最愛の姉を手に掛けてしまった事実に、こいしは耐えられなかった。
「何で…何で何で何で何で何で…何の為に?!」
こいしは自分が姉を殺した理由が分からず必死に答えを求める。
「クク…理由なんてないだろ?何せ無意識だったんだから」
「無意…識…?」
いきなり出された答えに困惑する。
「私は…無意識の内に…お姉ちゃんを…」
「そうだ…そんな最低な妹は…今すぐ死ぬべきだよなぁ?」
そう言って玄狼は襲い掛かってくる。こいしにはもう抵抗の意志はなかった。運命に身を委ねるように目を瞑る。
しかし、それは阻止された。ある一人の人物によって。
「現実からいつまでも逃げてんじゃねえよ…卑怯者」
「ッ?!」
いきなり現れ邪魔をしてきた漣に対し、敵は苛立ちを覚える。
「何お前?今殺人鬼を処刑するとこなんだけど」
「処刑されるのはあなたですよ?下衆野郎」
漣はこれまでにない量の殺気を相手にぶつける。敵は大きく怯む。
「…し…でよ」
「は?」
「邪魔しないでよ!私は無意識の内にお姉ちゃんを殺した!私は生きる意味なんてないし然るべき罰を…」
こいしは怒りを露にしていた。それに対し、漣は冷ややかな目を向けながら言う。
「目の前の事実に耐えられないから逃げようとしてるだけだろ。悟りとしての宿命から逃げたように」
「…ッ!」
呆れと失望の混じった声で漣は続ける。
「無意識で殺してしまったことはしょうがないから死で償う?ふざけてんじゃねえよ。またそれも逃げて…」
漣がそこまで言うとこいしは口を開いた。
「…のよ」
「は?」
「貴方に何が分かるの?サトリだからって差別される気持ちが!
そこにはこれ以上ないほどの悲しみと怒りが表れていた。
「これの所為で迫害された!みんなが離れていった!貴方にこの気持ちが分かる?」
「わからない」
激昂するこいしを前にしても漣は冷静を保っていた。それに対しこいしは更なる苛立ちを見せる。
「だったら知ったような口を…」
「ただ何でお前が心を閉ざす必要があるのか疑問でしかない」
こいしは言葉をさえぎられ動揺する。
「博麗の巫女はどうだ?あいつらは差別なんかしないと思うぜ?サトリだから?第三の眼があるから?そんな理由で差別する奴らと友達になって何が楽しい?ニセモノの関係なのに。妖怪としての特性上そうなっただけでお前は悪くねえだろ」
漣は少しではあるが怒りが表面に出ていた。
「探せば本来のお前と向き合ってくれる奴がいるはずだ。お前が猫被る必要なんかねえよ。見た目と体質だけで裏切ってくるようなヤツと友達になんてなるな。あと、お前まで無意識に陥ってるとまた操られるぞ」
「それってどういう…それにこれは能力の都合で…」
「だったらそうならない方法を探せよ。やる前から諦めてんじゃねえ」
そして、一泊置いて漣は告げた。
「死で償うってのは聞こえはいいが所詮ただの逃げでしかない。目の前の現実と向き合え。最後までその罪を背負い続けろ。それがお前のなすべきことだ。死んでもお前の姉は喜ばない」
こいしは暫く呆然としていたがやがて俯きながら立ち上がり帽子のつばを摘んだ。
「クスッ…そうだね。私は逃げない。現実は全て受け止める。お姉ちゃんを殺した罪も。そして…」
こいしは言い放った。
「本来の私を見てくれないヤツとの関係なんて、クソくらいだ!」
全ての眼には光が宿り、もう閉じた瞳ではなくなっていた。
「さあ…貴方にもご退場願うわ!玄狼さん!」
「ッ!」
想起 「テリブルスーブニール」
溟符 「深海に浮かぶ新月」
二人でスペルを放つ。こいしは悟りとして覚醒し姉のスペルを放った。それは姉とは比べ物にならないほど高威なものだった
「逃げたか。さて、時間がないから早く済ませるぞ」
「何を?」
すると漣の掌から無数の糸のようなものが表れた。
「さとりを蘇生する。こいし。そこの鞄から試験管を出してくれ」
「うん」
すると本当に試験管が出てきた中には透明な液体が入っている。
「蓋をあけて持っていてくれ」
すると漣は無数の糸のようなものを操り始めた。すると見る見るうちにさとりの傷がふさがっていった。
「お前さとりと血液型一緒か?」
「うん…え?」
するとこいしにも糸が伸びてきた。その糸は赤く染まりこいしの血液を吸いだしていく。
「よし。後は…」
そう言って漣はさとりの胸元に指を当てる。すると電流が流れた。
「ん…あれ?私…」
「お姉ちゃん!」
こいしはさとりに抱きつく。さとりの蘇生に成功した。
「ごめん…ごめんねお姉ちゃん…私…」
こいしは泣きながらさとりに謝罪する。
「もう過ぎたことだし気にすることないわ。敵に操られたわけだし。それで私なんで生きて…」
「漣が蘇生してくれたんだよ」
それに対しさとりは驚愕する。いきなり自分を蘇生させたなんて言われたら理解が追いつかないものだ。
「一体どうやって…」
「説明すると長くなるから今度にしてくれ…」
漣は苦笑を浮かべる。
「ねえ。漣」
こいしに呼びかけられる。何かと疑問に思っていると
「ありがとう!私たちを助けてくれて」
満面の笑みで感謝を述べられた。
「ああ。じゃあ俺白玉楼に用事あるから。悪いけど二人で帰っててくれ」
そう言って漣は大空へと舞い上がった。
(あはは…漣といると凄いドキドキするな…)
こいしに一つの感情が芽生えつつあった。