今回は花回です。
さて、今日も今日とて作業を開始する。
今日は平日なので手伝ってくれるウマ娘はいないが、植物は生き物。休み等無いのである。
俺はいつもの服装に着替え、家を出た。
宿舎からビニールハウスのある場所へ向かう途中にある個人用の畑で、作業をしているウマ娘が一人。
「ニシノフラワー、今日は何の作業だ?」
「あ、鬼頭さん。こんにちは」
彼女はニシノフラワー。
元々制服で花壇の世話をしていた娘だが、購買に作業着が入った事によりそちらに変えたようである。
彼女の作業着は黄色の上下一体型で、麦わら帽子と白い手袋と長靴を着けているその姿はまさに土を触る格好と言えるだろう。
「今日はですね、カーネーションの種蒔きをしようかなと思っています」
「おーカーネーションか。良いね、俺も昔やったことあるよ」
「本当ですか?では一緒にやりませんか?」
「良いよ。じゃあ種蒔き用の土持ってくるから」
「あ、私も一応土は買ってきましたよ?」
「良いの良いの。開いてる奴から使うようにしよう。開いてないのは俺がいない時とかに使って」
「わかりました。ではお待ちしています」
「おう、じゃあ行ってくるよ」
そう言って俺は農園のビニールハウスへと赴き、種蒔き用の土を持ってすぐに戻る。
「お待たせ。じゃあやろうか」
「はい!」
ポリポットに土を入れ、種を3粒程蒔いたら上から土を被せる。
最後に水をかけて完了だ。
「カーネーションの種蒔き方法、調べてもやり方があまり載ってなかったんですよね」
「苗を買ってきてそれを植えるのが基本のやり方だからね。種蒔きをして育てるのは花壇をやる人位じゃないかな」
「私には苗をこの数買ってくるのは難易度が高かったので、種蒔きからにしましたけど、鬼頭さんもいつも種蒔きからですよね?」
「種蒔きは安く済むからね。支払いは学園側が受け持ってくれるけど、極力コストは押さえたいんだよね」
「そんな理由があるんですね」
「あと、工程を増やした方が彼女等が手伝うタイミングが増えるからね」
「成る程……」
そんな会話をしながら作業を進めていく。
「これで終わりです。鬼頭さん、お手伝いありがとうございます」
「良いって。じゃあ俺は自分の作業に戻るよ」
「今日は何の作業をされるのですか?」
「今日は俺のも花なんだよね。マリーゴールドの種蒔きかな」
「そうなんですね。私もご一緒に作業させて貰ってもよろしいですか?」
「お、やる?花だからかな?」
「それもありますけど、畑で花を植える事に興味がありまして」
「うん。じゃあ作業しながら説明するよ」
そうして俺は幾分か軽くなった種蒔き用の土の袋を持って、ニシノフラワーと共に農園へ向かう。
「ニシノフラワーは今年は何の種を蒔く予定なの?」
「色々蒔きますよ?次はミニひまわりの種を蒔こうと思っています」
「お、良いねぇ」
そんな会話をしていると農園に着く。
「じゃあやろうか。まずは俺のやり方を見てくれ」
「はい」
と言っても、工程は先程のカーネーションとそう変わらない。ポリポットに土を入れ、3粒程種を蒔き、土を被せて水を撒く。
「さて、なんで畑でマリーゴールドを育てるかっていう話だったな」
「そうでしたね。何か理由があるんですか?」
「ニシノフラワーは、『コンパニオンプランツ』という概念を知っているかい?」
「えっと、確か異なる種類の植物を植える事によって良い効果を及ぼす事、でしたっけ」
「そうそう。例えば有名どころではトマトとバジルだね」
「確かによく隣同士で育てているのを見ますね」
「まず、トマトはあまり水や肥料を必要としない野菜なんだ。その時に余分な水や肥料をバジルが吸い取ってくれる」
「そうなんですか!?」
「それに害虫対策もある。バジルの強い香りが、害虫を寄せ付けないんだ」
「成る程、トマトにとって良い事が多いのですね」
「勿論バジルにも良い事があって、バジルはあまり直射日光が当たるとよくないんだけど、トマトがそれを遮ってくれる」
「双方に良い効果があるんですね」
「料理とかでも相性がいいしね。モッツァレラチーズと併せてイタリアのサラダ、カプレーゼとかにできるし」
「栽培だけではないんですね」
「後は、畑の土地を有効利用できるし、良いことだらけなんだよ」
「成る程、それでは、畑でマリーゴールドを植える理由ってなんでしょうか」
「本題だな。主な理由は虫除けだな」
「虫除け……ですか」
「ニシノフラワーは、マリーゴールドは育てたことある?」
「一度だけありますよ」
「その時、虫が付いてた事ある?」
「確かにありませんでしたね」
「その効果が他の野菜にも及ぶんだよ。主にアブラムシとかが寄り付きにくくなる」
「アブラムシ対策ができるのはいいですね」
ニシノフラワーもアブラムシには悩まされていたようである。
「アブラムシ対策ができるということは、殆どの野菜と相性が良いという事。多分花とかでも大丈夫なんじゃないかな」
「成る程、因みに、コンパニオンプランツの逆ってあるんですか?」
「一緒に植えてはいけない組み合わせ?そうだな……大体の野菜とラベンダーは良くないって聞いたな」
「ラベンダーってハーブですよね。意外でした」
「なんか野菜の生育を遅らせるんだってさ」
「混植するときは調べてからやった方が良さそうですね」
会話をしながらでも、作業の手は止めない。
そうしながら作業を進めていく……
「よし、これで終わりかな」
「今日はありがとうございました」
「むしろ礼を言うのはこちらだよ。手伝ってくれてありがとう」
「いえいえ、では私はこれで」
さて、ちょっと早いけど俺も帰るかな……
ピンポンパンポーン……
『用務員の鬼頭さん、太田さん、五十嵐さんは、理事長室にお集まり下さい。繰り返します……』
おや、俺に呼び出しとは珍しい。
すぐ行かなければ。
俺は作業着の土を落とし、長靴だけスニーカーに履き替えてから理事長室へと向かった。
コンコンコン
「鬼頭です」
「どうぞ、お入り下さい」
理事長秘書、たづなさんの声。
それに従い中に入ると、既に太田と五十嵐が集まっていた。
「お、鬼頭。今日の作業は終わったのか」
「今日はマリーゴールドの種蒔きだけだったからな」
「いやー作業に参加できなくて申し訳ないですー」
「露骨な棒読みは止めろ五十嵐。思ってもいないことを……」
コホン。
たづなさんの咳払いがやけに響くと、俺達は居住いを正す。
「謝意!今日集まって貰ったのは他でもない、君達の今後の作業についてだ!」
理事長がそう切り出すと、少しだけ緊張が走る。
「そう身構えなくていい。時に、太田君と五十嵐君は現在君達に課している作業内容に不満があるのかな?」
「ッ……そうですね。鬼頭ほど農業をやり慣れていないので、少しだけ抵抗があります」
「私も同じ理由ですね。これなら実家でやっていた養鶏の作業の方がやりがいがありました」
「理解!こちらでも、君達の実家について少し調べていてね、君達に合う作業をこちらでも考えていたのだよ」
「それは……」
「どういう事ですか?」
「新設!これから順次、小規模ながらの牛舎と鶏舎を建てようと考えている!」
「え……!?」
「な……!?」
二人が同時に驚きの声を漏らす。勿論俺も驚いている。
「これから君達には、牛舎と鶏舎の作業を覚えて貰い、そちらでの作業をして貰う!」
「ま、待ってください!太田と五十嵐は良いですが、私の作業は単純に三倍ですよね!?」
「それに関しては、たづな!」
「はい。三人にはこれから、三つの作業それぞれのリーダーとなって頂きます。例えば、牛舎での作業をする場合は、太田さんをリーダーとして動いて頂きます」
成る程、確かにそれなら、三人それぞれ同じ立場になった上でこちらでの作業にも二人に参加して貰える。
「太田君、五十嵐君、これでどうだろうか?この仕事には抵抗は無いだろうか?」
「勿論です。理事長、ありがとうございます」
「これであれば私でも作業に取り組めそうです。ありがとうございます、理事長」
「鬼頭君も、どうだろうか?」
答えは決まっている。
「異論はありません。ありがとうございます、理事長」
「うむ。ではこれから、牛舎と鶏舎の建設に入る。三人とも、宜しく頼むぞ!」
牛と鶏の作業はやったことがないのでいつも以上に調べながら書いていこうと思います。