漣は午前6時頃に目を覚ました。洗顔をし、昨日の服に着替えると、簡単に屋敷内を掃除する。
それらを済ませたら、木刀を一本持って庭に出る。朝焼けに照らされる庭は、数年前と何も変わっておらず、心身を落ち着かせてくれる。
漣は剣を手に取ると、深呼吸をし素振りを始めた。懐かしい場所で寝泊りしたことで数年前までやっていた日課を再現したくなった。
そのときは妖夢も一緒だったのだが、生憎彼女は怪我をしてしまっているのですることはできない。
「あら、懐かしいことしてるのね」
「おはようございます。お嬢様」
幽々子だった。まだ少し眠いのか目を細めている。
「前は妖夢も一緒だったわよね」
「はい。よく二人で組み手をしていましたね」
二人だと組み手をすることができる。かつては毎日していたが、一人になってからはする機会がなかった。
「さっき妖夢に会ったんだけど、鍛錬するって言うから止めて来たわ」
「まあ妖夢らしいですがね」
生真面目な妖夢にとって、剣の修行は毎日欠かさないもの。人の目を盗んでやろうと思ったのだろうが、主に見つかってしまったようだ。
「私は朝食を作ってくるから、修行が済んだらいらっしゃい」
「はい。ありがとうございます」
その後、20分程素振りと技の練習をして切り上げ、食卓へ向かった。食卓には既に料理が置かれており、幽々子が台所から戻ってきた。
「お疲れ様ね。妖夢を呼んできてもらえる?」
「分かりました」
妖夢の部屋へ行き、ノックをして了承を得ると、部屋の戸を開ける。
「朝飯できたから来いってさ」
「わかった」
念のため、先には行かずに妖夢と一緒に向かう。途中で倒れられては困るからだ。
「お待たせいたしました」
「ええ。朝も見たけど顔色はよさそうね」
そして三人で朝食を食べた。別れる前にも何度か味わったが、やはり腕は落ちていなかった。
その後片付けは漣が行い、ある程度家事を終えると支度を整え永遠亭に向かう。
「それではお嬢様。行って参ります」
「ええ」
幽々子の見送りと共に白玉楼を後にした。
冥界を出て迷いの竹林に辿り着くと漣はその存在感に圧倒された。
ただでさえ広大なのに、隙間なく無数の竹が生い茂っているのだから。暫く竹林上空を移動していると、屋敷らしきものが見えた。
漣はそこが永遠亭だと察し、屋敷の前に着地した。建物の前まで歩いていき、戸をたたく。
「ごめんください!」
暫く待っていると「はーい」と返事が返ってきたので、留守ではなかった事に安堵する。
「お待たせしました…あれ?あなたは…」
「おはようございます。薬を買いに来たのですが…」
出てきたのは鈴仙だった。「あ、うん。とりあえず上がって」と言われ永遠亭の中へ招かれる。おそらく医者も居るのだろう。
「それで何の薬が居るの?」
「えっと主に軟膏と骨折関係のものですね」
すると鈴仙は若干驚いた表情で聞いてきた。
「えっと…誰か骨折ったの?」
「はい。冥界の庭師が…」
すると鈴仙は意外そうな表情をした。
「へぇ妖夢が?何で?」
「今回の異変の関係者に襲われまして…」
そこまで言うと相手は驚いていた。
「待って?それって里の件も関係してる?」
「ええ。大いに」
そうして、鈴仙は薬を持ってきた。
「はいこれ。全部食後に飲んで。ほかに用事はない?」
「今先生はいらっしゃいますか?」
「ええ。奥の診療室に。後敬語は要らないわ」
「わかった。じゃあちょっと行ってくる」
そうして漣は奥の診療室と書かれた部屋に向かう。
「すいませーん」
「あら。どうかなさいました?」
「少しお薬の相談が…」
そうして30分程話し込んだ後、漣は出てきた因みに代金は医者に直接払った。
「いきなりだったのにありがとな」
「いや、ここ病院だから全然いいわよ。魔理沙なんかいきなり弾幕撃ってくるし」
「いや襲撃者かよ」
鈴仙とも暫く立ち話をしてから永遠亭を後にした。妖夢の薬を片手に漣は再び大空へと舞い上がった。
今回は会うことはなかったが、先程の屋敷には姫君も居るらしい。今度立ち寄ることがあれば挨拶をしていこうと思うのだった。
妖怪の山付近の森。人里の鈴奈庵に行っていた少女…古明地さとりは地底にある自宅へ帰るべく帰路を辿っていた。
(少し借りすぎたわね…少し節約しないと)
どうやら興味のあるものが多すぎて本を借りすぎたようだ。思考を巡らせながら歩いていると
「ッ!誰?!」
ただならぬ気配を感じ取り、さとりは臨戦態勢をとる。
「おや?もう気付かれたのか」
一つの声と共に足音が近づいてきた。