※ギリギリ一日二話更新となったので、前話未見の方はそちらをお読みになってからがオススメです
ST109.Memento Mori:I Give You Back Your Spirit
「そもそもだな、サクラメ・キリヱ。お前、自分の能力が少し異常極まりないことに気付いているか?」
「異常って何よ……って、さっきからそうだけどアンタ、私の
「知らないのか? この麻帆良の地において、図書館島の司書が知らないことは意外と少ない――――少なからずお前が、この麻帆良史における歴代最強レベルの天才頭脳の一人であるチャオ・リンシェンと面識がある事くらいはな! なので全裸マントで学園内を彷徨っているところを一時保護し、いくらか問い詰めた」
「思いっきり人づての情報じゃないッ!? 何得意げになってんのヨ!
……っていうかどうしたのよ裸マントって。やっぱり痴女にでも宗旨替えしたのかしら、あの人」(???「まぁ同情くらいはしといてやるよ」「…………」)
「ふふん、フン! あの女の趣味はともかく、知れた結果が同じならば問題はないのさ。だからこそ、改めて問おう。お前の能力……、『リセット&リスタート』とか言ったか。そこまではまだ、特異とは言えあり得ないレベルではない。過去と未来『同時に』干渉するタイプの能力と言う意味ではレアだが、改変するのにも色々と制限が多いはずだ。むしろ、そういった制限を多く課した上ですら、一度『起こった』事実に干渉し直し、同一世界上で歴史を塗り替えることが出来るなど、それこそ『背教』ですら一朝一夕では出来なかったことだ。そこは素直に称賛してやろう。
――――すんごい能力だ!」
「褒め方、何なの? ちょっと純朴過ぎない……。っていうより、本当に知ってるのね。っていうかゲロったわねあのタイムパトロールもどき…………」
「まぁ、同時に『背教』の奴が蛇蝎のごとく嫌うタイプの能力でもあるだろうがな。だが、だからと言って無理に取り上げるようなものでもあるまい。力を手に入れた経緯に努力はないだろうが、今の貴様はそれなりに苦労を背負ってきたのだろうからな。
だからこそ、解せない。――――分岐した歴史を『保存』しておく能力など、ヒトに許された能力と言う範囲を超えている。明らかに神の領域を侵す力の一端だ」
「神の……?」
「いわゆる神というものではない。あくまでレトリックの話だ。つまり、仮に『本当の意味で』世界の創造者がいたのだとするのならば、という奴だ。
なんにせよサクラメ・キリヱ。お前のそれは異常すぎる。人間のスペックオーバーだ」
「そ、そんなこと言ったって、出来るようになっちゃったものは仕方ないじゃない……」
「そこだ」
「な、何ヨ?」
「出来るようになった、と言ったな? ならばそれは、一体何が原因で出来るようになったと言うのだ? 思い出せ、サクラメ・キリヱ。それこそがお前が思い違いをしているところで、お前自身が『わかっている』にも関わらず『目をそらしている』ことだ」
「……………………こ、このちゅーにが、どう関わっているってのよ?」
「ならばもっとわかりやすく聞いてやろう。サクラメ・キリヱ――――」
――――貴様は、貴様が『最初に出会った』コノエ・トータから、一体何を『託された』?
※ ※ ※
まだここに入ってからそう時間は経っていないはずだが、やはり地獄か何かの類なのでは? という疑惑を抱く程度には、ダイダラボッチの霊体内部は酷い有様であった。というか、そもそも明らかに私のパーソナルを読み取りでもしたのか、敵も少し手を変えて来たのだ。
『――――ヴぃしゅ・タル・リシゅたル・ヴぁんげゲゲゲゲゲゲゲゲゲ――――』
『――――ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィ――――』
『――――ヴィシュ・タル・リシゅたルルルルルルルルルルルルル――――』
頭を傾げながら、傾げた角度が思いっきり「三百六十度回転して」戻って、首がよじれたままの「ディーヴァ」。彼女はうつろな目のまま、壊れたように呪文を詠唱する。
それも、複数体。
「自分が自分じゃなくなるのを間近で見せられるって言ってたか……、なるほど」
少なくとも私に相対している「ディーヴァのような顔かたちの」天使のような何か。背中に翼を四枚持ち、尾の様なものを襦袢から垂らす。目は虚ろで呪文以外は絶叫のみ、見た目だけで言えば出来の悪いホラー映画の類のそれだ。
いや、ひょっとしたら今回の状況からして
「血風、創――――っと、危なッ!」
おまけにだが、当然のようにディーヴァの水魔法による防御も使用してくるので、血風を始めとした血装術も散らされる始末。その上で時折高速移動する個体が私の身体を切り裂いていくという仕様は、いくらなんでもインチキ編成もいい加減にしろッ! という世界だ。
既に、釘宮を背負っていた時に斬り散らされた腹部やら、釘宮を血装で作ったバリア(オーラ?)で防御させるようにして近場に放置した瞬間に斬られた腕やら。それらが何故か「再生しない」と来ており、ますますもってどうしようもない。現在でも辛うじて死天化壮を維持はできているが、これの内部は既に乖離した肉体同士を血装術を用いて「内部の血管同士で」接続している状態に等しい。つまりはハリボテだ。
今だって血風創天を放とうとして、勢い余って「腕ごと」血を射出してしまいそうにポロッと取れかけたくらいである。無理やり意識的に強制して元の座標に戻すが、中途半端に射出された程度の血風でどうにか出来る訳はない。簡単に散らされるわ、向こうの接近を許すわでもう散々だった。ディーヴァ本人の自意識はほぼ無いだろうに、こういう無茶をこなせる程度には本人の身体スペックをしっかり引き出しているとも言える。
「九郎丸の時はそこまで引き出せてなかったが、いわば『お人形さん』だから相性が良いとかそんなものか? ……って、いや多分神刀か」(???「どうしてこうどーでも良いところだけ察しが良いのかこの男は「!?」……って、アンタはちょっと落ち着きなッ」)
考えてみれば、アーマーカードを使用できるようになったことで、この時点で多少は神刀の力を引き出せるようになっていると見るべきか。まぁ原作初期にありがちな若干の設定ブレだと言われてしまえばそれまでだが(メタ)、逆説的に「私がいる」このUQ世界においては、そのあたりの矛盾が解消されてしまっているから乗っ取り切れないとか、そんなところなのだろう。
…………そういえば、完全に女の子の身体になっていたことについて現在は追及ストップとしているのだが、そのうち問い詰めないと駄目かな……、駄目だよな……(逃走希望)。
『――――ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィッ』
「よっとッ! いやしかし、これ本人マジトラウマものだろ……」
右腕……というより右腕を接合している血液「だけ」の腕力(?)では到底、高速接近してきたディーヴァもどきの袈裟斬りに耐えられる道理はないので、黒棒の重量を多少軽くして体に乗っける形で「死天化壮」の座標操作の応用をもって受け止める。
相対するディーヴァの目は上下に分かれぐるんぐるんと明らかに「脳の指示で」動いていると思えない動作をしている。心霊現象の類と考えれば完全にホラー映画あるあるのそれなのだが、そこからしっかりと両目より涙があふれているのが、わずかに残っているだろう彼女の正気の部分な気がして、色々と憂鬱だ。自分自身がいかに怪物めいた扱いを受けているか、体感で察してしまうなどと言う体験は正直同情に値する。心も体も、痛いのは嫌だもんなぁ……(遠い目)。
「…………お前さんを助ける義理はなかったし、状況的にそれが許されるほど余裕もなにもなかった。だから、アンタが今どれくらい痛いと感じてるかとか、それについてどうこう言う権利は私には……、いや、俺にゃねーだろ。だから精々、早い所ここから解放してやる――――」
『りりりりりりりりリシュ・タル――――』
そうは言いこそしたものの、いかんせん事実上「達磨状態」なのはどうしようもないのだが。繋がっていないものを繋がっているような状態で固定しているとはいえど、あくまで辛うじて。原作にて「不死殺し」に斬られた九郎丸を修復する際にも使用していたが、本来なら再生を待つかそのまま安静にするのが正しい運用である。まかり間違ってもこんなプラプラしそうな状態のままガンガンビシバシと動くということの無理さは、瞬間接着剤必須のプラモデルをちびっ子が適当に組んでパーツがバラバラになりどこかに行ってしまい回収できず泣く泣く遊ばなくなるようなのと同じレベルで確定的に明らか。
「って、だから首やめろ首ッ!」
二体のディーヴァもどきが、
しかしそれでもなお首狙いを止めない。普段より右側に変にそれて瞬動もどきをしている私に、当たり前のように追従してくる連中。いよいよそこが切断されてしまうと、私としては打つ手が本当になくなってしまうので止めてクレメンス――――――――――。
そんな私の嘆願を無視するように、背後から新たに現れたディーヴァもどきの
「――――ッ、こ、いつ……」
血風や血装術の際、時折胸部に触れたり構えをとったりしているせいもあるだろうが。ディーヴァもどきは、その貫通した箇所を「凍らせる」ことで血装を外部へ放出するのを防ぎ始めた。コイツら明らかに学習している―――――。多頭蛇小夜子で対応しきれないと見たのか、それとも情報収集のためのそれに使わせていたのか。
個体ごとはともかく、全体としてみると明らかに知性を感じる。その知性が全力で私を取り込もうとしているというのは、もはや完全に悪夢の類だった。やっぱり神様なんていなかったね(血反吐)。救いはないんですかァ!?(???「人間って言うのは自分で自分を救う生き物らしいからね。自分自身が救いにでもならなきゃ無理だろアンタ」)
そのまま胸部の傷から前後に血風を無理やり放とうと集中するが、そもそも傷口の箇所にディーヴァもどきの魔力が滞留しているせいで下手すると「血流そのものが」怪しくなってくる――――。いくら本来は不死身とはいえ、ここまでされると全身が冷たくなって来て明確に「死」を感じる。痛いのは嫌なのだがとか言っている暇すらない、痛いの本当に駄目だからァ! と幼児化するレベルで事態が切迫していた。
「あ――――」
そして、あっさりと首を切り落とされる――――不思議とその状態ですら死んでいないので、まだ辛うじて「金星の黒」は機能しているのかもしれないが、なんら救いになっていない。と、落ちた私の首を前に、何を思ったかディーヴァもどき共は「バラバラになった」私の身体を適当に地面の下へ放り投げる――――黒棒や釘宮は見向きもしない。そして私の髪をつかみ取り、持ち上げ、目を合わせる様に顔を覗き込み…………いやだから両方のお目目が乱回転してるせいで全然合わないんだって一体どの文脈の振る舞いなのか。ラブコメなのかバトルなのかホラーなのかスリラーなのか(謎)。
『――――――――?』
意思疎通は出来ないくせに、何を言いたいかはなんとなく判ってしまうのはボディーランゲージが私も極まってきたのだろうか(錯覚)。どうやら全身バラバラにしたというのに、いまだに私の意識が残っていることに違和感を感じているようである。
これについては理由がいくつか仮説が考えられる。まずは確実に「金星の黒」による再生が魔法的であるせいだ。物理的に再生していなくても「魔法的には」延々再生しようとし続けているため、結果としてこんな状態でも「生と死の中間」くらいの状態に落ち着いている。
そしてもう一つは――――――――ここまで一緒に来ていないだろうに、ちゃんと血風とかは使えるままで、つまり「ある程度はつながったまま」の星月。
私とは別の、独立した魂魄、魂、人格であると「本当に」仮定できるのならば。彼ないし彼女は…………、彼ないし彼女は(性別について触れない)、色々協力してくれているのと同時に私自身に何か要らぬことを仕込んでいる可能性だってある。原作ニキティスだって、刀太が気に入ったせいで「僕の気に入らない計画のためにこの男を使わせてなるものか!」と独占欲でも発揮したかのごとき理由から、体内に世界樹の種を埋め込んでいつでも起動できるようにしていたりするし(切除困難な封印であり夏凜もそれで数世紀は封じられていた)。
そんな私が、彼女の目から見てどう映るか――――否? というよりも彼女を通して見ているだろう「怨霊たちの集合無意識」的なそれにどう映っているか。
しかし以前のディーヴァとは違い、私に猿轡を噛ませようとしてこない。つまり口で血風を放ったりする可能性について検討していないということなので、ディーヴァの能力自体は十全に扱えても、彼女の人格までは扱い切れていないと見える。
やはり、やるしかないのか…………? 正直すぐ再生するとはいえ、自分の口の中を強く噛み千切り出血させるというのは、中々拷問的な作業なのだが。
「それでも、やるしかない――――――――っ」
一瞬、私の脳裏に。「首だけ」になった私に、血に濡れた唇でキスをするキリヱの映像――――視界の隅でじ~~~~っと野次馬のごとくザジがガン見していたりしたが、何だ、これは?
「――――――――まあ、今見えた通りだ『私』よ」
「ッ!?」
そう言いながら「私の口から」、猛烈な勢いで血風が噴出された。私を掴んでいたディーヴァをめためたに切り裂きながら、その血風は乱回転し一度、足場の下に落ちてから急速で返ってくる。わずかに見えたそれは、私の身体(魂の身体?)がバラバラになったのが血風そのものに埋まっており。
それが転がる私の手前にドサドサと落ちて「急速で」再生を始めた。
「…………
転がっていた私の頭も含めて繋がり、完璧に元通り……とはいかないまでも、傷自体は残ったがある程度のバランスで身体が再度「組み上がった」。
そんな私の横で、その血風は「ドーム状」に膨れ上がり、変形し、しかし回転自体は残ったままで――――。
それを斬り払うように、中から現れた。
身長は今の私より少し低いくらい。全身に纏うべき死天化壮は下半身のみ、上半身はボロボロの和装のままで、右目には「どこかで見覚えのある」眼帯をしており――――。
「星月……? いや、違う、お前は――――」
「――――嗚呼そうだ。私よ。……って、このしゃべり方してると絶対後々ガバの温床になるから、『普段通り』に戻すな。
ヨッ! 最新最速の俺」
右手に持つ「紅い」ハマノツルギのようなそれ――――血装術で生成された剣を構えるのは。その姿の相手は。一度だけキリヱから聞いた情報から察するに、おそらく「最初の周回」、キリヱに
…………とりあえず一発殴らせろ貴様、OSR