ハンガーについた。とても大きなARMS。明らかにあのARMSだった。
『あまり近づくな。あやつのARMSは"生きて"おる。』
「生きている?」
『軽量化と機体強度の両立を図るために試験的に使用されたARMSの半生物化……災獣と生物、そして人類の叡智の混合物……いや、失敗作がこいつだ。』
……失敗作?
『食われたくなかったら近づくんじゃないぞ。殺人鬼でもない限りは。』
「殺人鬼……?」
『あー……言葉の綾だ。』
『いずれにせよ、近づくな。』
微かな甘い香り。
『あの野郎……もし甘い香りがしてもその匂いを辿るんじゃないぞ。この臭いはARMSが発する疑似餌だ。臭いに誘い込まれたが最後、頭を破裂させたやつが居たからな……』
前を歩くマウスが不穏なことを言う。
「性能的にはどのような差異が?」
『何と何を比較して?』
「半生物化する前と、した後。」
『出力の大幅な上昇、重量の低下、搭載限界量の向上、操作に対する反応性の向上……使用者の精神安定性の低下、整備作業時の危険性……失ったものも、得たものも大きい。』
『見えるか?あのガスボンベが。』
あの大きなガスボンベ……?
『あれがこのARMSを不活性化させているガスだ。あのガス無しでは整備作業はできない。ニューマならやりかねないが。』
中佐は不活性化を行わなくても整備作業が可能……と。
『ニューマ、そこにいるのだろう?』
『……バレたか。』
『客を連れてきた。本当なら立入禁止なんだがな。代理人は?』
『医務室に戻した。』
『了解。』
『さて、ニューマ……』
ひたすら謝られた。謝られすぎて確かにあった殺意が失せるくらいには。
「つまり……殺す気はなかったが放射性降下物による汚染で捜索を遅らせようという思惑があった……と。」
『すまない……』
「医務室に居る。」
『……。』
短い脚で医務室まで帰った。
「代理人、中佐についてどう思う?」
「うーん?」
「妾達を殺そうとしたんだぞ!許せるものか!」
「……殺そうとしたが、結果的に死ななかった。」
「そのとおりだが……!」
『総員、配置につけ!追手がやってきたぞ!』
鳴り響くサイレン、突如告げられる衝撃。
『これは訓練ではない!繰り返す!これは訓練ではない!』
外を走る兵士達。明らかに人間ではない。DOLLSをARMSを装着させず、兵士として使っているのか。
『代理人!マウス!お主らにコードを割り振る!代理人はテルミナートル1、マウスはテルミナートル2、異論は無いな!?』
走って飛び込んできたマウスに告げられる。
「了解。」
「代理人!」
「行くよ。」
「妾達に矛を向けた相手を守るのか!?」
「マウス、人はいつか死ぬ。それが早く来るか遅く来るかの違いだよ。それに、私は死ななかった。君が生き残った幸運によってね。」
少しギザになったな……代理人。
『お喋りは終わったか?テルミナートル隊は格納庫へ集合、ARMSを持ってけ。砲弾は処刑部隊に撃ち込めよ。』
格納庫へ走っていくと、丁度、あの巨大なARMSを装着する瞬間の中佐が居た。ARMSが中佐に装着されるとすぐに光の粒子となって消えた。
『カチューシャ1,2,3はM-13を軽戦車型に対し、爆風で包囲するように砲撃。コルセア1,2,3,4は……君たち、まだ居たのか。』
『私が残した。』
巨体を揺らす(中)をお待ち下さい。