俺は鈴仙から得た情報を基に調査を始めた。まずは鈴仙が診察を行った患者から話を聞き、仮説の確認を取る。肉体的な問題が特にないとすれば、それ以外の部分がダメージを受けているということになる。
「ごめんくださーい」
戸をたたいて住人を呼ぶ。
「はい…えと、家に何のようで?」
「いきなりすみません。私は今この里ではやっている病について調べている者です。問題の解決のため、ここの患者さんにお話を伺いたいのですが」
「お医者様…ですか?」
「最近先生の教えを卒業しました」
当然真っ赤な嘘である。しかし医学の知識は並の医者より優れている自信がある。
「わかりました。中へどうぞ」
「お邪魔致します」
中へ入ることには成功した。後は必要な情報を聞き出せればいい。鈴仙から聞いていたとおり、患者は呼吸が浅く弱弱しい雰囲気があった。
「突然お邪魔してすみません。唐突にお伺いしますが、以前より手足の感覚が無くなっていたりしませんか?」
患者は目を見開いて見せた。どうやら図星のようだ。
「そして、歩く際は妙に体が軽く感じる。それは…まるで宙に浮いたかのような」
患者は表情を変えぬまま口を開いた。
「はい…全く持ってそのとおりです」
「わかりました。ご協力ありがとうございます。突然お邪魔してしまいすみませんでした」
俺は礼を告げて患者宅を後にする。今聞いた情報で仮説は確信に変わった。俺は霊力、もしくはその他の力の集まりを探すことにした。
私は食材の買出しを終えて帰路を辿っていた。すると見知った顔を見かけたので声を掛ける。
「鈴仙!」
かつての異変以来仲良くしている鈴仙・優曇華院・イナバである。
「あ、妖夢…」
「どうしたの?あまり元気がないけど…」
「今日奥さんに頼まれて患者さんを診たんだけど、症状に当てはまる病気を知らなくて診断結果を碌に出せなかったのよ…私もまだまだだな…」
患者を診たものとしての責任が圧し掛かっているのだろう。とりあえず友達としてフォローしてやる。
「私は患者さんを診てあげられただけでもすごいと思う」
「え?」
「だって、患者さんを診るって生半可な勇気でできることじゃないし。その場で断ってもよかったはずなのに勇気を出して患者さんを診れた鈴仙はすごいと思う。ほら、患者さんだってまだ鈴仙が医者になれてないことは分かってるはずだし」
「だから…」と一泊おいて私は言葉をつなげる。
「自分にできる最大限をこなしただけで十分すごい。そういうことで悩むのは医者になってからでいいんじゃない?」
すると鈴仙は目を見開いたあと俯いて…
「ほんと…あなたには助けられてばっかりね…」
そう言うと鈴仙はこちらに微笑んで…
「ありがとう。だいぶ気が楽になったわ」
「よかった。じゃあ私幽々子様のご飯作らなきゃだからいくね」
そう言って私は鈴仙と別れて再び帰路に着いた。暫く進んでいると妙な気配を感じた。それは魂の一部で、それも一つではない。何百個ものそれが同じ方向に向かって動いていた。気になった私は、荷物を置いてそれを追ってみることにした。
追い続けていると、ついに森を抜けてしまった。目の前には見たことのない風景が広がっていた。当然だ。先ほどいた場所から真っ直ぐ西になど向かったことがないのだから。暫く進むと広い丘の上にたどり着いた。既に日は暮れており、辺りは夜の闇に包まれていた。
そして、目の前には一本の大木と、それに手を当てる一人の少女の姿があった。しかし、重要なのはそこではない。重要なのは、先ほどまで追っていた魂の一部がその木に吸われていっていることだった。
そう…まるで魂を食らう妖怪のように…
そして、木に手を添えている少女はこの現象の関係者と見て間違いなさそうだ。木に魂を吸われていないことがその証拠だ。
「何をしているのですか?」
とりあえず質問する。
「見て分からない?魂を集めてるの」
「なぜ?」
「それは言えないかな。あなたどうせ私を止める気でしょ?」
どうやら答えてはくれないらしい。ならば力ずくだ。
「はい。あなたをここで止めて、洗いざらい吐いてもらいます」
「あは♪」
相手は不敵な笑みを浮かべている。そして私は刀の柄に手を添える。
「(魂魄 妖夢)…押して参る!」