妖夢が言い終わると、そこにあった影は消えた。影の存在すら許さぬ速度で二つの存在が動いている。軽く音速は越えているだろう。その影響で周囲には常に突風が吹き荒れ、ソニックブームが響き渡る。それに恐れをなしたのか、虫や獣、鳥たちは姿を消している。丘の上は、2人以外の存在を許さないのだった。
刀の柄を握り、地面を蹴る。目指す場所は、相手の懐。狙いは正確だ。しかし、あと少しというところで躱されてしまう。相手は不敵な笑みを浮かべながらこちらへ手招きしてくる。明らかに挑発している。相手はまだまだ余裕…ギリギリまでこちらを待っていたと考えると、遊ばれているとも取れる。
しかし、そんな挑発に乗ってしまうほど彼女も軟ではない。冷静に状況を判断する。今のはあくまで小手調べ。これで生半可な相手でないことはわかった。小手調べのつもりでも、今のはかなり速かったつもりだ。それをギリギリまで待っていたということは、相手から見てそれだけ遅く見えているという証拠だ。
もしかすると、自分などはるかに凌駕する存在かもしれない。しかし、だからといって引き下がるわけにもいかない。ここで、スペルを唱えて反撃をしてみせる。
剣伎「桜花閃々」
高速で無数の斬撃を放つ。想定外だったのか一応かすりはしたが、それまで。あとは綺麗に躱されてしまう。やはり相当な実力を持っているようだ。更に高度な技で攻める必要がある。続けて次のスペル。
獄界剣「二百由旬の一閃」
今度は更にスピードを上げて高火力の一撃を叩き込む。しかし、相手も予想していたのか、簡単に躱されてしまう。だが、それでいい。なぜならこれはあくまで囮なのだから。
人鬼「未来永劫斬」
相手の晒す一瞬の隙を見逃さない。戦いにおける基本である。更に高火力の一撃を隙を晒した相手に叩く。
今度はまともに入れることに成功した。相手は勢いのまま吹き飛ばされ、そのまま地に叩きつけられる。しかし、相手の実力は計り知れない。相手が降参するまで油断はできない。落ち着いて次の攻撃を仕掛ける。
剣伎「桜花閃々」
最初に仕掛けた連撃のスペルをもう一度。相手はまだ地面に横たわっている。スピードを上げて敵の下へと向かう。やがて相手の下へ辿り着き、最初の一撃を入れる……が、
「な?!」
ガキィンという音を立てて、刀は弾き返された。困惑した。今まで硬さなどなく、普通に肉を切り裂く感触があったのだから。しかし、今はまるで岩に刃が当たったかのようなとてつもない硬さがある。この一瞬で一体何があったのかと戸惑っていると、相手が口を開いた。
「あはは…あは…あはははは!!やってくれるじゃん…こんな感覚久しぶりだよ…この傷口からじわじわと痛みが伝わってくる感じ…」
その後、「でもね…」と付け足すと、彼女の目は怒りと狂気に包まれた。
「この感覚…私嫌いなんだ…」
そう言うと、彼女の姿は一瞬にして消えた。今までとは比にならないスピードだ。もう視界に捉えることはできなくなっていた。それでも必死に目で追おうとするが、それは敵わない。実力を隠していることは感づいていたが、次に自分がどうするべきなのか分からなかった。
攻撃するにしてもこうして目で追えないようなスピードで動かれたら的を絞れず全て不発に終わるのは目に見えている。撤退するにしても相手を怒らせてしまった以上あのとてつもないスピードへの隙晒しにしかならないだろう。そう考えていると、風がこちらへ吹いた気がして…
「ガ八ッ?!」
思い切り殴られたかのような激痛が腹を襲った。突き飛ばされた体は地面を転がる。地面に叩きつけられたことで肩にヒビが入るような感覚を味わう。手を突いて相手の方向を見上げると、時間の流れが遅くなったような気がした。死ぬ直前になると時間の流れを遅く感じるのは本当らしい。死を覚悟して目を閉じた。
ドスッ…ドガッ…
すると妙な音が聞こえた。死ぬときはそんな音は聞こえないはずだ。恐る恐る目を開けると…
「お前…腕鈍ったんじゃねえのか?」
右手に剣を持ったかつての相棒がいた。
という訳で初の戦闘シーンでした!あまり得意ではないので下手な表現が多々あると思います。その点は表現の仕方や追加でこういう表現も入れたほうがいいということなどアドバイスいただければ幸いです。これからもどうかよろしくお願い致します。