光る風を超えて   作:黒兎可

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深夜には勝てなかったよ…(白目)
毎度ご好評あざますナ!


ST112.死を祓え!:愛について

ST112.Memento Mori:Where Is The Love

 

 

 

 

 

 誰も居ない学園都市。明かりだけは残っているような、祭りの終わりのような、そんな小夜子の中のイメージで。オレ達ふたりは、特に変わったことをするでもなく、ずっとくっちゃべってた。

 他愛ないしゃべりって言うには、オレも小夜子も全然話慣れてなくって。話題も微妙に長続きしねーし、後小夜子が結構毒づいたり言葉が強かったりして引いたり、それに慌てて自分で自分にフォローになってんだかなってないんだかなこと言ったりして。

 

 でも、まあ、楽しかった。

 

 人は居なくても店の屋台とかは残ってるから、二人してたこ焼き焼いたり綿あめ造ったり作り置きの焼きそば食ったり、水鉄砲を意味もなく打ち合ったり、そこらへんに捨ててあった線香花火したり、勝手にひとりでに燃え上がったキャンプファイヤーをじっと隣同士で眺めたり。

 まるでこれが現実にもあるような感じで、それでも人が居ねーのはちょっと寂しくて。

 でも、それでも小夜子と二人で色々やるっていうのは、思いの他楽しかった。思えばこうやって、二人で出かけたりってことは全然なかったなと思う。二人ともインドアだし、根暗だったから、大体顔を合わせたらずっと一緒にいて、愚痴言ったり、特に何もせず昼寝したり、小夜子が根城にしてたトイレの掃除したり、そんなくらいだった。

 

 だから、たとえ「幻」のようなのであっても、コレは凄い良いことなんだって思う。

 

 ――――たとえ外で、分身体の俺が小夜子からまき散らされるゾンビウィルスと対決しているのだとしても。

 

「…………ゴメンね? 三太君。私、恋愛経験クソ雑魚ナメクジで……、あんまりおもしろくないでしょ」

「い、いや、そんなこと言ったらオレだってそんなモンだし」

「…………あ、か、かき氷あーんしよっか」

「いきなりハードル高すぎねェ!?」

「い、いーでしょ別に、ここって私たち以外誰もいないんだし。…………二人ぼっちっていうと、どくさいスイ〇チ押した後みたいな感じでちょっとヘンな気分だけど」

「なんでその例え出したんだお前……、っていうか、それって独裁者をこらしめる道具じゃなかったっけ?」

「だけど、あれってド〇ちゃんだけ最後の最後まで残ってたじゃない? それにほぼ一日誰もいなくなった翌日にすぐ復活したとしても、それまで継続していたインフラ関係とかはすごい打撃を受けると思うの。だからアレって、どっちかというと押した人間の認識に働きかけるタイプの道具なんじゃないかなーって思って」

「だからなんでその話すごい広げてくんだって。俺、そんな詳しくねーって。一応、俺ってギリギリ2070年代っ子だけど、ギリギリってくらいだぜ?」

「あー、そっか。再リバイバルしたのって2060年代後半くらいだったものねー。でも〇ラちゃんあんまり見てないって、結構人生損してると思うの。ド〇パンのド〇えもんズとか、はちゃめちゃで凄いオススメだし」

「だから知らねーって」

「えっ? 嘘でしょ、謎の挑戦状の映画知らないの? 短編単独としてはドラえも〇ズのメンバーだけ押さえておけばスッキリ楽しめるすこし不思議映画なのに」

「圧が強えー! っていうか顔近ェからー!」

「……キス、しよっか」

「唐突すぎるだろ!」

「ヘタレ」

「ひぐゥッ!」

 

 後、時々こうして年代間? のギャップとか、テンションの違いとかを感じたり。

 ひょっとすると単にはっちゃけてるだけなのかもしれねーけど。

 あと漫画の話なら、オレの時代っていうか、そういう頃には既にP・A・L☆ザ・コミックマスター(コミマス)が漫画家として全盛期の頃だから、コミマスがキャラデザやったドラ〇もんとかの映画とかも見たことはあったけど。……というか未だにコミマス全盛期だし、やっぱり複数人の団体とかなんじゃねーかな? コミマス。

 

 まー、そんな風に二人して色々話したりして、遊んだりして、戯れたりして。でも、そんな時間が長く続くとは、俺だって思ってない。表ではそろそろ俺も追い詰められてるし、外に出てるUQホルダーの連中も、なんかギリギリな感じで戦っていて。あの刀太の祖母ちゃんってののせいで俺も加勢に回れない。

 ただ、せめてこーして小夜子と話していたら。何か、状況を変えるための糸口とかが見つかるんじゃないかって、そう思って。

 

「…………すごい、近衛刀太」

 

 ただ、それが長く続かないことは、俺達二人ともが良く分かっていた。

 

 唐突に、打ち上がる花火をぼうっと見ながら、小夜子はそんな事を口走った。

 

「……なんでトータ? いや、『外』では見かけねーとは思ってたけど」

「あれ? あー、そっか。三太君は『外』は見れても『世界樹含めた』『内』は見れないのか。うん、今ね? 近衛刀太が『正面から』こっちに向かって来てるの。つまり、魂魄の『魄』の側、私のおっぱい触ってる三太君のところに」

「い、いや! 触ってねーって! とりあえず手は伸ばしてたけどさァ!」

「あ! じゃあラッキースケベだ! なんか凄い久しぶりな…………ん? ちょっと待って、おっぱい触ってるのにその自覚がないって、私、まな板だってケンカ売られてる? 三太君のくせに」

「いや、だからそーじゃなくって! ……っていうか結構あるだろお前…………」

「えっ?」

 

 思わず誤魔化すように言った一言に、思わず「過去の経験」からわきわき動いてしまった右手に、小夜子が少し顔を赤くして、はにかんで目を逸らした。

 

「…………三太君の節操なし、ケダモノ」

「いや、そんなに別に持て余してねーって」

「でも考えたら不思議よねー。私たちってちゃんと死んでるのに、生前の『そういう欲』っていうか、衝動っていうか、そんなものまで引きずっちゃってて」

「あー、確かに」

「ねー?」

 

「「………………」」

 

 いや普通にしゃべってて会話途切れたとか、しゃべり下手すぎねーかオレ達。

 

「……ねぇ、三太君」

「な、何だ?」

「一つ、お願いがあるの――――」

 

 そして、その会話を最後に。俺は小夜子に「突き飛ばされ」、急激に「外へと追い出された」。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 ディーヴァ一人増えたところで道行の果てしなさに変化が起こる訳もなく、私たちは延々と続く足場の先へ向けて、低空飛行を続けていた。いい加減、周囲の景色の赤黒さが一切変化しなすぎて「ステージ使いまわしか?(ゲーム)」とかメタなことを考えてしまったりもする。なおディーヴァはディーヴァで特に何も言わず、従順というか素直に私に続いてきてくれているのが、なんとなく小さい子が大人とかお兄ちゃんお姉ちゃんにくっついてよちよち歩いてくる様をイメージさせてちょっと微笑ましい(上から目線)。

 

「……? あれは」

「何かありますね、刀太くん」

 

 その無限に続くと思われていた未知の道の先に(激ウマギャグ)、それは鎮座していた。

 巨大な石の様な――――それも先ほどまで全く見えなかったのが嘘のように、まるでさもそこに当然のように、道の果てに「人体が集積した」何かが存在した。

 

 赤黒いのは皮がはがれた人体か。男性、女性、そんなもの関係なく正体がわからないくらいには抽象化したような、グロテスク極まりない無数の人体の亡者が折り重なり、蠢き、呻き、唸り、そしてその上部に水無瀬小夜子と、三太が居た。

 水無瀬小夜子の全身から「亡者が生えている」。ちょっともの〇け姫とかでいうタタリガミ的な要素のあるパロディな感じになっており、その胸元に手を伸ばした三太のそれが、亡者の肉に呑まれて、もはやどことどこが接触し接合されているか判別がつかない。というか三太の髪が短くなっておかっぱじみてきてるのは一体……。

 

「…………これが、愛の形?」

「…………これも、愛の形かなぁ」

 

 その在り様というか、名状しがたい状況を、しかし私は否定しない。……否定はしないが、フォローしておかないと情操教育的に宜しくないので、最低限は言うべきことを言ってやる。

 

「愛する相手がどうあっても、手を差し伸べるっていうのは、一つの愛だと思う」

「どうあっても、ですか。…………このいびつな状態は、ある意味で彼女の本質でしょうけれど。デュナミス様によってその制御が狂った結果、より分かりやすく見えるようになったのだと思いますが」

「お前、デュナミスのこと様付けで呼んでるの……?」

「まあ、仮にも私を最初に起動した方ですので、口頭で呼ぶ際くらいは。…………不満を表明する意味を込めて最近はしていませんけれど」

「そういう理由だったんだな……。って、いや、そういう話じゃなかったか。悪い、脱線した。

 まー、こういう状態が本来だったっていうのなら、それに気づけなかったことに後悔して、でもどうにかしてやりたいって色々手を尽くすっていうのが、よくあるやつだ。相手との親密度と、状況が改善しやすいかどうかとか、そういうのが比例してるだろうけれど」

「そんなもの、最初から気付いておくべきなのでは?」

「それが出来たら世の中から争いごとっていうのは全部なくなってるだろーさ。アンタがついさっきまで自分がエッチなこと言ったりやったりしてたことに無自覚だったようなモンだ」

「そういうものですか…………」

「そういう意味じゃ、相手がこの状態で、それでも手を伸ばそうってなる三太は十分愛してると言えるし、水無瀬小夜子もそれをわかってたから遠ざけようとしてたって見方もできる」

「…………」

「ん、どした?」

「刀太くんは、私に個人的な愛情を向けていたということでしょうか?」

「何でその結論に至ったし」

 

 いえその、と言いながら背中やら尻尾やらをジェスチャーで表現する彼女。いまいち無表情ながらやり慣れていない感がコミカルでデフォルメしたらさぞ漫画映えしそうな可愛らしさを感じるが、言わんとしていることはわかった。つまり「体内に」「脊椎を乗っ取るような」尻尾と翼を生やしたバケモノが寄生していたような、そんな人間的にだいぶアレな絵面だったのを助けたのはどういった意図があるのかと、そういうことが聞きたいのだろう。

 理由付けについてはさっき話した分だけで不足と感じたということか。……つまり、今の水無瀬小夜子の状況や、さっきまでの自分の状況は、ディーヴァ本人的には結構気持ち悪い類だという認識があるということか、そっかー。無表情だからといって羞恥心が無い訳でもなければ嫌悪感がないわけでもないものなぁ……(同情)。

 

「んー、この場合、何だろう? 愛情とか、そーゆーんじゃねーよ。まあ『愛着』っていうか、変な保護者的視点が入ってきたっていうか。さっきも言ったメリットもあるから、複合的な理由だな」

「愛着…………」

「お前さんみてーなの見てると、なんというかこう、そのまま放っておくのも色々アレかと思ってな……」

 

 どうせ私のガバり具合からして蘇るだろう未来が存在する可能性もあるし、その際に恨まれない程度の振る舞いも重要である、という自己保身だってそこにはあるし、こうしてちゃんと教育しておけば下手な手出しやら反抗やらもこの場ではしないだろうという打算もある。

 まぁ人間の心なんて、なんでもかんでも善意一本調子というものでもないだろう。例のラスボスだって、全人類に彼女がしたいことを考えても、それが人類救済に繋がるという思想と共に、彼女自身が狂ってしまうほどのノイローゼから解放されるとか、個人の主義主張というか好みの問題とかもあるだろうし。その点から言うと、そんな目的に協力する素振りを見せながら延々と闘争を求めていた祝月詠なんかは、その計画が成功しないだろうと見越したうえであちら側についていたか、あるいはもし完成しそうになった際にあっさり裏切るために近づいたか……。

 

 まぁ、そういう意味では原作ぶっちぎって外見上善意120%みたいに振舞って迫ってくる夏凜とか、得体が知れず怖いのだが(震え声)。

 

「………… 一面で全てを語れない、というのは理解しました」

「ま、とはいえパーセンテージっていうか、割合は違っていたりするかもしれねーけどさ。建前と本心って言ったって、そのどちらか『だけ』が建前全部って訳でも、本心全部って訳でもない。もっと複雑怪奇なモンだろ? 人間って。だからアンタらの親玉とか、絶対理解放棄してるところあるだろ。こーゆー『一元的な』方法しかとれないんだから」

「………………」

「さて! じゃ、とりあえず例の勾玉を探さねーといけねー訳だが…………、ん?」

 

 

 

 突然、三太の背中が目測三十センチの位置に――――ッ!

 

 

 

「――――いきなりでしたね」

「はい? ……あっ、お、おう、サンキュー」

 

 

 

 状況が急展開過ぎてアレだが、唐突にあの「人体のカタマリ」から三太が射出(?)され、私の方に急接近。そのままあわや頭部が消し飛ぼうかという時に、ディーヴァが間に割って入った、という流れのようだ。海天偽壮状態のお陰か、一瞬で半透明のスライム状になり三太を受け止め私にもたれかかる形に。腕の中に納まるディーヴァは、気絶してるらしい三太と私とでサンドイッチされた形に。

 と、目を見開いて私を振り返るディーヴァ。少女姿の場合、まだ私の方が身長が若干大きいのもあり、顔が近い……。

 

「ど、どうした?」

「…………い、いえ、こう、何と言ったら良いのでしょう。今まで体感したことのない、変な感覚が……、す、少し離れますっ」

 

 三太を私に手渡し、両手を重ねて私から離れるディーヴァ。色が戻ってるので既に初期状態のようだが、胸の辺りを抑えてどこか驚いたように頬が上気してる。……いや、流石に今更私を異性として認識したということはないだろうと思いたいが、この娘の情緒成長具合だとはてさて……。やっぱりガバかな? ガバかも……(諦観)。

 いや、別にその容姿やら性格に文句があるという訳ではないが、そもそも彼女の登場自体が原作チャート崩壊要因の一端だし、「私」的にどうにも親戚の子とか孤児院のちびっ子とかを思い出してしまって、なんとなくそういう感じにならないというか…………。身体的反応(意味深)は別として。

 

「って、そんな場合じゃねーな。オイ三太……」

 

 軽く揺さぶってみるが反応がない。見れば、水無瀬小夜子の胸元に群がる亡者の隙間に突っ込んでいたような右手は、「肘から下が無かった」。とは言え再生途中らしく徐々に徐々に煙のようなものが人体を再構成してるのは、流石の不死性(?)と言うべきだろうか。

 とはいえ時間もないので、黒棒の刀身、峰の部分を首筋に当ててやる。コイツ意外と物理的に冷たいので、こういう神経が通ってるところにさっと当ててやると――――。

 

「――――ひゃどばッ! お、オイ! お前、オレ殺す気か、フツー、ショック死するわッ!」

「いや、お前死んでるだろ」

「それでも死ぬってのッ!」

 

 こう、耐性がない相手は一発で起こすことが出来る。……出来るけど実際、普通の人間相手だとショック死しかねないのは事実なので、良い子はマネしちゃいけないアレだ。緊急事態なので大目に見て欲しいところではあるが、実際悪いことをした事実に変わりはないので、割と真面目に謝って許しを請う。

 首筋を押さえながら私を睨み「止めろよな、そーゆーの」と言って見回しながら、ディーヴァの姿に「ゲェ、あの痴女じゃねーかッ!」と新たに悲鳴をあげる三太。

 ぐりん、とシャフ度ギリギリにディーヴァの頭が傾きこちらを見る。

 

「…………」

「お、オイ、なんかスゲー睨んでくんだけど!?」

「あー、まぁちょっと本人気にし出したことだからなぁ……」

 

 生憎無表情なので内面は知れないが、なんとなく剣呑な圧を感じる程度には怒っていると見て良いだろう。

 と、そんな状況から脱するためではないだろうが「そんな場合じゃねえ!」と念力で浮遊する三太。そのまま、あの水無瀬小夜子の元へ行こうとして……、その目前で、彼女の頭から「蜘蛛のような脚」が生え、三太を押さえつけた。

 

「言ったじゃない、もう手遅れなんだって。だから三太君、ちゃんとやってねー? じゃないと――――私が君を殺しちゃうかも知れないから。うふふふふ♪」

 

 明らかに正気を失った、見開かれた目、開いた瞳孔。三太がそれに何か答える前に投げ飛ばし、下方に行く前に私は死天化壮で先回りして回収した。

 呆然とした様子の三太に、ちゃっかり付いてきたディーヴァが「……愛?」と頭をかしげている。

 

 まぁホラ、愛ってのは世界を救いもするし壊しもするもんだってどこぞのサムライめいた和尚も言ってた気がするし…………(震え声)。

 

 

 

 

 

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