光る風を超えて   作:黒兎可

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祝・100話! なんですがいつも通りな更新です汗 毎度ご好評あざますですナ!
 
何か記念企画やりたいところですが、例によってアンケ参照ということで汗


ST100.死を祓え!:臨界・序

ST100.Memento Mori:Countdown To The Hell -3-

  

 

 

 

 

「フン、やったのか……?」

 

 ちびティスがそんなフラグを建てるものだからほぼ間違いなくディーヴァはやられていないと経験則から判断して(断言)、私は「死天化壮(デスクラッド)疾風迅雷(サンダーボルト)」をフルに運用して移動した。この感覚が気持ち悪い。血蹴板(スレッチ・ブレッシ)内血装(ブルート・インテルノ)により死天化壮中の私の動きは文字通り縦横無尽となっており、またその移動速度は人間の観測能力をギリギリ超えるか超えないか。私自身ですら振り回され気味な速度を無理やり動いているというのが正解なのだが――――その上で疾風迅雷を併用しているこの状態においては、文字通り「世界が遅い」。

 私の動きや思考、判断一つ一つに遅れて動くのみならず、その動きすら遅いとあってはどうしたものかといった具合だが、攻撃を一方的に加えることが出来る速度と言う意味では何も問題はない。

 

 煙が晴れるよりも先にその中に入り込み、ディーヴァの状態を見ると。彼女は驚いたような目で私「がいた方」を見ている様子で、とっさに庇ったろう左腕に大きな斬り傷が出来ていた。海天偽壮はその受けた余波の箇所と思われる部分が「剥がされており」、左腕、左胸から上の箇所が素っ裸だった。………‥まぁ元々水で形成されているそれは半透明な上、どうしてかさっきの時点ですでに全裸の上から装備なので色々と少年誌的にはきわどいことになっているのだが(目そらし)。

 と、ゆっくりと彼女の視線が私の方を向く――――向こうと動き始めている。本当に遅いというか、星月の言葉に従えば私の認識がおかしなくらいに速くなっているのだろう。

 とりあえず追加で血風を数発投げ込み……、傷はともかく意図せず全裸になってしまうのは一瞬だけ謝罪の姿勢をとり(礼儀)。ちらりと、茶々丸と戦っているデュナミスの方を一瞥し、私はディーヴァのフード部分の残り(ぼろぼろ)をひっつかんで、そのままあちらのデュナミス目掛けて放り投げた。この速度も私の認識通りのものであり、明らかにディーヴァはその動作モーションに対応しきれていなかった。

 

 そして、時が動き出す。

 

「いや本当スゲェ速度で飛んでってるじゃねーか……。たーまやーって感じ、あっ当たった」

 

 思いっきり彼女のヘッドバットが腹部に命中して吹っ飛ばされるデュナミスと驚いて困惑する茶々丸。

 

「…………本当にやったのか? 居なくなってるじゃないか」

「は? い、今何が…………」

「…………何か猛烈な速度で君が動いたのは見えたけれども、どこに投げたんだい? 彼女」

 

 おっと、見えたのは釘宮だけか。ニキティスはニキティス本人でなくちびティスだから本体よりもスペックが低いのだろうと考えられるが、三太はそもそもそういった類のものは伸ばしていないのだろう。この学園において、速度特化とかしなくても基本的な「幽鬼(レブナント)」の能力だけで充分に無双できただろうし。

 となると、この場で考えられる配置は――――。

 

「一空先輩とキリヱも来るだろうけど、基本あっちは世界樹の方に行ってもらいたいところだし……、そうなると釘宮、三太。お前らも世界樹の方に行った方がいいと思うんだ。今までのやりとりの感じからして『そっちの方に』水無瀬小夜子本体がいるだろうし」

「いや、何でお前置いていくって話に…………」

「世界樹……、増援はあるのかい?」

「一応、約二名。一人は全身義骸のスーパーサイボーグで人間の形をした現代兵器の塊って思って問題ない。もう一人は非戦闘系のサポート要員みたいに考えとけ」

「とすると…………、『あの』デカブツと直接戦う訳ではないんだよな」

「嗚呼」

「わかった。なら行こう」

 

 色々と私の話を聞いて勘案した上で、特に反論もなく首肯する釘宮。このあたり意外と「野生のカン」じみた何かでシビアに戦力判断をしたのかもしれない。そのうえで世界樹の方になら行くといったということは…………、やっぱりあのダイダラボッチさん相当危ないやつなのでは?(震え声)

 一方、これに難色を示しているのが三太だ。いやお前本当に主目的忘れてるわけじゃないよな、何で一番動機が強いはずのお前が反抗してんだよ。

 

「反抗とかじゃねえっての。…………お前、けっこうギリギリだったんだろ? さっきだって、よくわからねェけどエロいことされてた時、圧殺とか言ってたジャン、あのエロいねーちゃん」

「どうでも良いけど、呼び方それで固定なんだなディーヴァの…………」

「俺も異論は唱えないよ、近衛。実際、だいぶ痴女でしかないからね」

 

 本人はそうじゃないと必死に(?)抗弁していたが、行動原理はともかく行動に移している時点でアウトだという私含めた男子三人からの判定であった。

 

「とにかく、そんな状態だったお前、いきなり逆転したように見えてるけど、たぶんそれでも倒すとかは出来ねーんだろ? いつまたひっくり返るかわかったもんじゃねーだろ。オレ、それはそれで嫌だぞ? オレが小夜子助けに向かって、そのせいでお前倒されたとかなっても」

 

 とはいえ現状、切れる手札はないのだ。ちびティスが「何故僕に聞かないのだこの下等種たちは……」と若干イライラしているが、そもそも大丈夫だったらお前本体が来ているだろって話だ。わざわざ私に雷獣(チュウベェ)を溶かし込む時のモーションは、あきらかにちびティスではなく本来のニキティスでやった方が決まりが良い(オサレな)訳だし。割と真祖はそういう部分を気にするのだ、原作的にも。ならばそれが出来ないと言うことは、それ相応の理由がある訳で…………。

 

「少なくとも誰か一人、バトル要員がこっちに来てくれりゃ良いって話なんだけどなぁ…………」

 

 そんなことを言ったせいか。

 

『…………わかった。ならば出し惜しみしている場合ではなさそうだ。私も出ようか』

「「「えっ?」」」

 

 そんなことを唐突に黒棒が言い出した。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 刀太のご先祖……というよりも、お祖母様に相当するらしい彼女。さきほどのやりとりから「刹那」という名前だけは判っていますが、刀太の姓である「近衛」と照らし合わせて考えると、一人の該当者が思い浮かびました。

 

 人類の太陽系進出初期ごろ、2010年代から2030年代程度まで名をはせた航空小型宇宙船レースの名レーサー。とある「偉大な魔法使い(マギステル・マギ)」(制度の方の呼び名)の従者だったとだけプロフィールに載っていましたが、確かその名前が「刹那・S・近衛」。

 忍が持っていたレース関係の本でちらりと名前を見た方でしたが、苗字が苗字なので引っ掛かりを覚えていました。……意外な所に親戚筋がいたものです。とはいえど、現在においてもその若さを維持していることは、普通に考えて異常の一言でしょう。となるとどちらかが人外であるか、なにかしらの理由で生命力(気)か魔力が強いのか。「魔法使いの契約」において、従者と主人との魔力還元率の都合上、膨大な魔力や生命力はお互いの寿命を延ばしたり、容姿を若返らせたりすることがあるとシスター・ミソラに聞いたことがありますが…………。

 

「神鳴流奥義、斬魔剣――――!」

「――――神鳴流奥義、斬魔剣・弐の太刀!」

 

 咄嗟に彼女から放たれたそれを、九郎丸が「私を通過する」斬撃を放ち代わりに受けてくれましたが。眼前でそのまま体勢を変えた九郎丸と鍔迫り合いをする彼女は、どう高く見積もっても二十代前半程度の容姿をしています。

 いえ、髪が真っ白だったり両目が赤かったりと、かつての写真に写っていたものとは異なる点もあるにはあるのですが…………。

 と、その刹那さんは九郎丸の刀を見て、何やら困惑しているように見えます。

 

「夕凪……? 確か時坂君のところに預けたと思ったのだけれど、こんな形で相まみえることになるとはッ」

「夕凪を知ってる? …………貴女は一体ッ」

 

「せっちゃんもな~、刀太君のお祖母ちゃんなんやで~!」

 

 そんな近衛木乃香……でしょうね、さっきのやりとりからして、そんな名前なのでしょう。その彼女の台詞を聞いた瞬間、九郎丸が「はッ」とした顔をして「せ、刹那お義祖母(ばあ)様ッ!?」と裏返った声をあげた。まぁ元々声は高いのだけれど、戦闘中だったこともあっていきなり素っ頓狂な情報を聞かされたために混乱しているようね。

 ちなみに刹那さんも「えぇ!? そ、その物言いってひょっとして…………ッ!?」と混乱しているわ。変なところで似たもの同士…………、いえ、ディーヴァ・アーウェルンクスが言っていたことや勇魚ちゃんのことも思い出すと、神鳴流って変人しかいないのかしら? あるいは変態さん(えっちな人)しか。

 

 ちなみにそんな木乃香さんの手前では、あのニキティス・ラプスが「乱心したような」刹那さんと斬り結んでいた。

 

『行きますよ! 待っててこのちゃん、神鳴流奥義―――――』

「おい、ちょっと待て貴様この『式神』ッ! 肝心の主を巻き込みかねない勢いで技を使うんじゃない、せっかく僕の芸術的な拘束状態がそんな適当かつ意味の分からないノリで壊されてたまるか…………、だからそのまま無意味無目的に振り下ろすのを止めろッ!」

「ひゃ~! うち逃げられへんから~っ!」

「ちょっと弐式(セカンド)~~~~~~ッ!?」

 

 どうやら式神の方の刹那さん(テンションが本体よりも高い?)に振り回されているようね。とはいえ木乃香さんは「あー、セカンドせっちゃんも程々にな~?」と多少は余裕の表情なのだけれども、ニキティス・ラプスとしては先ほど逃げ出したディーヴァ・アーウェルンクスのことがあるせいで、これ以上自分が作り出した拘束具? から脱出者を生み出したくないようね。遊んでいるのかしらあの男…………? いえ、まあ本体と違って頭が弱いのか、式神も式神で救出するべき木乃香さんを巻き添えにすることになんら抵抗がないようだけれど。

 

「『干からびた骨(オゥス・エクシィカッタ)』――――ふッ」

「――――くっ、二対一は流石に厄介だッ」

 

 そして九郎丸の抑えているところと反対の場所で、私は例の「古い剣」に「信仰の魔力」を宿らせ、袈裟斬りにするように大きく踏み込んだ。それに彼女はもう一本短刀を呼び出し、両手の剣で抑え込む。

 厄介と言いつつ普通に「見た後で」反応して対応できているところは、あのアーマーカードの九郎丸よりも動きに余裕があるように見えます。

 一方の九郎丸も、アーマーカードを呼び出していないのは何か理由があるのかしら……? アーティファクトは仕舞っているのか姿も見えないし。

 

「はッ!」

 

 そのまま斬り返され、距離をとられました。…………おそらくは鳥系の亜人の血筋(それこそ九郎丸のような)なのでしょうが、羽の色が白いせいか神聖魔法の効きが良くありませんね。もともと神聖魔法はその派生として「象徴(シンボル)」に依存するところも大きく、外見上「一般的な天使のイメージ」のような属性を帯びているせいか効きが悪いとみえます。それこそ翼の色が黒だったりとび色だったりと別な色なら問題はないのでしょうが……。

 

「このちゃん、お願い――――!」

「うん、行くえ?

 フラベル・ミラベル・アラ・アルバ――――契約執行(シス・メア・パルス)しばらくずっとや(イリミタス)!! 木乃香の従者(ミニストラ・コンッゥカ)・ せっちゃん!」

 

「何っ!」

「これは…………」

 

 突如、刹那さんの全身から「魔力が迸る」。…………尋常な量ではないわね、明らかに上位魔獣クラス「すら」寄せ付けないレベルの魔力が供給されている。前後のやりとりからしてあの木乃香さんからの供給なのでしょうけれども、それにしてもこの量は「異常極まりない」レベル。下手をすると雪姫様が一切手加減をしなかった場合の魔力量並に――――。

 

去れ(アベアット)! …………本当は『これ』を使うつもりはなかったのですけれども、流石はエヴァンジェリンさんのお仲間ですね。かつての自分たちをみているようで、少し落ち込んでしまいます……」

 

 言いながら肩を落としつつ、その手には一枚のパクティオーカード…………、丈の短い馬車道服のような姿の「髪の黒い」刹那さんの横顔が描かれたそれを構え。

 

来たれ(アデアット)――――剣の神(デウスグラディ)建御雷(タケミカヅチ)!」

 

 呼び出されたアーティファクト……、二つ目の契約カード? いえ、不思議な光景を目の当たりにしたような感覚なのですが、その妙な形の古い剣のようなアーティファクトに、あふれ出ている魔力を注ぎ込み――――その刃はまるで「翼」の模様のごときオーラを迸らせた、曲刀めいた姿になった。

 

「夏凜先輩、少し時間を稼いでください――――僕も呼びますッ!」

 

 言いながら九郎丸は制服の胸ポケットからカードを取り出そうと……、嗚呼そういえば、そちらは詠唱に時間がややかかるのでしたか。そう考えながら九郎丸の前に立った次の瞬間、ニキティス・ラプスに渡された剣が「真っ二つに」叩き切られました。

 

「――――神鳴流奥義、斬岩剣・伊弉諾(いざなぎ)!」

 

 今の一撃、魔力すら感じなかった? いえ、でもそうであってもこの女性、まさかの膨大な魔力だけで信仰の魔力を「払い」押し切ったとでも言うの…………? 私だって本当に全力ではないとはいえ(地形が変わってしまうので)、これだって雪姫様の中級呪文程度なら押し勝てる防御力や強度を与えられているというのに?

 

 …………許せない。いくら口ぶりからして雪姫様と旧知の仲でも、いくら刀太や帆乃香ちゃん達のお祖母様だといえども。

 

聖絶なる拳(ホーリーブロー)!」

 

 私の一撃も、その変形した剣の「羽根の部分」で受ける刹那さん。と、今までに感じたことのない妙な痛みを覚える。見れば私の手首から先が「無くなっている」……? いえ、引き抜けば瞬間的に元に戻っているのだから問題はないのだけれど、一体何が。

 

「…………このちゃんの現在の魔力量は、『ネギ先生のクローン計画』において実測した異常ともいえる最終値に加え、『今の』ネギ先生からの供給も加算されています。よって私が扱える現在のタケミカヅチの最大性能は、タケミカヅチそのものを『完全物質(大エリクシル)』相当のものに変えてしまう程、だそうです」

「完全、物質?」

「かの神血(サングィスフィリーディ)を受けたとされる武具であれ、今のこれを貫くことは出来ないでしょう――――神聖魔法であれ、押し通すこと敵わず」

「ッ!」

 

 そして斬りかかってくる彼女を、アーマーカード状態の貴公子風な九郎丸が受けた。

 ばさばさと、左側の黒い髪と右側の金色の髪、両方のテールが大きく揺れる――――。

 

「ま、間に合ったッ!」『(今度は刹那さんまで!? ちょ、ちょっと僕、一体何がどうなってるの!!?)』

「『妖刀ひな』――――――――、まさかそれをアーティファクトにする子がいるとはっ! でも月詠のような戦闘狂(バトルジャンキー)の手に渡らないで良かった!」

「えっ!?」『(だ、誰のこと?)』

 

 あら、聞き覚えのある名前なのかしら。刹那さんの言った人物に一瞬驚いたような九郎丸だけれども、そのまま刹那さんのそれを「打ち返し」、逆に攻める姿勢を見せる。…………純粋な技量としては九郎丸の方が劣るけれども、アーティファクトの性能で打ち返しているように見えるわね。九郎丸の全身からも、あの長刀と同様に白いオーラみたいなものが立ち昇っているし。いきなり相手の能力が底上げされたせいか、刹那さんも少しやり辛そうにしている。

 

 ここは…………、私も「アレ」を呼び寄せて、切り札を使うべきかしら。

 

「あ~ん、せっちゃん落ち着いて――――っ、な、何や?」

「これは……?」

「きゃっ!」

「何だ? この『いかにも』な脈動は」

 

 

 

 そして私たちが戦っている向こう側で、あの巨大な少女のシルエットの胸の中央に亀裂のような赤いヒビの線が走って。

 大きな脈動が、一つ、聞こえた。

 

 

 

 

 




アンケート期限:十月末まで予定

【100話記念企画】以下のうちどれが良い感じでしょうか。なお挿入タイミングは未定です

  • 登場人物紹介(ネタ)
  • 主要キャラのステータス情報
  • 女性陣チャン刀好意ランキング5項目
  • いつもの短編アンケート
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