光る風を超えて   作:黒兎可

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今回もグロ注意ですナ・・・前回同様、気は遣ってぼかしてはありますが汗


ST105.死を祓え!:届かない手と手

ST105.Memento Mori:Please Just Gotta Get Right Out Here Takeing Me

 

 

 

 

 

 見える、視える、観える――――。

 今の私は天体を覆う大空のよう、重力に囚われない大きなナニか。

 

 私の身体が「時間的に」拘束されているのはわかるけど、その意識までもが拘束できるかと言えば話は別で。

 

 既に私の意識は、私の「変貌した」身体に囚われない、もっと広く、もっと偏在したものになりつつあった。

 

 ちらりと、そんな私を「観測して」微笑むコノエモンさん。どうやら前に言った通り、あの人は徹底的に見学に徹するつもりらしい。

 

 三太君はどこにと思って探してみると、私の身体「であるはずの」巨大なバケモノ、その胸の亀裂から侵入して、自我が希薄になってしまってるみたい。

 私が今の状況だから、三太君さえ我を取り戻したなら、ひさびさにちゃんとお話しできそうなんだけどね。

 

 でも何と言うか、皆、たくましいよね。

 

「プラク・テ・ビギナル――――、よっと!」

「魔法の射手・炎の一矢!」

「クソッ! 先生たちは一体どこで何を――」

「ミヒール様いけません、それは死亡フラグです先生の! そんなことをうっかり言う事で先生を間接的に殺しています、だからあれほど普段から言動には注意してくださいとミヒ――――」

「アードーリーフッ! お前が一番口元をしっかりしろといつも言っているではないかッ!」

「赤き焔!」

風楯(デフレクシオ)ッス! あーもう、何でこんなことにいぃぃぃ、週末せっかくデートだってのにッ! このへちょむくれ達はッ!」

「マコト、泣き言わないっ! 一般市民を守るのはエリートたる我々の役目ですもの!」

「お姉様はりきってますねぇ、でも私たちクラスじゃ魔力に限界が…………、そういえば近衛姉妹はどちらに?」

「なんか、学校の偉い人に連れていかれたッスよ! 『必要かと思いまして』とか言われて!」

「あの子たちも色々謎が多いですわね……」

 

 裏魔法委員会の子たちが集まっていないのに、一般生徒の魔法使いたちも必死に頑張ってる。橋の上に追い詰められて、逃げてる途中だけど、ギリギリ踏ん張れているのを見ると今の学園の教育体制も、あながち全てが間違いってことじゃないのかな?

 でも、そんなことは関係ない。

 

 いくら絵面が可愛くても、妖魔の群れは数が多ければ多い程、そのうちより巨大な力を持ったものが生まれる、らしい。今の状況、「私」がもしこの結界に囚われて居なかったら、それはもっと加速して酷いことになっていたと思う。

 そして下流や橋の反対側からも、小さい、可愛いのとそうでないのが入り混じった妖魔の群団が、色々な鳴き声を上げて生徒たちを襲おうとして――――。

 

「――――――――」

 

 そこに、三太君が現れた。

 あれ? どうして?

 

 腕を斬られた女子生徒を庇うように、三太君が念力でそれを引きはがして距離を取らせる。そこに魔法を撃ちこむ他の生徒たち。

 

 気が付くと、「私」を拘束していた結界が少しだけ剥がれ、頭部がその圏内から伸びていった――――枝葉のような頭部から「落ちていく」何かは、まるでそれが人の形を模すように、それでいて屍であるというのがよくわかるような風体に「成形されていく」。

 私とデュナミス先生、そして「あの人」と一緒に作った、ゾンビ化魔術ウィルス。そのプロトタイプ、ひな形がそのまま「妖魔化した」存在が、幼体の妖魔たちに感染していく――――。

 

 顔が見える。妖魔たちの存在を喰らい、私の内に「宿っていた」怒りや、悲しみや、憤りや、憎しみや、忘れ去られたそういった人たちの声が、形になっていく。

 

「ひ、ヒィイイイイッ! 何だこれ、突然連中が――――」

「ひるむな! 撃てー!」

 

 でも。

 でも、嗚呼、それはなまじ人の姿をとれないからこそ、何も、どこにも届かない。

 

 届かないからこそ、その霊体を取り込んで、自分たちと一緒にしようとしている――――物理的なウィルスについては私が回収したから、魂魄に影響するウィルスのみ残っているからこその、それは、純粋な本能。

 

 喰らい、奪い、増えろという、シンプルな命令。

 

 噛まれた生徒や、一般人が。気を失い、抜け出た魂魄に妖魔の肉が付く。

 

 肉体だけ残るゾンビを大量生産しているような、そんな光景――――。三太君は驚きながらも、そんなゾンビ妖魔を念力でまとめて、いっぱいの衝撃波で殴りつけて蹴散らしていた。

 

「死んではいない、のか……? いや、どっちにしろ万事オールオッケーってはならねーか。

 相手になるぜ、お前ら! 『同じ負け組』のよしみだ――――」

 

 実際問題、ゾンビ妖魔相手に三太君は無類の強さを誇る。そもそも物理的な攻撃手段しか持たないあの妖魔たちは、念力による遠距離攻撃が可能な三太君相手には手足も出せないんだ。

 だから、少し無茶して、海上の船だったり橋の車だったりをバリケードにするくらいも訳はないのであって。

 

「オイ、誰か! アレに魔法結界でも張っておけ! そうすりゃしばらく時間稼げンだろ!」

「だ、誰だか知らないが恩に着る! 結界アプリ起動――――火ッ!」

「お、お姉様……ッ」

「しっかりなさい、菜緒! シュバルト・ブラント・ニルヴァーナ――――」

 

 それをされたら、人型に再構成された妖魔たちは、それを超えるだけの能力がない。物理的に接触できない、球形のドームなんて、彼らからしたらどうしようもないものだから。

 でも、それも時間の問題。あまり置くと、そのまま「羽が生えたり」するヘンな進化をしちゃうかもしれない。

 

 でも、凄い、凄い! 三太君が、三太君が前に出て、戦ってる。

 あれだけもう自分以外の事には目を向けない、私と同じだっただけの男の子が。

 

 そんなことを抑え込んで、色々と思う所もあるのに、頑張って善戦してる――――。

 

 だけど、悲しいかな。

 

 

 

『アルエル・ファルエル・ベルベット――――』

 

 

 

 私の意志に反して、「今の私」のうちの核たる私の身体は、呪文を唱え始める。

 

影の地を統ぶる者(ローコス・ウンブラエ・レーグナンス・)スカサハより(スカータク・) 我が手に授けん(インマヌム・メアムデット・)三十の棘もつ(ヤクルムダエモニウム・クム・)愛しき槍を(スピーニス・トリーキンタ)――――。

 ――――雷の投擲(ヤクラーティオ・フルゴーリス)

 

 その程度の防御結界ならば今の私の百分の一以下でどうとでも出来る。

 それがわかっているからこそ、今の私を突き上げている「それら」は、私の口から呪文を走らせ――――。

 

 

 

「――――させるか、よッ! この――――!」

 

 

 

 避難してる人たちの入る場所とは「別に現れた」、三太君がその投擲魔法を「発射される前から」、念力の壁を使って散らした。

 

 どういう、こと? 三太君の「自我は一つ」、だから分体なんてそう簡単に造れるわけはないのに。でも、そうでもないと説明がつかないのは――――。

 

 

「……そりゃ、お前を使ってるから、な」

『――――――――さ、三太、君?』

 

 

 

 私の視界の近くにはどこにもいないけれど。それでも、私のすぐ近くで、三太君の声が聞こえた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 つまり総合すると、デュナミスは既に学園にいないということか……?

 例えば悪魔というか「魔族」らしい特性として、悪魔召喚か何かのような儀式でこちらに呼ばれた状態で活動し。何かしら条件が重なった際に、強制的に召還され、元のアジトなどに帰る算段になっていたと。

 私の疑問に肯定も否定もせず、ディーヴァは肩をすくめるばかり。つまりこの情報は、時間稼ぎとはいえ与えると危険な部類に相当すると考えている――――少なからず、デュナミスが突然消えたカラクリは、あちらにとっても知られたくない情報の類と言う事だろう。

 

 それはつまり、現時点において「ネット風邪」ウィルスに対する対策手段が半分以上失われてしまったということであり――――。

 

「と、刀太? どしたのよ、大丈夫?」

「…………ま、まぁ、ままならねぇなって」

「何が?」

 

 気遣ってくるキリヱに苦笑いを向ける他に、私に出来ることはなかった。

 

 ディーヴァはそんなこちらなど特に気にした様子もなく、両手を合わせたままじっとこちらを見続ける。何か変なモーションをされても対応できるようにということなのだろうが、何と言うか本当に隙が無い。一度負けたことを最大限に活かしてるとは本人の弁なのだろうが、それにしたってもう少しくらいは抜けを作って欲しい(無茶)。

 そんな彼女に向けて、釘宮が口を開く。

 

「………………私見、というより直感に近いが、止めておいた方が良いのではないかな。その儀式」

「? 犬上小太郎の孫、どういうことだろうか」

 

 首をかしげるディーヴァに、釘宮は弓をいつでも構えられるよう手に握りながら続ける。

 

「外部から数多の妖魔を使って制御する、というところまではあながち的外れではなかったろう。見た限り『蟲毒』のような形で、事故多発スポットとかにありがちな『怨嗟が怨嗟を呼ぶ』形での成立背景を持っていると見た。それを御するのに、最低ランクの妖魔を使役させるところから始めると言うのは、手法としてはギリギリ間違ってはいない。

 だが――――直接その魂魄に接触するのは、危険極まりないと思う」

「直接……?」

「どういうこと?」

「…………つまり、神様舐めすぎじゃねーかってことか? 釘宮」

 

 私の推測に、首肯する釘宮。それは、なまじ狗()と呼ばれる、神と呼ばれる精霊を直接操っているからこその弁なのだろうか。肩をすくめる彼に、ディーヴァは無表情ながら急かす様に視線を向ける。……興味津々という印象まではいかないが、本当にこう、赤ちゃんとかが絵本を読んで読んでと催促するイメージが思い浮かぶのは私の心が疲れているからだろうか(寂寞)。

 

「この狗神ですら、僕らに流れる血筋があって初めて力を『貸してくれている』。あくまで『貸してくれている』、というのがポイントだ。決して支配したりとか、そういうことが出来る存在じゃないんだ、神って言うのは。昔の人は、だからこそ恐れ奉り、持ちつ持たれつやってきたんじゃないかって思う」

「神というより精霊だと思ったけれど、君が使っているそれは」

「だからこそ、だ。……俺のコイツら以上に、君が今使おうとしているそれは、こっちの意図や意識なんて汲んでくれやしないと、思う。

 ――――その棺をきみが開けたときから、さっきから、ずっと鳥肌が止まらない。一言で言えば、僕は、その棺に『繋がっている何か』が、恐ろしい」

 

 言われてみれば、弓を握る釘宮の掌からは汗がしたたり落ちている。どちらかと言えば上よりも下であるこっちの方がまだ安全だと判断したからこそ来たのだろうが、だからこそ「地下越しに」見てしまった地上のそれの存在感に、獣の本能なのだろうか全力でおびえているのかもしれない。

 情けない、とかそんなことは言わない。人間、誰だって得手不得手があるし、自分にできることをその時々でするものなのだ。

 それにコイツ自身、それが本当に許されない局面であるなら、震えながらでも弓を射るくらいはちゃんとするような、そんな奴な気はしているし。

 

「…………忠告なのか、こちらの判断を迷わそうとしているのか。

 まぁ、どちらにせよ問題はないよ。私はそもそも純正な人間ではないから、そういった類の――――――――あれ?」

 

 いいながら、ふとディーヴァの海天偽壮が「溶ける」。のみならず、アーティファクトも姿を消す。

 

 途端、全身に悪寒が走る――――普段全身に感じている嫌な感覚が、それこそ四方八方逃げ場なく敷き詰められているような、そんな感覚。咄嗟に釘宮の側まで移動し、血装術で結界というか血の半透明ドームのようなものを生成して張る(死天化壮する時たまに展開してるアレ)。

 釘宮たちが何かを言う前に、それは、起こった。

 

「えっ?」

 

 ディーヴァの右腕が「壊死した」。

 伏線も何もなく、唐突に腕が半壊。黒ずんだ皮膚は土くれのように変わり、その場に落下。何が起きたか理解していない顔をしている彼女は、そのまま「続けて壊死した両足」により支えを失い、その場に倒れ込んだ。

 

「えっ、ちょっと…………ッ、待ってください、生贄って言うから普通に死ぬものだと――――ッ!」

 

 壊死した腕が、その肉だったものが形を変える。まるでそう、以前見たあのゾンビのような妖魔とでも言えば良いか、そんな形へと変貌する。

 砕けた身体、その全てが質量保存の法則を無視する勢いで変化していくのを、ディーヴァは首だけになるまま驚愕して見ており――――。

 

「済まない、少し……」

 

 釘宮が顔をそむけるほどに、それは酷い「解体」だった。

 

「や、止めて――――――なんで『感覚が残ってる』のですか……ッ! 嫌、すんなり消えるならいいけど、そんな、『私』が『私』じゃなくなるのを、ずっと、自分で感じ続けるとか、アレより酷い――――――――」

 

 無表情が壊れた。丁寧語になり、視線を宙に漂わせ、口で何かを言うしかなくなっている状態のディーヴァだったが。

 その目が全力で訴えている。助けてくれと。だが、そうもいかない。――――今、この場には「目に見えない」何かが蠢いている。その嫌な感覚がある。いざ血装術を解除でもすれば、私たちとて同じ目に遭うだろう。

 

 同情はする。同情はできる。原作「ネギま!」を知っているからこそ、敵だとは言え微妙な親近感めいたものも無い訳ではない。だからといって、今、キリヱたちを捨て置いてまで、それを可能とするかどうかは、別問題だ。

 だから――――手を差し伸べることが、出来ない。 

 

 そのことに、私は言い訳を一切しない。

 一切、できない。

 

「―――――――――、……」

 

 私の意志を感じ取った訳ではないだろう。表情はただ、状況を睨むようなままのはずだ。だが彼女は、少しだけ微笑んで。そして、ゾンビの妖魔が彼女の頭に「むらがり」――――。

 

 どれくらいの時間そのまま居ただろうか。ばちんと、何かが破裂するような音――――それと同時に、嫌な予感自体は消え去り、鉄の棺桶が横倒しに倒れた。

 血装術のドームを解除し、キリヱを地面に下ろす。釘宮もそれにならって降り、当然のように弓を構える。

 

「…………刀太、アンタ……」

「どうした?」

「…………なんでもないけど、でもさ」

 

 キリヱの言葉を聞きながら、背後に向けて黒棒を振る――――会話することこそ本人が言ってた通りに出来はしないが、それでも、条件反射のように気が付いたら腕が動いていた。

 

 血風創天。

 

 一撃で斬り散らかされる、ディーヴァの破片から再構成されたゾンビ妖魔。と、倒れても起き上がる連中を前に、釘宮も狗神を射た。

 

「犬上流獣奏術・狗音ノ風(くおんストーム)――――」

「…………」

 

 キリヱを背にかばうよう立ち、私は再び腕を振るった。

 やはり構成が魔法に依存しているのだろうか、斬り散らされた妖魔たちは、それ以上復活したり襲い掛かってきたりはしなかった。おおよそ五十体程度のそれらを見ながら、釘宮に何が起こったのか聞くと。彼も胃の辺りを押さえながら、嫌そうに答えた。

 

「…………おそらく、逆流したんだろう。あのダイダラボッチを構成していた怨霊の数々が、制御のための生贄として出されていた遺体からとられた、そこの勾玉を起点に」

「……やっぱよく判らんな」

 

 感傷に浸っている場合ではない。だが、棺桶が倒れて「魔法陣が消えてしまっている」以上、もはやあのダイダラボッチの制御に、ここから魔法的に干渉しているものはないのだろう。知らず、握った拳が震える。

 別に顔見知りだったとか、そういう理由はないが。理由はないのだが、それでも一度顔を合わせたら、デュナミスを殴らないといけないと。なんとなく、そう思い上を見上げ――――。

 

 

 

「――――そう悲しい顔をしていると、身近な女の子たちも寂しい思いをしますよ? 近衛刀太」

「くっ……、ここは……?」

「ど、どうも~、……って、お兄さま、どうしたん!?」

 

 

 

 もはや何度目か、何ら脈絡なく「シルクハットにタキシード」姿をした「ネギま!」でおなじみザジ・レイニーデイが、制服姿の帆乃香と勇魚をどこからともなく「取り出して」現れた。

 

 ……いや、だからこれっぽいイベントって原作的にあと6巻は先……、もういいかな(自棄)。

 

 

 

 

 




※退場じゃないですby6
 
アンケート期限:十月末まで予定

【100話記念企画】以下のうちどれが良い感じでしょうか。なお挿入タイミングは未定です

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