俺の住んでる場所を聞いたとたん、霊夢とルーミアは声を上げた。確かに地底には妖怪がうじゃうじゃいるし幻想入りしたての人間が最初に行くような場所ではないので無理はない。
「はあ…私を軽く遇うわ地底の屋敷に住んでるわ、あんた何者なのよ…」
「まあ自分でも相当なイレギュラーだと自負してる…」
ルーミアに関しては驚き疲れてしまったようだ。少し申し訳ない気持ちになる。
「はあ…とりあえず寝る場所はあるのね…お蔭で手間は省けたわ」
「博麗の巫女って結界管理だけではないんですね…」
「そうね…人間が幻想入りしたときなんかは保護するって役割が一応あるんだけど…そもそもそれはイレギュラーだから殆どおまけみたいなもんだったのよ。実際幻想入りした人間を見るのはあんたが初めてだし…」
イレギュラーな仕事をさせてしまっていることに申し訳なさを感じる。
「後、敬語はいいわ。話し辛いし」
「わかった。巫女の仕事って他にもあったりするのか?」
「あとは異変の解決かしらね」
「異変?」
異変とは、この幻想郷で起こる事件のことで、能力を使用する場合が多く規模が災害レベルになることからそう呼ぶらしい。これまでにも多数の異変を解決してきたらしいが、それでも年に数回程度なので、そのときしか収入のない彼女は苦労しているのだそう。
「なるほどな…いくらここが楽園でも理不尽の一つや二つはあるよな…」
「ええ…まあ、そんな生活にも私は慣れちゃったんだけどね…でもできることなら…」
そう言うと霊夢は空を見上げて…
「博麗じゃなくて…里にある、普通の家庭に生まれたかったな…」
「…どんな場所に行って、俺たちがどう足掻いたところで、理不尽がなくなるわけじゃない」
「…え?」
霊夢は首をかしげた。
「俺たちが生きてる限り、まるで取り憑いているかのように理不尽は付きまとってくる…だから…」
そうして俺は一泊おいて…
「それを恨んだり諦めている暇があるなら、逆に楽しんでそれに立ち向かっていけばいい。
俺はそう思うんだよな…ほら、理不尽様上等だってな」
「そんなことできたら苦労しないわよ…」
「まあ聞けって。たしかに経済的にも仕事の内容でも、お前は絶対的に理不尽で不利かもしれない。だけど…」
「だからこそ得られたものもあるんじゃねえのか?」
「?!」
そうして俺はまた語り始める。
「理不尽というデメリットにはメリットをぶつける。デメリットをメリットが存在する理由にしちまえば、自分が不利だなんて思わなくなるはずだぜ?ま、これは戦い方の一例に過ぎねえけどな」
「あはは…そうね。なんだか私肩の荷が下りた気がする」
「そりゃ良かった」
こうして俺は霊夢、ルーミアと暫く雑談した後、腹もすいてきたので霊夢と里へ降りることになった。
「そういえばあんたは次に行く場所は決めてるの?」
「ああ…今それで悩んでたとこ…」
「じゃあ鈴奈庵にでも行ってみたら?」
「鈴奈庵?」
霊夢によると、鈴奈庵とはこの里にある貸本屋で、そこには幻想郷で書かれたもののほかに外から流れ着いたものもあるらしく、この幻想郷の中でも多くの種類を取り扱っているらしい。そのなかには妖魔本と呼ばれる妖怪の手によってかかれたものもあり、店主は日ごろその解読に手を打っているのだそう。
「へえ…それは面白そうだな…っとついたついた」
俺たちが向かっていたのはいたって普通のうどん屋だ。安くて美味い…これにつきる。
その後俺たちは各々の食べたいものを注文し、会話で盛り上がりながらゆっくりと食事を取った。
会計を済ませた後、俺は霊夢、ルーミアと別れ、鈴奈庵を目指すことにした。
うどんをすするときの二人の満面の笑みが印象深い。それほど貧しいのなら、今度も何か奢ってやろうかという気持ちになった。
暫く歩くと鈴奈庵と大きく書かれた看板が目に入ったので俺は暖簾をくぐって店の中に入った。