ST108.Memento Mori:The Devil calls the Devil Devil
端的に言って描写が面倒くさい。
水無瀬小夜子な多頭の蛇(空を飛ぶ悪魔っぽいやつ)の登場により、このダイダラボッチの魂内部での捜索は、ちょっとしたアトラクションになっていた(現実逃避)。なにせ霧なのか靄なのかが晴れてからというもの、このおおよそ横幅2メートルの無限に続いているような足場の下から伝わる「嫌な感覚」に、第六感が常に警鐘を鳴らしている。そんなものがなかろうと、落ちたらジ・エンドであるのは明白なくらいにはおどろおどろしい眼下の光景ではあるが、真面目な話どうしろと言うのだこんなもの。
『『『『『アルエル・ファルエル・ベルベット――――』』』』』
「五つ同時に呪文を詠唱するなこの中途半端再生原始生命体がッ!」
思わず絶叫しながら悪態をつく程度には、追ってきている蛇も酷いの何の。あんな見た目でも一応は水無瀬小夜子の分身体として成立しているのか、頭それぞれ一つ一つが呪文を詠唱して放ってくる。しかもどう考えてもオーバーキルというか、古代ギリシャ語使用による古代呪文、上級呪文の類である。彼女個人の魔法使いとしての実力はさっぱりわからないが、ディーヴァともども明らかにこんな序盤で戦って良い敵ではない。
さらにこれの何が面倒くさいかと言えば。
「血風、創天――――!」
放たれた雷と炎の、なんというかこう物凄い量のエネルギーの奔流(描写放棄)をギリギリかわし、黒棒をふってその蛇を切り裂くが。胴体を真っ二つ、首が左右それぞれ2つ、3つずつに分かれて下方の「怨霊の坩堝」に堕ちていくそれを見送る暇もなく、入れ替わるように下から「全く同じ」多頭類な蛇の水無瀬小夜子が飛翔してくる始末。
こう何というか、ゲームとかだと絶対にダメージを与えられないタイプの敵というか。倒しても倒しても無限に涌いてくるタイプの敵と戦っているような、そんな嫌な感覚である。
「せめて釘宮が起きてくれりゃ問題ないのだが……、いや、まさか普通に気絶するとか思っていなかったのだがッ!」
もともとあまりストレスに強いタイプの性格でなさそうなのは、なんとなく察しはしていたが。どうやら精神体だけで乗り込んだ状態で、「狗族の嗅覚」、人間の三千倍以上の精度のそれで暴力的なまでの血の匂いを感知し、それで一発ノックアウトされてしまったらしい。一応そのうち復活してくれることを期待して仮契約カードも一緒に回収して、現在は背中で白目を剥いている。
「いっそのこと
巨大な氷の塊と溶岩の雨あられをかわしつつ(我ながら良く避けられるものだ)呼びかけてみるが、声は返ってこない……? おや、どういう理屈だろうか。精神だけこちらに飛ばしている、と言う意味では、黒棒が存在するのだからてっきり一緒に来ているものだと思っていたが。
「星月が居ないで、黒棒が存在している理由…………。
ザジはおそらく、黒棒自体とは面識? そのものはあったのだろう。タカミチがかつて使用していたらしいことを踏まえれば、目撃していておかしくはない。
とすると、仮契約カードは別にして黒棒はたぶん帆乃香が使用した術の『効果対象』の
おや? それはつまり、星月は「指定されないと」一緒に移動できる相手じゃない、と言う意味に繋がる。すなわち星月は星月で、自称通りではなくれっきとして「独立した」一つの魂魄であるということなのだろうか。
「なんとなくそれが正解っていうか、確信を持てる情報の類なんだろうけど…………、とはいえ正体がさっぱり見えねぇな、っと!」
五つの小夜子の頭、というか口それぞれから異なる属性の光線めいたものが放たれる(!)。お前それ怪獣映画じゃないんだから…………、いくら分身体とはいえ三太泣くぞ、もう少し色々考えろ演出面的なところ。
とりあえず後方に「大血風」を形成、回転させ盾のようにその光線めいたものを弾く。一応、精神体とは言え「血装術」が適用できてるっていうことは、おそらく「聖」属性だって使える訳なのだが…………。
釘宮がこの調子なので、いくらその一撃でアレをどうにかできるような気がしていても、試す訳にはいかないのだが。
大血風の直撃が当たって墜落していく五つの頭の蛇小夜子(呼び方募集中(嘘))。やはりと言うべきか、いい加減にしろと言うべきか、今度は八つの頭が生えた蛇小夜子が下方から入れ替わりでエントリーしてくるこの状況。つまり一回は負けろということか――――?
『――――ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト』
「は?」
そして唐突に聞こえたディーヴァの声とともに、私の胴体は腰から真っ二つに切り裂かれた。
※ ※ ※
刀太たちが意識を飛ばしてから、まだ五分くらいしか経ってない。けど私の体感としては、きっと今までの「5万回」の周回を超えた中で考えても、一番長く感じられる5分だと思う。それくらい、眉間に皺を寄せて眠っているような刀太の無事を祈るのは、色々精神的にキツいものがあった。
まあ落ち着かないって意味じゃ、私たち全員の周囲でなんだかモゾモゾ蠢いてる、適当なデッサンでできたような顔した黒い大量な変なのとかもそーなんだけど。何となくその全部の目に見つめられてそうな感じがして、なおのこと落ち着かない。いやホント何なのよコイツら。空気読んで黙ってたけど。
気を紛らわせるため、私の横で両手を合わせて祈るように刀太たちを見つめてる彼女に、話を振った。
「…………えっと、ザジさんだったっけ? 私、何か出来ることない? こうやってずっと待ってるって、なんていうか、落ち着かないっていうか」
「そうやって祈っているのが一番ですよ、桜雨キリヱ」
「う~、そ、そりゃ全然バトれないタイプだからわからないでもないんだけど……」
アーマーカードでカメラと一緒に召喚される謎スーツ。アレで多少戦えるようになるかって思ったけど、取説を見たら基本的な身体性能の底上げ的な効果だったりした。つまり、割と運動苦手なタイプな私が装着しても、結果が目に見えている……っていうか、なんでカメラはともかくスーツだけそんな微妙なアレなのかと、自称タイムパトロールを問いただしたい。
魔法陣の外、ザジ・レイニーデイさんと私は、横に並んで目を閉じる四人を見る。……妹二人と仲良くお手々繋いでる刀太については色々となんていうか後で言ってやりたいこともあるんだけど、真っ白に燃え尽きた感じのイヌメガネが変に印象的に見える。
「気になりますか? 何が起こっているか」
「…………そ、そりゃ、まあ」
「フフフフ、直接力になれないのが歯がゆいのはわかります。恋する乙女は大変ですね」
「こ、恋とかそんなんじゃないわよ! コレは、えっと、アレよアレ! 色々とソイツには借りがあんの。だから………………、ケジメみたいなものよ、ケジメみたいなもの」
「ほうほうほう」
「その笑ってない感じの笑いで適当に相槌返すの止めてッ!」
なんだか一人相撲させられてるみたいで惨めになってくるから止めて欲しかったけど、特にその願いを聞き届けることもなく彼女はハハハハハハハと笑い続けた。こう、何だろう。話聞かない時の夏凜ちゃんとも少し違ってやり難い……。
ただ、ちょっとだけ聞き捨てならないことを続けて言われた。
「まあ、そんなもの気にしてると横から掻っ攫われてしまいますので、特に容赦せず色仕掛けした方が簡単に堕ちそうですけどね、彼の場合は」
「え゛っ?」
……言われてみると、その、心当たりしかなかった。明らかに刀太と夏凜ちゃんの距離感が近いし、なんなら写真で確認したけど秘密の話とかもしてるっぽかったし。というかめっちゃベタベタしてるし、夏凜ちゃん何? ホントどーしたのあの娘!? 勇魚ちゃんがどーこーってレベルじゃ無いでしょ夏凜ちゃんちょっと! 九郎丸、真に警戒する相手間違えてない!!?
なんだか気がついたら動悸が止まらない。えっ? 何、どーしちゃったの私? こんなに脈が落ち着かないのって、百周回前後で色々と試しすぎて、億万長者になったけど気がついたら世界滅んでてやり直し始まって今までの苦労が水の泡になった時くらいじゃないのッ!!? いやアイツのこと確かに好きって言えば好きだけど、こんな動揺するよーな話だった!?
「大丈夫、大丈夫、いざとなれば雪姫さん私物の年齢詐称薬をもらうかまほネットで裏火星から注文すれば、あっという間に大きな自分へ――――」
「そ、そうね、もうちょっと身体年齢上がれば胸とかだって……って、何の話よッ! 貴女、ぜったい私をからかって遊んでるでしょ!!」
「フフフフフ、やっぱり良いものですね。エヴァンジェリンさん、雪姫さんから聞いた通り。反応がお年の割に純で」
「年のわりにとか余計よ! よーけーいー!
……って、聞いた通りって何よ聞いた通りって。別に私、ホルダーの中でもあんまり皆と最近まで積極的に接触とかはしなかったわよ? 特に雪姫とは。夏凜ちゃんとは意外と長くなったけど」
周回前はそうでもなかったけど、ここ最近五十回前後くらいは、割とホルダーに早期加入してるから、ナンバーはともかく実は結構古株なのだ。えへん。……まぁレベル2の影響のせいで最初から十三歳くらいスタートだから早々に自活しないといけなくなって、戸籍偽造した結果アラサーとかに法的にはなっちゃうんだけど、そこはご愛嬌よご愛嬌。
そんな私相手にどんな感情なんだか、今回ばかりは本当に満面の笑みで頭をいい子いい子と撫でて来るのは何なのかしらこのヒト……。
「いえ、言い方は悪いですが不死者歴五十年すら超えていない方は、私基準ではまだまだひよっこというか、ヨチヨチ歩きし始めたくらいですので」
「……そういう貴女って何なのよ? ザジさん。雪姫の下で戦ってたとか聞いたけど、貴女も不死者ってことなの?」
「不死身、に近いくらい膨大な寿命を持っている種族だと思っておいてください。そもそも私は――――、あら?」
――――出血。
話している最中、そう、本当に唐突に、刀太のお腹に切り傷ができて、血飛沫が上がった。
「……えっ? えっ、ちょっと待って、何いきなり!?」
「これは……、宜しくありませんね。おかしいです。本来なら重ねがけした『幻灯のサーカス』によって、目的地までは強い『逆幻覚』を投影することで、向こう側からの侵食は対応できるはずなのに……」
「ちょっと何言ってるか分からないからもっとわかりやすく言いなさいよッ!」
私のごく当たり前な感想に、ザジさんは少しだけ思案してから。
「動物園のライオン檻を見ながら間近に通過するツアーで、ライオンさんが檻を壊して襲いかかってきている状態です」
「……? ってそれ全然ダメなやつじゃないっ!」
相当ダメなやつだった。ダメダメなやつだった。っていうか、アレ? 血飛沫を上げた刀太だけど、いつもなら血もなんか上手いくらいに蒸発して消えてそうなものなのに、どうしてか今はずっと血が出続けてる。……その血にちょっと眠りながら嫌そうな帆乃香ちゃんと、眠りながら少し口元が嬉しそうな勇魚ちゃん。ゴメン九郎丸、警戒する相手として勇魚ちゃん正しそうだわ。なんか、こう、色々と拙い気がする。
ってそんな話じゃなくって。
「陣が中途半端にしか機能していないと考えると、ここで待っていてもあまり意味がありませんね。一応「物理的に」逆流しないようにだけお願い」
『『『――――――――』』』
なんだか蠢いてる連中が、ザジさんの声に応じて手を上げたようなそうでも無いような……。こう、壁に映る影とシルエットが半分くらい同化してるから、見た感じだけじゃあんまりわからない。
そのままザジさんに促されるまま、恐る恐る「光ってる」魔法陣の内側へ。
「ホントに血、止まらないじゃない……? 嘘でしょ、だってコイツ一応不死身の吸血鬼でしょ? 雪姫とかと同じやつ」
どくどくとお腹から、切り傷から血がこぼれ続け――――見ていると、次々に傷が増えて、血が飛び散る。
刀太の血を直接あびるのなんていつぶりかしら……って言っても、最初のあの時と「再現した」百八周目のときくらいね。基本、コイツがめちゃくちゃにならないよう遠ざけながら手を尽くしてきてたわけだし。
ただ、目の前の刀太の状態は明らかに普段の刀太じゃなくって――――。
「おそらく、魂魄に対してウィルス的に侵食をしているのでしょう。傷が治らないのも、不死者ではなくゾンビへと変えようとしていると考えるとスッキリするというか、辻褄が合いそうな気がしません?」
「合ってたまるかって話よッ! っていうかどっちにしても真面目に拙いじゃないコレ、どうしようもないくせにどうにかしないと、絶対コイツこのまま『本当に』死んじゃうでしょ? いや、どうしろっての? 死なせでもしたら本当『コイツに』あわせる顔がないし、九郎丸たちにも説明できないじゃない! ちょっと、頑張りなさいよッ!」
そんなことを言いながら一瞬思い切り揺さぶっちゃっって、出血量が一瞬一気に膨れ上がったのを見て、謝りながら叩く力を弱めた。
いや、本当何なのよコレ……、今回の周回に入ってから、っていうよりコイツに色々話して直接協力取り付けてから、ずっとこんなのばっかりじゃない。変なイベントは生えて来るわ、前のどの周回でも遭遇することのなかった人と出会ったり、知らない敵が出てきたり、かと思えば一番ネックだったゾンビ事件はなんか内容が大幅に変わってるし……!
「――――ほう? 魂魄状態でダメージを受け続けるということは、この半端はまだ自分が『魔人』であると受け入れられていないということだな? やれやれ世話がかかる……、どうして僕がこんなに気にかけてやらねばならないんだ全く……」
「に゛ゃんッ!?」
「おおぉッ!!?」
考え事をしてるときに、突然予想外のことが起こって思わず汚い唸り声が出た。だっていきなり背後から聞き覚えのない人の声が聞こえてくるんだもん、そりゃ汚い声の一つ二つ出るわ。うん、乙女的にはアレだけど仕方ない。私、悪くないもん。
相手も相手で、なんか私の声にびっくりしたのか、ちょっと変なポーズで飛び退いてる。……っていうか、私が振り返った勢いではねた血を躱しただけかも。っていうかこう、何? 格好が完全にこのちゅーに以上にちゅーにな感じなんですけど。ただ顔がちゅーによりも普通に整ってるから、あんまりコスプレして遊んでいる感は高くない感じだった。
っていうか、誰コイツ。
お互い変に距離を空けて微妙に警戒し合っていると、ザジさんが「直に対面するのは久しぶりですね」とか言って頭を下げた。
「ん? 嗚呼、『循環』のところの姫の片割れか。……相変わらず服装のセンスが変だなぁ、もっとブリリアントな装いを準備するものだぞ? 名実ともに我らが存在の尊さを凡人にも理解させるためにも――――」
「貴方もご健勝そうで何よりです、『観測』の方。…………あと、服装についてはご容赦を。『ネギ先生』との
「この半端者の祖父か……」
「えっと……、誰なのこの人、ザジさん」
と、私の疑問にスッと顔を見合わせる二人。
「……そうか、一応テレビ画面越しだったが面識はあるはずなんだがなぁ、桜雨キリヱ……。ニキティス・ラプスだ」
「ニキティス……? えっと……、あっ!
あーあーあー、思い出した、刀太と九郎丸に早々からみに行って、夏凜ちゃんにアッパーカット食らってたわね」
「あの面倒臭い女の話はするな、なんか何処からかヌッと生えてきそうな気がする……」
いないよな? って言いながら周囲を警戒してる姿がちょっとアレだけど、いや、確かにホルダー加入時のナンバーをどうするかって話で、意図的に九番にしてほしいと雪姫に直談判しに行った時とかに見かけた見かけた、テレビ電話しながら恋愛小説について雪姫に質問してたわ。雪姫、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してたの覚えてる。
それで今回はどう言ったご用件で、とザジさんが作り笑いのままに聞くと。ニキティスは、鼻でフンって笑って、私と刀太を見比べた。
「いや何、そこの『時間犯罪者』が何か変な勘違いをしたままでいるのを見ているのもいい加減笑えなくなってきたからな。間抜けすぎていい加減、自覚をさせてやろうと思ったまでだ」
「時間……、って、間抜けって何よ間抜けって! 人が色々必死でやってることを。…………いえ、あれ? 勘違い?」
「……………………」
ザジさんは、腕を組んで得意げそうなニキティスをじっと作り笑いで見つめて。
「つまり、ぶっちゃけ近衛刀太たちを助ける口実が欲しいけど上手い言い訳が思いつかないから、適当なことを言って出てきた訳ですね。クラスメイト相手に素直に仲良く遊びたいと言えなかったエヴァンジェリンさんを思い出します」
「黙れ小娘ッ! お前は本当、相変わらずだな本当お前はッ!」
まだしも姉の方がまだ落ち着きがあるわ、って、なんだか怒りながら子供っぽく地団駄を踏んだ。って、衝撃で血がもっと噴き出すからやめなさいよッ!
アンケートありがとうございました!
多数票を得た感じでしたので、今回は以下になります…例によってこれ用の番外編チックになるので、タイミングなど全体の具合を見る関係上そこだけご了承をば汗
・女性陣チャン刀好意ランキング5項目
【100話記念企画】以下のうちどれが良い感じでしょうか。なお挿入タイミングは未定です
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登場人物紹介(ネタ)
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主要キャラのステータス情報
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女性陣チャン刀好意ランキング5項目
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いつもの短編アンケート