東方迷郷譚   作:Awino

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9 絶望

 足音が大きくなると共にその姿が明らかになる。現れたのは茶色のコートを羽織った男だった。

 「流石は妖怪。気付くのが早い」

 「誰ですか?!」

 さとりが質問すると、相手は不気味に笑った。

 「玄狼…それが僕のコードネーム」

 そう名乗ると共に相手はナイフを取り出した。相手からは濃い殺気が感じ取れた。

 「何が目的ですか?!」

 さとりは身震いしていた。いきなりとんでもない量の殺気に包まれたからには無理もない。

 相手は不気味な笑みを崩さずに答えた。

 「何って…アンタを殺すことに決まってんじゃん?」

 はっきりとそう言い、玄狼は一気に距離をつめてきた。さとりは間一髪でそれを回避する。

 「いきなりとは酷いですね…なぜ私を殺すのですか?」

 そう言いながら、さとりはさらに距離をとる。

 「僕たち組織の計画は情報の漏洩はどうしても防がなきゃなんだ。心を読める悟り妖怪は邪魔でしかない」

 玄狼は再び襲い掛かってくる。さとりは戦闘が余り得意ではないものの何とか避け続けている。

 「因みにその計画とは?」

 さとりが質問すると、

 「は?知られちゃまずいつってんのに言うわけないじゃん?」

 何時の間にか背後を取られ蹴りを入れられる。

 「ガハッ…」

 流石に避けきれず背中にクリーンヒット。その威力は高く、背骨の辺りから嫌な音が響いた。おそらくひびが入っている。

 勢いのまま吹っ飛ばされるが、何とか受身を取る。しかしダメージは大きく、背中を押さえずには入られなかった。

 「へえ…引き篭もりって聞いてたけど意外とやるじゃん」

 「戦闘の経験がないわけではないので。それにペットたちの遊び相手にもなるので」

 さとりは話している間に何とか体制を整える。相手は本気で殺しに来ている。ならばこちらも本気で相手をしなければならない。

 「いいじゃん。もっと楽しませてよ!」

 そう言って再び相手は襲い掛かってくる。次は背後を取られまいと気を配る。始めから相手の心は読んでいるが、相手の動きが速過ぎて読んでも避けきることができない。

 「ッ!」

 再び相手が背後に回った。しかし予測していたので避けることができる。さとりはそのまま反撃体制に入った。

 

 想起 「テリブルスーブニール」

 

 唯一持っているオリジナルのスペルを放つ。目が眩むような閃光を放つ無数の弾幕。

 「ッ!眩し!」

 相手は思わず目を瞑るが、感覚だけで弾幕を裁いていく。しかしこの弾幕の本領は相手にぶつけることではない。

 

 霊炎 「ゴーストフレア」

 

 「ッ!やっべ!」

 相手は必死の思いで回避するもいくつか被弾する。さとりのスペルの本領…それは閃光によって相手のトラウマを想起させ、そのトラウマのスペルを再現するというもの。

 「……」

 相手は少なくとも傷を負っていた。しかし。さらに強い殺気を放ちだした。

 「やってくれんじゃねえか…絶対殺す…」

 そう言って相手はこちらに突っ込んできた。さっきとは比べ物にならないスピードで。傷を負わされて気が立っているようだ。

 流石にスピードに対応しきれず突進をもろに喰らう。バキッという鈍い音を立てて岩に叩きつけられる。

 「ガハッ…ゲホッゲホッ」

 さとりは耐え切れずに吐血する。満身創痍の状態だ。

 「さあ…死ね」

 そう言って相手はトドメを刺そうと突進する。

 

 しかし、何者かによってそれは防がれる。

 「私のお姉ちゃん…殺さないでくれる?」

 「ッ!こいし!」

 さとりの妹…こいしが攻撃を防いでいた。

 「邪魔だ…退け」

 

 遺伝 「ダブルスパイラル」

 

 「退く訳ないじゃん」

 

 本能 「イドの解放」

 

 二つのスペルがぶつかり合う。しかし玄狼の弾幕が押し始めている。やがて押し切り大きな爆発音が聞こえる。

 完全に圧倒した。そうに決まっていると思った。

 「隙だらけだよ?お兄さん」

 「ガハッ」

 完全に油断していた。いきなり背中を何かで刺された。あまりの激痛に思わず膝を突く。

 「テメエ…何しやがった」

 玄狼がそう聞くとこいしは不適に笑う。

 「私は無意識を操る。あなたの無意識を操って気付かれないようにしたの」

 圧倒的不利…普通は誰もがそう思うだろう。しかしこの男は違った。説明を聞いた途端、玄狼は口角を吊り上げた。

 「何がおかしいの?…ッ!」

 こいしはいきなり膝を突いてしまう。暫くその状態が続いた後、こいしはナイフを持って立ち上がりさとりに近づく。そこに表情はなかった。

 「?…ッ!」

 グサッという音が辺りに響いた。そして…

 「こい…し…?なん…で…?」

 こいしはさとりを刺しまくった。無慈悲に。そこに感情などないかのように。ただたださとりを刺し続けた。さとりは抵抗すらままならなかった。

 

 さとりはついに力尽きその場に倒れた。

 「これで命令は完了。ついでにどんな反応するか見てやるか…クク…」

 玄狼がそう言うと再びこいしが膝を突く。そして再び目を開ける。

 「え…?」

 目の前に血まみれになって力尽きた姉が居た。

 「嘘…いったいどういう…ッ!」

 そこでこいしは先程の記憶を思い出す。

 「う…あ…ああああああァァァァ!!」

 こいしは自分のしてしまったことに耐えられず発狂した。

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