色々聞かれて思い返すように私は秀吉くんと出逢ったあの日のことを振り返っていた
三年前の春、私は公園のベンチでふて腐っていた
「やっぱりもう無理なんだよ……歩くことなんて…」
私が中学一年の時に病気にかかり、治療のために実家を離れた大きい病院で治療していた
二年の歳月をかけて病気は治療出来たのだがお医者様によると「治療は出来ましたが治療するまでの間に身体の筋力が大幅に下がっています。リハビリで身体を戻していくしかありません。リハビリははやく直したいということ本人の意志が大きく関わってきます」と言われた
最初のうちははやく直すぞという意気込みでリハビリに望んでいたがなかなか動かない自分の身体、上手くできないリハビリなどでどんどん意気消沈していき、ここ最近では絶望感も出始めあまりリハビリをしていなかった
気分転換を進められ車椅子で来た公園のベンチでかつての自分を思い出したり、リハビリがうまくいかない悔しさや、無気力な自分が情けなくなり泣きそうになった、その時だった
「どうしたのじゃ?どこか痛いのかの?」
ちょっと普通とは違う口調で心配そうにこっちを見つめる女の子のような顔つきの男の娘がそこにいた
「え?男の娘?」と知らずに呟いていると
「お、お主!儂が男だとわかるのか?」
少々興奮気味にその娘は聞いてきた
「う、うん。そうだけど?」
「う、嬉しいのじゃ~!儂のことを一目で男だとわかってくれるのはそうはいないのじゃ~!」
あまりにも嬉しかったのだろうか涙目で熱く語ってきた
……どうしよう、今の目の前のこの子を見ると「やっぱり女の子に見えたよ」と言い出しそうな自分がいると葛藤していると
「ところでどうして泣いておったのじゃ?もし良かったら儂に話してはもらえんかの?(ニコ)」
「!!!!?」その男の子(娘?)の笑顔を見た瞬間顔が暑くなって心臓がドキドキと激しく鳴り始め、私は慌てて顔を背けると落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせた
ようやく落ち着いて顔を戻すと彼は黙って私が言い出すのを待ってくれていた
思い切って話してみようと思って口を開くと自分の病気のことやリハビリが上手くいかなくて悩んでいることなど自分でも不思議なくらい話していた。話している途中さっきまで我慢していた涙がポロポロと出てきて抑えることができなかった
そんな私を彼は黙って話を聞いていてくれた
話終わると黙ってポケットからハンカチを取り出すと涙を拭いてくれた
「あ、ありがとう」
「……そのリハビリ儂も手伝ってもいいかの?」
「え!?」
「そのかわり、儂の練習を手伝ってくれんかの?」
「れ、練習ってなんの?」
「儂は演劇をやっておっての、一人で発声の練習とかしておるのじゃが誰かにちゃんとできておるか見て欲しいのじゃ、だめかの?」
「いいけど、そのくらいで私のリハビリ手伝ってもらうの悪いし、それに、その…私たち初対面だし」
「なに、これも何かの縁じゃ!……だめかの?(上目使いで)」
う、その顔でその上目使いとは、卑怯じゃないかな・・・
「え、え~と、じゃあ、お願いしてもいい?」
「うむ!お、そうじゃまだ名を名乗ってなかったの。儂は木下秀吉じゃ」
「わ、私は霧島夢希」
「よろしくなのじゃ」
「うん、よろしくね!」
これが秀吉君との出逢いでした
秀吉君との出会った次の日からお互いの練習が始まった
「う、くっ、んぐ」
「慌てなくてよいからまずはゆっくりと」
今私は車椅子から立ち上がって、両手を手すりに捕まって右から左、左から右と行き来していた
秀吉君はそのたびに私の行く先に居て、励ましてくれたり私が倒れないように見てくれている
「さっきより、上手くなってきたのじゃ」
「本当!?よし、それならもっとペースを上げよう!」
「そろそろ休んだほうがよいぞ?もう何時間も練習しておるのじゃぞ?無理は禁物じゃ」
「大丈夫だよ!」と言ってまた歩き出そうとした時、まだ動き慣れてない足を無理に動かそうとしたため足が躓き、踏ん張ることが出来ない私は来るであろう痛みに備えて目を閉じた……
一向に痛みが来ることがなかった。その代わりに来たのは暖かい感触だった。目を開けてみると
「ふ~、ギリギリ間に合ったのう。怪我とかないかの?」
そこは秀吉君の腕の中でした
「う、うん、ありがとうね。大丈夫だから」
激しく鳴り始めたドキドキを鎮めるために静まれ静まれと念じていると
「なんじゃ?顔が真っ赤じゃぞ?体調でも崩してしまったかの?」と私の額に手をおいていた
「だ、大丈夫たら大丈夫だよ(汗)体調も崩してないから!うん平気だから!」と少々テンパりながら答えると
「そうかの?ならよいが、さっきみたいになっては駄目じゃから休憩じゃ!よいな?」
ちょっと強めに言われちゃったので大人しく従うことにした
「それじゃあ夢希が休憩してる間儂の練習を見て貰おうかの、よいかの?」
「うん、喜んで!でもどんなことするの?」
「なに、そう難しいことではないのじゃ、あいうえお順に発音していくのでそれを聴いておかしなところがあったら教えて欲しいのじゃ」
「でも、私そういうのよく分かんないよ?」
「はは、別に難しく考えなくてもいいんじゃ、なんとなく感じた程度でよいのじゃ」
「そうなんだ。うん、わかった」
それから私は秀吉君の発音の練習に付き合った。秀吉君の声はとっても綺麗で目を閉じて聴いていた
「どうだったかの?おかしなところはなかったかの?」
「ううん、全然!とっても綺麗な声に発音と言うことないよ~」
「そ、そうかの。そう言って貰えると嬉しいのじゃ♪ありがとうのう」
恥ずかしそうにお礼を言ってきた。ああ、そんな仕草をするから女の子に見えちゃうんだよ~と言いそうになったのは秘密である
「あとこんなのも出来るのじゃ」というと少し息を吸うと
「お前のやったことは、全部まるっとお見通しだ!」
ととあるインチキマジシャンが主人公のドラマの名台詞を言った
「す、凄いよ!本物と見分けつかないほど瓜二つの声だったよ!」
「声真似は儂の十八番じゃからな!」
こんな風に楽しくリハビリの日々は過ぎていった。ひとりでリハビリしていた時とは想像出来ないくらいにリハビリが進んでいた。これも秀吉君のおかげだと思う。……そして秀吉君のことが好きだとおもう。多分最初に会ったときに一目惚れしちゃったのかな?告白とかどうしようかな
などと考えて矢先、それは無情にしていきなり訪れた
「今日で…お別れなのじゃ」
いつものように秀吉君に会うと、そう申し訳なさそうに、そして、悲しそうにそう言った
ここに滞在していたのは家の事情で来ていたらしく、家の用事が済んだので帰らなくてはならなくなったらしい
「そうなんだ……、そ、それなら仕方ないよね…」
「すまぬのじゃ…最後まで手伝うことが出来なくて…」
本当に申し訳なさそうにしている彼の顔を見るのが辛かった…、あの楽しかった時間はもう終わってしまうのかと思うと悲しくなった
私は秀吉君に心配させまいと気丈に振る舞って話を変えた
「あ、あのさ、秀吉君はどこに進学するの?歩けるようになったらさ、遊びに行くからさ」
その後秀吉君が何か言っていたけど聞こえなかった。顔は平気そうに装えても心はもう限界にきていた。秀吉君に告白も出来ないままもう会えないのかと心が悲しみに包まれようとしていた
「儂は文月学園に進学するつもりじゃ」
その一言を聞くまでは……
「文月学園!?それ、本当?秀吉君!」
「う、うむ。学費が一般よりも安いようじゃし、なにより普通の学校とは何か違うことがあるらしいしの」
文月学園……以前姉さんと電話で話していた時姉さんが進学する学校として名前が挙がっていたのでその存在は知っていた。その文月学園に秀吉君が進学する!それを知ったとき私の中で既に悲しみはなくその代わり喜びと3つの目標が出来た
「実は家族に待ってもらってここに来たのじゃ…、そろそろ行かねばならん。夢希、げんき」
「秀吉君!」
だから私は「さよなら」ではなくこう言った
「秀吉君!「またね!」」
「3つの内の2つ、身体を思いっきり動けるようにすること、文月学園で姉さんと同じクラスになること。 この2つはなんとか達成、あとは」
「あとは何なのかな~?」
いきなり後ろから現れた愛子。心臓に悪いよ~(汗
「そ、それは、その…、ひ、秘密!」
「え~、教えてよ~夢希~♪」
「甘えた声出してもだめ~(汗」
三つ目の目標は秀吉君と再開して告白すること! この恋が叶いますように!