かつて共に血を流して戦い、再会を約束したパートナー。その人物が今目の前でたっている。
「あ…ああ…」
潤んだ瞳でその人物を見上げる。その背中はいつ見ても安心できるものだった。
「という訳で…選手交代だ」
「…ええ」
そして、彼は剣を鞘に納めて構える。その瞳は目の前の敵を真っ直ぐ見据えている。敵の方はというと、不機嫌極まりない目で彼を見ている。
「ねえ…私はこの腕から血を出させてくれたその女に用があるんだけど。邪魔…しないでくれる?」
そう言葉を放つ。それに対し彼は…
「申し訳ありませんが、俺のパートナーにこれ以上怪我をさせるわけには行かない。やめないのであれば、彼女はなんとしても守らせていただきます」
「ふうん…だったらあなたも……死んで?」
そうして、敵の姿は消えた。そして数秒後…二人は別の位置にいた。
「な?!」
「結局彼女を狙ってくるのは想定内です…そして、あなたは未だに次の手を出さない。正直あなたなどいつでも殺れる」
相手は未だに目を見開いているが、彼は余裕の表情。
「ッ舐めるな!」
そう言うと、相手は何処から取り出したのかナイフを振るってきた。しかし、彼は剣を落とした。相手は当然その方を見る。そして…
パアアアアァァァァン!!
相手の至近距離でハンドクラップ。すると相手の目からは光が消えその場に倒れ伏した。
「焦った人間など蚊よりも簡単だ。さてと…」
そして…彼は妖夢の下へ向かう。
「おい。立てるか?」
「ええ…ッ!」
妖夢は途中まで立ち上がったが崩れ落ちてしまった。
「はあ…肩貸してやるよ」
「…ええ。ありがと…漣」
「ああ」
そうして二人は冥界に向かって歩き始めた。
「ったく、あんな奴にやられるとかどんだけ鈍ってんだよ」
「違うわ。あんたが強くなりすぎてんのよ。なんかよく分からない技まで身に着けてるし」
「でもお前スピードは俺よりあっただろ」
元の世界で一緒に戦っていたときは妖夢の方がスピードでは勝っていた。しかしそれさえも逆転してしまっていた。
「それだけあんたが強くなってるって事よ。ホント向こうで何してたのよ」
「相変わらず妖魔が出てくるもんだから戦ってた。最初のほうはマジで調子狂ったけどな」
妖魔とは元の世界で次元の歪みから現れていた怪物のこと。ありとあらゆる生物の魂を食い荒らすため、駆逐が必須だった。
「それは私も。最初のほうは全然仕事に身が入らなくて…」
「そっか…」
そうして俺たちは暫く歩いた後、冥界の入り口のある真下まで辿り着いた。
「さてっと…真下まで来たけどお前飛べないよな?」
「ええ」
「ほら、背中乗れ」
「は、はあ?!」
背中に乗る…つまりおんぶである。
「…野宿するか?置いてくけど」
「乗らせていただきます」
という訳で妖夢をおんぶすることになった。
「じゃ、目瞑って?」
「え?」
「飛ばすから」
「…?、わかった」
そうして目を瞑ったことを確認すると…
「じゃ、いくぞ?」
「うん」
ドシュッ
すると、これでもかというくらいの空気圧が妖夢を襲った。目を瞑っていても分かる。絶対にまともな速さじゃない。
「もう目開けてもいいぞ」
「あんたどんだけスピード出したのよ…私の本気でもあんな風来ないわよ」
「マッハ3」
「…」
いつのまにか規格外になっていた。
「まあでもお前なら耐えられると思ったから。間違っても普通の人にはやらない」
「当たり前でしょ…私の瞬間(速度)でも天狗にギリギリ勝てるくらいなのに」
とんでもない二人組みである。こういうのを世間ではチートというのだろうが、幻想郷では平気でマッハ2を出す天狗がザラにいたりする。
「お、この階段懐かしいな」
「ああ、そっか…ふふ」
目の前には冥界の屋敷に続く巨大な階段があった。今では何もかもが懐かしく思えてしまう。そんなことを思いながら階段を上がっていると、目的地である屋敷が見えてきた。
「さてと…あの人もいるんだよな」
「ええ」
「いくか」
そうして敷地内へ入る。丁寧に手入れされた庭を抜けて、玄関前へ辿り着くと、扉を開けて中へ入る。
「ただいま戻りました!」
妖夢が挨拶をする。返事がないのでそのままあがる。
「部屋は変わってねえよな?」
「ええ」
そうして屋敷の主のいるであろう部屋へと向かう。部屋の前に着くとノックをする。
「はい」
返事があったので襖を開ける。
「今日は遅かったのね妖…夢?」
目の前に現れた屋敷の主はこれでもかというくらい目を見開いていた。
「お久しぶりです…幽々子お譲様」