自分はバイオレット買います
○○○
『ねえねえこれなんて言うの?』
「あらびきヴルストだよ。
これ好きだよねアシレーヌ」
『大好き!あっ、でもマサルの方がスキー!』
「俺もだよー」
『きゃー!両想いだ〜!』
あれから約10分後。
時刻はお昼時ということもあって、店を一旦閉めてカレーを作っている。
今回作るのは『からくちヴルストのせカレー』
材料は適当に冷蔵庫に入ってた野菜をぶち込んで『クラボのみ』を三つ入れた後、別で焼いていた『あらびきヴルスト』を乗せた料理だ。
ノーマルタイプみたいにシンプルながら、かくとうタイプに打ち勝てそうなくらいピリッと美味しい。
まごころこめたら…はい完成。
特別なことはしてないが、普通に美味しいマホミル級カレーの出来上がり〜。
『できた!?ねぇできた!?』
「できたよ〜。取り敢えず2人を呼んでくるからテーブルでまってて」
『はい!』
「んーいいお返事だ」
よしよしと撫でたらめっちゃ手にすりすりしてきた…いつもならもう少し落ち着きがあるアシレーヌだけど、言葉の壁を取っ払えたのが本当に嬉しいらしい。
でも、喜んでもらえるのはありがたいんだけどこのイヤホン預かり物なんだよなぁ…。ユウリが来たら返さないといけないから説得が大変そうだ。
と、ずっとこうしているわけにもいかない。ひとまずキッチンを後にした。向かう先は中庭だ。
裏口を開けると、きのみを蓄えた木が視界に飛び込んで来る。うちに一本だけ植えられたその大きな木は中庭の半分以上のスペースを占領していた。
そして、その木てっぺんでマッスルポーズをとる赤い筋肉とその周囲をクルクル回るピンク色のポケモン。
俺は2匹の名前を呼んだ。
「ポリツー!マッシブーン!カレー食べよー」
「マッシ!」
「ポリー!」
「えっまって飛び降りないでっ」
ずどーん!と『じしん』が起きた。
その衝撃で木に蓄えられていたきのみがボトボトと地面に落下していく。その衝撃でいくつかは潰れてしまったようだ…。
「あぁー…」
「ポリ!」
「マッシ!」
すんごい得意げな顔してる…!
もしかして2人なりに効率的なきのみの取り方を考えて実践してくれたのかな…。
そう思うと強く叱れない。ざっくりと見て周り無事だったのをきのみ貯蔵庫(ただの冷凍庫)に放り込んでから2人に向き合った。
潰れたきのみは勿体無いけど野生のホシガリスとヨクバリスが何とかしてくれるさ。
それよりも今は2人に見せたいものもあるしね。アシレーヌだけじゃなく、是非2人の声も聞いてみたい。
「うん、2人とも取り敢えず中に入ろうか」
「ポリリー!」
「マッシブン!」
一足先にドタドタと部屋の中へ入っていく。
やっぱかわいい〜!ポリツーが小さい手足をぐるぐる回してるのもかわいいんだけどあんなに大きな体をしたマッシブーンがドタドタとカレーを求めて急いでるのがギャップすぎて好きだ。
《パシャッ!》
「……ん?」
今なんかカメラの音が…?
振り返ってみてもさっきと変わらない光景。
…おっと。俺もさっさと戻らないと。
『マサル!!!!ごはん!!!はやくぅ!!!!』
…………えっ、誰の声…。
…あっ、ポリツーか!イヤホンから流れてきた音量がデカすぎて一瞬わからなかった。
というかもうイヤホン交換したのか。
「まっててー!今いくよー!」
俺も腹減ったし、暖かいうちにカレーを食べたい。
俺は急いでテーブルに向かっていったのだった。
『うまい!!うまい!!!カレーさいこう!!』
「よく食うなぁ…」
顔の横にセロテープでイヤホンをくっつけたポリツーがムシャムシャとカレーを貪る。
いや、ほんとにうちのポリゴン2はよく食べる。
前にヤローさんに保護したって言うポリゴン2を見せてもらったんだが、その子はスプーン1掬い分で満足してた。
「あーもう、勢いよく食べすぎだって」
『うまいもん!!!』
「うんうん、ありがとね。でもお口は拭こうか」
『あざまーす!!』
あまりに口周りが汚くなっていたため一旦食事を中断。綺麗な布でカレーを拭き取っていく。
あーもーお気に入りの石まで汚しちゃってまー。今度からご飯時はペンダントみたく首からかけてるこれ、外させようかな?
「キュウ!キュゥゥゥ!!!」
えっ待ってアシレーヌなんでそんな怒ってんの…?
あっカレーに顔突っ込みやがった!?
「ちょっ、何やってんのー!?」
「マッ、マッシ!?」
「キュメメメェ!」
「マァッ!?」
あぁっ!慌てて拭こうとしたマッシブーンが『アクアジェット』で弾かれた!右腕だけ技使用とかほんと器用だねアシレーヌ!
そんでマッシブーンが大の字で寝っ転がった!
……もしかして急所に入った!?
「キュウ!」
「キュウ、じゃないでしょうが!ちょっとポリツーイヤホン借りるよ!あと『オボンのみ』をマッシブーンに!」
『いいよ!!!わかった!!』
ひとまず顔まわりに付着したカレーを拭き取ってから髪の毛にイヤホンを挿しこむ。
「で、何でマッシブーン君を殴ったのかな?」
『マサルに拭いてもらいたかったから!!!後あわよくば舐めとってもらえるかなって』
「うん、取り敢えず叫ぶのをやめようか。後半全部聞き漏らしちゃったわ」
かわいい。かわいいけど急所に当たるような攻撃はシャレにならんよ。
「ちょっとさ、落ち着こうか」
『えっ?』
「さっきからずっと興奮しっぱなしだからね?普段の君もうちょっと理性あったよ」
少なくともマッシブーンを殴り飛ばすみたいな奇行はしていなかった。せいぜい巻きついてくるくらい?だから、お灸も据える意味も込めて言わせてもらおう。
「もし今後もこう言うことがあるなら、すぐにこのイヤホン。ユウリに返しにいくからね」
『誠に申し訳ございませんでしたッ・・・!』
「すんごい流暢」
まあそうでなくてもいずれ持ち主に返す時は来る。
でもチャンスがないわけじゃない。
ここは骨董品店。
珍しいものを買い取り展示するお店。
だからユウリがこのイヤホンを売る、と言ってくれればこのイヤホンを手元に置き続けることができるだろう。
本来褒められたことじゃないけど、貯金崩して金の力で殴ることも考慮に入れておこうか。
でもひとまずは……。
「マッ、マッシブン…」
「ポリリー!」
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!』
目を回すマッシブーン。その真上を旋回しさらに目を回そうとするポリツー。必死に謝り続けるアシレーヌ。
この事態をどう収集つけるべきか。
俺は頭を抱えるのだった。
マッシブーンなのは趣味です。あの筋肉が私を狂わせる…。ポリゴン2なのも趣味です。とある実況者さんの影響で好きになりました。あの迫真のBGMが私を狂わせる…。