ジョジョの奇妙な冒険 ─泣血の独唱曲─   作:うーゆ

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『グリーン・チップス・ベルト』

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「支障? ああ、そんなモノとっくに出ているさ」

 

 倉庫の一角に築かれた死体の山。

 足元に無造作に転がるのは、干からびた女性の死体である。

 男は棺の上に寝転がりながら、今まさに『食事中』の男へと言葉を返した。

 

「街に送り込んだスタンド使い達。奇妙だが『材料』担当のチームが揃って全滅した。スピードワゴン財団の人間は、街での調査を再開しているようだ」

 

 男は、天井にポッカリと開いた穴から燦々と降り注ぐ太陽の光へと手を伸ばし、空を仰いだ。

 『食事中』の男は突き刺していた指先を死体から引き抜き、次の死体へと突き立てる。

 太陽の光の中で血の飛沫が舞い、赤黒く男の身体を彩った。

 

「太陽を克服出来た事には感謝してはいるし、こうして死体からの吸血からでも腹を満たす事が出来る。感謝しているさ、貴方には……クルクス。しかしだが──」

 

 棺の上で男は上半身を起こし、黙々と吸血を続ける男……クルクスを見下ろす。

 その表情からは僅かな憤りを感じた。

 

「これが! 今のこの、こそこそと隠れ住み、『食料』の供給を待つ今の生活が! 本当に、進化した存在である筈の我々の『今』なのだろうか!?」

 

 その言葉に。

 クルクスはピクリと反応し、首だけ振り返った。

 首筋には、星型の痣が見える。

 

「貴方の言う進化の更なる先。矢がもたらす生物の未来に、到達出来たとして! 『今』の屈辱的な生活を根本から払拭出来るだろうか! 生涯付いて回るかも知れない、弱みだ! 我々は自由に、好き勝手に、人間共を支配するべきではないのか!? 我々に必要な、私が望む『今』はそれだ!」

 

「随分と……エイベル。君は不安を感じてしまっているな」

 

 パッと。

 クルクスの姿が目の前から消えて。

 直後。

 背後から頬を撫でられた。

 

「本当にすまない」

 

「……っ!?」

 

 エイベルの心臓が鈍く縮む。

 今のはスタンドだ。

 何の能力かは分からないが、瞬き程の一瞬で。

 有り得ない。

 姿が見えなくても、自分が命を掴まれている事は分かる。

 

「だが、理解して欲しい。君の望む『今』と、我々の置かれた『今』を。少し立ち止まって、冷静に考えてみてはくれないか?」

 

 エイベルは喉を鳴らした。

 彼は。

 頂点に立つには控え目な性格をしていて。

 相応しく無いと考えている同志も少なくはない。

 正直自分もそう思うし、彼自身も認めている事だ。

 しかし、それでも彼以外の同志が頂点に立つ姿は想像が出来ない。

 

「立ち止まる事。これは、人への『愛』故の行動なのだ」

 

 クルクスはエイベルの頬からゆっくりと手を離すと、そのまま彼の横を通り過ぎて死体の山を見下ろす。

 

「『愛』が無ければ、理解は出来ない。しようとも思わない。理解出来なければ、そこに安定した支配は築けない」

 

「……っ」

 

「人は家畜を安定した支配を基に管理する。その生態を正しく理解し、最も効率の良い殺し方を選択している。家畜自身にも、己の死を悟らせず。抵抗すらしない」

 

 再び、クルクスの姿が消える。

 彼は先程の『食べかけ』の前に姿を見せ、同じように指先を突き立てた。

 

「殺して食べる。その結末に到達するまでに注ぐべき、『愛』を理解している。我々の『食料』の場合、それは少しばかり複雑だ。奴等は考え、行動し、時として驚異的な力を見せつけるからな」

 

 これだ。

 エイベルは確信した。

 冷徹とも、残酷とも違う異質な恐怖。

 人の上に君臨する存在である事を自らが理解していながら、それを突き放すかのように徹底した静の態度。

 

「抵抗を受けるのならば、獲物を追い回している時代と大差が無い。奴等が自らの意思で己の身を差し出す。それが真の支配というモノだ。静かで、無駄な争いは起きないモノだ。恐怖はいずれ克服されてしまうが、この支配にはそれが無い。完成された支配には、エイベル。君の唱える『今』を払拭するだけの安定と平穏が有るだろう」

 

「──はい」

 

 この静けさが不気味なのだ。

 そして矛盾するようだが、同時に惹き付けられるのだ。

 この男の力になる事。

 その目的の為ならば、いくらでも力を貸そう。

 

「しかし、クルクス。『材料』担当チームが全滅した件については、探りを入れさせて貰う。我々の同志であるスタンド使いを何人か送り込む。貴方の言う理解の為だ」

 

「……分かった。しかし、くれぐれもだ。出来る限り、戦闘はするな。探りを入れるだけだ」

 

「──伝えておきますよ」

 

 その命令は守れそうも無い。

 ここは、相手を始末しておくべきだ。

 相手もスタンド使いであるならば、尚更。

 後々、驚異的な力を見せ付ける事が無いように。

 貴方が言った事だ。

 

 実は目星は付いている。

 最近この街に入ったスピードワゴン財団の、ルークとかいう男。

 あの男が街に入った日から事態が急展している。

 そして、その周辺の人間。

 

 どの程度、関与したかは知った事ではない。

 少なくとも影響を与えた事は確かだ。

 

 エイベルは、覚悟を決めていた。

 それもまた、クルクスへの『愛』故にである。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、留守をお願いしますね。ミリィ」

 

 レンはそう言って、助手席に乗り込んだ。

 運転席にフェンネル。

 その後ろにルーク、隣にアリアが乗っている。

 

「お、おい! アタシ一人に後片付け押し付ける気か!?」

 

 屋敷の入口でミリィは顔を青くした。

 すると、パワーウインドウのスイッチを入れて窓を開け、乗り込んだままレンが答える。

 

「他の仕事は私がやっておきましたので」

 

「んなこたぁ分かってるんだよ! アリアとルークが車に乗っているのは必然だから文句は無いぜ。フェンネルが運転席にいるのも分かる、運転手がいなけりゃ車は動かねぇからよぉ」

 

「そうですね。私は運転出来ないので、消去法でフェンネルが運転します」

 

「いや、おい! なら何でお前まで乗ってんだ!? 送迎と買い出しならフェンネル一人で十分だろ!? おかしいだろ!」

 

 食器洗いが何よりもダルいミリィは、何とかレンに残って欲しい為、食い下がる。

 屋敷には何故か食器洗浄器が無いのである。

 

「──ええ、勿論。買い出しはフェンネルに任せるつもりです。私は……最新式の食器洗浄器を買いに行きますから。恐らく、納品は明日になるでしょう」

 

「……っ!? あ……そう、なのか……」

 

 食器洗浄器が欲しい。

 ミリィが毎日のように唱え続けた言葉である。

 しかし、自分では屋敷のキッチンに合った物を買いに行くのは面倒臭い。

 長さや高さを図ったり、店に行って機能を確認したりがやたら面倒臭い。

 今回、片付けを我慢してやれば、次回から楽が出来る。

 

「──クソッ! 今回だけだからな! アタシの好きなチーズ味のスナック忘れんなよ。フェンネルのヤツが、さっき二袋も開けてバリバリ食べやがったからよぉ」

 

 ミリィは絵に描いたような地団駄を踏み、屋敷の中に引き返していった。

 レンは、直情タイプのミリィを手懐ける術を完全に心得ているのだ。

 元々アリアの使用人になる事に難色を示していたミリィを、レンは言葉巧みに操り、時には物で釣り。

 器用に屋敷で働かせている。

 

「フェンネル、出して下さい」

 

 窓を閉め、平然とした表情で告げるレン。

 フェンネルは指先で敬礼ポーズを取ると、アクセルをゆっくりと開けて発進した。

 後部座席のアリアとルークは、時折雑談等している。

 アリアの車椅子は畳んでトランクに積んであるので、彼女は寄り掛かる格好で乗っていた。

 何なら、ルークに少し寄り掛かってすらいる。

 

 その様子をバックミラー越しに眺めながら、レンは少しだけ頬を喜ばせた。

 最近、アリアは以前にも増して活力が漲っている。

 病院での定期検査でも驚かれた程であった。

 多分、ルークと出会った事で、彼女の中で良い変化が起きている。

 心の働きは肉体と、極めて強く結び付いているモノだ。

 

 これならば。

 この先の未来に自分が居なくとも、アリアは大丈夫だろう。

 

(早く、離れてしまった方が良いかも知れない……)

 

 アリアの変化に引き摺られて、近頃レンはそんな事ばかり考えてしまっていた。

 本当は、本来は。

 此処は自分には眩しい世界だ。

 

(でも、もう少しだけ。貴女の喜ぶ顔を見ていたいと思うのは……傲慢かしら……)

 

 ボンヤリしながら、窓側に身体を傾ける。

 暫く走り続け。

 街へと続く、山と森に囲まれた長い下り坂を車は進んで行く。

 綺麗に整備された海沿いの道だ。

 本当に。

 あと何度、この景色を眺める事が出来るだろうか。

 

 勾配が少しキツくなり、曲がり角に差し掛かった事もあって、フェンネルはギアを落とした。

 日本育ちのレンにとっては、未だに左側ハンドルというモノは馴染めない点である。

 丁度、自分の右手側に海を望む事が出来る為、レンはまたボンヤリと海を眺める。

 

 と、その時。

 突然車がスピードを上げて、海側。

 つまりは崖に近付いた。

 

「……っ!?」

 

 ギリギリの所でガードレールには接触しなかったが、レンは額を窓にブツけてしまう。

 まぁ、自分は運転が出来ないので、ハンドル操作を誤った事への責任を追及するつもりは無いのだが。

 

「フェ、フェンネル、気を付けて下さい」

 

 今のは心臓に悪い。

 額を擦りながら横を見ると、フェンネルが唇を動かしている。

 両手が塞がる運転中は、彼女はこうやって会話するのだ。

 勿論、レンは読唇術も心得ていた。

 

『ゴメンゴメ~~ン。何かハンドル取られてさ。道路に枝でも落ちてたかなぁ~? お嬢とルークは大丈夫?』

 

 そう言ったので、レンが後部座席を覗くと。

 ルークが、アリアの身体をギュッと自らの胸に抱き寄せていた。

 アリアは顔を赤らめ、満更でも無い様子である。

 

「──大丈夫です」

 

『おお、そりゃあ良かったぜい』

 

 正直、止めるべきか悩んだが。

 ルークは誠実な付き合い方をする人間だ。

 きっと、アリアを心配しての行動だろう。

 そう納得させてレンは前を向いた。

 

 すると不意に、走行中の車の目の前を鳥の群れが海側へと横切った。

 幸い、接触しなかったが。

 珍しい事も有るものだ。

 レンが何となく、鳥の群れの行方を目で追うと、全羽が。

 海へ向かって急降下して行き、そのまま海中に沈んだ。

 

「え……?」

 

 鳥の生態には詳しくないが、今のは森に巣を作っている普通の山鳥である。

 海鳥とは餌も異なるだろう。

 しかも上がって来る様子も無い。

 鳥が集団自殺を図ったのだろうか。

 

「ア、アリア様……今」

 

 思わず、アリアの方を振り返るレンだったが。

 何とルークはシートベルトをした状態でアリアを海側へと押し倒し、覆い被さっていた。

 

「え、ちょ、ちょっと、ルークさん……駄目ですよ……んっ。そ、それ完全に、あっ、手が……掴んで……」

 

 取り込み中のようなので、レンは前を向いた。

 大胆不敵。

 この状況でアリアを襲うとは誤算である。

 さて、流石に止めるべきだろう。

 しかし、何と言って。

 

 車が海を正面に望む直線に入る、その先は右への長いカーブだ。

 と、前方に一台、フラフラと走る車があった。

 酔っぱらい運転だろうか。

 レンが眉をひそめると、前方の車は突然スピードを上げ、ガードレールに衝突。

 突き破って、そのまま車は海に落下した。

 

「……っ! フェンネル、車を停めて下さい!」

 

 幸い、運転手は投げ出され。

 落下を免れたようだったが。

 フラフラと起き上がった男性の身体は、奇妙だ。

 手や足から、ウネウネと動く細長い物体が無数に生えている。

 男性は、壊れたガードレールの隙間から崖へと移動し。

 海に向かって、身を投げた。

 

「な……じ、自殺を!?」

 

 途端に、今度はレン達の乗る車のスピードが上がった。

 さっきの壊れたガードレールに向かって、一直線にスピードを上げて行く。

 

「フェンネル、何を!?」

 

 隣を見ると、フェンネルの両足と両腕から。

 先程の男性と同じようなウネウネと動く物体が生えている。

 しかも、次々と増えて行く。

 

『マズイ、レンちゃん。アクセルから足が……離れない。どんどん加速して行く……!』

 

 と、後部座席のドアが開く。

 見れば、ルークがアリアを乗り越える格好で、アリア側のドアを開けているのだ。

 しかも、グイグイとアリアを押しながら、開いたドアへと近付いて行く。

 ルークの手や足、腕や背中にも、あの細長い物体が生えてきている。

 

「く……くそ……! アリア君、不可抗力だ。さっきから、身体が勝手に……動く!」

 

 遂には、仰向けのままアリアの頭が開いたドアから外へと出てしまう。

 

「フェンネル、早く! 早く車を止めて下さい!」

 

『だ、駄目だ出来ない。足がアクセルから離せ……ない』

 

 車のスピードは時速80キロに到達する。

 

「……っ、アリア様!」

 

「分かっています! スタンドです! 攻撃されている!」

 

 アリアは『シルバー・チャリオッツ』を出現させ、車体に掴まった。

 ルークの身体は自分を押し倒していて、ジリジリと外へと押し出して来る。

 自分は起き上がる事が出来ない上に、車は猛スピードで走り続けて崖へと向かっている、この状況。

 

「ルークさんの身体から生えている、この物体……! 本で見た『タイワンアリタケ』という冬虫夏草の一種に似ています! この真菌に寄生されたアリは身体を乗っ取られ、最も菌糸が発育し易い環境下で絶命させられるそうです。恐らく、このスタンドも何か、真菌の好む条件下に……ルークさん達を、誘っている筈です……!」

 

 仰け反ったアリアの頭部が、アスファルトへと近付いて行く。

 落下すれば、命は無いだろう。

 レンはシートベルトを外し、後部座席へと向かった。

 だが、レンの右足にも小さな冬虫夏草が出現し、上手く移動出来ない。

 

「く……! アリア様!」

 

 レンはルークの身体を引っ張りながら、アリアへと手を伸ばす。

 その間に、車は時速100キロに到達。

 壊れたガードレールへと向かった。

 レンの左手が、辛うじてアリアの右手を掴まえる。

 車は、壊れたガードレールの隙間へと突っ込んだ。

 その、瞬間。

 

 「『ハーティ・レグナ』ッ!」

 

 レンのスタンドが僅かに速く、ガードレールへと拳を叩っ込む。

 

『押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅ッ!』

 

 ガードレールは即座にグニャリグニャリとその形と質量を変化させ、滑らかな弧を描く形となった。

 車はそのガードレールに沿って、車体から火花を出しながら曲がって行く。

 接触した反動でアリアは車内へと戻り、またドアも閉まった。

 

「脱出します。アリア様!」

 

「……っ! 『チャリオッツ』!」

 

 アリアのスタンドは即座に車の天井部分を四角形に切り取り、大穴を開ける。

 アリアがルーク、レンがフェンネルの身体をそれぞれ掴んだ。

 

「『ハーティ・レグナ』ッ!」

 

 レンが自らの座席シートに手を掛けると、シートが内側からみるみる膨らんでいき。

 爆発。

 スポンジ状の物体が一気に吹き出した。

 その反動に乗ってスタンドで車内を蹴り付け、アリアとレンは天井の穴から外へと飛び出す。

 そして落下の瞬間に各々スタンドを出現させ、身を守る。

 

「く……!」

 

 アリアはルークと共に、レンはフェンネルと共にアスファルトを転がり。

 傷だらけになりながらも、何とか脱出に成功する。

 車は猛スピードを維持したままガードレールへと乗り上げ、そのまま崖下へと落下して行った。

 

「レンさん……大丈夫ですか?」

 

「はい、何とか。フェンネルも……無事です」

 

 互いに身体を起こすアリアとレン。

 途端に、ルークとフェンネルの身体から生えている冬虫夏草が一気に活発になり。

 急激にその数を増やし始めた。

 

「うう……!」

 

 ルークの身体からは菌糸が出現し始めている。

 アリアはスタンドで冬虫夏草を斬り払ったが、焼け石に水であった。

 直ぐに新しいモノがウネウネと生えてくる。

 次第に、アリアと。

 レンの身体からも、数はまだ少ないが生えてきた。

 

「……っ、ルークさん! しっかりして下さい!」

 

 そのアリアの悲痛な叫びを受けたから、なのか。

 森の中から、枝葉を踏む音が聞こえた。

 

「ふぅ~~ん、その男がルーク? 厄介な能力を持っているっていう、噂の? 車から脱出出来たのは、アンタ達二人のスタンド能力のようだけど」

 

「……っ!」

 

 アリアとレンが、同時に振り返る。

 立っていたのは。

 緑色のトレンチコートを着た、三十代くらいの女だった。

 

「追跡して、先回りしてたの。私。アンタ達を確実に、まとめて始末出来るこの場所で。直ぐにさよならバイバイだけど、一応自己紹介でもしとくぅ?」

 

 女は、自らの隣に緑色の人型スタンドを出現させる。

 上半身こそ人型だが、スタンドの下半身は蜘蛛のように無数の脚が備わっていた。

 

「名前はジェーン、スタンド名は『グリーン・チップス・ベルト』。能力は、今アンタ達が体験している通りの解釈で、マル」

 

 女のスタンドが、青緑色の煙を全身から立ち昇らせた。

 すると近くの樹から無数の羽音が立ち、全身を菌糸と冬虫夏草に覆われた鳥の群れが地にボトボトと落下する。

 

「これは油断でも自惚れでも無く。信頼しているからこそ、見せている。あと数分で、全員がこうなって絶命する。車から脱出した事には驚いた。でも、それだけの事よね」

 

 女はスタンドを出現させたまま、此方へと近付いて来る。

 

「いや、むしろ。アンタ達は更にマズイ状況に自ら進んで陥ったって言っても良いか。蟻地獄から奇跡的に抜け出したかと思って安心したら、その先にアリクイの群れがいましたってくらい最悪。──まぁ、諦めな。その男に関わった事を、あの世で後悔するんだなぁ!」

 

 ジェーンがスタンドで、横たわるアリアへと殴り掛かった。

 ルークの冬虫夏草を斬り払い続けていたアリアは、位置的に女に最も近い。

 

(男を救おうなんて、安っぽい感情で行動しやがって。ムカつく女だよなぁ。アリアちゃんよぉっ!)

 

 心の声が、そのままジェーンの表情に現れた。

 膨れ上がった殺意は、『グリーン・チップス・ベルト』の拳を加速させ、アリアの頭部へと振り下ろされる。

 が、突如として地面から尖った金属製の物質が飛び出し、『グリーン・チップス・ベルト』の腕を貫通した。

 

「う、おおおおおおおっ!? な、何だこれはぁぁぁぁぁあ!」

 

 本体である彼女の腕からも血が吹き出す。

 思わず攻撃を中断するジェーン。

 その、ガラ空きの顔面へ。

 

『押羅ァッ!』

 

 レンの『ハーティ・レグナ』の右拳が炸裂した。

 

「うげぇっ!?」

 

 吹っ飛ばされたジェーンは樹の幹に背中から激突し、血反吐を吐いた。

 颯爽と、アリアを背中に庇ってレンが立つ。

 

「アリア様。ルーク様とフェンネルをお願いします。ここは、私が相手をします」

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 





読んで下ってありがとうございます。
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