ポケモンって可愛いよな。
表情豊かだし、個性に溢れてるし、何より純粋だ。
キャンプでカレーを作ってくる時上機嫌で寄ってくるの本当かわいい。意地っ張りなやつでも嬉しそーに駆け寄ってくるんだからもうヤバいよね。
そんで美味いカレーを食べた時のあの顔。勢いよく食べ過ぎて口周りが汚くなってるのも本当愛おしい。
撫でたりじゃれたりしてスキンシップを取ると大袈裟なくらいリアクションしてくれるの本当好きだ。最初は自転車買う為に貯めてた貯金を全額ポケモンに突っ込むようになってるくらいには大好きなのだ。
正直なところ、経済的な理由がなければありとあらゆるポケモンをゲットしてふれあい広場でも作りたいと思ってる。
しかし無理なのだ。俺の商売…骨董品店での収益では3匹くらいが限界なのである。
しかしこの仕事は嫌いではない。好きでやってる。
ポケモンは好きだが、その為に合わない仕事してポケモンを心配させるくらいなら最初からやらない方がいいしな。好きなことをやりつつ好きな子たちを世話する。
これぞ最高の人生ってね。
「キュゥ?」
「ん?あぁ、大丈夫だよアシレーヌ。ちょっと考え事してただけ」
眉間に皺を寄せた俺を心配したのか、アシレーヌが身を寄せてきた。相変わらずかわいい。なんていうか、人魚姫みたい子だ。
彼女の声は疲れてる時に聴くと途端に眠りに落ちてしまう。それくらい癒しの効果があるのだ。
おそらく『うたう』を使ってるんだとは思うが、彼女の歌声を聴いているとまるで水中にいるかのような錯覚に陥る。
それがまた心地よくて意識が沈んでいくのだ。
しかしまあ、今は必要ないかな。
さすがに仕事中は眠るわけにはいかない。アシレーヌを撫でつつも、俺は目の前の持ち込まれた物を覗き込んだ。
「ちょっと劣化してるっぽいが…ただのイヤホンじゃないかこれ」
先日、友人のユウリという少女が俺の店にやってきて「鑑定お願いします!」と置いていった品物。
ワイルドエリアで発掘されたものらしい。
しかしそれ以上の情報は全く無く、扱いに困った為俺のとこに来たと。
実にありがたい。こういうものを調べるのが好きだから骨董品店やってんだよね。
ちなみに彼女、現在絶賛ジムチャレンジ中である。既に3つもバッチを手に入れてるようだ。
つよい。
俺はバトルできないからなぁ…アシレーヌだって海岸で打ち上げられてたのを助けたあとゲットしただけだし。
アシレーヌ以外の2匹の手持ちだって、何故か俺のそばにいてくれるけど、野生ポケモンとの戦いでは指示を出してないのに自主的に守ってくれている。
ありがたい限りだよね、ほんと。ちなみにその2匹は現在、庭のきのみを収穫している。お昼時になったら呼ぶつもりだ。
おっと、話が逸れてるな。元に戻そう。
「イヤホンにしてはスマホに繋がんないしな…」
そう。いわゆる無線のワイヤレスイヤホンをしているのだが、まるっきりスマホの検知に引っかからないのだ。これでは使い物にならない。しかし出てきたのは地中。
何か意味があると考えたからこそユウリも俺に預けたんだろうけど…。
「いやでもワイルドエリアから発掘されたんならポケモン関連か…?」
「キュ?」
呼んだ?
と、アシレーヌが手を挙げる。
かわいいが君のことではないよ。
「キュ、キュウ」
「ん?これ?これが気になるの?」
どうやら彼女はイヤホンに興味を持ったらしい。
首を傾げながらツンツンと小突いて…っておいおい。
「だめだよ、一応お客さんのものなんだから」
「キュゥ…」
かわいい。申し訳なさそうに鳴く彼女も好きだ。
ただ落ち込んでるままにするのはよくないので優しく撫でておく。
「これはね、遊ぶ物じゃ無くて、音楽を聞くためのものなんだ」
「キュ、キュウ!」
…使ってみたい、ということなのだろうか。
うーん、まあ確かポケモンが持つことで効果を発揮するアイテムはいくつか存在しているし、調査目的なら問題ないか。
「ちょっと顔さわるよ」
一応断りを入れてアシレーヌの髪に触れた。ぴくんっ、と一瞬体が跳ねたが、それ以降は耐えてくれている。
本当は貝殻の内側にある耳のような器官に近づけるのが一番なのだが、それだとイヤホンが貝殻に押しつけられて痛くなってしまうかもしれない。なので一応耳の近くの綺麗な青色をした髪に差し込んだ。
「どう?なんか変わったところはない?」
「キュウ」
横に首を振るアシレーヌ。
これでもダメか…。
「キュッ」
「えっ、俺もつけるの?」
「キュウ」
アシレーヌは片方のイヤホンを外して俺に差し出してくる。ペアルックというやつだろうか。
そういえば前にカップル特集されていたテレビを見てたしそれの影響かな…?
微笑ましく思いつつも俺は右耳にイヤホンをつけた。
「どう?にあってる?」
「!!!?」
……ちょっと見たことないレベルで驚いた顔してら。え、そんなに似合わない?
そんで口元抑えて涙ぐんで…えっ?
「ちょっ、なんで泣いてるの!?」
まさか呪い系アイテム!?くそっ!迂闊だった!
俺に影響なかったから油断していた!
「待っててね、かいふくのくすり持ってくるからっ」
そのあとはすぐポケモンセンターに行こう。
それでダメなら病院で検査しなくちゃ…!
「んっ?」
その場から立ちあがろうとした俺の服を掴んで止めるアシレーヌ。首を横に振って「ちがう」と伝えたいようだ。そしておもむろに口を開いて。
『私の言葉、分かる…?』
流暢に喋り出した。
……………………え、は?
ちょっ、マジでっ!?
「えっ…アシレーヌ…?」
『そう!私の言葉、わかるよね!?』
「わかる…わかるよ…!?」
やばい、すごく混乱してる。
だってアシレーヌが流暢に喋ってるのと同時にいつもの鳴き声が左耳から聞こえるのだもの。
というか一鳴きにそんなに言葉こめられるのかという的外れな考えすら浮かんできてしまう。一周回って落ち着いてきたのかもしれない。
『うぅ〜!』
「うおっ!?」
感極まったのかアシレーヌか抱きついて来た。
取り敢えず落ち着かせるために背中を撫でる。
肌すべすべだ。
『お"は"な"し"て"き"る"〜!』
「うんうん、落ち着いて〜」
そのまましばらく、アシレーヌが落ち着くまで俺たちは抱き合い続けたのだった。