トレセン学園の農園で土にまみれる日々   作:タカハン

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お気に入り、感想ありがとうございます。

今回、少しだけ意見の分かれそうな話題をしています。


マックイーンとテイオーとトマト

「さて、と」

 

今日もぼちぼち作業の時間が近付いてきた。

俺はいつもの上下一体型の紺色の作業着に腕を通し、青い帽子を被る。

 

「太田も五十嵐もいないし、今日は俺とあの二人での作業か」

 

結局あいつらは作業に参加しないようだ。

まあ結局の所、俺と手伝いのウマ娘で作業できる位だから、来なくても問題無いと言えば無いんだが……。

 

「おっと、忘れる所だった」

 

俺は机から蛍光グリーンと黒いラバーの付いた手袋を取り、水筒と弁当袋をひっつかみ、玄関へと歩いていく。

 

「今日は、あれと、あとあれでもするかな」

 

黒い長靴を履きながら、独り言を呟く。

一人の時間になると独り言が増えるのは俺の悪い癖かな?

 

「さ、行きますか」

 

 

 

俺が農園に着いた時には、既に一人のウマ娘が到着していた。

 

「ごきげんよう、鬼頭さん」

 

「おうマックイーン、早いな」

 

「メジロ家のウマ娘として、時間より早く着くのは当然ですわ」

 

彼女はメジロマックイーン。

黒い上下分割型の作業着に身を包み、ライムカラーの手袋と帽子を着けているその姿は、気品すら醸し出している。しかし、白い長靴がどことなく親しみやすさを演出していた。

 

「マックイーン、早いよ~」

 

「あらテイオー、重役出勤ですわね」

「何でだよー!?時間は守ってるだろー!?」

 

「大丈夫だよテイオー、時間通りだ」

 

「だよねぇ鬼頭さん!」

「全く……」

 

遅れてきた(といっても時間には間に合っているが)彼女はトウカイテイオー。

彼女は白と青の上下一体型の作業着を着こなし、同じ色の帽子を前後逆にして被っている。手袋と長靴は青を基調として白いアクセントが入っており、溌剌とした印象を与えてくれる。

 

「さて、二人揃ったから今日の作業の説明をしよう。今日はトマトの苗を植えて、その後時間が余ったら別の作業をしよう」

 

「わかりましたわ」

「オッケー」

 

「じゃあ軽トラに苗と道具を積み込もう。こっち来てくれる?」

 

俺は二人をビニールハウスに誘導し、中にあったトマトの苗を軽トラに積む。

 

「後は支柱を積んで……」

 

「他に積み込む物はありますか?」

 

「ないけど……あ、そうだ。今日はどっちが後ろに乗る?」

 

軽トラは二人乗りのため、三人だとどちらかを助手席に乗せたらどちらかを荷台に乗せなくてはいけない。

 

「ボクはどちらでも良いけど~」

「それでしたら、私が後ろに乗ってみたいですわ」

 

「お、マックイーン後ろに乗るか?」

 

「ええ、何事も経験、ですわ」

「オッケー!じゃあボクは前に乗るね!」

 

 

 

「ここは……とても風を感じられて良いですわね」

 

「だろー?俺もガキの頃は乗ってたんだが、この歳になるとそういう機会も無くなっちまってな」

 

「鬼頭さん、ボクからみたら全然若いけど~」

 

「ハハッ、30手前はもうオッサンなのさ」

 

そうやって雑談しながら進むと、目的地に到着する。

 

 

 

「さて、やりますか」

 

苗の植え方はスナップエンドウと同じく、まずビール瓶の底などで深さ5cm程の穴を開け、ポリポットから苗を優しく取り出し、穴の中に入れる。そうしたら、周りから土を寄せて、上から優しく圧をかけ、横に支柱を立てる。最後に水をかける。

 

「さて、二人とも、準備はいい?」

 

「勿論ですわ」

「オッケーだよ」

 

「よし、作業開始!」

 

 

 

「鬼頭さん、植える間隔はどれぐらいがよろしいんですの?」

 

「あれ、俺言い忘れてたか。50cmで頼む。この棒50cmだからこれ目安にしてな」

 

「わかりましたわ」

 

 

 

「そういえば鬼頭さん、農薬って使ってるの?」

 

「使ってるぞ?虫食いは避けたいからな」

 

「意外ですわね、こういう所の野菜には農薬は使わないものかと思ってましたわ」

 

「一応理事長にも確認したんだよ。そしたら、『許可!細心の注意を払うのであれば容認する!』とのことで」

 

「「成る程~」」

 

「そもそも肥料だって化成肥料だからな。文明の利器は頼っていかないと収量が見込めないからな。みんなの口に入るものだから、尚更農薬は使わないといけないし」

 

「考えられているものですね……」

「ボク達、ちゃんと『いただきます、ごちそうさま』は言わないといけないね。そういう話を聞いたなら尚更」

 

「そうだな。それを知ってほしいっていう事から農園が始まったんだからな」

 

 

 

「よし、後はこれを植えたら終わり!」

 

「じゃあボクがやるね。穴を開けて、苗を入れて、土をかけて、上から押して、支柱を立てて、水をかける、と」

 

「これで今日は終わりですの?」

 

「んー時間がだいぶ余ってるから、ハウスの掃除もやるか」

 

 

 

ビニールハウス前に戻ってきたら、軽トラに載せてた道具はそのままにして、ハウスの中に入る。

 

「見たことの無い器具が沢山……」

「鬼頭さんってこんなに色々動かせるの?」

 

「おう、といっても簡単なものばかりだから、10分もあれば二人も動かせると思うよ」

 

「え、免許とかは?」

 

「いらないいらない。例えばこの耕運機なんだけど……」

 

「鬼頭さん、日が暮れてしまいますわ」

 

「おう、悪い悪い。じゃあ掃除するか。と言っても、クモの巣取りと農業機械の埃払い位だけど」

 

「そうなんだ。じゃあ早速やっちゃおう」

「ですわね」

 

 

 

「終わったぁー!」

「はしたないですわよ、テイオー」

 

「二人とも、おつかれさん。仕事後のご褒美って程じゃないが、ラディッシュあるから食べていきな」

 

「わーい!ありがとー!」

「まあ、凄くカラフルですわね」

 

「レインボーラディッシュって奴でな、味は普通のラディッシュと同じだよ」

 

「シャクシャクして美味しいねー」

「少し辛いですが、それも刺激になりますわね」

 

「だろ?この時期はどうしてもラディッシュしか出せないけど、喜んで貰えてなによりだよ」

 

 

 

「では、今日一日お世話になりました」

「お疲れさまでした!また呼んでね!」

 

「おう、気を付けてな」

 

空が夕焼け色に染まる中片付けをしていると、軽いがしっかりした足音が聞こえてきた。

 

「敬意!今日も一日ご苦労だった!」

 

「秋川理事長、お疲れ様です」

 

学園の理事長、秋川やよいがそこに立っていた。頭に猫を乗せて。……落ちないのだろうか?

 

「疑問!今年は上手く行きそうか?」

 

「まだ何もわかりませんよ。天気次第とかもありますし」

 

「そうだったな!失敬!彼女達の様子はどうだろうか?」

 

「みんな楽しそうに作業していってくれますよ」

 

「そうか!なら良し!君から何か伝えたい事はあるかな?」

 

「そうですね……」

 

何かあっただろうか。

……あ、あいつらの事について話しておこう。

 

「実は、俺と同じく農園の管理をしている筈の二人が、太田と五十嵐というのですが」

 

「うむ!用務員の二人だな!彼らがどうしたのかな?」

 

「こっちの作業に来てくれないんですよ。片方に至っては『やる気が出ない』とか何とか……」

 

「よし!減給!……は冗談として、私としても彼らにはやる気の出る仕事を用意してやりたい!鬼頭君!」

 

「?何でしょう」

 

「彼等の得意な事を知らないか?」

 

「えっと、得意な事ではないんですが、太田は実家が元酪農家で、五十嵐の実家では現在も養鶏をやっているそうです」

 

「ふむ成る程。では牛舎と鶏舎の導入を……」

 

「ストップです理事長。そこまでやるとトレセン学園が農業学校になります」

 

「失敬!つい熱くなっていた!」

 

流石に専門職でもない自分達がそこまで手広くやったら、誰から何を言われるか堪ったものではない。それに、牛や鶏を育てる人員がいない。

 

「特に牛はいきなり暴れたり、体重があるからアスリートで体が資本である彼女等には触らせられないからな」

 

「ふむ、よく知っているのだな、鬼頭君!」

 

「え?俺声に出してました?」

 

「うむ。野菜の事にも詳しいし、どこかで教育を受けたのかな?確か君の履歴書にはそのような事は書いてなかったが」

 

「…………トレセンに来る前、酪農と畑の両立を目指して勉強した時期があったんですよ。現実を知って打ちのめされましたが」

 

「ふむ。そうか、嫌な事を聞いた!」

 

「いえ。……さあ、そろそろここに居ては体を冷やしますよ」

 

「気遣い有難う!では私はここで失礼させて貰う!」

 

「ええ。お疲れ様でした」

 

「鬼頭君!」

 

「え?」

 

 

 

「敬愛!私はいつでも君の味方だからな!」

 

 

 

「はは……ありがとうございます。理事長」

 

そうして去っていく理事長の姿を、俺は見送るのだった。




理事長の話し方はまだ慣れませんね……
これから慣れていきます
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