光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ
感想は毎度なんですが、評価コメント試しに見返してたら結構しっかり打ってくれたりして、励みになりますナ!
 
そろそろ三太/キリヱ編も終わりが見えて来たような・・・?


ST113.死を祓え!:天播空期

ST113.Memento Mori:Ubiquitous

 

 

 

 

 

「「神鳴流奥義――――剣風華爆焔壁」」

 

 九郎丸と刹那さんが、二人そろって同時に同じ技を繰り出し合う。眼前で共に放った剣の烈風、炎の壁はお互いにぶつかり合い相殺し合う。わずかに刹那さんの方が優勢かしら? 神刀は時間と共に姿を消し、九郎丸の恰好も既に元に戻っています。対する刹那さんも、あのタケミカヅチというらしい古刀を長物程度の長さに調整して使ってる。

 とはいえ、単純技量ではまだ歯が立たないのか、踏ん張りどころとかそういう細かいタイミングで、斬り合いに負けているわね。そこを一空が援護射撃することで、わずかにカバーされている状態。拮抗、やや押されているという状況だけれど、それでも相手側もこちらを倒しにかかってこない辺り、どうやら本当に言葉通り「本当は戦いたくない」「足止めが主目的」といったところのようですね。

 とはいえ、雪姫様も「茶々丸さん」も居ない現状、ギリギリというのも仕方がない。というよりも、神聖魔法を特に制限かけずに使用してる私相手に粘っているもう一人の祖母らしい木乃香さんの力が異常と見るべきかしら。

 

「フラベル・ミラベル・アラ・アルバ――――戦いの歌(カントゥス ベラークス)、三連発や!」

「――――『干からびた骨(オゥス・エクシィカッタ)』、併せて『霊の剣(スピリトス・グラディウス)』!」

 

 身体強化を施した木乃香さんは、すだれみたいなものを自由自在に変形させてこちらに打ち込んでくる。私もそれをただ黙って受ける訳じゃなく、神聖魔法で私の全身とこのハンマー「戦棍シタ」とに属性をエンチャント、基礎能力を上げて応戦します。

 とはいえ、ジェットを吹かしながら「斬撃」の属性を帯びたハンマーを、直接受けず受け流すのは相方であろう刹那さん相手に、剣相手の戦いはやり慣れているからでしょうか。

 

 と、木乃香さんが私に微笑みながら声をかけてきました。

 

「…………えっと確か、カリンはんって言うん? カリンはんも、刀太君のところに行きたいんか? さっきから全然、気合が感じられんところあるけど」

「……気もそぞろ、という意味ではありませんが、確かにやる気はさほどないかもしれません。もとより足止めと聞いていますけど、刀太は貴女たちが私たちに倒されたとなっても、少し複雑な気分になりそうですから」

「えっ、そうなん? 意外とフェイトはんみたいに、そういう判定は別な気もしたけど」

「だからといって、貴女たちは祖母でしょう? 誰とて自分の親類がそういう目に遭えば、思う所はあるでしょう」

 

 当然、私の目から見た刀太の印象だけれども。あながちハズレでもないと思っている。なにせフェイト・アーウェルンクス相手に自らの「本当の」母親の話を挙げられた際、どうしようもない表情をしていたのを覚えていますから。あれは会ってみたくもあるけれど、雪姫様への義理もあるし、とはいえ提案してきたのが敵対者だから、など色々な感情が織り交ざっていたように思います。

 そういうストレートに笑えないようなことを、あまりあの子に背負わせるのは良くないでしょう。

 

「何っていうか本当、お姉さんって感じなんやね。アスナとかウチとか、皆ともちょっと違う感じで、こういうタイプは初めてやなー」

「それが、この場で一体何の意味を?」

「いやー、大した意味なんてあらへんよ~。ただ少しでもこう、『地上で』外に出てるなんて久々やから、もっとおしゃべりしたいんよ。お祖母ちゃん的なウチとしては、周辺の女の子事情とかも気になるし」

「まぁ、気にする程のものでもないと思いますが…………、妙に女性からも男性からも好かれるような雰囲気のようですし」

 

 恋愛感情的な意味かはともかく、刀太自身はちゃんと接した相手に対して妙に「絆す」ところがある。あの不死身衆(ナンバーズ)正体不明筆頭であるニキティス・ラプスでさえ、その妙な雰囲気に呑まれているのではと思う所もあり……、まぁそれは私もそうだという自覚はあるけれども。

 

 とはいえ、まあ、「責任は」とってくれるようですし。深く悩むようなことはありません、ええ。本人もどうやら忘れているようには見えますが、潜在意識のところではうっすら覚えているようにも見えますから、性格的に違えることは無いでしょう。

 

 ……フフッ。

 

「な、なんでそんな、エッチな感じに笑てん? エヴァちゃん好きなんよね、セリフの前後的に刀太君相手に『せっちゃんみたいな』こと考えてた感じやけど……、ひょっとして月詠はんみたいに二刀流?」

「あら、済みません。…………いえ、雪姫様第一なのは違いありませんが、それはそうとあの子を『独り』にしないと約束したことがあるもので。向ける感情のベクトルは、私も測りかねてはいますが。

 ………………おや? その、刹那さんってその、相当『アレ』なのですか?」

「あー、まぁ……、せっちゃんやもんなー」

 

 朝ネコミミ眼鏡な裸エプロンで起こしてしてくれって言われた時は何事か思ったわ、とニコニコ微笑む彼女に、九郎丸と相対している方から「このちゃーん!?」と絶叫が聞こえました。九郎丸も目が真ん丸になって、なるほど、ふむ…………。

 

「それはそうとして、貴女たちは一体何なのでしょう? 『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』という名前こそ聞きましたが、そこに協力している割には積極的ではありませんし、明らかに殺すつもりもないように感じます。それに……、年が合わない」

「年? あー、えっと、コレはアレや。ウチが最終的に『神霊一歩手前』に届くか届かないかってくらい魔力伸ばしたせいで、ウチもせっちゃんも見た目ほとんど年とらなくなったってだけやなー。龍宮はんとかザジはんとかとは違うえ?」

「そこは、理由は察してましたが……、ふぇぇっ? し、神霊クラス?」

「まー、お陰で『洗脳』も中途半端にならざるを得ないらしいしなー、完全に自由を奪って指示通り以上の行動をできんようにさせるか、ある程度自由を許して臨機応変に動けるようにさせるかって感じ。

 それにアレや。『刀太君の仲間』か『彼女』かもしれない子ら相手に、色々やるんは『ネギくん的にも』ちょっと気が引けるやろしな。そーゆーところは、積極的ではないにせよ、逆らえるウチらがなんとかしておかんと。只でさえネギくん『人質』とられとるようなもんやし、こう、『お姉ちゃん的立場』からするとなー?」

「…………ネギ? ネギ・スプリングフィールドですか。ふむ」

「せや? まーネギくん言うても、ほとんどネギくんやない時もあるから、その辺りは半々ってことやな。……あれ? これってウチ、話して良かったんやっけ――――」

 

 

 

 ――――――――唐突に響く、声。

 

 

 

 私だけではない、木乃香さん、刹那さん、九郎丸、一空。この場の全員が、その視線が「世界樹」に立つナニカに吸い寄せられる。

 そこに存在する巨体――――その巨体ではない。巨体の内にある「ナニカ」が、私たちの視線を捉えて離さない。いえ、離せない。

 

 生物としての根幹的な「恐怖」の感情、それが、さっきの声に伴っていた。

 

 声は、まともな言語をしていなかった。でも、私たちはそれから目を逸らすことが出来ない。まるで「そうしないと」、意識を少しでも外したらすぐさま殺されてしまうような。不死者であるにもかかわらずそう確信を抱かせるほどの「ナニカ」が、あそこにあった。

 その感覚は人型をとっており――――視えないはずなのに、どす黒い、穴を思わせました。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 眼前はいよいよラスボス戦とでも言うべき光景であるが、水無瀬小夜子が取り込まれている亡者の塊が動き出したことで、それの正体に判別がついた。心臓だ、イビツな怨霊で形どられた心臓なのだ。拍動するその動きに合わせて、中心からやや上部の水無瀬小夜子の表情が歪む。もっとも基本的なベースは目を見開いた狂気の笑みなので、受ける印象にさして差はないが、それでもそこに正気の欠片でも見ているのか三太は彼女の名を叫ぶ。

 

『――――――――』

 

 言葉のない咆哮。だが、同時に強い念を感じる声。目を逸らすことを「ためらわせる」くらいに、思わず注意が引きつけられる。

 その彼女の頭部から、髪を中心に這い出る無数の足はそのまま蜘蛛のようなそれで、同時に「周囲一帯全て」に嫌な予感が走る。

 

「ッ!」

 

 黒棒を構えようと振り回そうとすると、まるで何かにからめとられたように動かない――――咄嗟に思い出したのは、「ネギま!」学園祭編・まほら武道会でエヴァちゃんが使用していた魔力糸。人形遣い(ドールマスター)の呼び名をほしいままにした彼女にとってそれは、ちょっとした余興程度の道具ではあったろうが、そもそもとしてコレ自体は一般的な魔法による生成物の一種のはずだ。

 それが全体に張り巡らされているとなると――――嫌でも蜘蛛の巣を思い出してしまう。

 血風を放つも次の瞬間には糸が再生され、進めても一歩一歩。急発進しようにも絡みつきの方が強く、そう簡単に振り切ることが出来ない。

 

 なおこれに対して引っ掛かるのは私のみ。三太は透過して普通に通過するし、ディーヴァも海天偽壮のゲル化とかの影響で一切拘束されない。理不尽であるが、逆説的にこうでもして私の動きを封じたいという意図を感じ取ることができた。つまりこちらが手を尽くせば、今の彼女をどうにかすることが出来るということだ。

 

 ふむ? ならば少し小細工するとしよう――――「かつての私」と統合された、今の私の練度ならば出来るはずだ。

 

幽波拳(スタンドフィスト)――――はァ!」

『――――――――』

 

 不可視、念力の壁を例によって殴りつける三太。それにより増幅、拡散、拡大された威力がもろとも水無瀬小夜子の全身を覆う肉塊に向けられるが。同時に彼女の眼前に一瞬で「張り巡らされた」、魔力糸の盾が固い。その性質においても粘性、弾性が強いのか、三太の拳のそれを上手い事吸収して逃がし防いでいた。

 そして、やはりと言うべきかその「声」が発されるたびに、どうしても視線が吸い寄せられる。無理に払おうと思えば払えるので問題はないのだが、見てみれば三太やディーヴァはそこから視線が動かし辛いらしい。何だろう、こう、人類の「祖先」的な天敵でも思わせる在り方なのだろうか、今の彼女は。根幹的な恐怖によってか行動を制限されているそれは、ある種、魔法じみていた。

 

「アルエル・ファルエル・ベルベット―――― 魔法の射手(サギタ・マギカ)光の七矢(セリエス・ルーキス)!」

「いやお前さん絶対闇属性だろ、何故光属性使ってやがんだよッ!」

 

 属性的に三太特効と思われるその矢を放つ水無瀬小夜子。念力の壁で防御こそするが、先ほどのディーヴァのガトリングがごときサギタ・マギカとは違い、まるで吸血鬼でも打ち殺すためのような太い「木の杭」のような太さのそれが、壁に刺さり、徐々に徐々に押している――――ほぼ純粋な魔力のゴリ押しっぷりは、なんというか見ていて色々と可哀想になる。

 思わず血風を撃とうと左手を向けようとするが、それが上手くいかないのを見越してかディーヴァが無詠唱で 魔法の射手(サギタ・マギカ)を撃ち返し、三太の念力を挟んで相殺させた。

 

「あれも愛ですか。複雑なものなんですね」

「いや、どう見ても憑りつかれてる怨霊のせいで暴走してるだけだから……、って、はい? オーイ、三太、お前さっき水無瀬小夜子から『何か言われた』か?」

 

 攻撃が効かないというのに一歩も引かない三太の姿に、なんとなくそんな気がして尋ねてみる。……嫌な感覚しかり、こういう時の直感は割と外れたことがないので(主人公補正?)、おそらくはビンゴのはずだ。

 案の定、三太がこちらを一瞥し叫んだ。

 

「…………辛いから、もう殺してくれって、解放してくれって!」

「そうか! で、殺す気は?」

「無いッ!」

 

 当たり前だよなぁ……。こう、三太の背後に「ドン!」と少年漫画的描き文字が見えるような、見えないような。

 なので、狙うなら胸の中央あたり、勾玉があるはずだからそれを奪取しろと大声で教えておいた。一瞬頭を下げると、三太はそのまま再び彼女へ立ち向かっていく。……とはいえ、三太だと直撃するだけの突破力には欠けるか。

 

「こういう場合、素直に殺してあげるのが愛なのでは? 辛いと彼女も言っているのですから」

「だからと言ってそう割り切れるもんじゃねーんだよ。大事な相手と別離だってしたくないし、そもそも自分の手で殺させるとか完全に心に傷が残っちまう。お互いに、それが他にどうしようもない場合と、そうじゃないかもしれない場合がある。

 なまじあの女って、神様クラスの状態になっちまってるのもあるから、もしかしたらって希望は捨てきれねーだろ」

「それが、結果的に相手を傷つけることになるのだとしても?」

「エゴだよ、と言っちまうとなんだか宇宙世紀みてーな感じになってくんな……。いや、でも実際エゴだよ。どっちもエゴだ。で、だからお互いある意味では対決して、どっちかのエゴが勝つ。どっちが勝ったかによってどっちも幸せになるか不幸になるかなんて、その時までは判らねーから、そこはどうしようもない」

「…………」

 

『――――――――』

 

 無言のディーヴァはともかく、私も「仕込み」が終わった。……黒棒を拘束している魔力糸に沿って、私の「血」をその根元、魔法的に接続されてる陣まで伸ばした。そこに死霊属性、つまりは「尸血風(しいけっぷう)」を送り込む――――。と、射出箇所からベースとなっている水無瀬小夜子の魔力が中途半端にレジストされ、糸の再生力が弱まる。

 ぶち切り、それらの糸の基点(血を通わせてるので場所は把握している)に目掛けて血風塊天を放ち、魔力糸を散らした状態で石化。そこから再構成されないうちに死天化壮で接近を試みる――――。

 

 と、やはり眼前に魔力糸の壁だか盾だかを形成する水無瀬小夜子。とはいえそれも、黒棒に纏わせた「塊血風(かいけっぷう)」で粉々に砕く。

 

『――――』

 

 その能力リソースを全身の巨体に回しているせいか、気持ち少しだけ原作より弱く感じる水無瀬小夜子。このあたり、内部での精神対決など完全に想定外だったろうことが伺える。

 

「三太、いくぞッ!」

「おっしゃ――――! 幽波界(スタンド・ワールド)、止まれェ!」

 

「アルエル・ファルエル・ベルベット―――― …………、、、、、

、、、、、、、」

 

 血風を多数周囲に展開し、変則的に投げながら水無瀬小夜子に接近。亡者の肉塊をけちらしながら、表出するその胸の中央に光る鈍い色の勾玉。

 と、すぐさま次の瞬間、それこそ「逆再生のように」もとに戻ろうとするそれらを、三太が念力で妨害する――――否、「時を止める」。いや名前からそうかとは思ったが、お前のその技って「念力で相手の動きを完全に固定する」タイプのそれか。外見上は時間が止まっているように見えるあたり完全に奇妙に冒険する世界(時間停止)系の能力である(星屑の聖軍)。

 

 ともあれ、その勾玉目掛けて手先から小血風を放ち――――。

 

 

 

「――――あっ」

 

 

 

 砕け散ったと同時に、私たち全員の視界が、真っ暗に染まった――――――真っ暗に染まるだけの「怨霊」が、「解き放たれた」。

 

 

 

 

 

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