が雲に隠れると、この視界の悪さだ。
自分の側に『シルバー・チャリオッツ』を出現させて常にガードしておかなければ、不意打ちを食らう可能性だって有る。
『アルク・ブラック』との戦闘で負傷し、体力も奪われているアリアだったが。
この暗闇と泉のような静寂さは逆に彼女の神経を鋭利に研ぎ澄まさせた。
『シルバー・チャリオッツ』の弱点とも言える本体への視界依存を感覚的にカバーする為、アリアは定期的に屋敷の地下訓練室に閉じ籠もり、気の遠くなるような試行を繰り返している。
殆ど視界を遮った上での正確なスタンド操作を厳しい基準で自己分析し、己の感覚へと徹底的に叩き込んでいるのだ。
その尋常では考えられない試行量と特殊な鍛練の末、今は最大二メートルまでなら視界を遮断してもスタンドを正確に操る事が出来るようになった。
スタンド能力は『才能』であり、それ故に成長させる事が出来るという自らの仮説に基づいた努力の結果である。
「君は、本当に優しい人間だよ。情報を一切与える気の無い僕を、命懸けで助けようっていうんだから」
「──誰もが、常に白の道を歩いているワケでは有りません。時には迷いや失敗、様々な選択と体験から黒の道を歩いてしまう事も有るでしょう。ですが、白に戻る事は、誰にでも平等に出来るんです。私に少しばかりでも興味が有るのならば、フランさん。今すぐに、白に来て下さい」
「……もし生き残れたら、君の写真を撮っても良いかな?」
「ええ、構いませんよ?」
この時ばかりは、アリアはニッコリと笑った。
月明かりに照らし出される彼女の銀髪は艶やかで、傷が痛みを忘れる程に美しい。
反射的に、フランは自らの唇を舐めた。
自分の行き過ぎた趣味への没頭は他人を遠ざけたが、今こうして最高の被写体が目の前に居ると、手の平を返すようだが。
今までの人生も悪くはなかったと思える。
「正直ね。僕もこれから来るスタンドの事は良く分かっちゃあいないんだ。ただ、死人に口無しって言葉通り、敗北したスタンド使いを始末する能力だって聞かされている。スタンド名は『ブラッシュ・リーパー』、射的距離は君のさっき予想していた通りだ」
「……!?」
「何驚いてるんだよ。僕の知っている事を少し伝えたくらいで、この状況が覆るとは到底思えないからね。今のは、君の写真に対する前金みたいなモノだよ」
「……そうでしょうか?」
仮説の裏が取れたアリアは、顎に手を当ててジックリと思考を巡らせた。
フランとの戦闘が終了して、既に三十分弱経過している。
敗北した段階で襲って来るならば、遅過ぎだ。
(何かを探知し、自動追跡が始まるまでに若干のタイムラグが発生している? 昼夜問わず、かつ探知するまでに時間が掛かるモノ……?)
辺りを適度に観察しながら、移動する事も視野に入れ始めるアリアだったが。
その時。
『痛イ……』
「……っ!」
暗闇に突如として聞こえた、枯れた女のような声。
フランの方を向くと、彼にも聞こえたらしく、焦燥を滲ませた顔付きで周囲を見回している。
『痛イ……痛イネ……。痛イネ』
「こっ、この声は……!」
丁度、月が雲に隠れて見えなくなり、辺りは薄暗さを増す。
アリアは車椅子の車輪を両手で捕まえ、警戒を強めた。
徐々に、近付いて来る。
──ズルッ、ズル。
『痛イ……痛イ……!』
声の他に、何かを引き摺るかのような音が聞こえ始める。
先程よりも尚近い。
しかし、この音がアリアに居場所を伝える狼煙となった。
音のするのは、前方。
一直線の廊下の奥の、右の壁側だ。
そして、雲から出た月明かりに浮かんで、遂にその姿を見せる。
うつ伏せのまま、ズルズルと身体を引き摺って。
這って移動している赤黒い物体。
見た所、脚と呼べるモノは無く、胴体と両腕。
そして長い黒髪に覆われた頭部で構成されている。
時折、進行を停止しては、『痛イネ』と今度は幼子の声で呟く。
「なん、だ……!? あのおぞましい姿のスタンドは……! ホラー映画とかに出て来る化け物じゃあないか!?」
フランが思わず口を開く。
しまった、とアリアは身構えたが、敵スタンドの進行速度には変化は無い。
まだ此方に気付いていないように見える。
但し、真っ直ぐにフランのいる方向へは向かって行く。
だが、もう数メートル近寄った、その時。
『アァァァァァヒャヒャヒャヒャッ! 居タ居タ? 痛イヨネェェェェエッ!?』
突如として顔を上げた『ブラッシュ・リーパー』が奇声を上げ、それまでの移動速度とは比べモノにならない猛スピードで、廊下を這いずって来た。
「っ!? 『シルバー・チャリオッツ』!」
やや遅れて、アリアが自らのスタンドを正面へと突進させる。
瞬く間に間合いに入った敵スタンドを、牽制するつもりで剣を一薙ぎした。
その鮮やかな高速の斬撃を受けて『ブラッシュ・リーパー』は、水が弾け飛ぶ様にその場で霧散する。
「な、何だ……? やったのか?」
「いえ、違います! 手応えが有りませんでした。敵スタンドは、ピンピンしています」
まるで液体を切ったかの如く、敵スタンドは弾けて姿を消した。
もし、本当に液体状に飛び散って、しかもその状態でも自動追跡が継続していたのなら。
あのスピードで、追跡して来ていたのなら。
「──静かになったようだね。とりあえずは、危機をハネ除け……」
そんな、安堵したフランの頬に。
ポタリ。
一粒、液体が落ちる。
天井を見上げたが、蛍光灯が有る以外には何も無い。
「何だ?」
ポタリ、ポタリ。
不思議な事に、何処からともなく。
滴り落ちる水滴。
と、その時。
『痛イ……』
途端に、フランの周囲から噴水のように赤黒い液体が吹き出し、目の前で一つの集合体になっていく。
更に周囲から細かい水滴が、磁石に引き寄せられる砂鉄を思わす、物理法則を無視した動きで、フランに向かって飛んで来る。
「う、上から落ちてきたんじゃあなくて……」
冷や汗と共に、恐怖して速くなる鼓動。
現れたのは不気味な姿のスタンド、『ブラッシュ・リーパー』である。
「集まって来ていた、僕に向かって! コイツは!」
敵スタンドの両腕が、フランの片腕と首をガッチリと押さえ付ける。
長い黒髪に覆われた敵スタンドの顔は、目や口といったモノは無かった。
代わりに、その顔面が縦に割れ、開き扉のように左右へと別れる。
すると中から、粘液が絡んだ注射針がズルズルと出現した。
「フランさんっ!」
アリアは既に車椅子を漕いではいるが、遠過ぎる。
その間にも、敵スタンドは注射針の先端をフランに向けて突き出していた。
(直接攻撃した『チャリオッツ』と私を無視して先にフランさんに攻撃を……!? しかも、液状でも的確に追跡をしている……! 敗北したスタンド使いを始末する、それが目的のスタンド……!? 一体……!?)
『ブラッシュ・リーパー』は押さえ付けたフランの頭部目掛けて、首を持ち上げた。
一撃の元、あの注射針をフランへと突き立てるつもりでいるのだ。
「うっ、おおおおお……!? こ、このパワー! 逃れられない! こ、このスタンドは……! コイツの、能力は……!?」
『イタイ、ヨネ?』
敵スタンドは首を傾げた後、その鋭利な切っ先を躊躇わず振り下ろした。
フランの悲鳴が木霊する。
だが、注射針が突き刺さる、その瞬間。
「『シルバー・チャリオッツ』!!」
白銀の一太刀。
アリアの太ももから鮮血が吹き出し、闇夜へと溶けた。
自らのスタンドで、脚を切り付けたのだ。
「く……! うう……!」
苦痛で顔を歪めるアリアだが。
歩けなくても、此処はちゃんと痛みを感じる事が出来た。
まだ感覚が残っていた事が、彼女には嬉しかった。
ピタリと。
フランの鼻先、数ミリメートルの所で。
注射針は停止した。
『ブラッシュ・リーパー』はフランの拘束を解くと、身を翻して今度はアリアへと向かって高速で移動を開始した。
「探知しているモノが、分かりました」
アリアは車椅子に手を掛けて身構え、スタンドを出現させる。
それでも、フランから距離を取るようにジワリジワリと後退は続けた。
「血液です! このスタンドは、深海のサメのように。空気中に広がった血の臭いを追跡して来るスタンドなんです。そして負傷が多ければ、或いは血液の鮮度が高ければ、そっちを優先的に追跡します」
肉迫した『ブラッシュ・リーパー』へと、アリアは『シルバー・チャリオッツ』を繰り出し、高速の斬撃を展開する。
しかし。
全身を切断された『ブラッシュ・リーパー』は先程と同様に液状となって飛び散り、アリアの前から姿を消した。
「手応えは無い、ですか。でも、やはり動作自体は単純ですね。探知したモノに向かって攻撃する、という大雑把な動きしか出来ていません」
言いつつ、側に集まってきた液状の敵スタンドへと剣撃を放ち、四散させる。
そして続け様に車椅子を回転させると、背後に出現途中の頭部を精確に斬り払った。
「近付いて来るのは好都合です。この間合いなら、私の方が圧倒的に速いですから」
すると。
周囲を警戒するアリアの攻撃を避けるように、『ブラッシュ・リーパー』はゆっくりと天井から出現する。
しかし、
彼女のスタンドは即座に頭上へと剣を撃ち込み、敵スタンドの頭部を串刺しにしてみせた。
本体が負傷しているとは思えない、驚異的な反応速度である。
敵スタンドが襲い掛かって来る度にアリアは斬り払い、少しずつ。
少しずつフランの所から離れて行く。
一気に移動すると、フランの方へと自動追跡が切り替わる恐れがあったからだ。
自分が常に標的になる事で、『ブラッシュ・リーパー』をこの場から引き連れて離れる。
非常に危険だが、効果的な方法であった。
(──さっき、敵スタンドが急激に追跡速度を上げる場面があった。このスタンドの自動追跡には、標的までの距離が関係している)
アリアは『シルバーチャリオッツ』で身を守りながら後退を続ける。
(その距離、目測で約二十メートル。二十メートル以内に血液を探知すると、追跡スピードが途端に速くなるようですね。このスタンドから二十メートル離れる事が出来れば、追跡自体は停止しなくても振り切れる可能性は高い……!)
ジリジリとフランから距離を取るアリア。
彼を驚異の外へと逃すまで、あと少し。
後退先を一度目視してから、アリアは正面の『ブラッシュ・リーパー』へと斬撃を放った。
だが。
この攻撃に限り。
金属音と共に『シルバー・チャリオッツ』の剣身は弾かれ、押し負けてしまう。
「……っ!?」
驚愕したアリアへ、敵スタンドの丸太のような右腕が強襲した。
即座に『シルバー・チャリオッツ』で迎撃を行ったが、その破壊力は剣撃を弾き飛ばし、『シルバー・チャリオッツ』の脇腹を捉えた。
「うぐ……!?」
スタンドへのダメージが本体であるアリアにもハネ返り、衝撃で車椅子ごと吹っ飛ばされる。
壁に激突したアリアは車椅子から投げ出され、床に転がって吐血した。
「アリア!」
フランが悲鳴にも似た声を上げる。
車椅子から投げ出されたアリアの機動力はゼロ。
しかも新たな傷を探知して『ブラッシュ・リーパー』は襲い掛かって来る。
「成る程……ゴホッ。血液を、探知するスタンド。スタンド自体も血液と同じ性質を……持っているという事……ですか。鉄分と、凝固因子による硬質化……」
離れてしまった車椅子をスタンドで掴み、近くへと引き寄せるアリアだが。
それすら許さない『ブラッシュ・リーパー』が追従するようにアリアへと突進して行く。
「マズイぞ! 速くっ! 速く体勢を立て直すんだぁぁぁぁあ! もう既に、君の側に! 向かっているぞ!」
フランが叫ぶ。
何とか車椅子に手を掛けたアリアの背後に。
注射針を振り下ろす敵スタンドの不気味な影。
もう駄目だ、とフランは顔を背けた瞬間。
何故か注射針は床に突き刺さった。
アリアの姿が、その場から忽然と消えたのだ。
『痛イ? ヨネ?』
攻撃目標を失った敵スタンドが、首を傾げた。
すると。
「おい、化け物」
突如として発せられる少女の声。
彼女は大胆にも、『ブラッシュ・リーパー』の隣に立っていた。
給仕服に身を包んだ、ミリィである。
勿論、負傷していない彼女には反応しないので、無視して移動を始めるのだが。
「コッチを見ろ」
直後、ミリィから藍色の人型のスタンドが飛び出し、至近距離から猛烈な勢いで拳を繰り出した。
『ウリャアアッ!』
硬質化している敵スタンドの装甲もお構い無し。
破壊と共に顔面に一撃を入れられた『ブラッシュ・リーパー』は、ガラスを突き破って正面の教室の中へと吹っ飛ばされた。
「会話ぐらいよぉぉお。成立させようぜ、なぁおい」
『痛イネ……痛イヨネェェェエ~~!』
敵スタンドは暗闇の中、教室の窓口に手を掛けて起き上がり。
一声叫んだ。
「よぉぉお。お前に言ってんだぜ? アタシはよぉぉお~」
◆
お読み下さりありがとう御座いました!
【スタンド名】
『ブラッシュ・リーパー』
【本体】
マーミ
破壊力 A
スピード D(但し、二十メートル圏内ならA)
射程距離 A
持続力 A
精密動作性 E
成長性 E
【射程圏内の人間の血液を探知し、自動追跡するスタンド。距離が近い程スタンドの追跡スピードは上がり、凶暴化する。掴まえた人間に頭部の注射針を撃ち込む事で、行動を制限させる事も出来る】