トレセン学園の農園で土にまみれる日々   作:タカハン

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お久しぶりです。

前回の後書きで、「半年も放置しない」と私は書きました。

嘘でした……。

嘘 を つ き ま し た……。

ごめんなさい……。

でもちょっとずつ書いてたとか自分の鬱病が反復性とか呼ばれるものだったせいだとかいう言い訳は流して、今回の小説です。

大変お待たせしたので、本当なら農園作業をお見せしたかったのですが、今回は準備回です。

因みに、前回の後書きで書いてた別の小説のアイデアですが、色々考えたら難しい、という結論に至ったのでボツにしました。

長々と前書きにお付き合いして頂き、ありがとうございます。

では、どうぞ。


農園管理者と理事長と今年の野菜

「ん~…………」

 

年末年始の休暇も開けた今(牛舎の作業はあったが)、俺は暖房の効いた宿舎で、自分の机に向かい悩んでいた。

 

「去年も色々野菜育てたからなー、今年はどうしようか」

 

「あれ、鬼頭さん。どうしました?」

 

「ん、五十嵐か。いやな、去年農園でやった野菜を考えながら、今年は何を育てるか悩んでいたんだよ」

 

「成る程。あれ、それっていつも鬼頭さんが考えているんですか?」

 

「元々はー……あー、一年目とかは理事長にも確認とったんだが、『不可!私は野菜の知識には乏しいのでな!』と返って来たんでな」

 

「成る程、野菜の知識を持っている人が鬼頭さんしかいなかったんですか」

 

「そういう事だな」

 

「大変ですねぇ。じゃあ私は用務員の業務を……」

 

「待て待て、俺達は用務員の業務は免除されていただろう」

 

「チッ……」

 

「舌打ちするな。五十嵐も野菜の種類決め手伝ってくれ」

 

俺の言葉に、明らかに嫌そうな顔をする五十嵐。

 

「それ、する必要あります?私は一応鬼頭さんの采配には納得して作業しているんですが」

 

「俺もお前も太田も、農園作業者だろう。自分が作業するなら、最初から最後までやるべきだと思うんだが」

 

「それはまぁ、そうだとは思いますけど」

 

「それに確か五十嵐は揚げ物好きだったよな?」

 

「そうですけど……それが何か?」

 

「揚げ材を作れるぞ」

 

ピク、と五十嵐の肩が揺れた。

 

「天ぷらだと……シンプルにかき揚げでも良いし、かぼちゃ、ししとう、なすなんかがあるな」

 

「…………わかりました。育てる野菜決め、手伝いましょう」

 

「オーケー、後は太田だな。今どこにいるかわかるか?」

 

「多分牛舎だと思いますよ。そういえば牛舎が出来てからはそちらにいる事が多いですね」

 

「確かにそうだな」

 

そう相槌を打ちつつ、俺は太田の気持ちに理解を抱いていた。

 

太田は幼少時代に酪農の作業を経験したことがある。

太田も過去に話していた通り、畑仕事をやるより牛舎で作業をする方が馴染みがあるのだろう。

 

とは言っても五十嵐にああ言った手前、太田にも話に入って貰う必要があった。

 

太田をスマホで呼び出し、三人での話し合いに入る。

 

ちなみに、武志さんはあくまでも牛舎専門の臨時職員という扱いなので今回は不参加である。

 

 

 

「さて、そんな事で集まって貰った訳だが……何か育てたい物はあるか?」

 

「私にあんな事言ったんですから、私からも幾つか提案させて貰いますよ」

 

「おう。その方がありがたいよ」

 

ちょっと五十嵐を焚き付けすぎたかもしれない。

 

「とりあえず……かぼちゃとか、さつまいもとかどうですか?」

 

「あ、さつまいもはもう育てる予定立ててたよ。秋の聖蹄祭あるだろ?今年はお客さんに芋掘りをやって貰おうかと思ってな」

 

「成る程……あ、じゃあ大葉なんてどうですか?」

 

「大葉か。良いね、使いどころ多い野菜は大歓迎だよ」

 

「大葉天……美味しいですよねぇ……」

 

五十嵐がしみじみといった表情で語る。確かに大葉天は大葉が苦手な人でも食べやすい揚げ物だと思う。

 

「後は何かあるか?」

 

「なす天も美味しいですよねぇ……」

 

「わかったわかった、なすも候補に入れとくよ。……じゃあ五十嵐は置いといて、太田は何かあるか?」

 

「ふむ……じゃあ、とうもろこしは出来るか?」

 

ん?

とうもろこし?

 

「太田、とうもろこしは去年やったし、何かそれ以外で……」

 

「ああ違う違う。俺が言ってるのは俺達が食べる方じゃなくて、飼料用の方だ」

 

「あ、そっちか」

 

そう。

とうもろこしには、人間やウマ娘が食べるのに適したスイートコーンという種類のとうもろこしと、飼料に使われるデントコーンという種類のとうもろこしが存在する。

 

スイートコーンは甘味があり、様々な料理に使用出来るが、デントコーンは粒の内部がほとんどデンプンで出来ているため、食用には適さない。

 

「あー、でも確か農園って食事を残すウマ娘達の教育場所って括りだっけか。無理なら大丈夫だが」

 

「んー……育てる事は大丈夫だと思うよ。農園に関わる事だし。ただ規模がどれぐらいになるかだな」

 

「規模?」

 

「農園……というか、畑の大きさは有限だからな。飼料用とうもろこしって事は濃厚飼料用だろ?一年分の飼料用とうもろこしを育てるってなると、他の野菜との兼ね合いがな」

 

「いや、一年で使う内の一部だけ育てるだけで大丈夫だ。後は外部に頼ろうと思う。カフェテリアへの食材供給もそんな感じなんだろ?」

 

「ん、そうだな。でもとうもろこしって九月位まで収穫するだろ?あんまり長期間の栽培になると、後が詰まりそうでな」

 

「それは大丈夫だ。最近出た新品種の飼料用とうもろこしなら」

 

「ほー、便利な品種が出来たもんだ。でも確か飼料用とうもろこしってスイートコーンに比べて茎が細くて倒れやすいって聞いたことあるんだが、そこは大丈夫なのか?」

 

「ああ、その品種は特殊でな。一般的なとうもろこしは密植すると台風なんかで倒れやすいみたいなんだが、これはほとんど倒れないって成果が上がっているらしい」

 

ふむ。

デントコーンは普通機械収穫だし、これを機会にしてウマ娘達に新たな作業を与えられるかもしれない。

 

「わかった。それも候補に入れとくよ。……ところで太田」

 

「なんだ?」

 

「その品種の種、どうやって入手するんだ?」

 

そう。

太田は最近出た新品種と言った。ならばまだ種は流通していない筈である。

 

「あー……それは確かに考えていなかったな。鬼頭はいつもどこで種を手に入れているんだ?」

 

「基本的には学園長を通して注文、後はたまにホームセンターや種屋を回って良さげな種を探してくるな」

 

「成る程な。それなら学園長に依頼するのが良いんじゃないか?」

 

「あっ、確かに」

 

「他の野菜の種と合わせて注文すれば良いだろ。どうせ理事長通すなら、一括でやれるんじゃないか?」

 

「確かに、それもそうだな。じゃあ後は資料纏めて理事長の所に行って来るよ」

 

「おう」

 

「あっ、そういえば鬼頭さん」

 

「どうした五十嵐?」

 

「私達も個人的にやりたい野菜があればまた頼んでも良いんですか?」

 

「ん?そうだな。基本は大丈夫だけど……ほどほどにな」

 

それから俺は資料を纏め、たづなさんにアポを取るのだった。

 

 

 

理事長室に向かう最中の事。

俺が廊下を歩いていると、前から芦毛のウマ娘が歩いて来た。

 

「あっ、鬼頭さん。こんにちは」

 

「おう、オグリ」

 

オグリキャップだ。去年タマモクロスと共ににんじんの種蒔きをやったのが記憶に新しいだろうか。

 

「鬼頭さんはどこに向かっているんだ?」

 

「理事長室だよ。今年育てる野菜の種の注文をするんだ」

 

「ほう……出来れば今年も手伝いに行きたいな」

 

「おう、待ってるぞ。今年何育てるかはまだ秘密だが、今年も美味い野菜食わしてやるからな」

 

「ふふ、楽しみにしているぞ」

 

そう話してオグリと別れ、理事長室に着いた。

 

扉をノックし、

 

「農園管理者の鬼頭です」

 

と呼び掛けた。

 

『はい、どうぞ入って下さい』

 

たづなさんの声だ。

ドアを開け、中に入る。

 

「失礼します」

 

「おお!鬼頭君か!今日はどうしたのだ?」

 

「今年育てる予定の種のリストを持ってきました」

 

「歓喜!今年は何か変わった野菜は育てるのか!?」

 

「そうですね。牛舎管理者の太田が飼料用とうもろこしを育てたいと言っていましたよ」

 

そう言いながらリストを渡すと、学園長は少し怪訝そうな顔をして受け取った。

 

「飼料?というと家畜用の餌か。……鬼頭君、農園の意味を判っているのだよな?」

 

ああ、そういう事か。

 

「勿論です。私もただ動物に餌を与える為だけに許可したわけではありません」

 

「ふむ?」

 

「飼料用作物はその量から、機械での収穫が主になります。そして、その作業は彼女達にも手伝わせます」

 

「つまり?」

 

「農業機械の作業は農園作業と併せて、ウマ娘達の興味にも繋がり、レースの道から退いたウマ娘達の将来の選択肢が広がります」

 

「……ふむ。確かにウマ娘の人生は走るだけではない。農園作業によって農業に興味を持つ者も増える訳か」

 

「確かに、将来農業に携わる人間やウマ娘が増えれば、農業人口が上がり、彼女達が満足に食べられるようになるわけですか……」

 

たづなさんが学園長に続く。

 

そう。

ルドルフは『全てのウマ娘の幸福』を願っているが、別にレースでなくとも幸福は得られる。

農業に携わる人間やウマ娘が増えれば、結果的に食料自給率も上がるので、幸福の第一歩(と自分は考えている)、『毎日飢えないで生活できる』が達成出来る訳である。

 

「うむ……うむ!成る程!そうであれば、了承!この内容で種を購入しておこう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「……因みに、鬼頭君。その飼料用とうもろこし以外に、何か珍しい野菜等はあるか?私ではあまり判らなくてな」

 

「あー……それですと、これとかどうです?」

 

学園長に見せたのは、リストに書かれた作物の中の一つ。うりの仲間である。

 

「んー?うり?というと、きゅうりとかかぼちゃとかの仲間か?」

 

「そうですね。ただ、うりとは書いてますが、一番近いのはメロンですね」

 

「ほほう、果物という事か!」

 

「あれ、でも鬼頭さん、メロンという事はツルが伸びるので大きな範囲で栽培しないといけないのでは?」

 

「それは植える配置を考えて、出来る限り多くの野菜を植えられるようにしますよ」

 

「ふむふむ。……時に鬼頭君、私から植える野菜のリクエスト等しても良いだろうか?」

 

「ん、勿論。何にします?」

 

「それがだな……栄養価の高い野菜等は何があるだろうか?」

 

「え、うーん……栄養の種類にもよりますが……」

 

「いやな、ウマ娘によって食べる量は違うだろう?」

 

「ああ、確かにそうですね」

 

ウマ娘は人間より沢山食べるイメージがあるが、勿論個人差がある。

タマモやルドルフ等、あまり食べない子もいるにはいる。

 

「そんなウマ娘達でも、少量でも多く栄養をとれる野菜があればと……」

 

「成る程……それなら良いのがありますよ」

 

「本当か!?」

 

「ええ、それは……」

 

 

 

そんな会話をしながら、話を纏めていった。




次話の内容は決まっているので、書く気力があれば早めに出したいですね。

追記

どうやら今日でこの小説は2周年みたいです。
遅いですね。
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