トレセン学園の農園で土にまみれる日々   作:タカハン

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お久し振りです。

プラモデルのイベント参加したり鬱状態の再発したり鬱状態の薬と花粉で日中寝てたりpixivに小説投稿してたら遅れました。
とは言っても多分コロナの影響が強かったと思いますけどね。コロナ明けてから二ヶ月は全然文章書けませんでしたし。

さて、今回の小説はサブタイトルにも書きましたが農園視察回。そしてちょっぴりシリアスです。

では、どうぞ。


グラスとエルとラディッシュと農園視察

さて、今日も作業の時間……の前に、秋川理事長から言われた事を思い出す。

 

(URAからの視察……ねぇ)

 

何故今。

その答え……と言えるかは判らないが、話は数日前まで遡る。

 

 

 

「突然呼び出してすまないな!鬼頭君!」

 

「いえ……それで秋川理事長、私に何か?」

 

農園での作業が一段落した辺りで、校内放送で呼び出しが掛かった。

理事長室に着くと、理事長にそう話し掛けられた後に、たづなさんが話し出す。

 

「実は、近々学園にURAから視察が入るんです」

 

URA。

トゥインクルシリーズのレースやウイニングライブ等を取り仕切る、トレセン学園から見て上層部と言える団体である。

 

「そうなんですね。それで、何故自分が……?」

 

そこなのである。

レースやライブ等の興行をメインで仕切っているのであれば、自分単体には声は掛からない筈だ。

 

「それが……主に農園の視察をする、と」

 

「へ?」

 

驚きはしたが、同時に納得もする。

URAの下部組織であるトレセン学園の内情を視察するのは、何ら可笑しい事では無いからだ。しかし、

 

「何故今?既に農園設立から3年程経過していますが……」

 

「此方からは何とも……」

 

「そうですか……」

 

「うむ。しかし、向こうが知りたいと言うなら、それに応えるのも吝かではないだろう?」

 

そう理事長が背中を押す。

勿論だ。一抹の疑問等は有れど、視察自体に反対は無い。

 

「わかりました。詳しい日時は?」

 

 

 

そんな事を思い出しながら居ると、今日手伝いをするウマ娘達が近付いてきた。

 

「ヘーイ、鬼頭さん!今日は涼しいデースね!」

 

「おはよう、エル」

 

エルコンドルパサー。

目元を覆うマスクの赤が眩しいウマ娘である。

赤い上下一体型の作業着を身に付け、黄色い帽子と手袋を着けている。長靴の色は茶色。

 

エルが今日は涼しいと言っていたが、現在の時刻は午前10時手前。

夏場は午後3時からの作業だったが、暑い時期も終わったのでいつもの作業時間に戻したのである。

 

そして、もう一人。

エルの隣を歩いてきた茶髪(ウマ娘は確かこういう毛色を栗毛と言ったか?)のウマ娘。

 

「鬼頭さん、おはようございます~」

 

「グラス、おはよう」

 

グラスワンダー。

額の上の中央だけ白いブチのような毛色をしたウマ娘である。

その白い毛を覆い隠すように麦わら帽子を被っており、手袋と長靴の白が上下分割型の青い作業着に映える。

 

「うん、二人とも服装は問題ないよ」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ作業の説明の前に話しておきたいことがあって」

 

「?なんでショウ」

 

「実は、今日URAからこの農園に視察が入るみたいなんだ」

 

「視察……ですか」

「ワタシ達は何かするべきなんでショウか?」

 

グラスが真面目な顔で応答する。

エルも同じように真面目な顔で聞く。

 

「いや、二人には普段通り作業して貰いたい。普段通りの姿を見せるのが視察には良いからな」

 

「成る程」

 

「おや……?向こうから歩いてくる方がいますね」

 

「ん……?」

 

エルの言葉につられ、そちらを向いてみるとスーツ姿の女性がこちらに歩いてくる。学園内では見ない姿で、恐らく彼女が……。

 

「こんにちは。農園管理者の鬼頭さんはいらっしゃいますか?」

 

「私が鬼頭です。失礼ですが、貴女は?」

 

「ああ、申し遅れました。私は今回こちらの農園の視察に参りました、小早川(こばやかわ)と申します」

 

「そうでしたか。農園管理者の鬼頭です。今日はよろしくお願いします」

 

俺は勿論帽子を脱いで挨拶をする。

 

小早川さんの服装はスーツ姿で、しかもヒールを履いていたので間違っても畑には入れられない格好をしていた。と、そこで俺の視線に気付いたのか、

 

「私は今回視察に来ただけなので、そちらの作業の邪魔はしません」

 

と、註釈を入れてきた。

 

「成る程、わかりました。ところで、この視察について質問があるのですが、聞いてもよろしいですか?」

 

「私に答えられる事であれば、何でもどうぞ」

 

「では、農園設立から3年も経過している今になって視察をしに来たのは何か理由が?」

 

「成る程、その事でしたか。本当はもっと早くに視察を行う予定でしたが、URAの幹部の中には農業に詳しい方も居てですね。『農園設立からあまりにも早いタイミングで視察をしてしまうと、畑が出来上がっていない状態で視察をすることになってしまい、正確に状態を計れない』と苦言を呈され、視察のタイミングを少し遅らせて貰いました」

 

「成る程、それには確かに同意できる意見ですね。畑になっていなかった場所を畑として整備するのは時間がかかりますから」

 

「そういう事です。質問は以上ですか?」

 

「そうですね。では作業に入らせて頂きます」

 

そう言って二人に向き直る。

 

「さて、待たせて悪かったな」

 

「いえ、大事な事ですから」

 

「ちょっとだけ緊張しますね……」

 

「あらエル、いつもレースでもっと強い圧を感じていますよね?」

 

「それとこれとでは話が違いマスよ!」

 

「あー……そろそろ作業内容の説明をしたいんだが、良いか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「わ、ワタシも大丈夫デスよ!」

 

「よし、じゃあ今日はラディッシュの種蒔きを行う。ビニールハウスに道具を置いてるから、準備しに行こう」

 

そうして、俺とウマ娘二人、そして小早川さんの四人でビニールハウスに入っていく。

 

「といっても、使う道具は種の袋と封を切るハサミだけで良いんだけどな」

 

「うん?それなら、こちらで切ってしまえば良いのでは?」

 

「それがなー、前にそうやって持っていったら、車の振動で種がぶち撒けられてた事があって」

 

「まぁ……」

 

「oh……」

 

「それから、袋の開封は向こうでやる事にしてるんだ」

 

「成る程」

 

「わかりました!」

 

「じゃあ、軽トラにに袋とハサミを持って乗ってくれ」

 

「鬼頭さん、軽トラは二人乗りですよ?」

 

「私有地だから、荷台にも乗れるんだよ。んー、今日は二人には荷台に乗って貰おうかな」

 

「荷台ですか。乗るのは初めてですね」

 

「でもどうしてワタシ達が荷台なんですか?」

 

「エル、視察に来て頂いた小早川さんを荷台に乗せる訳にはいかないからだよ」

 

「oh……それは確かに」

 

「私は大丈夫ですよ?」

 

「一応体裁がありますから」

 

そうやって四人で軽トラに乗り、畑を目指す。

 

 

 

「二人は昔何か育てた事ある?」

 

「ワタシもグラスも幼少期は向こうに居ましたし、多分二人ともそういう経験は無いんじゃないデスかね」

 

「確かにそうですね、やってみようと考えた事もありませんでした」

 

「成る程な……小早川さんは?」

 

「私ですか?小学生の頃に学校でミニトマトを育てた事がありましたが、それっきりですね」

 

「あー、成る程。確かにやらせられますよね。ここで手伝っていった子の中にもミニトマトやった子は居ましたね」

 

「成る程……」

 

 

 

「さて、じゃあ種蒔きの方法の説明に入ろうか」

 

畑に着き、二人を畑の中に入れる。因みに小早川さんは農道の方に居て貰ってる。

 

「蒔き方は極めてシンプルだ。まずはこの畝の真ん中に指で1cm程の深さのラインを掘る」

 

指先を畝の真ん中に突き刺し、横に滑らせスジを掘る。

 

「で、大体1cmの間隔で種を蒔いていく。その後、土を被せたら上から水を撒いて終わりだ」

 

「成る程、簡単ですね」

 

「なら直ぐにやってしまいまショウ!」

 

「うん、じゃあ水を撒くのは後からでもできるから、土にラインを掘る作業と、種を蒔く作業、それから土を被せる作業で三人で分担しよう」

 

「あ、じゃあワタシは土を被せる作業で」

 

「エル?種蒔きの作業やってみませんか?」

 

「ケ!?細かい作業は性に合いませんヨ!?」

 

「エル?」

 

「う……わ、わかりましたヨ!ワタシが種蒔きしましょう!」

 

「わかりました。それでは私は土を被せる作業をやりましょう」

 

「お、俺がラインを引く作業か」

 

「ええ。私がそちらでも良かったのですが、どこまでやれば良いのかわかりませんでしたし」

 

「成る程な。それなら、やってしまおうか」

 

 

 

「ふぅ、この体勢は背中が痛くなりマスね」

 

「柔軟が足りてないんじゃないですか?」

 

「かもしれませんネ」

 

「けど確かに、息は詰まります……ん……?…………ひっ」

 

「ん?グラス、どうしました?」

 

「い、いえ……ミミズが」

 

グラスの方を見ると、土の上でミミズが蠢いていた。

 

「あー……やっぱグラスはミミズダメか」

 

「なーんだ、ミミズデスか。それくらいでビビるなんてグラスもまだまだ……」

 

と、エルが振り返ると、グラスがエルの目の前にミミズをぶら下げていた。

 

「うひゃあ!?グラス、それはさすがにビックリデスよ!」

 

「仕返しです」

 

「何のデスか!」

 

「こらこら、あまり生き物で遊ぶんじゃありません」

 

「すみませんでした」

 

「ちょ、グラス早い……スミマセン」

 

「なら良し」

 

 

 

「よし、じゃあ水掛けちゃうか。エルはシャワーヘッド持って、グラスはホースが畝にぶつからないように動かしてな」

 

「OKデス!」

 

「わかりました」

 

 

 

「よし、終わり!」

 

「ふう、さすがに疲れましたね」

 

「種蒔きだけでしたよネ?」

 

「うん、じゃあ軽トラで戻ろうか。小早川さん、帰りましょう」

 

「わかりました。聞きたい事ができたので、向こうに着いたら聞きますね」

 

「わかりました」

 

 

 

「鬼頭さん、今回蒔いた種ってラディッシュでしたよね?大体いつ位になったら食べられるようになるんですか?」

 

「ラディッシュは成長が早いからな。大体一ヶ月あれば収穫できるぞ」

 

「一ヶ月……早いデスね」

 

「ラディッシュ以外にも一ヶ月で収穫できる野菜ってあるんですか?」

 

「品種にもよるが……小松菜とか、あとサラダ用のベビーリーフなんかもその位だな」

 

「成る程……」

 

 

 

「よし、じゃあ何も無ければここで解散……おっと、小早川さんは何か聞きたい事があったのですよね?」

 

「はい……では、何故ウマ娘達に農園の手伝いをさせているのですか?」

 

「……それがこの視察の目的でしたか。そちらにも資料はお送りしましたよね。自分達で食べる物を自分達で育てる事も大事な事だと」

 

「そもそも彼女達はレースをしにここトレセン学園に来ているのです。彼女達の時間を奪っていませんか?」

 

「あくまでも彼女達の休みの日に来て貰っています。それと、ウマ娘達のトレーナーにも許可を貰っています」

 

「彼女達はまだ中高生です。自主的に来ていると言っても、大人に促されたら自分の意見を曲げて大人に従う事はあるのではないでしょうか。ましてや自分の全てを預けるトレーナーが噛んでいるとしたら、尚更です」

 

「……それは」

 

考えた事も無かった。

確かに、彼女達の自主性に任せて、農園作業の募集をしている。

しかし、そこに大人達の意見が絡んでいる事は事実である。

俺はこの意見に対する弁解の言葉を持っていなかった。

 

「いいえ。それは違います」

 

しかし、彼女達は違ったようだ。

 

「そうデス。少なくともワタシは自分の意思でここにいます」

 

「トレーナーさんと意見のぶつかり合いはありますが、基本的には私の意見を尊重してくれています」

 

「それに、ワタシも今回の手伝いで思いましたが、少しだけ野菜を育てる事に興味がわきました」

 

「私もです。それに、過去に休みの日にここに来たいとトレーナーさんに相談したら、『今日のトレーニングはハード過ぎたから明日はしっかりと休んでほしい』と釘を刺された時もありました」

 

「ワタシもです。だから、心配はいらないデスよ」

 

「二人とも……」

 

少し、驚いている。

元々普通に過ごしている彼女達には殆ど関係の無かった農園だったが、新しい興味の一助になれていたとは。

 

「……成る程。確かに先程の発言は、貴女達のトレーナーをも疑う発言でしたね。謝罪します」

 

「い、いえそんな」

 

「わかってくれたら良いデスよ!」

 

「エル?」

 

「ケ!?」

 

「ふふ。では私はこれで。農園の事は、正確にURAに伝えておきますね」

 

「ありがとうございます。……あ、そうだ、すこしだけ時間ありますか?」

 

「ええ、それは大丈夫ですが……」

 

「二人もまだ大丈夫?」

 

「大丈夫デス」

 

「むしろ、種蒔きだけでしたし時間はあり余っていますよ」

 

「ありがとう。じゃあこっち来てくれ」

 

三人をビニールハウスの中に入れ、俺は冷蔵庫からあるものを取り出す。

それは、黄色い花びらをもつ花と、細く纏まっている緑色の小松菜のような葉っぱの塊である。

 

「鬼頭さん、その花……食用菊ですか?」

 

「んー惜しいね。菊は菊でもタンポポなんだよこれ」

 

「oh!Dandelionデスか!え?でも食べられるのデスか?」

 

「ちゃんとアク抜きすれば食べられるよ。さ、もう茹でてあるから食べてみて。あ、これ醤油ね」

 

「では、私から……あ、苦味はありますが美味しいですね」

 

「なんと!ではワタシも……おお、美味しいデス!」

 

「そんなに美味しいのですか……なら私も……あ、確かに美味しいです。苦味はありますが、山菜みたいで楽しいです」

 

三人で楽しそうに感想を言い合っている姿を見て、俺もタンポポを口にする。

まずは葉っぱから。少し筋張っていたが、充分食べられる。青菜のような風味がとても良い。

次に花。わかっていたが、凡そ食用菊と同じ食感である。

 

「でも鬼頭さん、タンポポって春の植物でしたよね。なんで今咲いているのですか?」

 

「タンポポの品種の違いだな。日本の在来種のタンポポは春にしか咲かないが、外来種のセイヨウタンポポは秋でも咲いているんだ」

 

「成る程!因みにどんな処理をして食べられるようにしたんデスか?」

 

「最初はとにかく水洗いだな。何が付いてるかわからないし」

 

「ふんふん」

 

「それが終わったら塩茹でして、水にさらしてアク抜きだな。それで食べられる」

 

「成る程、それなら直ぐにできそうですね」

 

「グラスはタンポポ好きデスからね!」

 

「勿論見る方でしたよ?でも食べられるみたいなので、今度からそちらもやってみようと思っただけです」

 

「……農園の管理者は悪食って報告しておきますね」

 

「小早川さんそれは勘弁してください……」




次回の小説はもう少し早めに投稿出来ると思っています。とは言っても四ヶ月更新空いた奴が何言ってるんだ、という感じですがね。

タンポポはマジで食べられます。
文中に書いた下処理方法はだいぶ端折っているので『タンポポ 食べ方』とかで検索してみてください。
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