トレセン学園の農園で土にまみれる日々   作:タカハン

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お久しぶりの投稿です。

では、注意事項です。

・この話を含めた4話程、ウマ娘が出ません。あとウマ娘が出ないからといって低評価を選ぶのはお控え下さい。いや切実に。
・少々シリアスな話が続きます。時々休憩しながら閲覧下さい、
・一部の読者が苦痛に思う内容になっています。我慢して読む事はないので、無理せずブラウザバックをお願いします。

・それでもこのストーリーに必要なお話なのでペンを取りました。

では、どうぞ。


農園4年目/新沼編
農園管理者と新しい風と確執


先日新年度を迎え、今年度の準備でバタバタしていた日。

 

「今年度から農園の畑部門の管理者に配属された、新沼(にいぬま)です。よろしくお願いします」

 

小柄な青年が挨拶に来た。

 

話はひと月ほど前に遡る……

 

 

 

「農園管理者に新人を?」

 

「うむ。農園も四年目になるが、他の管理者も補助するとはいえ未だに君たちが一人でそれぞれを管理しているだろう?」

 

「ええ、今でもなんとか回せてますが」

 

「それでは駄目なのだよ、鬼頭君。君が頑丈なのは知っているが、誰が、いつどうなるかは誰にもわからない。それに、組織人である君がいなくなるだけで回らなくなる現場など健全ではないだろう?」

 

ちらり、とたづなさんの方を見ると、場の空気以上に強張った表情だ。思い当たる事でもあったのだろうか?

 

「それはそうかもしれません。ですが、農園は専門的な知識が多く必要です。私だけで教えきれるかどうか」

 

「なにも1年やそこらで君と同じレベルの知識を教えろとは言わない。だがな鬼頭君、先に入った者として、後進を育てるのは先人の責務だ。そうは思わないか?」

 

「そう……ですね、わかりました。……ところで、太田と五十嵐にもこのような話を?」

 

今、学園長室に呼ばれているのは俺一人だけ。こういった話であれば、管理者全員に話が通されるものだと思っていたが……

 

「うむ、それなのだがな……彼らにも後進を育ててもらおうと思っていたが、以前の職務放棄があっただろう?」

 

「ええ」

 

以前から農園管理者だった二人だが、畑の業務遂行に難色を示し、農園業務を放棄して用務員としての業務に逃げていた件。

俺としては、気持ちややる気に差が生まれるのは(自分の境遇を鑑みると)当然だと思っていたし、俺一人だけでも業務をこなせていたので、二人に追及する気持ちは無かったのだが。

 

「私としても減給は冗談のつもりだったのだが、学園の上層部では取り沙汰されていてな。半年の減給と後進育成の取り消しの懲戒処分が決定したのだよ」

 

「それは……」

 

「鬼頭君、君の気持ちもよく理解できる。だが私達は組織人だ。個人のスタンドプレーでは組織は回せない。わかるな?」

 

「……わかりました。……それで、その新人の資料等は?」

 

「うむ。たづな」

 

「鬼頭さん、こちらを」

 

「ありがとうございます、拝見します」

 

資料を見る。

 

名前は新沼 陽介(にいぬま ようすけ)。

北海道出身で、農業経験は無し。

 

昨年まで学園の用務員として勤務。

当時同僚には……

 

「……えっ?」

 

 

 

そして現在に至る。

 

目の前にいる彼の容姿は、俺から見ても20cm以上小柄で、少々鋭い目付きである。

 

「……何ですか?人の事をジロジロと」

 

「おっと、すまない。農園の服装チェックの癖でな」

 

「……そうですか。貴方が鬼頭さんですか?」

 

「うん。今日から君の先輩になる、鬼頭 耕一だ。よろしくな」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしく。じゃあ宿舎に案内するよ」

 

「話には聞いていましたが、職員宿舎とは別の宿舎なんですね」

 

「他の職員以上に夜遅く、朝早くに作業があるからな。トラブル防止目的で俺が直談判したんだ」

 

「成る程」

 

 

 

「ここが宿舎な。入るぞー」

 

宿舎に入ると、資料とにらめっこしている太田と五十嵐。そこで太田がこちらに気付く。

 

「おう鬼頭、確か今日は新人が来る日……お?新沼?」

 

「え、太田先輩!?」

 

「え?知り合いですか?」

 

「らしいな。彼の資料曰く、農園管理者になる前の太田の同僚兼後輩だったらしい」

 

五十嵐とそう話す。

そうやって見ると、彼の印象に気付いたのか、

 

「なんか……彼、太田さんに懐いてますね」

 

「みたいだな。詳しい関係性は知らなかったが、仲良くやっていけそうだ」

 

「あ、自己紹介がまだでしたね。新沼 陽介といいます。それにしても、いきなり農園管理者なんてのに任命されて驚きましたが、太田先輩と一緒なら大丈夫そうですね!」

 

「ん?新沼は聞いてないのか?」

 

「へ?何をですか?」

 

 

 

「俺は農園管理者だが、畑部門じゃないぞ。酪農部門だ」

 

 

 

「…………え」

 

「シフトによっては一緒になることもあるだろうが、新沼の農園管理者としての先輩はあいつ、鬼頭だけだ」

 

「……は、あぁぁぁあ!?何で、何でなんですか!?」

 

「俺に聞かれてもな。人事を設定した奴に聞いてくれ」

 

「そんな……じ、じゃあ、太田先輩の下には誰が付くんですか?」

 

「誰も付かないよ。そっちの五十嵐も同じ」

 

「鬼頭さん……何で、あなたには部下がいて、太田さんには部下がいないんですか」

 

「それは」

 

「私も太田さんも、仕事で大きなミスをしたからですよ」

 

絶望の表情で俺と太田を見る新沼を制したのは、会話に入って来なかった五十嵐だ。

 

「あなたは……」

 

「農園管理者、養鶏部門の五十嵐です。私と太田さんは、本来しなければいけない職務を放棄していました。その結果が、鬼頭さんに部下が付いて、私達に付かないというものです」

 

「太田先輩が、職務放棄……!?そんな、何かの間違いでは!?」

 

「いや、事実だ」

 

狼狽える新沼に対して、自らの瑕疵を認める太田。自分が尊敬する先輩の素行に問題があると認めたくない気持ちも理解できるが……。

 

「なら、何か理由があったとか!何か……僕では想像もつきませんが、何かあったんでしょう!?」

 

「それは……」

 

「ええと……」

 

太田と五十嵐が言い淀む。まさか「単にやる気が無かっただけ」で職務を放棄したとは言えないだろう。

ただ、そろそろ収拾をつけたい。

 

「新沼、理由は後で教えるから、まずは落ち着け」

 

「鬼頭さん……もしや、貴方が何かしたのでは?」

 

「は?なんでそうなる?」

 

突然矛先がこちらに向く。俺が?何を?

 

「貴方が、先輩が不利になるように何かしたんでしょう!!そうじゃなきゃ、先輩がそんな事するはずない!!」

 

「言い掛かりだ。まず俺にそれをするメリットがない」

 

「嘘だ!!」

 

「嘘じゃない。新沼、いい加減に……」

 

「はいはいはいはい、鬼頭さんも新沼さんも抑えて」

 

新沼の口調がヒートアップしてきた時、五十嵐が割り込んだ。

 

「新沼さん、貴方はまず荷解きを。その間に軽く説明しますから」

 

「…………わかりました」

 

「鬼頭さん、畑の準備の途中でしょう?そちらをお願いします」

 

「準備?もう片付けまで済ませた……」

 

反論しかけた俺を、五十嵐が視線で制する。

 

(少し距離を置きましょう)

そう目で言っている。

 

「……わかった。ちょっと畑に行ってくるよ」

 

「あ、俺も準備が……」

 

「太田さんは残って下さい。貴方がいないと話にならないでしょう」

 

バツの悪い表情の太田、呆れ顔の五十嵐、そして俺を睨み付ける新沼を残し、部屋を出た。

 

 

 

外に出て、顔に当たる風がさっきより涼しい事に気付く。

どうやら俺も頭に血が上っていたようだ。

 

農園に移動しながら、悶々と考える。

 

『貴方が、先輩が不利になるように何かしたんでしょう!!』

 

そんなことはない。する必要がない。

でも、そう考えたくなる気持ちも理解できる。

 

だとしても、そう言われてスルーできるほど、俺は人間が出来ていない。

 

「……さん」

 

でも、後輩に対してあの態度は?

これから共に仕事する後輩に対して、適切な対応だっただろうか?

 

「どうすりゃ良かったんだ……」

 

その場にしゃがみ込み、大きく溜め息をつく。

 

「鬼頭さん?大丈夫ですか?」

 

「ん……?……あ、たづなさん」

 

自分を呼ぶ声に応じて顔を上げると、緑色の服が目に入る。更に目線を上に上げると、たづなさんが心配そうに俺を見つめていた。

 

「体調が悪いのですか?少し休まれては……」

 

「いや……その」

 

どうしたものか。

……いや、話してみても良いかもしれない。

 

「実は……」

 

 

 

 

「まぁ……そんな事に」

 

たづなさんに、事のあらましを話す。

 

と、話しきった辺りでふと気付く。

後輩とのトラブルで学園運営側に泣きつくなんて、情けなかっただろうか?

 

「鬼頭さん、少し、差し出がましいかもしれませんが」

 

「……はい」

 

 

 

「彼に、寄り添ってあげて下さい」




同じハーメルン物書きの友人に新沼君の事を話した時に、「鬼頭君は前作主人公」と言われたのを膨らませたのがこの話です。

一連のお話は書き終わっているので、次話をお待ち下さい。
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