大変お待たせした上での番外編です。
以下言い訳です。読みたくない方は本文まで飛ばして下さい。
9月半ば位で趣味のイベントが一段落したのでそこから執筆を開始したのですがまた別のイベント(しかも主催)の準備を開始してしまったので小説を書くメンタルになれず、しかもそのイベントの準備中に去年なってしまった鬱状態が再発(そもそも治ってないが)してしまい創作活動全般のやる気が皆無になってしまい四苦八苦。
なんとか10月終わりにイベントは完遂するも脱け殻状態になり創作活動全般のやる気が以下略。
11月半ば辺りでまた別の趣味に興じ小説をほったらかし、実は今年の5月に仕事を辞めてから鬱状態とか色々あって仕事が出来なかった状態を何とかしたくて11月終わりにバイトを見つけ12月8日にバイトの面接を終え後は書類書いてバイト出来るぞ!と意気込んでいたら翌日家族が新型コロナ陽性。その翌日に自分にも症状が出てきて更に2日後39度近い高熱を出しつつも検査キットでは陰性、それで寝てたら次の日には熱が下がっていたので小説を2千文字程書いたらその夜また38度まで熱が上がりキチゲが溜まる。
そして現在熱が下がったので文字数を2千文字程追加しこの前書きを書いている次第でありました。まる。
さて、今日も作業の時間……ではなく、今日は休みだ。
最近は収穫作業も落ち着いてきたこともあり、いつも半ば自主的に行ってきた農園の細々とした作業も無いため、今日は完全なフリーである。
では今日は何をするかと言うと、俺の数ある趣味の一つ、釣りにでも行ってこようと思う。
そうと決まれば自分の車に道具を積む。
「今日は海釣りだから……竿は……これで良いか。リールもいつも使ってる奴で…………」
「おや、鬼頭さんじゃないですか。お出掛けですかな?」
「その声は……やっぱり、スカイか」
呼び掛けに反応して顔を上げると、そこにいたのはセイウンスカイ。
彼女も今日はフリーらしく、私服を身に付けていた。
「そうだな、今日は休みの日だから釣りにでも行こうかと思ってね」
「ほほう、鬼頭さんも釣り好きですか。私もついて行っちゃおうかな~」
そういえばスカイも釣りを趣味にしていたか。しかし。
「俺は別に構わないが、寮に外出届けは出した方が良いんじゃないか?」
「もちろん今から出して来ますよ~」
「わかった。じゃあ俺は一応スカイを連れてく事をたづなさん辺りにでも伝えとくよ」
「にぇ?そのままじゃ駄目なんですか?」
「趣味とはいえ生徒を遠出させる訳だからな。報告は大事だろ?」
「成る程~じゃあ行ってきますね」
「おう」
スカイを見送ると俺はスマホを取り出し、たづなさんに電話を掛ける。
短いコール音の後に、電話が繋がる音が聞こえる。
『はい、たづなです』
「お疲れ様です。用務員の鬼頭です」
『あら、鬼頭さん。お疲れ様です。どうかなされましたか?』
「実は先程決まった事なのですが、セイウンスカイと共に沿岸へ釣りに出掛けて来ます」
『ああ、わかりました。帰りは何時頃になりますか?』
「17時前には帰って来る予定です」
『わかりました。ではお気をつけて』
通話が切れた。なら次は。
「道具の積込の続きだな」
「鬼頭さ~ん。セイちゃんが来ましたよー」
スカイが釣竿や他の道具を手にして歩いてきた。
「おう、スカイ。じゃあ行くか。道具は後ろに置いて、助手席に乗ってくれ」
「了解ですよ」
車に揺られながら、俺はスカイに話を振る。
因みに今日は俺の車なのでATである。いやぁMTと比べて楽で良いなぁ!
「そういやスカイはいつもどんな釣りしてるんだ?」
「私はテキトーに糸垂らして良いのが掛かれば良いかなーと」
「成る程?五目釣りかな?」
「あー、複数種類の魚を狙う釣り方でしたっけ。確かにそうですね~」
「しかし、適当に糸垂らしてって、それで釣れるのは素直に凄いな」
「へへへ~それ程でも~?ありますが?そういう鬼頭さんはどんな釣り方してるんです?」
「俺も基本は五目釣りだぞ?ただスカイのとは違って海底に落とすんだけどな」
「ん~てことは砂地で釣る感じですかな?」
「それとはちょっと違うが……もうすぐ着くから釣りながら説明しようか」
「はいは~い」
目的地の堤防に着くと、まずは海の状況を確認する。
水量と海底まで見えるかをざっくりと確認する。
「随分とゴミの量が多いな」
「先日雨が降ったからじゃないですか?」
「あー流れてきたか」
「場所変えます?」
「いや、できる場所探しながらやろう」
そうして俺等は車から釣具等を運び出し、ポイントを探しながら少しだけ歩く。
「お、ここ良いんじゃないですか?」
「うん。ゴミも少ないし、海底も見える。丁度良いな」
そうしたら俺等は堤防に荷物を下ろし、釣具の準備をする。
因みに釣具のセットの事を一般的にタックルと言うのだが、スカイのタックルは釣竿の先に浮きと軽めの重り、そして針に餌が付けられている。
俺のタックルは釣竿にスカイのよりは重めの重りに餌の付いた針というシンプルな仕掛けだ。
スカイのタックルの重りはあくまでも海中に仕掛けを張らすための物だが、俺の場合は海底に素早く仕掛けを落とすための重りという違いがある。
「じゃあ始めるか」
「なら私は仕掛けが絡まないように鬼頭さんの仕掛けとは離して落としますね」
「おう、よろしく」
俺は釣竿のリールから出ている糸に指を掛け、リールのストッパーを外す。そうしたら、糸から指を外し海底の岩の隙間目掛けて仕掛けを落とした。
(ん……外したか)
しかしこれも想定内。リールのストッパーを戻し、糸の弛みを巻き取ってから釣竿を動かして隙間に仕掛けを入れた。
「ほほう、何かと思ったら穴釣りですか」
「おう、仕掛けは失くしやすいが確実な釣果は出る。シンプルだろ?」
「鬼頭さんらしいと言えばらしいですな」
落としてから十数秒待っても反応がなかったため一応少しだけ仕掛けを穴から出し、また落とす。こういった穴の中にいる魚は穴に落ちてきた餌に食いつく習性があるので、こういった確認が刺さる時がある。
しかし、結局反応がなかったため、思考を切り替えて別の穴を探す。
こういった探す作業も楽しいんだよな。
次の穴に仕掛けを落として数秒、竿先に小さな反応。
魚が口先で餌をつついた振動だ。
その直後、先程よりも強く独特な振動が手に伝わる。
その瞬間に俺は釣竿を振り上げ、針を魚の口に掛ける。
その勢いのまま糸を巻くが、魚が海中で暴れ俺と魚との闘いが繰り広げられる。
この感覚だ……!
これが楽しくて釣りをするんだ…………!
その後十数秒程駆け引きを楽しむものの、魚の方が息切れしたのか最後の方はするすると上がってきた。
そして水面近くまで来た魚を見ると、
「スカイ、今大丈夫か?」
「大丈夫ですよ~大物でも掛かりましたか?」
「正にその通りだ。タモ(釣り用の網)持ってきてくれ」
「はいは~い。……うわ、ホントに大きいですね」
「おう、じゃあもう一回しするから……よし、入った」
スカイに手伝って貰い、釣れた魚を引き揚げる。
まずは針の確認。よし、ちゃんと口に掛かってる。
ただ、未だ堤防の上で跳ね回っている魚から針を外すのは怪我の危険があるため、先に〆よう。
道具箱からナイフを取り出し、魚の鰓蓋を指で引き上げ鰓と体の繋ぎ目にナイフを突き立てる。そうすると魚が大人しくなるため、楽に針抜きが出来るという訳だ。
針を抜いた後、バッカン(釣り用のバケツ)に海水を入れ、魚を頭から入れて血抜きをする。その間に、サイズ計測用のメジャーを用意。
「お、メジャーまで持ってるとは、用意周到ですなぁ」
「たまに大物が掛かった時用に道具箱に入れてるのさ。使う機会には恵まれてなかったけどな」
「今日使えるサイズのが掛かって良かったじゃないですか」
「それもそうだな。さてそろそろ血抜き終わったかな」
魚を水から引き揚げると、鰓が白っぽくなっていた。血抜き完了のサインである。
そうしたら堤防に魚を横たえて、メジャーで計測する。
「んー…………42cmかな」
「でっか!」
「種類は多分アイナメかな。普通の仕掛けで42cmのアイナメは上出来だろう」
「ふふふ……セイちゃんも負けていられませんなぁ」
「おう、その意気だ」
その後。
俺はクロソイやカサゴを釣り上げたもののサイズがあまりなかったため逃がし、最終的な釣果は最初に釣れたアイナメ1尾のみとなった。
スカイは……坊主。
つまり、1尾も釣れなかったらしい。
「あー……その……」
「慰めは大丈夫です……釣りなんて釣れるか釣れないかですから」
ううむ、これでは付いてきてくれたスカイにかける言葉がない。
…………よし。
俺はスカイに車への荷物の積込を頼みつつ、ある場所へ電話を掛けた。
学園へ帰る最中。
「スカイ、食堂に来る時に俺に連絡くれないか?」
「へ?良いですけど……何故?」
「うまいもん食わしてやるからさ」
「はあ……」
学園に着いたら、荷物は後に回して魚の入ったクーラーボックスの紐を肩に掛け、食堂へと向かう。
「おばちゃん、急な申請に対応してくれてありがとう」
「良いよ良いよ~釣りに行ってたんだろ?釣れたかい?」
「1尾だけね。ほら」
「あら~いいサイズのアイナメ!これどう料理するんだい?」
「シンプルにアクアパッツァかな。ミニトマトある?」
「サラダ用のがあるよ。何個要る?」
「5個もあれば良いかな。じゃあキッチン借りるよ」
「あいよ」
さて、まずは小鍋やヤカンなどでお湯を沸かす。
その間にウロコ取りをする。
包丁を立てて、しっぽ側から頭側へ向けてザリザリと包丁を滑らせる。ウロコが飛び散らないように少しずつ流水を当ててやるとなお良し。
ウロコ取りが終わったら、腹を開いて鰓と内臓を取り出す。うお、肝でけぇ。血も回ってないし、一応取っておくか。
血合を洗い流したら、このままだとフライパンに入りきらないので魚を半分に切る。
魚全体の大体半分位のところに包丁を入れて身を切った後、包丁の刃元を背骨の繋ぎ目の部分に当て、体重を掛けて一気に切り落とす。
背骨が切れたら、反対側の身を切り、魚が半分に切れた。
丁度お湯が沸いたので、魚をボウルに並べ、熱湯を魚の身に掛けて霜降りをする。
こうすることで、臭みとぬめり、最初に取りきれなかったウロコが取れる。
霜降りが終わったらすぐに魚を冷水に浸けて身を締める。最後に塩コショウを振って魚の下準備はこれで終わりだ。
じゃあ次は……あ、あれ準備してない。
「耕ちゃん、アサリは使わないのかい?」
「おばちゃん、助かるよ。忘れてた」
「砂抜きは済んでるからそのまま使えるよ」
「ホントにありがとう……!」
おばちゃんからアサリを分けて貰い、一応ボウルに水を貯めて殻を擦り洗う。
と、ここでスカイから連絡が入る。
ナイスタイミングだ……!
フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、魚を両面焼く。焼けたら、ニンニクとアサリを入れてから白ワインを入れて蓋をして蒸し焼きにする。
その間にミニトマトの準備だ。
と言っても半分に切るだけなんだけどな。
蓋を取り、アサリの殻が開いたのを確認したら水とミニトマト、2つに分けた肝、少しだけ塩コショウを入れて煮込む。
全体に火が通ったら皿にあけ、乾燥パセリを振りかけて完成だ。
「お、いたいた。スカイー」
「あれ、鬼頭さん。その手に持ってるものはもしや」
「おう。今日釣り上げたアイナメ。食うだろ?」
「にゃはは~セイちゃんへの慰めですかな?別に良いんですけど……」
「いやいや、釣れても釣れなくても食わせるつもりだったから」
「そうなんですか?じゃあ頂きましょうか」
「おう。アクアパッツァだ。熱いうちに食べてくれ」
「では……うん、味が染みてて美味しいです。魚自体も生臭みが無いですし」
「あっちで血抜きやったし、こっちでも臭み抜きやったからな」
「そうなんですね。……アサリも美味しいです。この香りは……ぶどう?」
「酒蒸しのために白ワイン入れたからだな」
「あれ?この白っぽいのは何です?」
「それはアイナメの肝だ。状態良かったから入れたけど、駄目そうなら俺が食べるよ」
「あまり馴染みは無かっただけなんで……食べますね……あ、意外と美味しい」
「お、スカイは魚の肝いける口か。駄目な奴多いんだけどな」
「あれ、セイちゃん何食べてるの?」
「おや?スペちゃんじゃないですか。実は今日鬼頭さんと釣りに行ってきまして、鬼頭さんが釣り上げたアイナメを食べてるんですよ」
「へーそうなんだー……じゅる」
「ん?スペも少し食うか?俺の奴まだ手着けてないからそこから取れば良いよ」
「え、良いんですか?じゃあ少しだけ頂きますね!」
そう言ってスペは魚の1/4位と具材の幾つかを自分の皿に取る。
「頂きまーす!……美味しい!え、これ鬼頭さんが作ったんですよね?」
「おう、釣る所から皿に盛る所まで俺がやったよ?」
「凄く美味しいです!トマトの酸味と魚の旨味がマッチしてて!」
「そっか。じゃあ俺も食べようかな」
魚の身を箸で取り、口に入れる。
スペの言う通り、トマトの酸味が口内に響くが魚の旨味と混ざり合って普通に旨い。
アサリやトマトもそれぞれの具材の旨味を吸収しており、それでいて食材そのものの個性も死んでおらず口の中を飽きさせない。
肝は……食材の都合上、他の具材の旨味が染みにくいので特別旨いという訳ではないが、他の具材にはない食感でこれはこれで良いと思う。
そしてスープ。アクアパッツァという料理はスープ料理としてカテゴライズされることもあるぐらいスープが美味しい。
何せ具材全ての旨味がスープに溶けているのだ。不味い筈がない。
うん。満点をあげても良いぐらい旨い。
「鬼頭さん」
「ん?どうしたスカイ」
「いや~こんな美味しいもの食べさせて貰ってホントありがとうございます~」
「いいってことよ」
「私は何もしてないのに食べさせて貰ってなんか申し訳ないです……」
「それもまた良し」
「いいんかい」
そうやって俺の休日は終わる。
車の道具は明日の空き時間に降ろそうか。
前書きでは書かなかったのですがスカイが農園で汗水垂らして働くというビジョンが見えなかったので番外編に登場させました。スペはゲストみたいなものです。