「飲み会?」
朝食後、俺が台所で後片付けをしているとさとりがそんなことを言ってきた。
「ええ。それと、その日はあなたにも来てもらうわよ」
「酔ったときのおんぶ係ですか…」
「違うわ。あなたも飲むの」
ん?今この少女はなんと言った?俺も飲む?勘弁してくれ俺はまだ…
「この幻想郷では20歳じゃないとお酒を飲めないなんてルールはないわ。郷に入れば郷に従え。この世界で人と付き合っていくならそっちの事情は捨てたほうがいいわ」
「はあ…マジかよ…」
どうやら俺はこっちの世界の都合で飲酒をしなければならないようだ。速攻で酔いそうなんだが…
「じゃ。日時が決まったら伝えるからそのつもりでね」
そう言ってさとりは自分の部屋へ戻っていった。俺は少し憂鬱な気分になりながら残りの作業を進めていった。
俺は後片付けが終わると食材がきれていたので買出しに向かった。おもに残っていたのはもやしだけという哀しい状況を打破すべく俺は店の商品を見て回る。今日は特に魚が安売りされており、思っていたよりも財布の中身を節約することができた。
俺が少し上機嫌になりながら。里を歩いていると見知った顔を見かけた。
「今日はお店の買出しですか?」
「あ!黒葉さん!数日振りですね!」
私服姿で店の食材を眺めるミスティアだった。
「丁度お野菜が切れてきてたので買い足しておかなきゃと思って」
「なるほど…また今度鰻食べに伺いますね」
「あ、はい!いつでもいらしてください!」
こうしてミスティアと別れ、俺は次の店へと足を進めた。前に借りた本を読み終わったため、それを返しに行くのである。
「ごめんくださーい」
「はーい」
俺が店主を呼び出すと、彼女は返事をしてすぐにやってきた。
「おまたせいたしました。前の本の返却ですね?」
「はい」
俺は読み終わった本を差し出す。
「はい。確かにお受け取り致しました。今日は何か借りていかれますか?」
「そうですね…何かおすすめはあったりしますか?」
「おすすめ…あ!少々お待ちください!」
そう言うと彼女は足早に本棚へと向かっていった。そして暫く経つと彼女は一冊の本を抱えて俺の下へと戻ってきた。
「こんなのは如何ですか?」
そう言って彼女は本を差し出す。パラパラとめくってみると、推理ものの小説だった。こういうのは暫く読んでいなかったのですぐに興味をそそられた。俺は迷わずこの本を借りることにした。
「気に入りました。これにします」
「承知いたしました!」
こうして俺は代金を支払い本を借りた。
「しかし本当にここはすごいですね。ここまで沢山の本をそろえている場所はほかに見ませんよ」
「ありがとうございます。ですが、ここなんか比にならないような場所がほかにあったりするんです」
「ここ以上の場所が?」
これ以上の場所といわれてもまるで想像がつかない。この世界は本の量でも常識を覆すのだろうか。
「はい…紅魔館っていうお屋敷にある大図書館がここの数倍で…」
「な、なるほど…」
貸本屋をお屋敷の図書館が上回ることなんてあるのか?それも数倍…
俺の脳内は疑問符でいっぱいになった。
「まあでも強行突破してくる泥棒がいるので年々本が減ってるらしいですけど…」
強行突破?泥棒が?何処まで常識がないんだよ!
「あはは…世界は広いんですね…」
「そうなんです…世界は広いんです…」
「「あはは…」」
なんかもう疲れてしまった。帰って寝よう。
「じゃ、じゃあ読み終わったらまた伺いますね」
「あ、はい!お待ちしております!」
こうして俺は買い物袋いっぱいの食材と一冊の本を手に里からの帰路を辿った。今日は顔見知りに会う機会が多かった気がする。そしてこの世界の常識のなさを再度確認することができた。特に強行突破する泥棒のことは俺の頭にしっかりと焼き付いていた。