トレセン学園の農園で土にまみれる日々   作:タカハン

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お待たせしました。

今回もまた準備回ですが、次回から畑作業が始まるのでお待ちください。

勝手にQ&Aのコーナー

Q,鬼頭君って野菜の知識凄いけど、実際農家としてはやっていけるの?

A,現時点では恐らく無理。
栽培知識があっても、農地の運営や資金繰りの知識が無いため。農園ではこの作業を理事長が全て受け持っている。実際鬼頭君がやっている事は、規模がかなり大きいとはいえ家庭菜園の範疇。

それはさておき、本文をどうぞ。


理事長とたづなさんと農園改築

今日の作業を一通り終わらせた後。

俺は自作の資料の束を手に理事長室を訪れていた。

 

「失礼します」

 

「あら、鬼頭さん。理事長は今席を外してまして……すぐ戻られるそうですが」

 

「わかりました。では少し待たせて貰いますね」

 

「わかりました。あ、そういえば、この間テイエムオペラオーさんが友達の方々と農園の話をされていましたよ。生き物を相手にする作業は辛い事もあるけどやりがいを感じたと」

 

「それは嬉しいですね。色んな子達に来て貰いたいです」

 

そんな話をたづなさんとしていると……。

 

「戻ったぞ、たづな。おや、鬼頭君」

 

「お疲れ様です、理事長」

 

そうやって話しながら椅子に座る理事長。正確には少し高い椅子に飛び乗る理事長。年齢は不明だが軽快な動きは彼女らを彷彿とさせる。

 

「それで、今日はどうしたのだ?見たところ私を待っていたようだが」

 

「はい。今日は農園に関して幾つかの要望を伝えに来ました」

 

「うむ?農園の運営は任せているはずだが……」

 

「細々とした事は私の方針でやらせて貰っていますが、今回のは私の一存では決定出来ないので」

 

「ふむ、成る程。して、内容は?君の事だ。資料は纏めているのだろう?」

 

「はい、こちらに。たづなさんもどうぞ」

 

俺は手に持った3束の資料の内、2束を二人に渡した。

 

「うむ、ありがとう!」

 

「ありがとうございます」

 

「はい、ではまず1枚目、ビニールハウスの脇にキッチンを設置したいです」

 

「ふむ、具体的にはどのくらいの規模の物だ?」

 

「シンク付きの水道、野菜やまな板等を置ける台、煮炊き出来るようにコンロがあると良いですね。それと雨避けに屋根もあると良いと思います」

 

「まるでキャンプ場の調理スペースですね」

 

「概ねその認識で大丈夫です。今まで作業後の試食会では簡易的な物しか出せませんでしたからね。作業後に出てくる料理のクオリティが上がればウマ娘達のモチベーションアップに繋がりますし、何より栄養のバランスを考えるとちゃんとした料理が出せた方が良いと思います」

 

「成る程。確かにそれは重要だ。しかし、野菜の栽培、収穫に加えて調理までするのか。こう言っては何だが、農園管理者の権限を超えているのではないか?」

 

理事長が懐疑的な視線を向ける。

が、勿論その意見も織り込み済みだ。

 

「理事長、何を言いますか。私は農園の管理者です。そして農園の運営は任せると理事長自身が言いましたよね?であれば農園をどう動かすかは私に委ねられているのではないですか?」

 

「フッ、鬼頭君も言うようになったな。わかった。農園内キッチンの建設だな」

 

「ありがとうございます」

 

ヒヤヒヤした。

しかし、まず一つ。

 

「では二枚目、先ほどのキッチンの話と繋がりますが、キッチン脇に屋根付きの食事スペースを作りたいです」

 

「うん?キッチンの屋根を大きく作って、キッチンと食事スペースを併設するのでは駄目なのか?」

 

「秋冬であれば良いですが、夏場に火を使って調理した後に、同じ空間で食事は暑いと思います」

 

「むむ、確かに……それと、屋根を付けると言うのは?」

 

「夏の日差しや急な雨からの避難所、という意味合いもあります。ビニールハウスでも雨は避けられますが、風が逃げないので蒸し暑いでしょうし、何より日差しは避けられません」

 

「成る程……夏の暑さ対策という訳か。しかし大事な事ではあるが、随分気にするな?」

 

「……去年、農園で熱中症の生徒を出しましたので」

 

「あぁ……」

 

「……」

 

俺の言葉に二人が天を仰ぐ。

 

そう。

前の夏に農園作業をした際、ハリボテエレジーが熱中症で倒れた話。

本人の格好も暑そうな物だったとはいえ、熱中症の生徒を農園から出したのも事実。

ならば、暑さ対策をするのは、最早農園管理者の責務と言えるだろう。

 

「うむ。ならば……承認!細かい要望は後で資料を持ってきて欲しい!」

 

「ありがとうございます。では、最後。ビニールハウスをもう一つ建造して貰いたいです」

 

「ふむ、新しい機械を導入するのか?」

 

理事長が言うのは、現在の農園では耕運機やトラクターをビニールハウス内に格納している事だろう。だが、今回のは目的が違う。

 

「いえ、今回のは栽培用です」

 

「……畑が現状の広さでは足りないのか?拡張は容易だが、君は大丈夫なのか?春には鶏舎も完成するのだぞ?」

 

理事長からの最もな意見。確かに作業内容自体は増えるが、何て事は無い話だ。

 

「問題ありません。作業場所は増えますが、一日に全ての作業をする訳ではありませんから」

 

「ふむ、成る程。なら、承認!」

 

「ありがとうございます」

 

「ちなみにだが、ビニールハウスではどんな野菜を栽培出来るのだろうか?」

 

「理論上ではありますが……ほぼ全ての野菜ですね」

 

「なんと!!」

 

「まぁ!」

 

理事長とたづなさんが同時に驚く。だが本当に全てという訳ではないので、補足を入れる。

 

「出来ない野菜としては、根菜類ですね。地中部分を深くまで掘り起こさなければいけないので、ハウスの基礎が弱くなります」

 

「確かに……」

 

「それと理論上と言ったのは、大概のハウスには高さ制限があります。なので、一定以上の高さになる野菜は難しいですね」

 

「ビニールハウスの高さに関しては、言われてみれば確かにとしか言えないな。ちなみに、そこまで高さが出る野菜には何があるんだ?」

 

「うーん、育て方にもよりますが……長芋とか」

 

「長芋か、そういえばどう生えるかは知らないな」

 

「地上部分と地下部分とで準備があって、地上には何本かの柱を組んだり、きゅうりやゴーヤをやる時みたいにネットを張るんです」

 

「ふむ」

 

「その柱やネットにツルを這わせるんです。それで、そのツルなんですが……生育環境や肥料の状況によっては、柱を4メートル程の高さに作っていても柱の上からツルがはみ出ます」

 

「4メートル、というと……結構な高さではないか?」

 

「ええ。ツルを柱やネットに這わせられないと、植物の生育に影響が出ます」

 

「ふむ……ちなみに、先ほど話に出たきゅうりやゴーヤも似たようなネットに這わせての栽培だろう?何故そちらが出来て長芋が出来ないんだ?」

 

「そうですね……きゅうりやゴーヤは、吊り栽培が出来ますし、地面に這わせる事も出来ますから」

 

「新しい言葉が出てきたな。吊り栽培とはなんだ?」

 

「地面と平行にネットを張り、ネットの上に葉っぱを、下に果実を成らせる栽培方法です」

 

「もしや、ブドウで使われる栽培方法か?」

 

「そうです。地面からの泥はねのダメージをほぼゼロに抑えられるので、美品を作りたい農家さん向けの栽培方法です」

 

「ふむふむ、デメリットは無いのか?」

 

「まず、空中にネットを這わせなければいけません。この時点で通常のネット栽培よりも労力とコストが掛かります」

 

「ふむ」

 

「それに、果実部分はどんどん大きくなりますからね。きゅうりやゴーヤ位なら大丈夫ですが、カボチャやスイカ等はかなり重くなるので補強が必要になります」

 

「成る程……ちなみに話に出たスイカは……今年はやるのか?ずず……生徒達も喜ぶのではないか?」

 

今よだれの音が。

勿論それには触れない。

 

「今年はやりませんが……甘い物は育てますよ?この間話したじゃないですか」

 

「この間というと……ああ、あのメロンの仲間という果物か!」

 

「ええ。あれはメロン程ではないですが、程よく甘い物ですし」

 

「ふむ、理解!して、話がずれた!何故長芋は栽培出来ないんだ?」

 

「質問です。長芋は植物のどこに成るでしょうか?」

 

「それは、長芋は芋なんだろう?なら地中に……あ」

 

「そうです。芋の形を良くする為には土を深くまで掘り返さないといけませんが、掘り返しすぎるとビニールハウスの基礎に影響します」

 

「地上部分は高さ制限に引っ掛かり、地中部分は掘り返すと基礎が弱くなる……確かにビニールハウスとは相性が悪そうですね……」

 

たづなさんが纏めたように、長芋はビニールハウスとは致命的に相性が悪い。

他の芋類であればまだやりようはあるが、それもあくまで『理論上は』位の物だ。

 

「とはいえ、一部の野菜ならハウスと相性が良いですし、目的に合致した栽培をすれば効果を遺憾無く発揮してくれるかと。それに……」

 

「うむ?」

 

「…………冬場にも野菜育てたいですし」

 

「ふっ……はっはっは!本当に君は野菜が好きなのだな!」

 

「ええ、勿論」

 

「うむ!真っ直ぐな目だ!なら私から言う事は無い!承認!!資料は後で纏めて出してくれ!」

 

「ありがとうございます。では、私はこれで……」

 

「おっと、鬼頭君。帰る前に、一つ良いか?」

 

「え?何でしょうか」

 

「実はなんだが……私とたづなも、少しだけで良いから農園作業に参加させて貰えないだろうか?」

 

「それは……構いませんが」

 

「先日の話し合いの後、たづなと話していたのだよ。私達も農園での作業をやってみたいとね」

 

「成る程、わかりました。どの作業をやってみたいという要望はありますか?」

 

「うむ。この間話した、栄養価が高いという野菜があっただろう?あれの作業を手伝いたい」

 

「わかりました。調整しておきます」

 

「うむ、ありがとう!また何かあればいつでも来るといい!」

 

「はい。では、失礼します」

 

そう言って、理事長室を後にする。

 

さて、そろそろ暖かくなってきたことだし、明日から畑の準備でもしますかね。




実は小説本文やサブタイトルは何回かサイレント修正を掛けてます。
今回直したのであれば二つ前の回の『学園長』を『理事長』に直した、とかですね。
(文脈が変わる位の修正は前後書きに書きますが)
更新速度は遅めなので、時たま一話から読み返すのも一興かもしれません。
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