翌日、俺はいつもどおり最初に起きて掃除、洗濯を始める。皆が起きてくるのを確認すると朝食を用意する。そんないつものルーティーンで午前を過ごした。
ちなみに最近は昼食も俺が作っている。俺の料理は美味いと地霊殿のメンバーは絶賛してくれているのだが、個人的には最低限の知識を身に着けただけなので、そこまで料理が上手いつもりはない。今日は適当に好きなことをして過ごし、日が沈み始めると出かける支度をする。
今日は地底に住むものの親睦を深めることを目的とした宴会の日である。
「それじゃあ漣。準備は…できてるわよね」
「ああ」
お空は温泉の管理があるのでお燐が見送ってくれる。
「お燐。お空と一緒に留守番お願いね」
「はい。さとり様」
お燐は深々と頭を下げる。
「じゃ、行ってくるから」
「はい。いってらっしゃいませ」
お燐に見送られ、俺たちは地霊殿を出た。行き先はまだ聞いていない。
「そういえば会場は何処なんだ?」
「旧都にある居酒屋を貸しきってるわ。多分勇義が先に来て飲んでると思う」
鬼は酒好きだと聞いたことがある。何処へ行って何をしようにも片手には瓢箪やお猪口があるという。
旧都へ行くだけなので然程時間はかからなかった。旧都を暫く進んでいると一際大きな建物が目に入った。
居酒屋と書かれた看板があるのでおそらくここのことだろう。
「着いたわ。入りましょう」
さとりに促され、居酒屋の中へ入る。中を見てみると、予想通り先客がいた。お猪口を片手に店主と話し込んでいる。
「勇儀さん!」
「お!漣にさとり嬢か。私を除いてお前らが最初とはなあ」
どうやら俺たちが早く来るのが意外だったようだ。勇儀はこちらへ手招きをして席に座るよう促してくる。それに従い俺たちはカウンターの席へ座った。暫く3人で話し込んでいるとまとめて残りのメンバーが来た。ヤマメにパルスィ、あと一人は知らない人物だった。
「あれ、勇儀はともかく2人とも先来てたんだ。もしかして待たせちゃった?」
「いや、2人ともさっき来たところだ。そんなに待ってないから安心しな」
「なあヤマメ、隣の子は…」
隣にヤマメがいたので聞いてみることにした。
「あそっか。漣は会うの初めてだっけこの子はキスメ。釣瓶落としの妖怪だよ」
「えっと…よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
挨拶をしてきたので笑顔で返した。なかなかいい子そうだ。
「よし、全員そろったし始めっか!今日は新たな仲間と更なる親睦の深まりを祝って乾杯!」
「「「乾杯~!!」」」
俺は一つ確認したいことがあるのでさとりに聞いた。
「なあ、新たな仲間ってもしかして…」
「あら。あなた以外に誰がいるのかしら?」
「ですよね~」
祝う内容に自分が入っていた。だから俺も来ることが必須だったのかと納得がいった。この後はそれぞれ話したい相手と喋り捲った。そして自分で思っていたよりも俺は酒には強かったらしい。勇儀に飲み比べに誘われたときは流石に断ったが、それでも結構飲んだほうだと思う。そして…
「おいおい嘘だろ…」
さとりが見事に酔いつぶれてしまっていた。いやまあ酔わないとは言ってなかったが。
「はははwww見事につぶれちまってるな」
「笑い事じゃねえって…」
これからこいつを背負って地霊殿まで帰らなければならないのかと頭を抱える。
「まあいいんじゃないかしら?トレーニングにもなるし」
「じゃあお前が背負えよ」
「嫌よ。何で私がそんなことをしなければならないの?」
「お前のその気楽さが妬ましい…」
余裕そうな笑みを浮かべているところがまた頭にくる。
「よし!じゃあこんくらいでお開きにすっか」
「勇儀は帰らねえの?」
「これからもう一杯いくのよ」
もう言葉が出ない。俺は勇儀のたくましさに圧倒されながらさとりを背負って地霊殿まで帰った。これから一緒に飲みにいく度にこいつを背負わなければならないのかと思うと憂鬱になる。地霊殿に着いたあと、酔いついぶれたさとりを見てお燐が慌てたのはまた別の話。