目の前にいるこの屋敷の主…(西行寺幽々子)は、漣の登場があまりに衝撃的だったのか固まってしまった。しかし、暫くするとショックから立ち直りその場で漣を抱擁した。
「あなたがいない間時間をとても長く感じたわ…大事な仲間がいないとこうも退屈になるのね…また会えて嬉しいわ」
「あはは…俺もですよ。親のいない俺からすれば二人は家族のようなものですし」
俺に親はいない。育ててくれた親代わりの人物はいたが、それも既に亡くなっている。俺からすれば冥界の二人は家族のようなものだ。そしてなぜか妖夢の顔が少し赤い気がする…
「とりあえず妖夢が怪我してるんで寝かせてきます」
雰囲気のせいで忘れそうになるが、すぐに妖夢を安静にさせなければならない。妖夢は全身を怪我しているため半人半霊とはいえかなり危険だ。
「ええ。それが済んだらまたここへいらっしゃい」
「畏まりました」
そうして俺は妖夢を自室で布団を敷いて寝かせたあと、命令どおり幽々子の部屋へ戻った。ここにいる間は俺も彼女の従者の様なものだ。
「お待たせいたしました」
「ええ。じゃあ説明して?」
「はい」
俺は妖夢に何があったのかを説明した。今回の異変に巻き込まれたこと、その異変のことは妖夢本人は知らないということを報告した。異変の内容としては、人間から魂が吸い取られており、その中でも(魄)と呼ばれるものが吸われているということ。
魂には魂(こん)と呼ばれるものと魄(はく)と呼ばれるものがあり、その内魄は肉体を司っている。魄が完全に失われれば、肉体は存在概念を失って消滅する。つまりその者の死を意味する。
「そう…」
「おそらく、吸われていく魂が気になって追っていった所、黒幕と遭遇し戦いを挑んだが返り討ちにあったといったところでしょう」
「そうね…でもわざわざ魄を集めるということは」
「ええ。何者かに肉体を与えようとしていますね。もしくは…」
そう言ってから一泊置いて俺は仮説を口にする。
「何か別のものの可能性も。何せ形を持たないものですから」
「今回は動くべきかしら」
「人間の大量虐殺ですから幻想郷のバランスを乱すことは確実でしょう」
俺は「ですが…」と付け加え、こう言う。
「それは本人に聞くのが一番でしょう。参加したそうにしていますし」
「あら、最大まで気配を消していたのに」
「その程度で最大とは。能力という宝の持ち腐れですね」
これは煽っているのではない。事実を言っているまでだ。彼女はこの幻想郷の管理者の一人である(八雲紫)でスキマ妖怪という異名を持つ。
「殺したい…だけどできない」
「ええ。使われる前に殺ります」
「こらこら物騒よ」
幽々子が苦笑しながら止めに入る。俺と紫は以前本気で殺しあったことがある。そのときまだ俺は能力を持たなかったが、紫が能力を使うのに目で目標を定めていると気付き失明させた。
妖怪なので今は再生しているが、あの時幽々子と妖夢が止めに入らなければ、俺は確実に紫を殺していた。
因みにあの後紫の介護をするという形で責任を取らされた。
「それより、管理者としては今回の異変。動いたほうがいいでしょうか?」
「そうね…霊夢と魔理沙だけでは難しそうだし。漣さえよければ動いてもらいましょうか。人間を大量に失うことになれば、幻想郷のバランスは崩れかねない」
「分かりました」
俺も異変解決に加わることになった。霊夢のことは知っているが魔理沙は知らない。調べることにしよう。
「そういえば、霊夢には会っているの?」
「はい。役職も理解しています」
「そう。霊夢には私から伝えておくわ。じゃあ私はいくわね」
そう言って紫は隙間の中へ消えていった。
「さて、かなり時間がたってしまいましたがご飯にしましょうか」
「久しぶりにあなたのご飯が食べられるのね?期待しておくわ」
「あはは…それでは暫くお待ちになってください」
こうして俺は明日のことを考えながら台所へ向かった。