ジョジョの奇妙な冒険 ─泣血の独唱曲─   作:うーゆ

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予想以上に読んで頂けて嬉しいです!





『ハーティ・レグナ』

 ◆

 

 

 

 

 アリアが。

 ルークの幽霊の道具の力を借りて、壁に潜む敵スタンドの本体、ジャックを撃破するよりも、数十分程前。

 

 尖塔の上でジャックと別れたカルザルは一人、オレンジ色の屋根の上を走って移動していた。

 離れているのだ、アリア達から。

 

 しかしそれは決して、恐怖心から逃げているのではない。

 自分のスタンドの射程距離にはまだ余裕が有る。

 確実に見付からない安心な場所を確保して距離を稼ぎ、絶対無敵の狙撃を持って仕留めるという、敵への宣戦布告。

 ある意味で、敬意であった。

 

 カルザルは礼拝堂の屋根に飛び移ると、直ぐにライフルを組み上げてスタンドを出現させた。

 『マンハッタン・トランスファー』は入り組んだ小路から吹き上がる上昇気流に乗って高く舞い上がる。

 

 そして、見付けた。

 アリアを抱えたまま、奥へと逃げるルークの姿を。

 スタンドを狙って射撃すれば先ず間違いなくルークは仕留められる。

 

「ジャックの奴はまだ、あの位置から動かないのか。まあ良い。二発有れば足りる」

 

 カルザルはスコープを覗き込みながら、上空の自分のスタンドへと照準を合わせた。

 そして、ゆっくりと引き金を──。

 

「暗殺、で御座いますか?」

 

「……っ!?」

 

 突然、女の声。

 カルザルが振り返ると、自分と同じ礼拝堂の屋根の上に。

 メイド服を着た黒髪の少女が一人、いつの間にか立っていた。

 

「あ、失礼を致しました。狙撃主が要人の頭を亜音速弾で撃ち抜いて暗殺する、という映画のワンシーンような緊迫した場面に出会す機会が、今まで無かったものでして。つい興味本意で話し掛けてしまいました。大変申し訳有りません」

 

 レンは先ず、男にそう謝った。

 カルザルは無言のまま立ち上がってライフルを肩に担ぐ。

 

「どうぞ、私の存在は気にせず、暗殺を続けて頂いて結構です。貴方様は今、『命令』を遂行なさっている最中なのでしょう?」

 

「……。」

 

「私はここで、私への『命令』を丁寧に遂行していますので」

 

「──お前も、何か『命令』を?」

 

「はい……」

 

 レンとカルザルの間の空気が、徐々に張り詰め。

 緊迫していく。

 そんな中、レンは唇を開いて宣言する。

 

「貴方に今、狙われていた方達を守る。という『命令』です」

 

「……。」

 

 交差した二人の視線。

 同時に、動いた。

 

 カルザルは懐から拳銃を引き抜いて数回発砲し、此方に接近しようとしたレンを牽制する。

 

『マンハッタン・トランスファー』!

 

 更にスコープを覗く事無く上空へとライフルを発砲、その先にいるスタンドを狙った。

 レンは屋根の上を転がり、正面からの弾丸を辛うじて避けて尚も接近したが。

 上空から反射して飛んで来たライフル弾に気が付かず、右足を撃ち抜かれてしまう。

 

「く……!?」

 

 その場で体勢を崩したレンへと拳銃を向けたカルザルは、間髪入れず残りの弾丸を続け様に発射。

 複数の弾丸が一気にレンへと肉薄する。

 

「……っ! 『ハーティ・レグナ』!」

 

 レンの正面に、ソレは出現する。

 全身に鎖が巻き付いた様な装飾を有した、黒色の人型スタンドだ。

 

『押羅押羅押羅ァッ!』

 

 『ハーティ・レグナ』はその両拳で素早く連打を繰り出し、命中寸前だった弾丸を瞬時に弾き飛ばした。

 カルザルは舌打ちしたが、それ以上レンを攻撃する事無く、その場から走って距離を取った。

 

 ライフルの次弾を素早く装填しつつ、拳銃のマガジンも取り換えて銃身をスライドさせる。

 そして、一定の距離を置いて振り返った。

 

「奴は、明らかに近距離パワー型のスタンド。だが、脚を撃ち抜いた」

 

 スコープを覗き、その場に座り込むレンの姿を捉える。

 此方の動きを見ているようだ。

 

「弾丸はガード出来るか。死角から反射させて仕留める」

 

 カルザルは『マンハッタン・トランスファー』が気流を渡ってレンの背後へと浮かんで行くのを確認する。

 レンはカルザルの視線を読み、自分の背後に浮かぶスタンドに気が付いた。

 

「この、スタンド。弾丸の軌道を変える、狙撃衛星のような役割を致しますか……!」

 

 レンはタイミングを見計らい、『マンハッタン・トランスファー』へとスタンドの拳を繰り出した。

 

『押羅ァッ!』

 

 だがその超高速の拳打を、『マンハッタン・トランスファー』はヒラリと軽く避けた。

 レンは目を丸くする。

 

「っ!? この、異常な回避性能は……?」

 

 正面からは恐らく、これから銃撃が飛んでくる。

 この距離だ、スタンドでガード自体は間に合うだろう。

 しかし、その瞬間背後からライフル弾が来る。

 

「飛び道具は、余り信用が無いのですが……」

 

 レンはフレアスカートを捲り上げ、太ももに装備していたナイフを一本引き抜いた。

 そしてそれを、出現させた『ハーティ・レグナ』へと手渡す。

 

「現戦闘においては有効な手段となり得ますね」

 

 すると『ハーティ・レグナ』はナイフを持って振り被り、渾身の力を込めて投げ放った。

 しかし幾ら速くとも、この距離ではナイフは銃弾と違って空気抵抗を大きく受けてしまう。

 僅かに斜め上へと反れ始めた。

 

 カルザルも薄ら笑いを浮かべる。

 が。

 そのナイフが途中で裂けるように二本に増え。

 更に二本が四本へと増えた。

 同じような連鎖が瞬時に引き起こり、ナイフは一気に数十本の大群となって押し寄せた。

 

「何ぃ……!?」

 

 小魚の大群の様に飛来したナイフから、カルザルは慌てて回避行動を取る。

 それぞれが別々の方向へと進行し、直撃を受けた礼拝堂の屋根や付近の屋根を滅茶苦茶に破壊して行く。

 まるで機関銃でも乱射されているかのようだ。

 

「うおおお!?」

 

 肩や脇腹を切り裂かれながらも辛うじて別の建物の屋根へと飛び移れたカルザルは、息を荒くした。

 破壊された礼拝堂の屋根瓦からは土煙が上がり、破片が飛び散っている。

 

「し、至近距離以外への攻撃は、余り正確ではないようだが……無茶苦茶だ」

 

 一先ず、自分のスタンドの位置を確認した。

 先程の位置から余り離れてはいない事が分かる。

 

「あの女のスタンド。そういう事か。物質を『分裂』させる能力!」

 

 この視界でも、自分のスタンドの位置は把握出来る。

 即座にライフルの引き金を引く。

 土埃を裂いて飛んでいった弾丸を反射させ。

 負傷して動けないでいる、レンが居るであろう位置へと撃ち込んだ。

 

「よし」

 

 しかし。

 土埃が上昇気流によって晴れた時、レンの姿は礼拝堂の屋根の上から忽然と消えていた。

 驚くべき事に、あの負傷した脚で。

 

 屋根に突き出た採光塔の影に隠れたかと思ったが、上空へと舞い上がった『マンハッタン・トランスファー』からでも発見出来ない。

 礼拝堂から落下して下に逃れたのだろうか。

 

 そう思った矢先。

 上空から見張る自分のスタンドが、遂にレンの姿を発見した。

 場所は。

 本体であるカルザルの、背後である。

 

「馬鹿な……!?」

 

 振り返れば、二本の脚で立ち上がっているレン。

 撃ち抜いてポッカリ空けてやった筈の脚の傷は、綺麗に塞がっているようだ。

 

(まさか、傷口周辺の細胞を分裂させて……)

 

「──警告致します」

 

 カルザルが拳銃を構えるより先に、レンはスタンドを出現させる。

 

「射程距離に入りました」

 

 

『押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅押羅ッ!』

 

 超高速で叩き込まれる豪拳の連撃連打。

 大嵐を彷彿とさせる純粋な破壊の塊が、容赦無く敵の肉体を撃ち砕いていく。

 

『押羅ァアッ!』

 

 トドメの一撃がカルザルへと突き刺さり、遠方へと吹っ飛ばす。

 カルザルはそのまま、袋小路の方向へと落下していった。

 

「貴方様の『命令』は、これで御仕舞いかと」

 

 レンは、スタンドで屋根を蹴り付けて軽々と跳び上がり、礼拝堂の上へと舞い戻った。

 

「ですが。私への『命令』は、まだ継続するようです」

 

 

 

 

 ◆





お疲れ様でした。
いつも有り難うございます。
余談ですが。
この作品で唯一、大幅に設定を見直したのがレンのスタンド能力でした。


【スタンド名】
『ハーティ・レグナ』
【本体】
レン・オオトリ

破壊力   A
スピード  A
射程距離  E
持続力   C
精密動作性 D
成長性   E


【スタンドが触れたり殴ったりした物質を複製して分裂させる能力。小さい物質程、素早く正確に複製出来る】
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